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2011年秋 - 帝釈山脈・帝釈山〜田代山


2011年10月29日(土)〜10月30日(金)
場所
栃木県日光市(旧塩谷郡栗山村)、福島県南会津郡檜枝岐村、南会津町(旧舘岩村)
ルート
10月29日
浅草=会津高原尾瀬口=檜枝岐上の原バス停…馬坂峠…帝釈山…田代山避難小屋(泊)
10月30日
田代山避難小屋…1810m峰…1750m峰(三本尾根)…東大窪峠=湯西川温泉駅
参加者
中山(単独)
参考文献

はじめに

 前回、黒岩山から田代山までの縦走を計画したが、寒冷前線の通過でシュラフが濡れ、馬坂峠で檜枝岐へ下山してしまった(ref. 2011年秋 - 帝釈山脈・黒岩山〜馬坂峠)。

 今回、その歩き残しの帝釈山〜田代山を歩くことにした。前回の記録でも書いたが、歩き残した帝釈山〜田代山〜田代山林道の峠をどうやってアプローチするかが悩みどころである。ルートは大したことないが、入山も下山も林道が長すぎる。いろいろ考えたが、結局、檜枝岐から入り、湯西川温泉へ下るルートに決めた。

 目的としては馬坂峠〜帝釈山〜田代山〜東大窪峠の県境縦走と、次の枯木山縦走のアプローチ検討のための田代山林道〜湯西川温泉の登山道踏査である。結局、前者は達成したが、後者は廃道と判断し登山道をたどらずヒッチハイクして湯西川温泉駅へ下った。

1日目

2011年10月29日(土) 快晴

浅草=会津高原尾瀬口=檜枝岐上の原バス停…馬坂峠…帝釈山…田代山避難小屋(泊)

コースタイム
檜枝岐上の原バス停10:47
10:49
舟岐川林道1365m付近12:40
12:48
遊山清水13:48
13:52
馬坂峠13:56
14:00
帝釈山14:35
14:52
田代山避難小屋15:36
15:40
県境廃道分岐15:52
田代山避難小屋16:46
18:30就寝

 浅草6:20発快速会津田島行きに乗車し、南会津へ向かう。3時間眠り続け、会津高原尾瀬口駅で下車。檜枝岐経由尾瀬御池行きのバスには8名の登山者が乗っていた。うち5名が会津駒ケ岳の登山口で降りていった。上の原バス停で降りたのは私だけであった。

 時間は11時近くと入山はかなり遅い。また、こりもせず舟岐川林道を馬坂峠まで登っていく。登りの車が来て乗っけていってもらえないか、馬坂峠まで行ければ今日中に田代山を越えて先まで行けるなと、取らぬ狸の皮算用をはじく。しかし、車は下りばかり7台。登りはバイクが10台ほど。いつまで待っても登りの車は来ない。私の企みを見すかされたかのようであった。結局馬坂峠まで歩いてしまった。

遊山清水
10/29 舟岐川林道の脇に流れる遊山清水。馬坂峠から5分ほど。
馬坂峠
10/29 馬坂峠。奥は建築中のトイレ。

 馬坂峠手前の遊山清水で水を5リットル汲む。遊山清水の脇には近く降ったらしい雪がわずかに残っていた。遊山清水から5分ほどで馬坂峠へ到着。峠には1ヶ月前は基礎だけだったトイレがそれなりの形に組み上がっていた。駐車している車も工事車両と別に6台ほど停まっている。帝釈山を往復しているのだろうか、台倉高山を往復しているのだろうか。

 帝釈山へ登る。けっこうな急登で整備された階段も多い。息が切れぬようゆっくり歩く。コメツガやダケカンバなど木には看板が掲げられていた。時間も遅いので下りの人が来るかと思ったが、登山者は下りてこない。静かな山を1人歩く。

帝釈山
10/29 帝釈山の登り。階段が多い。
帝釈山
10/29 帝釈山で記念撮影。

 傾斜が緩やかになって樹林を抜けると帝釈山山頂に到着。山頂は展望があり、台倉高山、会津駒ケ岳が見えた。しかし、遠くの燧ヶ岳、黒岩山、日光白根山の自信がない。今回の山行での最高点なので記念撮影をしたいが、人がいないのでザックにカメラを置き、タイマーで撮影した。

帝釈山
10/29 帝釈山の下り。岩が出ている。
田代山
10/29 帝釈山の下りから見た田代山(中央奥)。

 田代山へ向かう。露岩が多く、ロープが垂れているところもあり、下りにくい。向かう田代山はたおやかな稜線が続いているが、田代山の湿原は見えない。広い稜線をぐにゃぐにゃ曲がりながら道が続く。途中で涸れ沢もあったが、水はたまり水程度であった。途中で単独行2人に会った。空身で馬坂峠あるいは猿倉登山口から往復しているようだ。

 緩やかな登りの後、田代山の最高点に出る。森の中に田代山避難小屋(弘法大師堂)があった。湿地のほとりにあるのかと思っていた。でも湿地には建物が建てられないのだろう。小屋の前は木が切られていてどうやら新しいトイレを造るようだ。古いトイレは小屋の離れにあり、和式の汲み取り式が2つあった。

