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2016年春 - 八ヶ岳・天狗岳


2016年3月19日(土)〜3月20日(日)
場所
長野県茅野市/八ヶ岳
ルート
3月19日
茅野=渋の湯…黒百合ヒュッテ(泊)
3月20日
黒百合ヒュッテ…中山峠…東天狗岳…西天狗岳…東天狗岳…天狗の奥庭…黒百合ヒュッテ…渋の湯=茅野
参加者
L. 中山、S
参考文献
「山と高原地図32 八ヶ岳・蓼科」(昭文社,2000)

はじめに

 天狗岳は北八ヶ岳にある2645mの山。たおやかな北八ヶ岳にあって比較的岩が多く、特に佐久側はすっぱり切れ落ちている。

 この3連休は土曜日に雨の予報で、月曜日には用事が入ったため、1泊2日でしかも雨に降られても登れそうな山を探す必要があった。土曜日の夜をどこか避難小屋でやり過ごそうと奥秩父などを探したが登山口まで行くバスがなく、八ヶ岳にした。冬季に運行しているバス路線を探した結果、渋の湯から登れる天狗岳にした。北八ヶ岳ロープウェイのあたりも考えたが、適当な幕営地と登る山が見当たらなかった。天狗岳に登るのは7年ぶり2回目である。

1日目

2016年3月19日(土) 曇り

茅野=渋の湯…黒百合ヒュッテ(泊)

コースタイム
渋の湯11:20
11:46
八方台分岐12:35
12:46
黒百合ヒュッテ13:37
19:20就寝

 金曜日に飲み会があったため、土曜日朝発で出発する。渋の湯行きのバスが1日3本しかなく、1本目のバスは東京朝発では間に合わないため、2本目のバスに合わせて福生6時台発の列車に乗る。18きっぷの方が安かったので、普通列車を乗り継いで行く。立川で甲府行きに乗り換え、甲府で松本行きに乗り換える。甲府では本降りの雨が降っており、車内の床が濡れているので気をつけて下さいとアナウンスがあった。こんな雨の中歩くのかと憂鬱になるが、また寝る。

 茅野駅に降り立つと雨は上がっていた。雨に降られずに歩けるかも、と期待する。バスターミナルには美濃戸口行きや北八ヶ岳ロープウェイ行きなどのバスを待つ人が並んでおり、その中でも渋の湯行きの列はひときわ長かった。雨降るって言ってんのに何でこんなに人がいるのか不思議に思う。幸い、2台目の増発便に乗ることができ、座れた。

茅野駅
3/19 茅野駅の渋の湯行きバス乗り場に並ぶ。増発便合わせて2台バスが来た。
渋の湯
3/19 渋の湯で出発準備。

 終点渋の湯に着いて、靴を履いたり出発準備をする。あとで気づいたが、渋の湯の玄関に「登山者は入口の階段で山支度をするな」と貼り紙があり、あんまり登山客は歓迎されていないようだ。公衆トイレは茅野に戻るように橋を渡ったところにあった。

渋の湯
3/19 渋川にかかる橋を渡って取り付く。
八方台分岐
3/19 八方台分岐で一休み。

 渋川にかかる鉄製の橋を渡り、斜面に取り付く。道の雪は踏まれて凍っており、慎重に歩く。アイゼンを付けている人もいる。荷物が重く、すぐ1枚脱ぐ。天気が悪いことを想定して登攀具も持ってきたのがあだになったか。先ほどのバスで下車した人々を少しずつ抜いていく。この時間に下ってくる人もいる。3連休を避けるとはうらやましい。尾根に出たところ、八方台の分岐で一休み。他のパーティーもけっこう休んでいる。人が多くて、視界には常に人がいる。前に来たときはほとんど人がいなかったので、この差は驚きだ。

