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2015年夏 - 北信・戸隠山


2015年8月15日(土)
場所
長野県長野市(旧・上水内郡戸隠村)
ルート
長野駅=奥社バス停…戸隠奥社…八方睨…一不動避難小屋…戸隠キャンプ場=長野駅
参加者
中山(単独)
参考文献
「山と高原地図18 妙高・戸隠」(昭文社,2000)
関連
2023年夏 - 戸隠・高妻山乙妻山

はじめに

 戸隠山は上信地方にそびえる標高1904mの山である。

 戸隠山は、手力雄命が天の岩戸を開いてその戸を空に投げると、それが葦原の中つ国に落ちて山になったという、そんな古い伝説を持っている。

深田久弥「日本百名山」(新潮文庫,1986)P.158

 という伝説を持つ山である。日本百名山には戸隠連山の最高峰という点で高妻山を挙げており、戸隠山そのものは挙げられていない。

 長野に友人が引っ越したので遊びに行くついでに近くの山を登ろうと考えて戸隠山にした。長野を起点に登れる山は千曲川の右岸に志賀高原があるが、東京からだと草津側から行くこともあるのでやめた。一方、妙高、戸隠、黒姫山、飯綱山といった山には行ったことがなかったため、こちら側に行くことにした。初めて行くところなので長野から交通の便がよさそうで、山域を把握するのに良さそうな戸隠山に登ることにした。

 名前の通り、大きな岩山であり、蟻の塔渡りなどの危険箇所がある山である。長野県山岳総合センター作成の「信州 山のグレーディング」によると、難易度が5段階評価上から2番目のD、体力度が10段階評価の下から3番目の3である。難易度Eは大キレット、北穂→前穂縦走の2つだけなので、難しい方のようだ。

 春に開業した北陸新幹線で長野まで行こうかと思ったが、調べると京王バスの戸隠高原フリーきっぷという切符が安い。新宿から長野までの高速バス及び長野から戸隠高原までの路線バスの往復乗車券、戸隠高原、飯綱高原エリアが乗り降り自由で8,700円という破格の値段である。東京〜長野間の北陸新幹線普通車指定席が片道で8,200円なので、だいたい新幹線の片道料金で東京から戸隠高原まで行って帰ってこられる計算だ。夜行バスもあるので朝から山に登りたい客にはうれしい。迷わず戸隠高原フリーきっぷを選び、新宿西口発の夜行バスを予約した。

日帰り

2015年8月15日(土) くもり

長野駅=奥社バス停…戸隠奥社…八方睨…一不動避難小屋…戸隠キャンプ場=長野駅

コースタイム
奥社入口バス停8:10
8:18
戸隠神社奥社8:48
8:54
五十間長屋9:29
八方睨10:05
10:20
戸隠山10:26
九頭龍山10:56
一不動避難小屋11:24
11:41
戸隠キャンプ場バス停12:47
13:23

 23:30新宿西口発の夜行バスに乗り、朝5:00に長野駅前に到着。7:00のバスまで時間が余り、戸隠高原行きの始発が出る長野バスターミナルに行くが、シャッターが閉まっていて建物に入れなかった。駅前のベンチでうつらうつらして過ごす。駅前では夜通し飲んでいたらしい若者が騒いでいた。

 7:00発のバスに乗り、よく寝る。鏡池入口付近で起き、奥社入口で下車。トイレがあったので、トイレを済ませて水を汲む。奥社へ参道を少し入ると、長机に人がいて登山届を出せるようになっていたので、書いて提出すると25,000分の1地形図を基にした地図をもらった。かなり余裕を持った時間が書かれていて、奥社入口バス停からキャンプ場バス停までの今日の行程は7時間35分とかなり長い行程になっていた。観光客に混じって奥社へ向かう。奥社までは高校1年生のクラス旅行で来たことがあるが、全然覚えていない。

戸隠神社奥社
8/15 戸隠神社奥社で登山の無事を祈る。
戸隠神社奥社
8/15 社務所の横から登る。

 奥社でお詣りし、登山の無事を祈る。どこから登るのか探したら社務所の隣から登り道が続いていた。「登山者のみなさまへ」と書かれた看板が目印である。社務所の裏から急登が続く。ところどころ木の根の張り出したところや亀裂の入った岩を登る。ときおり樹間から戸隠山の岩壁が見える。登山者はおらず、静かでよいが少し不安になる。

 やがて鎖場が出てきて登り切ると五十間長屋の看板があった。ここから岩の下をトラバースする。くもりで山の上の方は見えない。トラバースしていたら1人単独行さんが下ってきた。道が合っているということと暑い夏でも人が歩いているという安心感があった。虫が多くてうっとおしい。

戸隠山
8/15 木の根の張り出した道を登る。
五十間長屋
8/15 五十間長屋には看板が置いてある。

 五十間長屋に看板があったので、続く百軒長屋や蟻の塔渡り、剣の刃渡りなどそれぞれ看板が立っていると思ったら特に見当たらない。百軒長屋も五十間長屋の続きだろうと思いながら通り過ぎる。岩屋に小さな社があるのを認めて登ると、急な壁に鎖がついている。壁を直登して右手へ登るようだ。急だが、れき混じりの粘土質の岩で、れきがガバホールドになるのでそう難しくない。でも下りだと怖いだろう。鎖場はずっと続き、ジャングルジムを登っているようで飽きさせない。

