山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2010年山行一覧>上信越・野反湖〜稲包山
さて、秋である。秋は暑さもやわらぎ、積雪もなく、ヤブ漕ぎに適した季節である。例年、この時期には県境縦走を行っており、去年は四阿山から万座温泉まで歩いた。
今年はどこを歩こうかと考え、野反湖から三国峠まで歩くことにした。というのも去年は野反湖行きのバスが夏しか運行していなかったからだ。今年は野反湖行きのバスが10月20日まで運行されるとあって野反湖起点のルートにした。ゴールは白砂山方面で次に交通手段の得られる三国峠まで。しかし、最後に稲包山の先で道を間違え三国峠に達することなく浅貝に下りてしまった。
通った山は西から堂岩山、白砂山、上ノ間山、忠次郎山、上ノ倉山、セバトの頭、稲包山。稲包山を除いて標高2,000mを越える上信越国境の山である。谷川岳とほぼ同じ標高、同じ上越国境、エアリアマップでは同じ谷川岳に収録されているにも関わらず、人は少ない。交通の便が悪いこと、白砂山〜三坂峠はヤブで道が拓かれていないことが理由だろう。エアリアマップには「白砂山〜稲包山 国境稜線は猛烈なヤブ 篤志家向き」と赤字で書いてある。
実際、調べると残雪期の記録が目立つ。上野信弥さんも5月の連休に登っている。そんな中に大学ワンゲルが無雪期に登っている記録がときどき見られる。今回はそれらを参考にして歩いた。今回は野反湖→三国峠の向きに歩いたが、これは野反湖行きのバスの本数が少ないのと、全体的に下りのコースとなるためである。
通った山の中では白砂山が2,140mと最も高く、深田久弥も日本百名山に入れるかどうか迷っている。
一番迷ったのは上信越であった。ここには高さの第一級はないが、第二級がゴロゴロしている。しかもいずれも私の好きな山である。女峰山、仙ノ倉山、黒姫山、飯縄山、守門山、荒沢岳、白砂山、鳥甲山、岩菅山、その他、百名山の中に入っても少しも遜色のない山がたくさんある。
深田久弥「日本百名山」後記(新潮文庫,1986)P.425
交通の便が悪いためか、他の山に比べて人も少なく不遇の山と感じる。
なお、野反湖は県境と分水嶺が一致しない箇所で、野反湖は信濃川水系なのに群馬県である。ちょうど、荒船山近くの田口峠付近が利根川水系なのに長野県なのと反対である。もっとも野反湖は長野側が険しく群馬側からの方が拓けているので分からないこともない。
0日目 |
2010年10月7日(木) |
上野=高崎(泊)
今年は野反湖行きのバスが秋も走っているとはいえ、朝の便はスクールバスを兼ねるため平日しか運行していない。次のバスは電車の接続が悪い上、出発が遅くなるので、金曜日に休みをとり木曜夜から出発した。
上野で終電1つ前の新前橋行きに乗り、先頭車両の座席で寝る。本庄でハッと起きると隣の若い女性が「燃えつきた」ポーズでゲロ吐いていた。水たまりが私のサンダルまで侵食しているのに気付かなかったことに自分でも驚いた。彼女は新町あたりで下車していったが、私はニチャニチャ音がするサンダルを見ながらもう家に帰りたくなっていた。
高崎駅で下車し、5・6番線ホームの待合室で就寝。
1日目 |
2010年10月8日(金) くもりのちガス |
高崎=長野原草津口=野尻湖…白砂山…上ノ間山…忠次郎山…上ノ倉山(泊)
野反湖バス停 | 8:56 |
9:04 | |
地蔵峠 | 9:32 |
地蔵山 | 9:50 |
1860m水場 | 10:21 |
10:40 | |
堂岩山 | 11:00 |
白砂山 | 11:49 |
12:01 | |
上ノ間山 | 13:15 |
13:25 | |
1982m峰 | 14:12 |
1950m峰 | 14:41 |
14:52 | |
忠次郎山 | 15:48 |
忠次郎山北コル | 16:01 |
