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2011年夏 - 八幡平・葛根田川北ノ又沢[1/2]


2011年8月15日(月)〜8月17日(水)
場所
岩手県八幡平市(旧・岩手郡松尾村)、岩手郡雫石町、秋田県仙北市(旧・仙北郡田沢湖町)
ルート
8月14日
新宿=(高速バス)=盛岡駅(泊)
8月15日
盛岡=(タクシー)=滝ノ上温泉…葛根田川遡行…北ノ又沢支流920m付近(泊)
8月16日
北ノ又沢支流920m付近…八瀬森山荘…小畚山…三ツ石山荘(泊)
8月17日
三ツ石山荘…大松倉沢橋…網張温泉=小岩井農場=盛岡=(東北新幹線)=東京
参加者
中山、W、S
参考文献

はじめに

 葛根田川は八幡平と岩手山の南を流れる川で、大深岳西方の八瀬森に端を発し、雫石で御所湖に注ぎ、雫石川として盛岡で北上川に合流する川である。日本百名谷の一つでもある。

 葛根田川の遡行は、沢登りというより谷歩きと言ったほうがよい。困難なところはなく、手軽に静かな谷を味わえる。山懐に抱かれながら自然と触れあい、語り、戯れるのがこの谷の楽しみ方だ。

茂木完治・手島亨「すぐに役立つ沢登り読本」(東京新聞出版局,1991)P.176-177

 と評されるように、穏やかな沢である。

 支流の北ノ又沢を突きあげると八瀬森湿原に出るので、稜線伝いに下山してもよいが、今回は稜線を越えて秋田側の大深沢も遡行することにした。

 東北の沢というと白神山地追良瀬川朝日連峰八久和川しか遡行したことがなかったが、葛根田川は追良瀬川と似た穏やかな沢でのんびりと楽しめた。

 この夏ははじめは赤石沢を計画していたが、畑薙第一ダムへ至る道が大雨のため崩壊しているということで、急きょ葛根田川に替えた。

0日目

2011年8月14日(日)

新宿=(高速バス)=盛岡駅(泊)

 今回、お盆の渋滞を避けるため、金曜、土曜の出発ではなく、日曜夜の出発とした。新宿を22:45に出るツアーバスで盛岡へ向かう。インターネットで探した日本ユース旅行というところで5,000円。新幹線の自由席が東京〜盛岡で13,300円なので、バスはかなり安い。集合場所のスバルビルの前は乗車待ちの客であふれていた。Wさんが明治安田ビルの前にいて、少々集合が遅れるものの間に合った。

 バスには毛布と使い捨てのサンダルがついていた。座席を暗く保つためか、運転席と乗客の間にカーテンがひかれていて、どこを走っているのか分からなかった。羽生SAでトイレ休憩の後、眠った。

1日目

2011年8月15日(月) 晴れ夕方雨

盛岡=(タクシー)=滝ノ上温泉…葛根田川遡行…北ノ又沢支流920m付近(泊)

コースタイム
葛根田地熱発電所6:40
6:43
黒滝沢出合7:00
7:17
明通沢出合7:58
8:01
大ベコ沢出合698m8:17
8:29
大石沢出合9:22
9:34
沼ノ沢出合9:57
中ノ沢出合10:02
葛根田大滝上10:35
10:51
810m付近釣り11:07
11:28
滝ノ又沢出合12:07
北ノ又沢支流出合12:19
12:31
北ノ又沢支流920m13:08
19:00就寝

 朝5:30に盛岡駅着。ビルが立ち並び開発されているが、人通りがなく殺風景なところだ。西口らしい。東口に出てタクシーを電話で呼ぶ。6:30に予約していたのだが、電話したら5:50頃に来てくれた。タクシーで滝ノ上温泉へ向かう。

 道は広くけっこうスピードを出すが、運転手さんはスピードメーターの前に財布を置いていて速度を確認するようすがない。45分ほどで滝ノ上温泉の先の葛根田地熱発電所のゲートに到着。運転手は「9,000円だっけ?」と言って到着直前に料金メーターを切り、8,980円の支払いになった。田舎らしくていい。