田代山避難小屋
10/29 田代山最高点に建つ田代山避難小屋。
田代山避難小屋
10/29 田代山避難小屋の中。お坊さんの像が3体置いてある。

 時間も16時近いし、立派な小屋には他に宿泊者もいないのでここに泊まることにする。3人並んだお坊さんに手をあわせて今日泊めてくださいと念じる。明日の廃道の確認と、天気図を書きたいのとで、防寒着を着て天気図用紙を持ち、湿地帯へ偵察に出かける。

 小屋から少しで湿地帯に出る。湿地帯が広がっていた。木道が1周しており、反時計回りに回るようだ。廃道に近い方から回りたいので反時計回りに回る。湿地は大きく上部と下部に分かれており、しばらく下ると下部の湿地に出る。下部の湿地のほうが弘法沼もあり広い。

田代山
10/29 田代山の湿原に出たところ。
廃道
10/29 廃道入口。トラロープで塞がれている。

 下部の湿地の小田代に下る三叉路のすぐ近くに県境稜線への廃道の入口があった。アルペンガイドには以下のように書かれている。

 湿原に延びる木道を行くと、すぐ左に木道が分かれる。この木道は湯西川温泉に通じるが、荒廃しているようだ。この木道を進んで湿原の端まで行くと7月下旬、ニッコウキスゲの小群落が見られる。

「アルペンガイド4 尾瀬」(山と渓谷社,1996)P.124

 廃道はていねいにトラロープで道がふさいである。ロープをまたいで先を行くと小さな湿地を過ぎ、田代山南面の崖の上に出た。ガレた箇所をトラバースし、笹ヤブに入る。やがて道ははっきりしなくなる。笹の高さは胸くらいであり、次の1810m峰も見えるのでそんなに難しくなさそうだ。

廃道
10/29 廃道。ガレを伝ってトラバースするようだ。
1810m峰
10/29 明日行く1810m峰を望む。

 引き返して木道の途中で天気図を書く。高気圧が近づいているようで、明日も晴れそうだ。日も暮れて薄暗くなる。引き返して振り返ると東の空が赤みを帯びていた。夕焼けの照り返しだろうか。湿地の水は流れておらず飲み水には適さなさそうだ。

廃道
10/29 廃道はしばらく歩くと笹ヤブに消えていた。
弘法沼
10/29 弘法沼。

 小屋に戻ってご飯にする。ご飯はカレーライス。しかし、足りないので、余計に持ってきたインスタントラーメンも食べた。満足し、小屋に置いてあったノートを読む。夏季に訪れる人が多いようだ。車だと歩きも短いからか子どもの書き込みも多い。でもここから県境をたどるという人は見当たらなかった。せっかくなので3行ほど書き込んでおく。小屋を管理している人がいて、5月から11月第1週くらいまでノートが置いてあるようだ。

 寝支度がすんでトイレに出る。何となく湿原まで出てみるとそこには見事な星空が広がっていた。山頂の湿原に灯りはなく、まわりに遮るものはない。天体観測には最高にいい場所だ。ちょうど頭の上に天の川が流れていた。その美しさに見とれる。コンパクトデジカメしか持って来なかったので、星空は写せなかったが、しばし立ち尽くしていた。

 小屋に戻り、シュラフにもぐった。夜は寒く、夜中にカッパを着た。

2日目

2011年10月30日(日) くもり

田代山避難小屋…1810m峰…1750m峰(三本尾根)…東大窪峠=湯西川温泉駅

コースタイム
田代山避難小屋4:00起床
5:03
1770m鞍部6:05
1810m標高点6:30
1677m鞍部7:48
1750m標高点8:17
東大窪峠
(田代山林道県境峠)
9:00
9:25
猿倉登山口9:55
10:00
田代山林道福島側1250m付近
(ヒッチハイク)
10:32
黒部バス停11:34
湯西川温泉駅12:00
13:15

 4:00起床。ドアを開けるとまだ真っ暗だったが、星空であった。朝飯にインスタントラーメンを食べる。

 5:03出発。外はまだ暗い。湿原の木道に出るとさきほどと変わって空はすっかりくもりで、ずっと遠くが水平線に沿って赤く光っている。朝焼けのようだ。暗い中、木道を踏み外さないように歩く。やがて県境の廃道の分岐に出る。トラロープをまたいで廃道に入る。昨日偵察した踏み跡をたどる。向かう稜線がうっすらシルエットで見える。はじめはトラバース道だが、すぐに背丈を越える笹ヤブの中で道がわからなくなってしまう。次の1810m峰に下る尾根を模索しながら斜めに下る。

田代山
10/30 田代山から下りついた鞍部。
廃道
10/30 丸太が切られた跡。道の跡だろうか。

 歩き始めてすぐ暑くなる。カッパを着ていたが、脱いでしまう。田代山からの下りは急で、下ってよいものか迷う所が多い。尾根もはっきりせず迷いながら下る。結局小屋を出発してから鞍部までの下りで1時間かかってしまった。しかも若干馬坂沢よりに出てしまったので、寝ている笹を倒しながらトラバースして戻った。下りだから多少ヤブが濃くても問題ないだろうと思っていたが、予想以上に時間がかかってしまった。

