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2011年春 - 奥秩父・笛吹川東沢鶏冠谷右俣


2011年7月2日(土)〜3日(日)
場所
山梨県山梨市(旧東山梨郡三富村)
ルート
7月2日
立川=西沢渓谷駐車場…鶏冠谷出合…鶏冠谷二俣(泊)
7月3日
鶏冠谷二俣…40m大滝手前…戸渡尾根2050m付近…徳ちゃん新道…西沢渓谷駐車場=立川駅
参加者
H、K、Y、中山、I
参考文献

はじめに

 鶏冠谷は笛吹川東沢の支流の一つである。鶏冠尾根と戸渡尾根に挟まれた谷で、源流は木賊山である。「奥秩父・両神の谷100ルート」では中級、「関東周辺の沢」では2級となっている。

 11年前、大学1年のときにヌク沢を登り、この鶏冠谷右俣を下った。そのときは1日で下りきることができず、月曜日の朝に東沢に出たという苦い思い出がある。そのときは天気も雨で私も1年生だったこともあり、つらかった。

 今回は登りで、下りとは異なった歩き方となったが、ナメも多く楽しかった。

1日目

2011年7月2日(土) くもり

立川=西沢渓谷駐車場…鶏冠谷出合…鶏冠谷二俣(泊)

コースタイム
西沢渓谷駐車場8:55
9:16
鶏冠谷出合9:50
10:11
飯盛沢出合11:01
11:20
鶏冠谷二俣12:33
19:30就寝

 朝7時に 立川駅集合。Yさんの車で西沢渓谷へ向かう。途中、八王子JCTのあたりで本降りの雨に降られ、天候が不安になる。西沢渓谷の駐車場につくとくもりで、駐車場は1/3ほどしか埋まっていなかった。歩く準備をして出発。

 登山道を歩き、東沢にかかる吊り橋を渡る。前からあった「警告 東沢渓谷は登山道がありません」の看板と別に新しく「鶏冠山登山道」と書かれた看板がついていた。道なりに東沢に下り、渡渉するところで沢タビを履く。私たちの前を歩いていた8人パーティーは沢の装備になっていたため、そのまま渡渉し上流へ渡っていった。日帰りの装備だったが、東沢で遊んで帰ってくるのだろうか。

鶏冠谷出合
7/2 看板の打ち付けられた鶏冠谷出合。
鶏冠谷出合
7/2 鶏冠谷出合から見る鶏冠谷は暗い。

 河原を少し歩くと鶏冠谷出合。木に「鶏冠山入口 とさか谷出合」という看板と半分割れた「〜谷出合」という看板が打ち付けられている。出合から見る鶏冠谷は薄暗くあまりよさそうな谷には見えない。入渓してすぐ左に鶏冠山への登山道を分ける。前にはなかったロープがぶら下がっていた。

 入渓してしばらくはゴルジュが続く。1mほどの小さな滝が続き、樋状の滝を水線沿いに挑戦したが上部が登れず、右から登った。

樋状の滝
7/2 樋状の滝。水線沿いに登れず右から登る。
10m魚留ノ滝
7/2 10m魚留ノ滝。右から巻く。

 やがて10m魚留ノ滝。幅の広い滝で、左側は水が吹き上がっている。右側の凹角を登るらしいが、上部が一枚岩で登れなさそうだ。右手から巻く。巻きも道は明瞭だが、登り口と沢に降りるところが岩場で歩きにくかった。

魚留ノ滝巻き
7/2 魚留ノ滝の巻き終わり。沢に戻る。
飯盛沢出合
7/2 飯盛沢出合。真ん中の岩が夫婦岩だと思う。

 右岸、左岸にザレ場を認めながら登ると飯盛沢出合。真ん中に夫婦岩がある。少し上がった平地で一休み。釣り人が2人竿を出しながら遡行していた。すでにイワナか何か釣り上げていた。都庁山岳部と言うと40年も昔の北岳の事故の話しをしてきて、Yさん以外誰も知らなかった。昔は山をやっていたのだろう。その後、出発してすぐ、釣り人を追い抜いたが、私が先行し、ちょっと後続を待っている間にまた1匹釣り上げていた。あんな簡単に魚が釣れるとは、相当慣れた人なのだろう。

