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2011年夏 - 奥秩父・笛吹川久渡沢ナメラ沢


2011年8月20日(土)〜8月21日(日)
場所
山梨県山梨市(旧東山梨郡三富村)
ルート
8月20日
府中本町=道の駅みとみ…沓切沢橋…ナメラ沢左俣…西破風山…破不山避難小屋(泊)
8月21日
破不山避難小屋…ヌク沢二俣…鶏冠山林道東線…道の駅みとみ=花かげの湯=府中本町
参加者
K、H、I、中山
参考文献

はじめに

 ナメラ沢は笛吹川支流の久渡沢の支流。甲武信ヶ岳と雁坂峠の間の破風山が源にあたる。名前の通り、ナメが続く沢として有名である。難しい滝もなく、上に挙げたガイドブックにも初級ないし1級と評価されている。ただ「東京周辺の沢」「東京起点沢登りルート120」では「地獄のツメ」ともあり、ツメの長さ、標高差は大きい。

 私はナメラ沢は初めてだが、以前秩父側の大荒川谷を遡行し、稜線を越えてナメラ沢を下ろうとしたことがあった。そのときは大荒川谷の左俣をツメあげた結果、ナメラ沢でなく中ノ沢を下ってしまった

 今回、予定は秩父側の荒川滝川豆焼沢であったが、そこそこ難しい沢であり、雨が降っていたため急きょ簡単なナメラ沢に変更した。結果的には雨の中でも登れる沢であり、よかった。

1日目

2011年8月20日(土) 雨

府中本町=道の駅みとみ…沓切沢橋…ナメラ沢左俣…西破風山…破不山避難小屋(泊)

コースタイム
道の駅みとみ9:25
10:00
ナメラ沢下降点11:08
11:19
峠沢・ナメラ沢二俣11:23
11:38
ナメラ沢1575m12:30
12:41
ナメラ沢二俣13:00
13:10
ナメラ沢左俣1925m水涸れ13:50
14:04
稜線1925m15:00
15:11
西破風山15:19
破不山避難小屋15:47
21:00就寝

 朝6:45に府中本町駅集合。中央道を西へ向かうが、フロントガラスを雨がたたく。ほんとに沢登るの?車から出たくないんだけど、という雰囲気のまま、道の駅まきおかで作戦タイム。豆焼沢は難しそうだし、雁坂トンネルの往来には通行料がかかるので笛吹川流域で登るところを探す。結局簡単なナメラ沢になった。意外なことに誰もナメラ沢を登ったことがなかった。

 道の駅みとみに車をおき、沢タビにはきかえて出発。今日は終始カッパを着て、焚き火は不可能なので、パンツにカッパ上下にし、シャツやジャージは寝るとき用にとっておいた。今日は笛吹川源流まつりというイベントがあるようだが、雨のせいかこの時間お客さんはあまりいなかった。

 国道140号沿いの「雁坂峠入口」の看板から入山する。久渡沢沿いの道を歩く。釣り場やキャンプ場を通過し、登って行くと雁坂トンネル料金所ゲート。ここに戻ってくるなら料金所ゲートの駐車場に車を置いてもよいかもしれない。道なりの舗装道を登って行くと沓切沢橋で車道は終わり、そこから登山道が伸びている。「この沢は沓切沢ではありません ナメラ沢入口はこの上」という看板が立っている。エアリアマップによると唐松尾沢という沢のようだ。「奥秩父・両神の谷100ルート」「東京周辺の沢」「東京起点沢登りルート120」いずれもこの箇所を入渓点にあげている。

沓切沢橋
8/20 沓切沢橋を渡ると林道終点。
ナメラ沢入口
8/20 ナメラ沢入口の看板に従って下る。

 私たちは手元にガイドブックがなかったので、看板にしたがい、この先の登山道をたどる。尾根を乗っ越すと「ナメラ沢へ」と書かれた看板を見つけた。ここから沢に降りる。笹の中の急な踏み跡を下る。下りついたあたりがナメラ沢・峠沢二俣の上か下か分からず、はじめ少し登るが、二俣が見つけられず、下ったら二俣があった。ナメラ沢・峠沢二俣でひと休み。雨はやまずに振り続けている。沢の水量は少し多い気もするが濁ってもおらず遡行には問題ない。

