山ノ中ニ有リ山行記録一覧2016年山行一覧>北アルプス・白馬岳主稜

2016年春 - 北アルプス・白馬岳主稜


2016年4月9日(土)〜4月10日(日)
場所
長野県北安曇郡白馬村/北アルプス
ルート
4月8日
立川=道の駅白馬(泊)
4月9日
道の駅白馬=二股…猿倉…白馬尻…白馬岳主稜2450m付近(泊)
4月10日
白馬岳主稜2450m付近…白馬岳…白馬大雪渓…白馬尻…猿倉…二股=立川(解散)
参加者
リーダー K、中山、H
参考文献

はじめに

 白馬岳は黒部側がなだらかで猿倉側が急峻な、典型的な非対称山稜である。その急峻な猿倉側にあって大雪渓と白馬沢に挟まれた尾根が白馬岳主稜である。

 白馬岳主稜は無雪期にはブッシュと脆い岩場の連続する尾根だが、豪雪におおわれると波のようにうねる美しいスノーリッジに姿を変える。主稜は8つのピークからなり、中級者向けの雪稜ルートとして日本で最も人気のあるルートの一つである。

遠藤晴行編「ROCK & SNOW BOOKS アルパインクライミング」(山と渓谷社,2001)P.126

 名前は聞いたことがあったが、なかなか行く機会に恵まれず、今回どこに行こうか3人でメールで相談して決めた。白馬岳に登るのは高校2年生の時以来だから17年ぶりである。あの時は慣れない夜行と高山病にすっかりやられて大雪渓を登ったところでゲロ吐いてダウンしていたのを覚えている。

0日目

2016年4月8日(金)

立川=道の駅白馬(泊)

 立川に9時半に集合し、白馬村へ向かう。立川を21:45頃に出発し、道の駅白馬についたのは1:10頃であった。夜間もトイレが空いているのがありがたい。朝まで仮眠する。

1日目

2016年4月9日(土) 快晴

道の駅白馬=二股…猿倉…白馬尻…白馬岳主稜2450m付近(泊)

コースタイム
二股6:38
7:35
猿倉8:52
9:26
白馬尻10:42
11:00
白馬岳主稜1900m付近11:53
12:19
白馬岳主稜2200m付近13:09
13:30
白馬岳主稜2380m付近14:24
14:36
白馬岳主稜2450m付近14:55
20:00就寝

 思ったより朝は寒かった。車を走らせ、白馬駅の前で道を曲がる。二股で出発準備をしていると、Hさんが忘れ物をしたというので八方のローソンまで買いに行く。その忘れ物は酒であった。二股の発電所の上の駐車場には続々と車がやってきてあっという間に10台くらいになっていた。

 閉じられたゲートを右からすり抜けて歩く。天気は快晴で歩いていて暑い。除雪されたアスファルト道を1時間強で猿倉についた。猿倉荘はまだ営業していない。先行する3人組が出発準備中であった。

白馬岳主稜
4/9 猿倉から白馬尻へ歩くと白馬岳主稜が見えてきた。
白馬岳主稜
4/9 白馬尻から見上げる白馬岳主稜。どこを登るのかよくわからない。

 雪道を歩いて行くと白馬岳主稜が見えてくる。全体には雪で覆われているが、山肌には鱗のようにへの字の岩稜がたくさん見える。どれが主稜線かわからない。長走沢は林道が洗い越しになっており、すばやく渡った。幸い1シーズン目の革靴は濡れることがなかった。白馬尻に着くが、小屋は見当たらない。この季節は小屋をばらしているのかもしれない。ときおり沢から風が舞い上がってくるが暑い。顔に日焼け止めを塗る。雪に埋もれた大雪渓の沢を渡り、主稜に取り付く

4ピッチ目
4/9 台地に出たところ。だんだん登り坂がきつくなる。
4ピッチ目
4/9 主稜のコルに登る雪面。

 取り付きはやや急な雪面を登る。台地のような雪面にたどり着いたら、すっくと立ち上がる稜線へと直登する。登るにつれ急になる。小さなシュルンドを1つ左から巻いて一休み。ハーネス、アイゼン、ピッケルを出す。