 なだらかな尾根伝いの道を行く。途中、谷に下りるが、谷も緩く、水も流れていない。今朝降った雨らしい水が林の中から落ちてきて冷たい。S君は途中からカッパのフードをかぶっていた。くもりだった天気は段々ガスがかってくる。左手の樹間に中山の縞枯れが見えるが、ガスでよく見えない。1時間歩いたし、そろそろ一休みしようかと思っていると黒百合ヒュッテに着いてしまった。

黒百合ヒュッテ
3/19 トレースはしっかりある。時々樹雨が落ちてきて冷たい。
黒百合ヒュッテ
3/19 黒百合ヒュッテで幕営。道に沿ってテント村になっていた。

 拍子抜けしたが、とりあえず今日の目的地に着いたので幕営する。雨に降られなくてよかった。テント場は中山峠へ向かう道の両側にあり、緑のロープを越えない範囲のようだ。昨日か今朝降った雪で幕場の跡は判然としない。スコップで掘りあげてならす。気温は高く、素手でスコップを握っても寒くない。割に綺麗に整地してテントを張った。小屋に登録に行くと1人1000円となかなか高価であった。トイレが使えるが、流水はない。水を買うか雪を溶かすしかないそうだ。行者小屋やオーレン小屋は水が流れているので、どこかに水があるのかと思っていた。テントの見えるところにつけてくれと言われた金属の番号札をもらって帰る。小屋玄関の気温は3.5°Cくらいだった。私たちがついたときには1張テントが張ってあったが、続々と人が現れ、あっという間に10張り以上のテント村になった。黒百合ヒュッテがこんなにメジャーな場所だと知らなかった。

 時間があったのでS君に天気図をとってもらったり、ストーブを点火させたりしながら過ごす。ガソリンストーブなどを置く板を持っていなかったので、100円ショップで買った柔らかいまな板を使うと支障なかった。下敷きは熱のある鍋を置くとひん曲がってダメだった。夜は鍋を食べるが、あまり食欲が進まなかった。S君は歩く途中に降ってきた大粒の樹雨で頭を冷やしたと言ってワインを飲まなかった。外はガスに覆われていた。ラジオによると明日の長野県中部はくもりの予報だし、山はガスだろう。段々眠くなり、19:20に就寝する。

2日目

2016年3月20日(日) 快晴

黒百合ヒュッテ…中山峠…東天狗岳…西天狗岳…東天狗岳…天狗の奥庭…黒百合ヒュッテ…渋の湯=茅野

コースタイム
黒百合ヒュッテ3:00起床
5:25
東天狗岳6:14
6:22
西天狗岳6:38
西天狗岳の東6:45
7:18
黒百合ヒュッテ8:05
9:06
渋の湯10:10
11:35

 2時頃から寒くてカッパを着る。3時に起床する。外は満天の星だが、どうせ日が昇る頃にはガスが出てくるのだろう、と悪い方に考える。ラーメンを食べる。まわりは4時を回ってもあまり動きがない。隣のツェルトの単独行氏が私たちより先にテントをたたんでいたが、出発は私たちの方が先だった。明るくなる5:25に出発する。黒百合ヒュッテを出発するパーティーで私たちが一番だったが、この時間で一番乗りというのも山ではずいぶん珍しい。

天狗岳
3/20 中山峠から少し登ると樹林帯を抜ける。左が東天狗岳、右が西天狗岳。
天狗岳
3/20 キックステップで斜面を登る。まだアイゼンは付けていない。

 歩き始めてすぐ中山峠。天狗岳へ向かうと崖の上にすっくと立つ天狗岳がかっこいい。樹林帯を抜けると天気は晴れだった。東側に雲から朝日が伸びているのがわかる。今日は昼までくもりだと思っていたのに晴れであった。平らなところでトレースを見失うが、すぐ続きを見つけられた。急斜面をキックステップで登ると岩峰が見えてきて、スリバチ池経由の道と合流する。岩峰を右から巻いていると、大学山岳部っぽい8人くらいのパーティーが過ぎていった。蓑冠山付近で泊まったとか。