ナメラ沢
8/20 ナメラ沢のナメ。
ナメラ沢
8/20 ナメラ沢の5m滝。
ナメラ沢
8/20 ナメラ沢・中ノ沢二俣。
ナメラ沢
8/20 ナメラ沢のナメを歩く。
ナメラ沢
8/20 ナメの上で私。
ナメラ沢
8/20 くの字のナメ。

 入渓してすぐナメが現れる。快適にピタピタと歩く。暗い5m滝は右から登る。ナメラ沢・中ノ沢二俣に出てナメラ沢へ進路を取る。しばらくゴーロ歩きで面白くない。10分ほどでナメが現れ、ナメの歩きやすいところをたどる。滝といえば滝なのかもしれないが、傾斜が緩く、手を使わないで登れるところも多いため、滝を登っているという感覚はない。枝沢にもナメ滝がある。すべり台に適した滝もあるが、雨なので尻を濡らさぬようすべらない。

ナメラ沢
8/20 ナメ滝を登るIさん。
幕営適地
8/20 1575m付近にあった幕営適地。
ナメラ沢
8/20 ナメ。
ナメラ沢
8/20 ナメ。
ナメラ沢
8/20 苔むした河原。
シモツケソウ
8/20 シモツケソウ。

 1575m付近で休む。左岸には幕営適地と焚き火の跡があった。ナメラ沢をこの辺で打ち切って1泊して帰るのもいいかもしれない。左右から入ってくる枝沢は地形図に忠実なので、枝沢を見たら地形図で確認するとよい。

 河原とナメ床を交互に歩き、やがて二俣。左を行くか右を行くか相談する。沢のようすを見ると左俣は倒木が重なり遡行しにくそうだ。右俣は倒木などはない反面、地形図を見ると上部が急で崖記号も見える。Kさんが左俣を偵察し、左俣を行くことにした。各ガイドブックも左俣を遡行していた。

二俣
8/20 二俣。左俣が倒木で荒れている。
左俣
8/20 左俣に入る。

 左俣に入ると水は減る。倒木帯はしばらくで過ぎ、またナメが出てくる。途中、筏のように丸太が並んだものをみる。シモツケソウとソバナが咲いていた。ゴーロになってきてやがて1925m付近で水が涸れるので水汲み。

筏のようなもの
8/20 ナメラ沢左俣の筏のようなもの。
ソバナ
8/20 ソバナ。

 あとは水のなくなった谷の地形を延々と登る。ヤブはなく、シカの歩いた跡のようなものが縦横に走っている。歩きやすいところを選んで登るが、ときどき赤テープが見えるのでそれを確認しながら歩く。かなり急であえぐように登る。稜線に近くなると背の低い松が生えており、ヤブになる。ヤブを避けるように赤テープに導かれ、やがて甲武信ヶ岳と雁坂峠の間の稜線に出た。

水汲み
8/20 1925m付近で水汲み。
ツメ
8/20 急斜面を稜線までつめる。
稜線
8/20 稜線に出たところ。
西破風山
8/20 樹林帯の西破風山を通過。

 水涸れから1時間、標高差370mほど。稜線はガスで雨も降っている。人が歩く気配はない。後続を待って破不山避難小屋へ向かう。樹林帯の中の西破風山頂上を過ぎ、下りに入る。いったん低木帯に出るが、ガスで景色はない。ミヤマホツツジの咲く稜線を下る。やがて道が緩やかになり、笹原を歩くようになると破不山避難小屋に到着した。

笹原
8/20 鞍部近くの笹原。
破不山避難小屋
8/20 破不山避難小屋に到着。

 破不山避難小屋には誰も人が入っておらず、独占する。寒いので中でテントを張り、カッパを吊るす。水場は看板によると、ヌク沢側へ20分下ったところにあるようだ。私たちはナメラ沢源頭で汲んだ分があり、さらに小屋の屋根から落ちる雨だれを集め、飲水とした。トイレはないので外で済ます。

