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剱岳北方稜線はガイドブックに現れる言葉であるものの、その範囲は判然としない。南端が剱岳であるのは当然としても、北端は地形図で見ると延々と伸びている。アルペンガイドの記述も曖昧だ。
剣岳北方稜線とは剣岳本峰から北にのびる主稜線を指し、本書で解説する小窓までの範囲は、その稜線上でもとりわけ岩場が連続する主要部分、いわゆる裏剣と呼ばれる領域の中心部である。
アルペンガイド14「立山・剣・白馬岳」(山と渓谷社,1994)p.104
日本登山体系の剣岳概説の項も記載する範囲を規定しているだけで、北方稜線の北端に関する記述はない。
一方、三ノ窓、小窓と北走する北方稜線は大窓をもって以北の山と識別し、仙人山とは池ノ平小屋を境とする。
柏瀬祐之、岩崎元郎、小泉弘編「日本登山体系 剣岳・黒部・立山」(白水社,2000)p.19
「毛勝三山西面の沢」の項にも北方稜線の文字が見えるが、どこまでなのかはわからない。
剣岳北方稜線はブナクラ乗越で一気に高度差700mを落とし、ふたたび急な潅木と根曲り竹の尾根を700m登ってなだらかなピークを連ねる。毛勝三山と呼ばれる猫又山、釜谷山、毛勝山がこれである。最高峰は釜谷山(2415m)であるが、懐に大雪渓を抱く毛勝山の方がよく知られている。
柏瀬祐之、岩崎元郎、小泉弘編「日本登山体系 剣岳・黒部・立山」(白水社,2000)p.125
でも僧ヶ岳から剣岳まで縦走する人はいるみたいだ。
毛勝三山の主稜は僧ヶ岳から毛勝山を経て剣岳へと道なき長駆の縦走も大学のワンゲル部員らによって近年しばしば試みられるようになった。
柏瀬祐之、岩崎元郎、小泉弘編「日本登山体系 剣岳・黒部・立山」(白水社,2000)p.125
昨年、Kさん、Iさん、S君が挑戦したものの、日数が足りず小窓から小窓雪渓を下りたそうだ。今回そのリベンジに加わらせてもらった。私自身も2010年の黒部横断以来6年ぶりの剱岳なので楽しみであった。
0日目 |
2016年4月28日(木) |
新宿=(夜行バス・車中泊)
4月に開業したバスタ新宿に23時に集合する。23:25発の予約したバスに乗って富山に向かう。バスタ新宿は5月連休初日とあって混雑していた。発車予定のバスが毎5分ごとに5便くらいずつ電光掲示板にずらっと並んでいる様子は圧巻であったが、空港や鉄道駅に比べるとやや手狭な感じがした。乗車して段階的に照明が消えていき、最初のSAにつく頃就寝した。
1日目 |
2016年4月29日(金・祝) 雨時々くもり |
富山=(富山地方鉄道)=宇奈月温泉…宇奈月尾根1735m峰(泊)
宇奈月温泉 | 8:13 |
9:04 | |
平和の像 | 10:40 |
10:55 | |
宇奈月尾根900m付近 | 11:50 |
12:10 | |
宇奈月尾根1170m付近 避難小屋跡 | 12:57 |
13:10 | |
宇奈月尾根1431m標高点 | 14:02 |
14:17 | |
宇奈月尾根1550m付近 | 15:09 |
15:23 | |
宇奈月尾根1735m峰 | 17:01 |
20:00就寝 |
バスの途中は何度か起きたが、トイレには出ずよく眠れた。朝6時に富山駅北口に到着し、地下道を通って南口に移動する。空は鉛色で予報通り雨が降りそうだ。地鉄の乗り場に行き、宇奈月温泉までの切符を買う。片道1,840円とけっこう高い。待合室でしばらく待ち、改札の案内が始まったら6:29発の宇奈月温泉行きに乗車する。クロスシートに腰かけぐっすり眠る。田舎っぽい風景を眺めながら列車に乗る夢を見ていたような気がする。終点宇奈月温泉駅に8:13に到着すると外は本降りの雨であった。
