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2010年夏 - 南アルプス・鳳凰三山〜千頭星山


2010年7月17日(土)〜7月19日(月・祝)
場所
山梨県南アルプス市(旧・中巨摩郡芦安村、白根町)、韮崎市
ルート
7月16日
高尾=甲府(泊)
7月17日
甲府=志れい沢橋…シレイ沢右俣2260m(泊)
7月18日
シレイ沢右俣2260m…観音岳・薬師岳間2760m…地蔵岳往復…薬師岳…南御室小屋…苺平…大ナジカ峠(泊)
7月19日
大ナジカ峠…千頭星山…甘利山=韮崎
参加者
H、中山、I
参考文献

2日目

2010年7月18日(日) 晴れ

シレイ沢右俣2260m…観音岳・薬師岳間2760m…地蔵岳往復…薬師岳…南御室小屋…苺平…大ナジカ峠(泊)

コースタイム
シレイ沢右俣2260m4:30起床
6:27
シレイ沢右俣2435m
水汲み
7:18
7:25
シレイ沢右俣2560m
ザレ場
7:59
8:19
観音岳・薬師岳稜線2760m9:00
9:28
観音岳9:40
9:42
アカヌケ沢ノ頭10:30
11:20
観音岳12:04
観音岳・薬師岳稜線2760m12:11
12:31
薬師岳12:44
南御室小屋13:32
13:50
苺平14:20
苺平・大ナジカ峠間2150m15:22
15:42
大ナジカ峠16:08
21:00就寝

 2010年夏 - 南アルプス・野呂川シレイ沢の続き。

 稜線は人が多い。3連休で鳳凰三山を歩く人が多いようだ。稜線に出て最初にあった3人組に声を「シレイ沢ですか」とかけられる。3人組は昨日シレイ沢を登り鳳凰小屋に泊まったそうで、今日は薬師岳方面へ縦走していた。私たちが千頭星山ヘ縦走すると述べると、千頭星山下の水場の場所を教えてくれた。また道もシレイ沢を登る人であれば問題ないことを教えてくれた。地元の山岳会だそうで心強い。礼を言って別れる。Hさんが追いついてきてから荷物を整え、地蔵岳の往復にかかる。Iさんが貴重品、Hさんが食料、私が水を持って出発。

地蔵岳
7/18 観音岳から地蔵岳へ向かう。
地蔵岳オベリスク
7/18 アカヌケ沢ノ頭から見た地蔵岳オベリスク。

 少し登ると観音岳。人が多い。Iさんと私は地蔵岳まで往復と考えていたが、Hさんは観音岳の往復と考えていたらしく、驚きながら地蔵岳へ向かった。急な下りのあと白ザレの斜面になり、鳳凰小屋への道を分けた後、樹林帯を下って地蔵岳・観音岳最低鞍部。急な道を登り返してアカヌケ沢の頭

 正面に地蔵岳のオベリスクが見える。私は標高3,000m近い稜線を空身で早足で歩いたため、高山病気味でバテていた。元気なIさんはオベリスクに登ってくると言い、Hさんといっしょにオベリスクへ向かった。オベリスクにはすでに何人かの人が取り付いていたが、みんな頂上までは登れず途中で引き返していた。一番登れていた人でもオベリスクてっぺんのチムニー状のところで折り返していた。私はもうバテていたのでアカヌケ沢の頭で待機。しばらくすると鞍部の賽の河原に下りついた2人が見え、オベリスクへ登り返していた。Hさんは途中で引き返していたが、Iさんは躊躇せずガンガン登り、オベリスクの頂上へ達して両手をあげてアピールしていた。アカヌケ沢の頭でそれを眺めていた人たちから賛賞の拍手が上がっていた。戻ってきたIさんに聞くと最後はロープをごぼう登りで登るらしく、登ったことのある人でないと不安で登れないとのことであった。今度地蔵岳へ行ったら登ってみよう。なおアルペンガイドのコースメモには地蔵岳は基部まで登れるが、オベリスクには無理をして登らないようにしたいアルペンガイド10 北岳・甲斐駒・仙丈,1996.P.60)とあった。

地蔵岳オベリスクに到達したIさん
7/18 地蔵岳オベリスクに到達したIさん。
薬師岳
7/18 白いザレの薬師岳山頂。

 地蔵岳から観音岳ヘ戻る。行きのときは観音岳は人で混雑していたが、帰りはほとんど人がおらず、野呂川にも雲が上がっていて北岳は見えなかった。観音岳から下ってザックを回収。地蔵岳往復に2時間40分かかった。ときはすでに12時を回っており、千頭星山までは6時間かかることを考えると地蔵岳往復は失敗だったかもしれない。白い花崗岩の薬師岳に登る。平坦な道でほとんど登らずに薬師岳に到着。ガスが上がってきていて景色もない。前に鳳凰三山に登ったときは道がわからず、野呂川側へ下りそうになった。