 夜はカレーライスをつくり、酒を飲んだ。夜になっても雨はやまず、気温は低く、トイレに出るたびに凍えながらテントに戻った。昨日までは連日の真夏日でひどく暑かったのだが、一気に秋が来たかのようだ。夜は21時頃に寝た。

2日目

2011年8月21日(日) 雨

破不山避難小屋…ヌク沢二俣…鶏冠山林道東線…道の駅みとみ=花かげの湯=府中本町

コースタイム
破不山避難小屋4:20起床
6:03
鶏冠山林道東線終点6:50
道の駅みとみ9:07
9:40

 夜は寒く、何度か起きた。雨はときどき強くなり、小屋に吹き付けていた。

 朝はラーメンを食べる。小屋は鉄製のドアと窓を閉めると真っ暗になってしまうが、外に出てみると明るかった。しかし雨は降っていた。

 下山ルートは雁坂峠経由が最も確実だが、破風山を登り返す気も起きず、破不山避難小屋から真南に下ったヌク沢二俣付近の鶏冠山林道東線から帰ることにした。小屋の前には「鶏冠山林道45分」と書かれている。出がけに甲武信ヶ岳方面から単独行が来て小屋で休んでいた。今回山の中であった人はこの1人だけだ。

破不山避難小屋
8/21 破不山避難小屋から鶏冠山林道東線に下る。
尾根
8/21 ヌク沢左俣右俣の間の尾根を下る。初めはトラバース。一応赤テープが付いている。

 2141m峰から南に下る尾根をたどる。はじめはトラバース、林の中に入ってからは笹の中の道をジグザグに下る。笹の丈は20cmから30cmほどでヤブ漕ぎにはならないが、その分、鹿道のようなものがあちこちにあり、赤テープを探しながら歩かないと迷う。

尾根
8/21 ヌク沢左俣右俣の間の尾根。鹿道の交錯する道を下る。
シャクナゲ
8/21 シャクナゲのトンネルをくぐる。

 やがて尾根がはっきりしてくる。ちょうどヌク沢の左俣と右俣の間だ。同じ方向に下っている小屋の水場は一体どこだろうと思いながら下る。そのうち尾根が細くなり、シャクナゲのトンネルになる。それを抜けると岩峰の上のようなところに出た。そこが鶏冠山林道東線の終点。右手から巻いて下ると広い転回場になっていた。破不山避難小屋から45分であった。

鶏冠山林道東線終点
8/21 鶏冠山林道東線終点に出た。
ヌク沢右俣滝
8/21 ヌク沢右俣に大きな滝が見えた。

 あとは鶏冠山林道東線を延々と下る。ヌク沢右俣にかかる橋を渡る。橋からは右俣に大きな滝がかかっているのが見えた。右俣は遡行している記録を見ないが、この滝があるからだろうか。林道からはヌク沢二俣付近の堰も見えた。青笹尾根南面を巻きながら下る。ナレイ沢を何度か渡り、子酉橋北詰のトイレに出た。

ヌク沢二俣
8/21 ヌク沢二俣の堰。上が左俣、下が右俣。
鶏冠山林道東線
8/21 鶏冠山林道東線を下る。

 西沢渓谷の道をたどって道の駅みとみへ向かう。雨なのに観光らしい中高年が続々と団体で訪れていた。さすがに登山者は見当たらなかった。市営の温泉は10時からの営業なので、花かげの湯まで下って風呂に入った。

おわりに

 急きょ差し替えた沢にしては楽しめた。ただ、ツメは長く疲れた。

 破不山避難小屋に泊まるのは2回目だったが、前回の記憶はほとんどない。南側に20分下ったところにあるという水場は見つけられなかった。幸い雨だったので、屋根の雨水を集め、飲水とした。トイレはない。

 鶏冠山林道東線は今回はじめてたどった。ヌク沢、ナレイ沢、青笹尾根の概況を知るのによかった。ただ長かった。破不山避難小屋から鶏冠山林道東線終点までの道は急であり、ヤブは薄いものの鹿道が多い。赤テープに従えば道をたどれる。


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