しばらく天気の様子を見る。その間、みんな登山靴を履いたり、トイレに寄ったり、おみやげ屋さんを覗いたりしていた。私は眠かったのでベンチでうつらうつらしていた。9時になって雨が弱くなったので、Kさんの号令で出発する。温泉街の横を通ってスキー場に出る。林道僧ヶ岳線がジグザグにスキー場を通っており、地元らしい人たちが車を停めて山菜採りをしていた。林道僧ヶ岳線に従って進もうとするが、Hさんの声に呼び止められる。スキーの上級者コース沿いに行くらしい。下草が生えていて道ではなかったが、私以外の3人ともコゴミをとって歩いていた。途中で雨が強くなってきたので上で待っていた私は林道に移動して木の下で雨宿りしていた。
4/29 宇奈月温泉駅から雨の中出発。 |
4/29 宇奈月温泉スキー場の東寄りのコースを登る。 |
4/29 林道僧ヶ岳線沿いに歩いているとサルを見かけた。 |
4/29 林道僧ヶ岳線から見る平和の像。けっこう大きい。 |
Kさんは続けて斜面を直登していて、私を含めほかの3人は林道僧ヶ岳線沿いに登る。途中、猿がウロウロしていたが私達が通ると逃げていた。平和の像に着いて一休み。山間の宇奈月温泉が目の下に見えるが、少し先に黒部の平野が見える。海から遠くないところから剣岳まで歩くのかと思うと気が重かった。平和の像にはトイレもあり、幕営に適していたのも気が進まない理由であった。
4/29 宇奈月尾根第一登山口から僧ヶ岳に登る。 |
4/29 標高800mの看板が倒れているところで休む。 |
観光にやってきたらしい親子連れが平和の像に来て出発する。林道僧ヶ岳線をたどり、第一登山口から登山道に入る。雨がまた降ってきて憂鬱である。ときおり椿が咲いていて目の保養にする。標高800mの看板が倒れているところで休む。でも地形図を読むと標高900mくらいだと思う。この看板から雪が出てくる。
4/29 一度、林道僧ヶ岳線に出る。 |
4/29 林道僧ヶ岳線からピンクテープに従って雪渓を登る。 |
途中で林道僧ヶ岳線に上がる。Kさんがフキノトウを見つけて摘んでいた。林道を少し歩いて雪の斜面を直上する。ピンクテープに従って登ったらけっこうな急登であった。尾根に出てしばらく歩くと1170m付近避難小屋跡。コンクリートの土台だけが残っている。傘をさして休む。
4/29 土台しかない避難小屋跡で休む。 |
4/29 丸くて広い1431m標高点で休む。 |
登るにつれ雪が多くなってきて1431m標高点はのっぺりと白い雪に覆われていた。雪面に登るところはヤブが倒れていてザックが引っかかった。途中では昨日の雪で凍りついたらしいショウジョウバカマがこうべを垂れていた。ところどころ尾根の西側の広いところをつないで登る。だんだんガスが濃くなってきて道がわかりにくい。途中、Kさんがサングラスをなくしたことに気づき、先ほど休んだ箇所に取りに行った。烏帽子尾根と合流するあたりで道がわからなくなり、尾根の西側に出たが、尾根を乗っ越すと東側に道があった。
4/29 尾根が広い箇所はガスがかかると道がわかりづらい。 |
4/29 東側から尾根を合わせた1735m峰付近に幕を張る。 |
烏帽子尾根と合わせるといよいよ雪稜といった雰囲気で雪に覆われた稜線にところどころ木が生えている。東側から尾根を合わせた1735m峰付近で幕を張ることにする。
夜はコゴミを湯がいてマヨネーズや味噌で和えて食べた。薄暗いテントの中でよく見るとコゴミのいくつかには5mmくらいの黒い虫が付いていて気づいた分は取り除いたが、全部は取りきれていないように思う。風はないが外は少々寒かった。
2日目 |
2016年4月30日(土) 晴れのち雨 |
宇奈月尾根1735m峰…僧ヶ岳…駒ヶ岳…滝倉山…滝倉山・ウドの頭コル(泊)
宇奈月尾根1735m峰 | 3:00起床 |
5:25 | |
僧ヶ岳 | 6:03 |
1914m標高点 | 6:53 |
7:10 | |
駒ヶ岳 | 7:45 |
1805m付近 | 8:33 |
8:47 | |
1769m標高点 | 9:20 |
1753m標高点北コル | 9:50 |
10:15 | |
1753m標高点 | 10:33 |
1801m標高点 | 11:06 |
1801m標高点・サンナビキ山コル | 11:32 |
