山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2010年山行一覧>南アルプス・野呂川シレイ沢
丹沢・四十八瀬川勘七ノ沢←|→南アルプス・鳳凰三山〜千頭星山
シレイ沢は富士川早川の上流にあたる野呂川の沢の一つである。鳳凰三山の観音岳と薬師岳の間を源頭とし、野呂川へ流れ込んでいる。水平距離は2.4kmと短い流程のわりに標高差は1,230mと大きい。「関東周辺の沢」では3級となっているが、ザイルが必要な滝もなく、南アルプススーパー林道からすぐに取り付けることもあって、人も多い。今回は私たち以外に5パーティーを見かけた。
今回は海の日の3連休で2泊3日の沢を探したが、雪の残る沢ばかりで諦めた。逆に雪のない沢を探した結果、南アルプスのシレイ沢となった。
予定ではシレイ沢を登った後、広河原へ下山し、小太郎山北面の扇沢を登ろうと計画していた。しかし北岳の谷筋にたくさんの雪が見えたため、扇沢も雪で登れないだろうと判断し、鳳凰三山を踏んだ後、千頭星山から甘利山へ抜けた。
0日目 |
2010年7月16日(金) |
高尾=甲府(泊)
高尾駅22:26発中央本線最終列車小淵沢行きに乗り、甲府へ。甲府で下車すると快速広河原行きのバス停には何人かの登山者が寝ていた。とりあえずバス営業所の前に銀マットを敷き、バス出発の4:00まで仮眠。
バス会社のおじさんが乗客数を数えてバスの台数を決めたいらしく、ザックをバス停に並べるよう仮眠している各登山者に声をかけていた。しかしあとで敷いている銀マットをザックにしまわなければならないし、第一眠いしで迷惑だった。人数を数えたいのなら整理券を配ればいいのに。整理券なら声をかけなくても登山者が券を求めて寄ってくるから楽だと思うのだが。
1日目 |
2010年7月17日(土) 晴れ |
甲府=志れい沢橋…シレイ沢右俣2260m(泊)
志れい沢橋 | 6:10 |
6:50 | |
シレイ沢1720m | 8:00 |
8:18 | |
シレイ沢2025m標高点 20m滝下 | 10:14 |
10:30 | |
シレイ沢2140m 30m白い滝上 | 11:45 |
12:00 | |
二俣 | 12:08 |
シレイ沢右俣2260m 水量3:1下 | 12:45 |
19:00就寝 |
銀マットをザックにしまい、ザックをバス停に並べたあとも、壁に寄りかかってしぶとく寝続けていたらIさんに起こされた。Iさんはお腹の調子が悪く眠れなかったそうだ。快速広河原行きのバスに並び、乗ると車掌さんから乗車券を買う。甲府から志れい沢橋まで2,000円。広河原までと同額。シレイ沢を登る人はそこそこいるようで「志れい沢橋」と言えばすぐ通じた。一番後ろの席に座り、また仮眠。
志れい沢橋で下車。私たち以外に5パーティーほど降りていた。甲府からのバスに加えて、芦安からのマイカー規制対象の人を乗せたバスが連なり、20台ほどが走っていた。バスにひかれないように道の端による。一通りバスが過ぎた後、出発準備。用意のいいパーティーはバスから降りてすぐ入渓していった。
7/17 志れい沢橋で下車。入渓準備。橋の両岸に沢に下りるためのロープが張ってある。 |
7/17 志れい沢橋から見た最初の滝。いきなり大きな滝で少々ビビる。Mouseoverでルート表示。 |
6:50入渓。バス停で降りた中で一番最後に入渓する。橋から見える滝は15mほどあろうか。水量も多く、いきなり登れるかどうか不安になる沢だ。しかし先行パーティーの様子をみていると、右の水量の少ないところを登った後、左に移り、岩を越えれば簡単に登れそうだ。実際とりついてみると沢を左に移るところで股下まで濡れる以外は難しくなかった。最初の滝を越えると吊り橋がかかっている。右手の崩壊地に堰が見えたのでおそらくその工事のためだろう。振り返ると北岳の大樺沢に雪が詰まっている。シレイ沢のあとに登る予定の扇沢は登れないだろうと判断する。
7/17 水量の多い滝ばかり。ここは左から巻く。 |