 延々と雪面を登っていくと雪のない岩クズの広がる場所に出る。そこから見える稜線のコルまで雪面を登る。この辺が末端の8峰だろうか。稜線からすぐ木を掴んでの登行。ここからは雪の覆われたナイフエッジの稜線が続く。先行パーティー2組が急な雪面を登っている箇所で休む。先行パーティーはシュルンドから左の藪混じり露岩を登るか、右の風化した露岩を登るか迷っているようだったが、結局右を登って行った。私たちも右の露岩を登った。岩がもろく、掴んだら引っこ抜けるような岩だったので慎重に登る。ラストのHさんにKさんがロープを垂らす。その間、私が先行する。

白馬岳主稜
4/9 8峰付近から先を眺める。先行パーティーが露岩下を登っている。
白馬岳主稜
4/9 風化した露岩を登る。岩が脆く、ラストのHさんにはロープを出した。

 ところどころ木が生えているが、ヤブというほどではなくホールド代わりにつかんだりして登る。あとは雪稜がポコポコと小ピークを連ねているだけで単調だ。雪面は傾斜が目でわからないため、緩急のある斜面を繰り返し登っているようだ。ガイドブックには白馬岳を1峰とし、末端の8峰まで名前が付いているみたいだが、たくさんピークがあり、ピーク間のコルが判然としないピークもあるため、全然わからない。途中で幕営する2人組を追い抜き、2380m付近で休む。先行する2人組はどこまでいくのだろう、もう2時を回ったし、そろそろ幕営しようかと話す。大雪渓から間欠的に冷たい風が登ってくる。振り返ると幕営する2人組がもう立派なイグルーのような風除けの雪壁を作っていた。

白馬岳主稜
4/9 振り返ると急な稜線というのがわかる。
白馬岳主稜
4/9 前を見てもまだまだ稜線が続く。

 目の前の雪壁を登ると平らではないものの、十分幕営できる緩傾斜がある。腕時計の高度計と尾根の曲がり方を見ると2450m付近である。5峰4峰の間なのだろうか。掘っくり返して整地する。スコップが壊れていて長く伸ばせず、短いまま使用する。春の雪は重いがその分沈みにくい。割に簡単に整地できた。50cmほどの高さの雪壁もできた。天幕を張って潜り込む。テントの外には遠くに複式火山が見えた。妙高山だろうか。

白馬岳主稜
4/9 標高2450m付近に幕営する。
白馬岳主稜
4/9 主稜から見る杓子岳と猿倉に伸びる杓子尾根。

 夜は白馬村で買った日本酒の大雪渓と林道で摘んだフキノトウに舌鼓を打ちながら、話に花が咲いた。

2日目

2016年4月10日(日) くもり

白馬岳主稜2450m付近…白馬岳…白馬大雪渓…白馬尻…猿倉…二股=立川(解散)

コースタイム
白馬岳主稜2450m付近2:30起床
5:10
白馬岳山頂7:40
頂上宿舎8:00
8:16
白馬尻9:21
9:38
流走沢渡渉10:03
10:12
猿倉10:31
10:37
二股11:48
12:02

 夜は昼と変わらず大雪渓側から間欠的に風が吹いてきたが、雪壁を作ったおかげでさほど寒さを感じることはなかった。ただ、鼻が詰まって夜中一度強く鼻をかんだ。天気はよく星空が広がっている。夜明け前の5:10に出発する。10分ほど登ったところで先行する2人組に追いつくが、私は突然の便意に襲われ、途中で用を足したため、だいぶ遅れをとった。

白馬岳主稜
4/10 途中で用を足していたらだいぶ遅れをとった。
白馬岳主稜
4/10 ひたすら雪稜を登る。

 えっちらおっちらと追いかけていくが、雪稜は難しいところがなく、ただただ歩くだけのため追いつかない。2峰直下の岩を左から巻き、山頂直下の平らなスペースでやっと追いついた。