 薬師岳から少し下って薬師岳小屋、登り返して砂払岳。砂払岳の登りは大岩が多く、岩屋みたいなのも一つあった。砂払岳からは樹林帯の単調な下り。Iさんからトドマツとコメツガの違いを聞きながら下る。下り着くと南御室小屋。南御室小屋で一休み。13:30と幕営しているテントもちらほら見られる。いちおうリーダーのHさんに確認すると混んでいるところに張るのは好ましくないということで先をいくことにする。

南御室小屋
7/18 南御室小屋でひと休み。
苺平
7/18 苺平から大ナジカ峠へ下る。Mouseoverでルート表示。

 南御室小屋から苺平へ登り。辻山の北面を巻いて登る。苺平から大ナジカ峠へ下る。看板が立っており、入り口はすぐわかった。道は思いのほかはっきりしていて、ところどころ韮崎市の鳳凰山登山道という看板があり、安心する。いくつか枝を刈り払ってあるところもある。しばらく斜面の東側のなだらかな斜面をトラバースしながら歩く。トドマツの樹林帯で苔が生えていて落ち着いた道である。ただ現在位置がよく分からず、不安になる。ただ道ははっきりしていて迷い道もなくこの道をたどるのが最善のようだ。

苺平
7/18 苺平から大ナジカ峠への道。思いのほか道ははっきりしている。
苺平
7/18 苺平から大ナジカ峠への道。下りに入るとガスが出てきた。
小武川丸沢
7/18 小武川丸沢のザレ場の上に出た。
雲切尾根
7/18 大ナジカ峠へ下って行くと松の木と笹の原生林に出る。笹が斜面に出ていて滑りやすい。

 しばらくして大ナジカ峠への下り道になる。斜面をジグザグに下る。一瞬、小武川丸沢の源頭のザレ場の上に出た。少しのぞいてみると大規模な崩壊が起こっているようだ。下るにつれガスが出てきて幻想的だ。急な下りで疲れて途中標高2150m付近で一休み。歩いていて人がまったくいない。代わりに休んでいたところの正面にあった木に熊の爪とぎ跡を見かけた。熊もいるらしい。さらに大ナジカ峠へ下る。途中で松の木と笹の原生林に出た。笹が斜面に出ていて滑りやすい。そしてだんだんと平坦になり、大ナジカ峠にたどり着いた。

韮崎ライオンズクラブ
7/18 韮崎ライオンズクラブの古い看板。
大ナジカ峠
7/18 大ナジカ峠到着。

 時刻は16:08。大ナジカ峠は北側の小武川丸沢側は急な樹林帯だが、南側の御勅使川金山沢側はなだらかで丈の低い笹原が広がりパラパラと潅木が粗に分布している。テントも張れそうだ。時刻も時刻なので、南御室小屋で汲んだ水で幕を張ることにする。テントを張り、外で炊き込みご飯と豚汁を作る。外はブヨが多く、蚊取り線香を焚いてもあまり効果がない。ぼやぼやしているうちに左手の項を10箇所くらい刺されてしまった。下山する頃には左手の甲がパンパンに膨れ上がり、拳を握ると皮がつっぱるくらいであった。もっとも下山して3日ほどで腫れはすっかり引いた。

 水が出ていないかと思い、南側金山沢側を散歩する。ゆるい下りの斜面が広がっていて、シカの道が縦横に見られた。ヌタ場も2箇所あり、どうやらシカの楽園のようだ。水は見当たらず、あるとすれば北側の丸沢側ではないだろうか。なお携帯電話は北側丸沢側に立つとauの電波が入ったので、在京連絡人にコースの変更をメールしておいた。

 日が暮れると星がよく見えた。気持がいいので外に銀マットをひいて寝た。

3日目

2010年7月19日(月・祝) 晴れ

大ナジカ峠…千頭星山…甘利山=韮崎

コースタイム
大ナジカ峠4:00起床
5:55
2004標高点6:10
1980m付近水場6:34
6:52
千頭星山7:20
千頭星山・御西峰鞍部7:43
8:07
青木鉱泉分岐8:08
奥甘利山8:20
甘利山8:32
甘利山駐車場8:44
9:35

 今日は千頭星山を越えて甘利山まで。

 星がキレイなので外で寝ていたら、夜中はけっこう寒くて何度か起きた。2:40に起きた後、眠れず4時までゴロゴロしていた。4時には明るくなったのでみんな起床。

大ナジカ峠
7/18 大ナジカ峠に幕営。南側金山沢側はなだらかな笹原になっている。
千頭星山
7/19 千頭星山への登り。Mouseoverでルート表示。岩根を巻いて右のルンゼを登る。

 千頭星山へ登る。初めは2004m標高点へ。急な道を登る。2004m標高点を越えると千頭星山西面の崩壊地と崖が見えた。崩壊地は北側を巻くように進み、岩峰を北側のザレ場から巻き上がる。岩峰をかわした後、南側へ岩根を下りながらトラバース。岩根には岩屋が一つあった。トラバースを終えると小さな沢があり、チョロチョロではあるが水を汲める。ここが昨日シレイ沢を詰めたところで地元の山岳会の方が言っていた水場だろう。そこから沢沿いに稜線まで登る。稜線に出てから千頭星山へ歩き始めるとまた崩壊地になっている。ここは右側から巻く。崖の上の道であり高度感がある。右手を見れば辻山から薬師岳への稜線が見える。そのあとはうってかわってなだらかな尾根道を行くと千頭星山に出た。