7/17 10mほどの直瀑はその上の12m滝と合わせて左から巻く。先行するはずの学生4人パーティーが変なところを高巻いていた。 |
その後も滝が次々と現れる。水量が多く、水流に沿っては登れないので小さく、あるいは大きく巻く。はじめは巻き道は左の方が多い。10mほどの直瀑はその上の12m滝と合わせて左から巻く。左のルンゼから上がり、後続のHさんをシュリンゲでひっぱりあげる。と、Hさんの後ろにもパーティーが現れた。バスで降りた中では私たちが一番最後に出発したはずなので、後続はいないはずだが。後続の人も苦戦していたのでシュリンゲでひっぱってあげた。ひっぱりあげたところで上部の不安定な側壁に人がいた。どうやらこの後続パーティーは途中で巻き道を間違え、高く巻いてしまったようだった。
7/17 10mほどの直瀑の高巻き。 |
7/17 10mほどの直瀑を過ぎると沢は穏やかになる。 |
その高巻きを終えたところで一休み。河原に金色に輝く砂粒が見えて色めき立つが、Iさんいわく雲母ではないかとのこと。雲母というと黒のイメージしかなかった。
7/17 白糸を流したような滝。右から巻き。 |
7/17 水に濡れながら登る。 |
その後、しばらくおだやかな河原を歩く。ときどき登れない滝もあり、2回ほど右を巻いた。12mほどの水しぶきが立っている滝は左を巻く。多段の15mほどの滝は右側を小さく登れそうだったが、少しもどると右から高巻く踏み跡があり、それをたどった。その後右に枝沢を分けると水量は少し減り、水の中でも登れる程度になる。直登できる滝も多くなり、楽しい。左側の壁が屹立した10m滝は右から高巻き。その後少し河原が続いた後、ナメ滝、ナメがあって20m滝。手前の3m滝の上の広い岩盤の上で休む。
7/17 右に枝沢を分けると平坦な沢。 |
7/17 水量が多く、足を取られないように慎重に登る。 |
滝を登るときにだいぶ濡れてしまったので休むと寒い。休みを終えて出発するとき、後続の学生4人パーティーが追いついてきた。その後は特に迷わなかったようだ。20m滝の登りにとりかかる。20m滝の左側に巻き道があり、それをたどる。途中シャクナゲが咲いていた。
7/17 20m滝手前の3m滝の上の広い岩盤の上で休む。 |
7/17 20m滝の高巻き。 |
下り着くと左岸に大きな白いザレが見えた。本流には30mの白い滝がかかっている。一枚岩のナメ滝で両側が緑で覆われる中、まっすぐ白い一筋の滝がかかっていて美しい。この滝は右から巻き。白ザレの端の崩れやすい踏み跡を登るが、手がかりが少なく登りにくい。バランスを崩したHさんが登れず、ザックだけひっぱりあげる。さらに途中の樹林帯で踏み跡を見失う。そこから本流へのトラバースは傾斜があって難しい。もう少し上まで登るためにザックをシュリンゲでひっぱりあげ、空身で登った。そこから白ザレのトラバースと樹林帯のトラバースで本流にもどることができた。そこで一本。
7/17 シレイ沢のハイライト、30mの白い滝。美しい。 |
7/17 30mの白い滝の巻き。白ザレで崩れやすく、Hさんのザックをシュリンゲで引き上げる。 |
7/17 30mの白い滝の巻き。白ザレをトラバース。 |
7/17 沢に戻ると穏やかな渓相。 |
7/17 ナメをしばらく登る。 |
7/17 二俣。右俣を登る。 |
そこからはナメの多い平和な沢を登る。30m白い滝上から10分ほどで二俣。右俣に入る。右俣の滝を一つ越えると両岸黒い岩が覆いかぶさるように迫った7m滝が現れる。ここは左から巻く。
7/17 右俣に入るとすぐ両岸黒い岩が覆いかぶさるように迫った7m滝。 |
7/17 水量3:1の二俣の前に平坦な幕営地を見つけ、ここで幕営。 |