百軒長屋
8/15 この辺が百軒長屋だろうか。
鎖場
8/15 鎖場を直登し、さらに右へ登る。
鎖場
8/15 鎖場が付いているところが連続する。
鎖場
8/15 この鎖場を登ると蟻の塔渡りは間近。

 だんだん気が少なくなって稜線に出てきているのがわかる。でも周りもガスになってしまって高度感はあまりない。稜線歩いて船の舳先みたいなところで行き止まる。ガスに巻かれていて道がわからない。稜線沿いに鎖がついているけど、右下に降りる鎖もあって赤ペンキもついているので右側から下って巻くことにする。後で調べると、どうやらこれが蟻の塔渡りらしい。黒戸尾根の刃渡りよりは切れ落ちていた。鎖が続いているのでガスっていても道には迷わないが、緊張するところだ。また稜線に出るとごく狭いところに2人休んでいた。続く剣の刃渡りはどう越えたかよく覚えていないが、ネットで見るような馬乗りにはならなかった。一段低いところにスタンスを求めてトラバースしたんだと思う。たぶん。

蟻の塔渡り
8/15 蟻の塔渡りはガスっていて道が見えないので右へ下った。
蟻の塔渡り
8/15 蟻の塔渡りのトラバース道。
剣の刃渡り
8/15 剣の刃渡り付近。
八方睨
8/15 八方睨の最後の登り。

 核心部を終えると、登りの鎖場に先行パーティーがいるのでザックを下ろして水を飲む。私はまだ蟻の塔渡りと剣の刃渡りを越えていないと思っているので、一息つきながらこりゃ本番は相当危ないな、と考える。先行パーティーが登り切ってから私も取り掛かるとそう難しくなく抜けられた。そしてそこが八方睨だった。そこで初めて蟻の塔渡り、剣の刃渡りを越えていたことに気づく。時間的にも奥社からまだ1時間10分、エアリアマップには1時間50分、登山届を書いたところでもらった地図には2時間40分とあるので、まだまだだと思っていた。拍子抜けして休む。

八方睨
8/15 八方睨は広くないが10人くらいなら休める。
戸隠山
8/15 戸隠山山頂を通過する。

 八方睨には2人パーティーが3つくらい休んでいて、それぞれトレイルランの話などしている。単独行は私だけだったので、パンを食べながら他の人の話に耳を傾けていた。西岳の方がガスがとれて少し見えたが、戸隠山に近いあたりは木も生えていて岩場はなさそうだった。

 縦走して一不動避難小屋へ向かう。しばらく歩いて戸隠山を通過し、樹林帯を下る。神社側が切れ落ちた稜線を歩く。ガスが湧いていて展望はきかない。どうやらみんなバスより早く車で来ているようで、何人かの登山者を追い抜く。一不動避難小屋に着いた。少し休む。

一不動避難小屋
8/15 一不動避難小屋に到着。
不動滝
8/15 一杯清水の下で不動滝の横を下る。

 一不動避難小屋から急な下り。しばらく滑りやすいガレっぽいところを下ると一杯清水、その下が不動滝。鎖を伝って降りるとそのままトラバースになっていた。何度か水の流れる沢の中の道を歩き、一枚岩の滑滝を左岸に付けられた鎖で下り、そのあとは沢を渡りかえしながら歩く。やがて樹林帯に入ると道は平らになり、森林管理署の新しい谷止工を見つけると右岸に渡り、戸隠牧場の中に入る。牛の糞の散らばる牧場を下り、木がまばらなので振り向いて戸隠山を探すが、やっぱり雲の中だった。オートキャンプで混雑する戸隠キャンプ場を通過し、戸隠キャンプ場バス停に着いた。奥社バス停から歩き始めて4時間半の行程であった。牧場に下りてから靴のかかとがはがれかけてどうも歩きにくかった。

不動滝
8/15 不動滝の下で鎖場のトラバース。
滑滝
8/15 滑滝を下る。
沢沿いの道
8/15 沢沿いの道を下る。
戸隠牧場
8/15 戸隠牧場から振り返るが戸隠山は見えなかった。

 戸隠高原フリーきっぷで中社バス停で下車し、そばを食べて中社に登山の無事を感謝しに行った。中社付近は車もそば屋も混んでいて辟易した。始発のバスに乗車。途中下車して善光寺参りして長野駅に出た。

おわりに

 北信の山に初めて登ったが、なかなか登りごたえのある山であった。ガスがなければもっと高度感があってスリルがあるのだろうが、ガスがあったのであんまり恐怖を感じなかった。また、調べ不足でどこが蟻の塔渡りと剣の刃渡りかわからず通過してしまった。調べていればもう少しありがたがって稜線沿いをチャレンジしたかもしれない。それが少し残念である。

(2015年8月17日記す)


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