東天狗岳
3/20 ヒマラヤひだみたいな雪壁の横を通る。
東天狗岳
3/20 東天狗岳にて硫黄岳、赤岳を背景に私。

 しばらくで東天狗岳に着いた。北は蓼科山、南は赤岳、阿弥陀岳に南アルプスも見える。予想を裏切り八ヶ岳は快晴だった。記念撮影をしてから西天狗岳へ向かう。一部れきの出た斜面を下る。凍っているところもあり、慎重に下る。鞍部から南寄りのクラストした斜面を選んで登る。日が当たり暖かい。西天狗岳の山頂は雪に覆われ、標柱の頭が見えるだけだった。弱い西風が吹くので、東側に少し下ったところで休む。

東天狗岳
3/20 東天狗岳から下り、西天狗岳へ向かう東天狗岳。少し急な道。
東天狗岳
3/20 東天狗岳から西天狗岳へ向かう稜線は雪山らしい。
西天狗岳
3/20 西天狗岳の山頂には標柱が1つ頭だけ出ていた。
西天狗岳
3/20 西天狗岳の東斜面は風が当たらなかったので大休止した。ここでアイゼンを履く。

 日が照っているためか、暖かく、のんびりと休む。黒百合ヒュッテで隣に泊まっていたと思しきツェルト単独行氏が東天狗岳を越えて南へ向かっていった。ああ、こんなに晴れてトレースもあるなら、登攀具なんか持たずに硫黄岳まで縦走すればよかった、と後悔するが、今更どうしようもない。時刻はまだ7時だが、天狗岳を登るという目的は達したのであとは帰るだけだ。下りなのでアイゼンを履き、ピッケルを出す。

西天狗岳
3/20 西天狗岳の下り。アイゼンをきかせながら下る。
天狗の奥庭分岐
3/20 来た道を戻るのもつまらないので天狗の奥庭経由で下る。
東天狗岳
3/20 振り返ると東天狗岳のスカイラインに登山者の列が見えた。
天狗の奥庭
3/20 天狗の奥庭から振り返ると天狗岳が大きい。

 せめて同じ道を下るのはつまらないので、天狗の奥庭経由で下る。トレースがあるが、歩いている人は2人と少なかった。対して中山峠経由の道は何人ものパーティーが登っているのがよく見えた。雪山経験の少ない人を連れてアタックするパーティーが多いように見えた。スリバチ池をぐるりと巻くようにして黒百合ヒュッテに戻ってきた。

スリバチ池
3/20 スリバチ池らしき氷。
黒百合ヒュッテ
3/20 黒百合ヒュッテに戻ってきた。

 テントをたたんでいると暑い。Tシャツ1枚でちょうどいいくらいだ。下り始めると次々と登ってくる。3連休2日目という中途半端なタイミングだが、バスが着いたためか人が切れることがない。渋の湯に着くと10:10とバスまで1時間半もあったので、1000円払って風呂に入った。風呂の雰囲気はよかったが、シャンプーが見当たらなかったこととコインロッカーが壊れていたことがイマイチであった。11:35のバスも正規便+増発便の2台体制でやってきた。上高地みたいに手垢のついた登山口だと思い知らされた。

 帰りのバスはぐっすり寝て、茅野で蕎麦を食べる。小淵沢まで残ったワインを飲み、高尾、八王子で乗り換えて帰った。

おわりに

 土曜日は雨、日曜日は昼くらいまでくもりと思っていたが、実際は土曜日くもり、日曜日晴れ、といい天気であった。

 人が多いのが意外で、黒百合ヒュッテから1時間で登れてしまったのが拍子抜けであった。晴れの3連休をこんな山で使っていいのかな、ともったいない気持ちが残っている。一言で言えば不完全燃焼であった。

(2016年3月21日記す)


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