16:11 | |
上ノ倉山 | 17:00 |
19:00就寝 |
魚野川荒沢本谷のときも高崎駅の待合室で寝たが、今晩は寒くて5時頃起きた。高崎6:14発大前行きの列車に乗って長野原草津口へ。通学の高校生が多い。そうか今日は平日だ。平日に大の大人がザックもってウロウロしているのもなんなので居眠りし続ける。
長野原草津口駅でバスに乗り換える。六合地区のバスへの乗り換えが2分しかなく小走りで改札を抜けバスに乗車。一番奥の5番線乗り場にバスが控えていて乗車口が閉じていたのであせったが、ドアをノックすると乗せてくれた。乗客は私ひとり。途中で続々と小中学生が乗ってきて六合小学校と中学校で降りていった。結局小中学生以外の乗客は私だけだった。長野原草津口駅から1時間15分で終点野反湖。1,500円だった。タクシーに比べればずっと安い。下車する際、運転手さんに「戻りは何時ですか」と聞かれたが、「三国峠まで歩く予定なのでここには戻りません」と答える。たいがいの人は往復で野反湖に戻ってくるのだろう。
野反湖バス停には茶屋らしき建物と同じくらいの大きさのトイレがある。トイレは入るとロビーみたいなスペースがあり、前夜発ならここで寝ればよさそうだ。水はトイレの隣に蛇口があったが、トイレが中水道を使っていたので水は貴重なようだ。私は1リットル持っているし、堂岩山下の水場で汲む予定なのでここでは汲まなかった。バス停には私以外に車で来たらしい夫婦がいたが、いつの間にかいなくなっていた。
10/8 終点野反湖バス停で下車。北の空は晴れていたがこの後くもる。 |
10/8 ハンノ木沢にかかる木の橋を渡る。 |
白砂山へ出発する。天気はくもり。予報では晴れだが雲が低い。明日は天気が崩れると聞いているので今日中に進めるだけ進んでおきたい。山はうっすら紅葉が始まっていてところどころ赤い木が見える。笹の刈り払われた林を歩くと2本ほど車道からの道を合わせて急降下、ハンノ木沢に下りる。ハンノ木沢には木製の橋がかかっており、渡って地蔵峠への登り。途中に洞窟の入口があり、金網で塞がれていた。25,000分の1地形図には青の破線が野反湖から続いているので発電用の導水路の巡視路かもしれない。
地蔵峠の登りは急。息を切らせながら登る。途中中津川方面へ下る道を分ける。半壊したプレハブの小屋の横を通りすぎると地蔵峠。続けて堂岩山へ登る。歩きやすい刈払いの道が続く。登山道は明瞭だが、前日雨が降ったのか、ぬかるみがところどころにあり、避けて歩くのが面倒。1860mの水場で水汲みを兼ねてひと休み。北へ5分下ると北沢源頭の水場。稜線は近いが、水量は多い。ここで5リットルを汲む。水場の分岐は広くなっており、テントも張れそうだ。南側に展望があるが、空は完全に雲に覆われ、一部の山は雲に隠れていた。今日も天気はあまり良くなさそうだ。
10/8 標高1860mの水場で5リットルの水を汲む。広くなっていてテントも張れそう。 |
10/8 堂岩山から先はガスで視界がはっきりしない。 |
堂岩山へ登る。樹林帯を登って行くと堂岩山だが、くもりで展望はない。堂岩山から少し下ると八間山からの道と合流する。そこから白砂山までは樹木も低く、正面に白砂山を見ながら歩けるらしいが、ガスが出てきて展望はない。笹も濡れている。堂岩山からは刈払いの幅が狭くなり、少々ヤブっぽく感じる。赤く染まったツツジなどを見ながら登ると白砂山の山頂についた。途中、単独行を1人、2人組を1組見かけた。
白砂山はガスが濃い。アルペンガイドには佐武流山、苗場山、浅間山、白根山が見えると書いてあるが、何も見えない。これから向かう上ノ間山方面もまったく見えない。ここからヤブに入るのでその前にひと休み。山頂には大きな木の看板が倒れており、他に金属の看板がある。佐武流山、上ノ間山方面にはもう一つ看板が倒れており、以下のように書かれていた。
この先危険!