釣り人
7/2 釣り人。このすぐ後に魚を釣り上げていた。
小滝
7/2 小滝を登っていく。

 2段4mほどの滝を越えるとしばらくナメが続く。5mほどの二条滝の向こうに白い一枚岩が見え、それが奥ノ飯盛沢であった。奥ノ飯盛沢出合の右には3段12mのナメ滝(関東周辺の沢)/15m5段ナメ滝(奥秩父・両神の谷100ルート)がかかっている。ガイドブックには特に右からとも左からとも書いていないので、私は左のルンゼから登った。少々ヌメっていて危なかったが、上部でトラバースできた。どうやら右から登るのが正解のようだ。

ナメ
7/2 少々荒れたナメを行く。
二条滝
7/2 二条滝の先の白い岩が奥ノ飯盛沢。
3段12mのナメ滝(関東周辺の沢)/15m5段ナメ滝(奥秩父・両神の谷100ルート)
7/2 奥ノ飯盛沢出合にかかる3段12mのナメ滝(関東周辺の沢)/15m5段ナメ滝(奥秩父・両神の谷100ルート)。右から。
20m逆くの字滝
7/2 20m逆くの字滝の中間部の樋状を登る私。

 3段12m滝の上は20m逆くの字滝。関東周辺の沢でも、奥秩父・両神の谷100ルートでも、この鶏冠谷の核心部らしい。全体として傾斜はゆるく、下部のナメ、中間部の樋、上部のスラブと分けられる。私がザイル付けてトップ。下部のナメはフリクションで登れる。中間部の樋に乗っかるところが、乗っかると戻れないという点で不安になるが、乗っかってしまう。ていねいに岩角を拾いながら樋を登ると「く」の字の屈曲点。残置シュリンゲが3本ぶら下がっていて、これらにランニングビレイをとる。その上がなんとも登れず迷うが、右手でシュリンゲの1本をつかみながら左側へ手をのばし、逆手でつかめるところを見つけてはいあがった。

20m逆くの字滝
7/2 20m逆くの字滝で後続のHさんをビレイする私。
小滝
7/2 腰までつかって滝を登るIさん。

 登りきって大きな岩にシュリンゲを回して支点とし、後続をビレイした。けっこうみんなスイスイ登ってきて時間かけて登ったのが何だか恥ずかしい気もした。なお、この滝の左手に残置ザイルがぶら下がっていたが、調べに行ったYさんいわく、その先続いてなかったそうだ。この滝の下に立ったとき、11年前に下りきれずビバークしたところと分かった。よくまあ、あんなところに泊まったものだ。

 しばらくゴルジュに小滝をかけて続く。1m足らずの小滝は手前に腰ほどの深さの淵をひかえており、私とIさんは水線沿いにたどってずぶ濡れになった。他の3人は右手の枯れ葉の積もったスラブを登っていたが、滑りそうだった。2mから5m程度の小滝を重ねながら登るが難しいところはない。

小滝
7/2 5mほどの滝。左からでも右の水流沿いからでも登れる。
幕営
7/2 鶏冠谷二俣の左俣に入ったところで幕営。

 やがて平ナメに出るので、そこですべり台を楽しんだ。その上で鶏冠谷二俣。間に日差しのある平たい大岩があり、その上で休む。その先のようすを見に行ったHさんが左股に入ったところで幕営適地を見つける。この先、地形図上では傾斜が急なので、幕営地は見当たらないかもしれない。そこに幕営する。

 岩の上で少し斜めだが、寝るだけなら問題なさそうだ。テントを張って外で焚き火とご飯の用意をする。左俣の沢の脇なのだが、岩が傾いていて気を抜くとよく滑る。晩ご飯はマーボー茄子。焚き火と酒を楽しんでいたが、私たち外に遡行者は現れなかった。今日は釣り人2人しか見ていない。片付けをはじめた19時頃から大粒の雨が降る。テントに避難し、19:30就寝。

2日目

2011年7月3日(日) くもり

鶏冠谷二俣…40m大滝手前…戸渡尾根2050m付近…徳ちゃん新道…西沢渓谷駐車場=立川駅

コースタイム
鶏冠谷二俣4:10起床
6:00
鶏冠谷1650m7:11
7:28
鶏冠谷40m大滝下8:00
8:10
戸渡尾根2050m9:12
9:50
戸渡尾根1869m標高点10:15
西沢山荘11:20
西沢渓谷駐車場11:40
12:00