左から巻くとひらけた河原となる。左側が崩壊地となっており、アザミが多い。次の水量3:1の二俣の前に平坦な幕営地を見つけるが、水浸しになっていた。水量3:1の二俣まで偵察しに行くが、適当な幕営地が見つけられなかった。二俣の上、左俣に3人パーティーが見えたが、今日はどこまで登るのだろうか。私たちは時間は早いが水量3:1の二俣の下に張ることにする。水浸しだったが、Iさんが導水路を掘削し、レキの多い砂地だったのですぐ水が抜けて快適なテン場となった。標高は2260mあたり。その後、学生4人パーティーが追いついてくるかと思ったが、誰も訪れず静かだった。
夕方雨がぱらついたが、すぐやみほとんど濡れなかった。焚き火はすべての木が湿っていてあまり乾かず、常に扇いでいないと火が出なかった。それでも行動を早めに切り上げたからか寝るころには着ているものは乾いた。晩はマーボー茄子とご飯をいただいた。
2日目 |
2010年7月18日(日) 晴れ |
シレイ沢右俣2260m…観音岳・薬師岳間2760m…地蔵岳往復…薬師岳…南御室小屋…苺平…大ナジカ峠(泊)
シレイ沢右俣2260m | 4:30起床 |
6:27 | |
シレイ沢右俣2435m 水汲み | 7:18 |
7:25 | |
シレイ沢右俣2560m ザレ場 | 7:59 |
8:19 | |
観音岳・薬師岳稜線2760m | 9:00 |
9:28 | |
観音岳 | 9:40 |
9:42 | |
アカヌケ沢ノ頭 | 10:30 |
11:20 | |
観音岳 | 12:04 |
観音岳・薬師岳稜線2760m | 12:11 |
12:31 | |
薬師岳 | 12:44 |
南御室小屋 | 13:32 |
13:50 | |
苺平 | 14:20 |
苺平・大ナジカ峠間2150m | 15:22 |
15:42 | |
大ナジカ峠 | 16:08 |
21:00就寝 |
この日はシレイ沢を詰め、地蔵岳を往復した後、苺平から大ナジカ峠まで。Hさんは北岳へ一般ルートから登ることを望んでいたが、私は去年も一昨年も3年前も北岳に登っているので、それより歩いたことのない大ナジカ峠から千頭星山への縦走を提案した。Iさんもそれに賛同し大ナジカ峠から千頭星山を経て甘利山へ抜けるコースになった。
明るくなりはじめた4:30起床。昨晩の残りのマーボー茄子とご飯を食べ、朝ごはんのラーメンを食べた。テントをたたんでいると中高年夫婦らしき2人組が先へ登っていった。昨日私たちの一本後のバスで来たのだろうか。それより昨日の学生4人パーティーが遅いのが気になる。
7/18 水量3:1の二俣で左俣を行く。右俣はスダレ状でこの写真では見えない。 |
7/18 水量3:1の二俣からは登れる滝が多い。 |
水量3:1の二俣は左俣へ行く。右俣は沢の形がはっきりせずスダレ状に滝をかけていて美しい。これから向かう左俣はぐいぐいと高度を上げており、上流になってもシレイ沢らしい。次々と小滝をかけているが、どれも登れる滝で楽しい。やがて水が少なくなり、ザレた滝。慎重に足を置いて登る。2435m付近で水が途絶えそうになったので水汲み。この滝は登れないので左から高巻く。なんとなく踏み跡があるのでそれをたどるが、岩があったりしてなかなか沢に戻れない。100m近く登ってからトラバースし、ガレた沢に戻れた。
7/18 ザレたところを慎重に登る。 |
7/18 登れない滝で水汲み。 |
7/18 水汲んでから右岸を高巻き。 |
7/18 ザレたツメ。 |
登るにつれガレからザレに変わっていく沢を詰める。休みたいが、なかなか休めるところがなく、ザレから少しそれた樹林帯で休む。少し虫が多い。ザレをもう少し詰めると傾斜が緩くなり、樹林帯の草付きに変わる。ツメらしくない。しばらくすると左側に明るいところが見えてきたので、稜線が近いかと思い、そちらに移動するとザレた斜面だった。天気がよく、ジリジリと日差しが照りつけるので樹林帯を行けばよかった。しばらくザレの登りやすいところを斜めに登って行くとやがて稜線に出た。鳳凰三山の観音岳と薬師岳の間だ。振り返れば野呂川をはさんで北岳と間ノ岳が高い。
7/18 ザレの上は草の窪地を登る。 |
7/18 シレイ沢のツメ。北岳と間ノ岳を背景に登る。下には野呂川の林道が見える。 |