白馬岳主稜
4/10 山頂直下の斜面を登るKさん、Hさん。1ピッチ目。
白馬岳主稜
4/10 2ピッチ目、雪庇直下まで登る中山。

 正面を見上げるとガイドブックで読むように雪庇が伸びている。しかし、右手に切れ目があり、トレースも雪庇直下まで直登、そこから右へトラバースして稜線に出ているようだ。2人組より先に進む。ザイルを出し、1ピッチ目はKさん、Hさん、中山の順。コンテかと思って歩いていたら、なんで登ってんだと怒られた。その場でスタンディングアックスビレイを行い、肩絡みで確保する。Kさんがピッチを切ったら、2ピッチ目は中山、Hさん、Kさんの順。さらに直登し、シュルンドっぽいところにスノーバーを打ち込んでランニングビレイとする。トラバースはなかなか高度感があるが、下を見ないで丁寧に足場を蹴り込む作業を続ける。最後の雪壁を乗っ越すところは雪がぐずつき、ピッケルがうまく刺さらず戸惑う。えいやっと乗っ越すと白馬岳山頂から北へ20mほどの場所であった。

白馬岳主稜
4/10 雪庇を右から回りこむ中山。
白馬岳主稜
4/10 山頂直下の雪面を登るKさん、Hさん。
白馬岳主稜
4/10 白馬岳主稜を振り返る。
白馬岳山頂
4/10 ビレイ点から見る白馬岳山頂。山頂の北側20mくらいのあたりで出た。

 稜線は黒部川から強風が吹きつける。寒いなあと思いながらビレイする。全員登りきったら白馬岳山頂で記念写真を撮り、ロープをつけたまま南へ下る。正面に見える山は剱岳だろうかと思いをはせる。白馬山荘を過ぎ、頂上宿舎の下で休む。風は吹いてこない。ロープを回収する。

白馬山荘
4/10 白馬岳から稜線を南へたどる。白馬山荘を通過する。
頂上宿舎
4/10 頂上宿舎の下で休む。

 大雪渓を下る。下り始めは雪が締まっていて雪のクッションがなく歩きにくい。屋根だけ見える岩室で暑くなって1枚脱ぐ。単独のスキーヤーが登ってきた。もっと下の方にも3人くらい見える。スキーを履いていたらあっという間に大雪渓も下れるのだろうが、先週重い雪を滑るには私のスキーの実力が伴わないのが分かったので、めんどくさいと思いながら歩く。下るにつれ雪も緩んできてズボズボと埋まる。何度か足を取られてすっ転んでしまった。その1回でアイゼンで足を引っ掛けてスパッツが破れてしまった。あとで見たらカッパも破れていた。4ヶ月前に買ったばかりなのに。アイゼンを外して下る。いっそシリセードで下れないかと腰を下ろしたが全然滑らなかった。傾斜が足りない。

白馬大雪渓
4/10 白馬大雪渓を下る。
白馬大雪渓
4/10 白馬大雪渓にはスキーヤーが何人か登っていた。

 大雪渓の南側の杓子岳から白馬尻に伸びる稜線が美しい。白馬岳主稜が松笠のように稜線が判然としないのに対して、杓子岳は1本筋の稜線が白馬尻まですうっと下りている。今度あれ登りたいなという話をKさんと交わす。あとで調べたら杓子尾根というようだ。

 白馬尻流走沢猿倉で休み、二股には12時ごろ到着した。南股入を渡った先にある小日向の湯に入る。建物が着替え場だけのシンプルな温泉だ。北海道の温泉みたいだが、値段は600円とそれなりの設定だった。帰りは談合坂SAから小仏トンネルまで渋滞に巻き込まれ、18時過ぎに立川についた。

おわりに

 白馬尻から白馬岳山頂まで終始雪に覆われた雪稜らしい雪稜のコースであった。山頂が白馬岳という有名な峰というのもいい。岩登りはちょっと怖いが、雪稜ならわりにどこでも登れるので楽しかった。ザイルを出したのは標高2200mほどの露岩1ピッチと山頂直下の雪壁2ピッチであった。山頂直下の雪庇越えも地道に足場を固めて登っていくのが楽しかった。雪稜なのであちこちにテントを張れるのも魅力だろう。オンラインで検索すると5月連休に登っている人が多いが、5月だと暑いし、シュルンドが空いているし、登りにくいのではないかと思う。

(2016年4月11日記す)


山ノ中ニ有リ山行記録一覧2016年山行一覧>北アルプス・白馬岳主稜

inserted by FC2 system