1810m峰
10/30 1810m峰付近の笹ヤブ。
1750m峰
10/30 1810m峰の先から見た1750m峰。笹が邪魔でどこから下るか分からない。

 1810m標高点の登りになる。何となくヤブの薄い踏み跡がところどころにある。倒木を切って通りやすいようにしたように見えるところもあった。1810m標高点からは稜線の凸凹が少なく、現在地が分かりにくい。しかも続く稜線が目視で確認しにくく、1677m鞍部への下り点が見つけにくい。2度、早まってオクラ沢側に下ってしまう。背丈の高さの笹ヤブを漕いで稜線に戻るのはかなり苦しい。3度目もやはり早く、斜めトラバースで何とか目的の稜線を下った。

岩峰
10/30 1677m鞍部手前の岩峰。
1677m鞍部
10/30 1677m鞍部付近は笹に覆われていた。

 下りついて1677m鞍部手前のピークは岩峰になっている。シャクナゲも出てきて西上州のような雰囲気である。岩峰を越えて1677m鞍部。「日水のオレンジジュース」という古い空き缶が落ちていた。赤テープすらないこの県境稜線で唯一確実な人跡はこれだけであった。

空缶
10/30 日水のオレンジジュースという空き缶が落ちていた。
1750m峰
10/30 1750m峰。笹ヤブ。

 じわじわ登って1750m峰。上野信弥「関東ぐるり一周山歩き」ではこの峰を「三本尾根」と呼んでいるようだ。地形図の登山道はここから県境を離れ、南へ日暮峠へ向かっているが、現地には道もなく、指導標もない。ここまで来ればあとは林道まで下るだけなので、楽ちんだと思ったが、笹ヤブと潅木のミックスのヤブで手強い。すぐ下に林道が見えるのに、ジャングルジムの中に囚われているかのようだ。

県境稜線
10/30 1750m峰からの県境稜線。右手に田代山林道が見える。
東大窪峠
10/30 田代山林道の通る東大窪峠に下り着く。

 遠く、田代山林道が県境を越える東大窪峠に車が停まっているのが見え、ヒッチハイクしようと試みるが、体はヤブにとらわれ全然進まない。靴の靴紐もすぐほどけてしまい、紐をかけるフックに笹ヤブがひっかかって転倒しそうになる。東大窪峠にたどりついたときには、見えていた車も福島県側に下ってしまっていた。

 この東大窪峠という名前は越後宏治編「日本山岳地図集成 第1集」によるものだが、他の資料にはこの名前は見当たらない。古い林道なので峠の名前くらいあってもよさそうなのだが。

 さて、予定は田代山林道を南へ下り、途中で尾根沿いの登山道を下って湯西川温泉へ下山するはずだが、田代山からここまでの道の様子を見るかぎり、この登山道も完全に廃道だろう。たどったところで湯西川温泉に到着するのは相当遅くになる。となると県境をたどるという目的はもう達成したわけで、あとはいかにして東京に帰るかである。この場所は福島側へ下っても湯の花温泉まで遠い上、バスも少ない。栃木側へ下っても土呂部まで相当遠いし、こちらもバスが少ない。ヒッチハイクがもっとも早く下る方法である。

 東大窪峠でしばらく休む。車が2台、栃木側から福島側へ県境を越えていったが、県境で停まらずさっさと福島側へ下っていった。走ってる車を停めるのはなんとなく気が引ける。どちらかというとバス停が近い福島側へ下る。バイクがたくさん通りすぎる。みんなROAD OF ADVENTURE MINAMI AIZU 2011という文字の書かれた番号をバイク前面のガラスに貼り付けていた。猿倉登山口で話を聞くとオリエンテーリングのような形式の大会で100台くらいのバイクが参加しているらしい。その後、さらに湯の花温泉へ下っていく途中、走っていた車に手を挙げて停まってもらい、栃木側へ乗っけて行ってもらうことにした。この車も先の大会に参加していて、距離程と分岐での進行方向のかかれた地図を持って道を探していた。

 後部の荷物と一緒で狭かったが、歩くよりは100倍楽だ。延々と乗っけて行ってもらい、湯西川温泉駅で降ろしてもらった。結果的にだいぶ早く下山することができた。湯西川温泉駅には温泉が併設されており、ゆっくり風呂に入ってからそばを食べ、列車に乗ることができた。13:15発の区間快速浅草行きに乗り、帰京した。

おわりに

 歩いた県境は短いが、けっこう苦戦した。休みなし4時間ヤブ漕ぎ続け、でも3kmくらいしか進まなかった。雨は降らず、笹も露に濡れておらず、ドライではあった。

 明瞭な稜線ではあるが、田代山の下りや1810m峰の下りなど、急に下るところがあり稜線のどこから下るか分からないところがある。田代山の下りが急である点、1677m鞍部西の岩峰の通過、全体に田代山からの方が下りである点など、田代山からたどる方が有利だと思う。


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