葛根田地熱発電所
8/15 葛根田地熱発電所のゲートでタクシーを降りる。
黒滝沢出合
8/15 黒滝沢出合付近の堰で沢タビに履き替える。

 ゲートのまわりは太いパイプラインが何本も川に沿って伸びていて、ところどころ圧力抜きらしき箇所から蒸気が立ち上っている。この先の掘削した井戸から熱水を引いているようだ。ゲートの前には品川ナンバーが1台。すでに1パーティーが入っているようだ。

 ゲートを越えて林道を歩く。すぐに左岸に渡り、パイプラインに沿って歩く。林道の擁壁はところどころ暖かいところがあり、硫黄のせいか擁壁がボロボロになっているところもあった。熱水の生産井の横を通り過ぎ、堰がある黒滝沢出合の少し下で沢タビに履き替える。今日は難しいところはないので、ハーネスはつけない。林道はさらに伸び、明通沢まで続いているようだ。

葛根田川
8/15 川幅いっぱいに流れている。
白い滑床
8/15 白い滑床を歩く。

 準備を済ませたら出発。天気はくもりでときどき日差しが見える。はじめは広い河原を歩く。少し歩くと高さ1mほどの低い堰があり、左から越える。明るく広い河原が続く。やがて白い滑床。10mほどの川幅いっぱいに白いナメが広がっている。ここが最初に葛根田川で感動したところ。その先で明通沢が小川となって合流している。その先で大ベコ沢が高さ5mほどの滝をかけて下っている。一枚岩をなめるように落ちており、変わった滝だ。大ベコ沢出合の少し先で一休み。天気はくもりで薄暗い。でも気温は高く、水は冷たくない。

明通沢出合
8/15 河原で合流する明通沢出合。
大ベコ沢出合
8/15 岩をなめるように水が流れる大ベコ沢出合。
大ベコ沢出合
8/15 大ベコ沢出合先の河原で休む。
淵
8/15 淵。左から乗っ越す。
淵
8/15 淵。泳ぐのだろうかと思ったら…(右へ続く)
淵
8/15 (左から続く)右岸に遊歩道のように岩盤が張り出していてすたすた歩けた。

 大ベコ沢出合から少し歩くと、ゴルジュになってくる。小さな滝や釜があるが、どこかしら登るところがあって難しくはない。いったんゴルジュを抜けて河原になる。時折、淵があるが、水際に幅1mほどの水平な岩盤が伸びており、まったく苦労せず通過できる。やがてお函。赤みがかった岩場のゴルジュ帯で、一見すると通過が難しそうに見えるが、左岸沿いの岩を乗っ越していけば難しくない。お函を抜けるとまた白い滑床があって、大石沢出合。一休み。

お函
8/15 お函の入り口。
大石沢出合
8/15 大石沢出合。左が大石沢、右が葛根田川。

 大石沢出合にはテント1張ほどのスペースと焚き火の跡があった。このへんに泊まって大石沢や戸繋沢に釣りに行くのもいいかもしれない。空を見上げると低い雲が西から東へ移動し、太陽が陰る。

淵
8/15 大石沢出合を過ぎても淵がある。
魚
8/15 大石沢出合先で逃げない魚がいた。

 大石沢出合からはおだやかな河原を行く。流れは細くなり、また淵が現れるが、やはり水際に歩くところがある。そのあたりで魚影を見た。釣り人に慣れていないのか、こっちが姿を見せていても逃げるようすのない魚もいてのんびりと写真を撮った。魚にしろ、シカにしろ、鳥にしろ、山では生き物はたいてい向こうが先に気づいて逃げ、その音でこっちが気づくことが多い。カエル以外でこんなにのんびり生き物の写真を撮ったことはない。