11:48 | |
滝倉山 | 13:20 |
13:36 | |
滝倉山・ウドの頭コル | 16:00 |
19:45就寝 |
前日の夜行バスは睡眠時間が短かったのでよく眠れた。まだ標高も低いので寒くなかった。天気は昨日と打って変わって晴れ。広い尾根を登る。仏ヶ平を過ぎて尾根を右に折れると僧ヶ岳であった。
4/30 テントを畳むころには気持ちのいい青空が広がっていた。 |
4/30 たおやかな宇奈月尾根を登る。 |
4/30 仏ヶ平の右手に目指す僧ヶ岳が見える。 |
4/30 僧ヶ岳から見る駒ヶ岳。遠い。 |
今回の長い山行の最初の名前の付いたピークだ。ずっと遠くに毛勝山が見える。あまりにも遠いし、雪に覆われて3000mくらいの山に見える。毛勝山を越えてさらに剣岳まで登るのかと思うと気が重い。雪に埋もれているのか標柱などは見当たらない。休まずに駒ヶ岳を目指す。廃道の尾の沼コースを合わせて1914m標高点で休む。
4/30 駒ヶ岳の登りには岩場がある。 |
4/30 駒ヶ岳の山頂には石柱が立っていた。 |
駒ヶ岳へは岩場が出てくる。固定ロープもあるので頼れるが、荷物が重いので少し苦戦する。登り切ってしばらくで駒ヶ岳に着く。篆書体で山名が書かれた石碑があった。夏の登山道がついているのはここまで。駒ヶ岳からはヤブ混じりの雪稜が続く。まずは雪をつないで歩けるところまで行く。1867m標高点付近から強力なヤブに突っ込む。ヤブを漕いでいたらすっ転んで、拾ったストック代わりの棒をなくしてしまう。300mほど進んで尾根の東側に出て休む。稜線は尾根の東側に雪が溜まっているのでできるだけ東側を歩くよう努力する。
4/30 駒ヶ岳の下から見る毛勝山までの道のり。遠い。 |
4/30 1867m標高点付近から強力なヤブに突っ込む。 |
だいたいは雪の上を歩けるが、ところどころ雪が切れてシュルンドになっているところはヤブが天に向かって突き出しているので、これを越えるのに難儀する。でもKさんとS君曰く、去年よりもずっと雪が付いていて歩きやすいそうだ。1753m標高点は急な雪壁になっているが、左手をトラバースしながら登る。ザイルを出してKさんがトップで登る。1801m標高点付近からS君が土踏まずが痛いらしくてだんだん遅れてくる。1801m標高点・サンナビキ山コルでS君の持つテントをKさんが持つ。
4/30 1753m標高点付近でトラバースにロープを出す。 |
4/30 滝倉山の登り。 |
ライチョウに誘われて急な雪壁を越えると滝倉山に着く。特に看板などは見当たらない。天気がくもってきて風が冷たいので南側の斜面に降りて休む。滝倉山から稜線は弓なりに曲がる。主稜線が途中から派生しており、そのまま稜線をたどると黒部側に下りてしまうので注意する。少し木に登って道を確かめる。市境の主稜線よりやや西側のルンゼに雪が溜まっているのでそれを下った。
4/30 滝倉山の下りで市境尾根を外れて西側の雪壁を下る。 |
4/30 屹立するウドの頭。どこから登るのかと思ったら正面の雪壁らしい。 |
下りついて登り返す。細い尾根歩きの後、道がわかりにくい。黒部側の尾根に引き込まれそうになるが、西側から回る。地形図に表現されないコルから登り返すと懸垂下降の捨て縄があったが、引き返してコルから西側を巻く。巻ききったところから岩場のトラバース。ロープを出す。トラバースしきってまた西側に道を探し、10mほど下ってから懸垂下降した。濡れた手袋で石楠花を触ってると手が冷たい。
結局、岩場トラバース1ピッチ、懸垂下降1ピッチを要した。道はわかりにくいが尾根を進むと黒部側に下りてしまうので、西側に探すとよいようだ。
4/30 岩場をトラバースする。 |
4/30 懸垂下降で滝倉山・ウドの頭コルに下りる。 |
25m懸垂下降すると滝倉山・ウドの頭コルであった。東側の雪渓を整地してテントを張った。夜は西風が吹いたが、風はコルで巻き上げられてテントには当たらなかった。外はみぞれが降っていた。尻に敷物が足りず底冷えして明け方眠れなかった。