 寝はじめは雨が降っていたが、夜中起きると雨は止んでいた。

 薄暗い4:10に起き、外に出て朝飯の準備。少し寒いのでジャージの上を着た。朝はラーメンを作る。だいぶ食べて腹一杯になった。6時に出発。

 登るのは右俣だが、25m滝は登れず、左俣との間の小尾根を登る。朝一の急な登りで体にこたえる。滝の落ち口に下るが、斜面がずるずるしていて下りにくい。木の根っこをつかみながら下りた。

小尾根
7/3 右俣25m滝を巻くため、左俣から小尾根を登る。
5m滝
7/3 5m滝。倒木を使いながら右から登る。

 登り始めるとゴルジュで、ゴルジュの中に5mほどの滝がかかっている。左はハングしていて無理、登るなら右からだが、一枚岩でつかむところがなさそうだ。ひっかかっている大木を使えれば登れるだろうか。巻こうとして私が右手のルンゼを登る。これもグズグズで悪い。そのうち後ろからKさんが登ったとの声が聞こえた。しかたなく、グズグズのルンゼをそっと下った。

 5mほどの滝はやはり右側から登るようだ。左手で大木につっぱりながら右手を逆手にして岩の隙間をつかんで登る。Hさんが苦戦していた。私も難しそうだなと思ってみていたが、登ってみると大木のおかげで難なく登れた。

30m滝
7/3 30m滝は左のバンドから巻く。
ナメ
7/3 30m滝の後はナメが多い。

 その先で30m滝の高巻き。左のバンドを登る。小さく巻こうとすればトレースは見える。途中、便意に襲われ、不安定ながらも用を足していった。

 30m滝の上はナメ滝が続く。各自好きなところを登る。難しいところはない。途中、1650mくらいのところで一休み。話を聞くとみんなゆるい便が出るようだ。何が原因かと話してたぶん7月5日賞味期限のキムチの乳酸菌だろうという結論に至った。

ナメ
7/3 ナメ。
ナメ
7/3 ナメ。
ナメ滝
7/3 ナメ滝。
ナメ
7/3 1780mの二俣で稜線が見える。

 その後もナメがえんえんと続く。1780mの二俣で正面が開けて稜線が見える。木賊山の右肩あたりだろうか。のんびりナメを楽しみながら歩いて行くと標高1860m付近で右手に枝沢が入る。本流は左に曲がっており、のぞくと40m大滝がかかっていた。

大滝下
7/3 大滝下の二俣。
大滝
7/3 大滝。右から巻く。

 その下で相談し、大滝を右から越えることにする。しかし、巻き道が見つけられず、先程の枝沢との間の小尾根に乗っかる。大滝に戻るのも遠いので、小尾根から枝沢に下り、水を汲んで登る。途中でザレてきて登れなくなり、左の尾根を登る。シャクナゲのヤブを越えると針葉樹林帯に入り、ヤブがなくなる。なだらかな斜面なので右へ右へトラバースし、沢を離れて30分で戸渡尾根2050m付近に出た。

大滝
7/3 大滝から右手の小尾根に上がる。
枝沢
7/3 枝沢に下り、これを登る。

 戸渡尾根に出て沢タビを運動靴に履き替える。休んでいる間はガスっていたが、下り始めるころにはガスがとれた。休んでいる間は単独の登山者が2人、下りの3人組が1組下っていった。

トラバース
7/3 斜面がなだらかなので登らず、右へ右へトラバース。
登山道
7/3 戸渡尾根の登山道へ出る。

 けっこう急な尾根を徳ちゃん新道経由で下る。下りきると下は暑かった。日陰を選びながら駐車場へ戻った。西沢渓谷へ歩く人がまばらに歩いており、若者と子供連れが多く、意外と中高年が少なかった。いつの間にやらIさんが鹿の角を拾っていた。

 帰りは笛吹の湯500円に入り、立川で解散した。

おわりに

 上流部はナメが多く、なかなか楽しかった。核心部のくの字滝も圧倒されるような大きな滝ではなく、ていねいに登ればそんなに難しくない。11年前は雨も降って1日で下れずビバークしたのであんまりいい思い出はないのだが、沢自体は奥秩父らしい苔と針葉樹林とナメとゴルジュのひと通りそろったよい沢である。

 人気はあると思うのだが、釣り人2人しか見ることがなかった。前夜発で来て日帰りで登りきってしまう人が多いのかもしれない。1泊2日なら余裕を持って行けるが、日帰りだと忙しいかもしれない。幕営地は私たちが泊まった二俣のほか、右俣30m滝の高巻きの後、探せばあるかもしれない。


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