千頭星山
7/19 ザレ場を北側から巻く。
千頭星山
7/19 岩根を巻く。
千頭星山
7/19 沢で水汲み。水量は少ない。
千頭星山
7/19 沢上部のルンゼを登る。
千頭星山
7/19 崩壊地は南側を巻く。
辻山
7/19 振り返れば辻山。小武川丸沢の爪あとが高い。

 千頭星山は平坦な丘みたいなピークで、樹林帯に囲まれているので展望はない。ここで休むのもなんなので、少し先へ進む。甘利山方面へ下り始めると笹原とトドマツの広がる美しい風景が見えた。自然にできたゴルフ場のような風景だ。その先には八ヶ岳が見え、間の釜無川には雲海が広がっている。なかなか良い風景だ。広くてなだらかな道を進む。八ヶ岳だけでなく、金峰山や富士山が見えた。富士山の見えるところで一休み。ちょうど千頭星山と大西峰の間の鞍部であった。

千頭星山
7/19 千頭星山山頂。林の中で展望はない。
大西峰
7/19 千頭星山から大西峰への眺め。トドマツと笹原が広がり奥には八ヶ岳。

 この先、甘利山から韮崎までタクシーを呼ばなければならないのだが、韮崎のタクシー会社の電話番号がわからない。そこで私が先行して甘利山の駐車場に下り、電話番号を調べて携帯電話でタクシーを呼ぶことにした。大西峰の東側で青木鉱泉への下り道を分け、甘利山へ下る。奥甘利山の南側の肩を巻いて下る。甘利山からのハイカーがちらほら見えてくる。けっこう多い。鞍部から甘利山へ登り返し、甘利山駐車場へ下った。走って下っていたら途中で右足を木の根っこにぶつけ、親指の爪がはがれてしまった。甘利山の山頂はたくさん花が咲いていたのでIさんに教えてもらいながら歩きたかったが、タクシーを呼ばなければならなかったので駆け足で下った。

 甘利山駐車場へ下り着くが、登山口によくある「タクシーのご用命は◯◯タクシーへ」という張り紙がどこにも見当たらない。しかたないので近くのグリーンロッジというところまで空身で走る。しかしグリーンロッジにも人がおらず、タクシー会社の電話番号がわからない。置いてあった観光用パンフレットを見つけるが、アクセスの欄にもタクシー会社の電話番号が載っていない。しかたないので電話番号の載っていた韮崎市観光課の電話番号に電話をかける。しかし電話が通じるのが駐車場のごく一部でなかなか電話がかからない。なんとか電話できるところを見つけ、そこで電話し、韮崎タクシーの電話番号を教えてもらう。教えてもらった電話番号に電話をかけ、ようやくタクシーを呼ぶことができた。駐車場にはこれから甘利山へ登る人がちらほらと見られ、電話がかからず右往左往する私を奇異の目で見ていた。

 タクシーを待つ間、着替えたり、水道で顔を洗ったりして過ごす。樹冠からのぞく外界は雲海に覆われていて街は見えない。30分ほどで呼んだタクシーが来て乗車。くねくね道を下る。けっこう狭い道の割に登ってくる車も多く、運転手さんは器用に待避しながら下っていた。途中、雲がとれて韮崎の街が見えるところではだいぶ下に街が見え、「ひょっとしてタクシー代10,000円くらい取られるんじゃないか」と不安に駆られる。でもそれ以上にくねくね道で酔ってしまい、半分眠ったような状態で韮崎駅にたどり着いた。結局6,000円弱であった。

 あとは韮崎駅前の大きなショッピングセンターでつまみとビール、ワインを買い込み、帰りの列車で堪能して帰った。

おわりに

 シレイ沢は全体的に急で滝も多いわりに、登れる滝が多く、登れない滝も巻き道がしっかりしていたのでよかった。私たちはザイルを使わなかったが、ザイルを出そうかと思ったらそのルートは間違っていると考えたほうがいいだろう。滝ばかりで幕営できる場所がないかとも思ったが、私たちが泊まった二俣上の右俣2260m付近以外に20m滝下の河原、右俣入って3:1水量比の二俣上の2人ほどのスペースがあった。

 鳳凰三山は高校2年のとき以来なので12年ぶりだ。前回登ったときはガスだったり、雨が降ったりと北岳も見えなかったのだが、今回は天気がよく、北岳も見えてよかった。

 大ナジカ峠から千頭星山、甘利山はその場の思いつきだったが、大ナジカ峠の笹原あり、千頭星山への岩場ありと変化に富んで面白かった。意外と道もはっきりしていて、看板もありまったく迷わなかった。人も歩いておらず静かな縦走を楽しめた。


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