沼ノ沢出合
8/15 沼ノ沢出合手前に2mほどの滝が2つ。
沼ノ沢出合
8/15 沼ノ沢出合。滝が下っている。

 2mほどの滝を2つかけ、沼ノ沢出合。沼ノ沢は10mほどの滝をかけて下っている。さらに3分ほど河原を歩くと中ノ又沢出合。中ノ又沢は北ノ又沢と同じ高さで合流しており、水量も1:1と均等な二俣になっている。右の北ノ又沢に入る。北ノ又沢に入ると、魚は影を潜める。しばらくゴルジュを行き、開けた河原を少し歩くと右手に滝をかけて落ちてきている沢がある。そこを左に曲がると葛根田大滝2段15mである。右手の踏み跡を上がり、落口よりも高いところをトラバースし、落ち口に下った。慎重にクライムダウンし、ロープは出さなかった。

中ノ又沢出合
8/15 中ノ又沢出合。左が中ノ又沢、右が葛根田川。水量は1:1。
葛根田大滝
8/15 葛根田大滝。右から巻く。
葛根田大滝
8/15 葛根田大滝を巻いて下る。
釣り
8/15 810m付近でWさんが竿を出す。

 葛根田大滝から5分ほど歩いた河原で一休み。Wさんがあちこちの石をひっくり返して川虫を探す。あまり川虫がいない。そのかわり小さなサンショウウオが1匹見つかった。しかし、釣りの餌には大きいので逃す。出発しても川虫を探しながら歩く。すぐ魚影を見つけ、小さな川虫でWさんが竿を出す。その間、Sさんと私で川虫探し。2回ほど餌を取られたものの、1匹岩魚を捕まえることができた。叩いて殺して目玉で2匹目のどじょうを狙うが、餌が大きいのか捕まらなかった。とりあえず1匹捕まえて遡行を継続。

岩魚
8/15 イワナを1匹捕まえた。
滝ノ又沢出合
8/15 滝ノ又沢出合。左が滝ノ又沢、右が北ノ又沢。左岸にタープを張っている人たちがいた。

 30分ほど歩いて滝ノ又沢出合。左岸の台地にタープが張ってあった。3人パーティーのようだ。滝ノ又沢側に1人、北ノ又沢側に2人釣りをしていた。予定はここに幕営だが、人がいるので先を行くことにする。北ノ又沢に入ると淵で竿を出している人が1人。単独行の釣り師らしい。北ノ又沢の支流の出合で一本。

北ノ又沢
8/15 北ノ又沢に入り、単独行の釣り人が竿を出す釜の横を通る。
北ノ又沢支流滝
8/15 北ノ又沢支流8mくの字滝。

 北ノ又沢本流へテント場を探しに行くが、1分ほど歩いても見当たらない。あきらめて北ノ又沢支流に入ることにする。北ノ又沢支流の8mくの字滝を左から登り、連なる小滝を登っていく。登りきってみるとすっかり小川になっており、魚がいそうにない。しかし、下るのは面倒なのでテント場を探しながら歩く。標高920m付近は谷が広くなっており、川が蛇行して流れている。樹林帯で笹ヤブを避けて場所を探す。しばらくで左岸に2, 3張できそうなところを見つけ、そこに幕営することにした。あとで調べるとそこは分流した中洲であったが、樹林帯の中で水はきそうにない。

焚火
8/15 920m付近で幕営。焚き火する。
イワナ
8/15 イワナを焼いて食べた。

 薪を用意するが、樹林帯の割に沢は狭く薪はあまりない。また湿っているものが多い。河原で晩飯の支度をするが、ザアっと雨が降ってきたので、いったんテントに避難。テントの中はひどく蒸し暑い。しかし木の影なので雨は直接テントに当たらず、弱い雨なら感じないくらいだ。

 雨がやみ、また外でご飯。焚き火はWさんがうまく薪を組んでくれて簡単に火が着いた。晩ご飯はキムチ鍋。そしてWさんが釣った岩魚を開いて油で焼いたもの。持ってきたビール6缶を消費し、おいしくいただいた。夜暗くなる頃にテントに戻り、19時就寝。


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