佐武流山、上ノ倉山、稲包山方面は登山コースがありません。
立ち入ると遭難するおそれがあり、大変危険です
いつもならサラッと流す注意の看板だが、こうガスが出て視界が悪いとなるとドキッとする。十分に休んでから出発。
10/8 白砂山にあった「この先危険」の看板。 |
10/8 白砂山からのヤブ。稜線上の潅木を避け、群馬側の笹ヤブを歩く。 |
上ノ間山へ向かう。笹の丈は腰から胸くらい。松もあるが、視界を遮るほどの高さではない。ガスで笹がやや濡れており、途中でカッパのズボンを履く。白砂山から250mほどで佐武流山へ尾根が分岐するはずだが、ガスでまったく見えない。新潟側に潅木が生えているのでそれを避けて群馬側の笹ヤブから歩く。そうやって歩いていたら2078m標高点の東側で南側の尾根に下りそうになるが、北側に正しい尾根を見つけ軌道修正。途中やせた尾根を歩き、ダラダラと斜面を登って行くと上ノ間山。白砂山から1時間15分。
10/8 2078m峰の下り。広い斜面で南側の尾根に入りそうになる。 |
10/8 上ノ間山の登り。 |
10/8 上ノ間山山頂。丸い。少し北側に青い看板があった。 |
10/8 上ノ間山山頂にあったGWVの看板。看板の前で休む。 |
上ノ間山は丸い山頂で広いのだが平坦地がない。幕営するなら積雪期の方がいいだろう。北側にGWVの青い看板があり、そこには「四阿山ー三国峠 上ノ間山2033 GWV '76 Summer」と書かれていた。新三郎で見た群馬大学WVの群馬県境全山縦走の看板の続きだろうか。ガスに混じって風も出てきて少し寒い。
10/8 上ノ間山の下り。潅木のヤブなので早めに群馬側の笹ヤブに出る。 |
10/8 上ノ間山の下り。群馬側の笹ヤブに出たところ。 |
上ノ間山から国境稜線は北へ向かう。北は潅木に覆われているが、真ん中に笹の道のようなものがある。しかしすぐ潅木に道を閉ざされてしまう。気がつけば小さな杉のような木に覆われており、なかなか進めない。コンパスを切るとどうも新潟側によっているようなので群馬寄りにヤブを漕ぐと笹の斜面に出た。群馬側は笹の斜面が続いているのでスタスタ下る。
10/8 1982m峰の登り。右手に小さなザレが見える。 |
10/8 1982m峰山頂。古びた赤布と木に打ち付けられた白い板がある。 |
鞍部から1982m峰へ登る。途中、群馬側にザレがあり道かと驚く。加えてここで一瞬ガスが薄くなり、右手に尾根が見えた。白砂川の源四郎沢と赤ツ沢の間の尾根だが、思いのほか近くに見えて現在地に少し自信がなくなる。登り切ると1982m峰。古びた赤布と木に打ち付けられた5cm角ほどの小さな板が山頂にあった。
10/8 1982m峰から1950m峰への下り。笹ヤブ。 |
10/8 1950m峰付近で休む。潅木が出てくる。 |
1982m峰から1950m峰へはしばらく東へ高低差のない稜線を歩き、そこから北へ下る。稜線にはKWV44という黄色と青の目立つ看板があった。稜線がガクンと落ちるところで北へ向かう。北側の斜面は笹に覆われており、一気に下る。1950mの登りは緩やかなわりに潅木が出てきて歩きにくい。下りにかかるところでひと休み。少し風が弱くなる。
忠次郎山への登り。笹のところがあったり、潅木のところがあったり急な登りでつらい。野尻湖から歩き始めて6時間。10m進んではひと息つくようなゆっくりしたペースで登っていく。やがて登りが緩やかになって忠次郎山に着くがなかなか看板が見つからない。稜線に沿って東へ歩いて行くとやっと見つけた。
10/8 忠次郎山の登り。笹ヤブと潅木のヤブ。 |
10/8 忠次郎山山頂。平らな山頂で西の端に看板があった。 |
もうひと踏ん張り、コルまでがんばる。下りは潅木混じりの笹ヤブ。潅木を避けながら歩く。稜線がはっきりしないので右へ左へジグザグを切りながら歩く。やがて笹だけのヤブになり、稜線もはっきりする。忠次郎山北コルには強い東風が吹いていて笹がたなびいていた。ガスも濃くなって寒い。寒がりながら休む。軍手がびっしょり濡れていて凍傷になった薬指が冷たい。
10/8 忠次郎山の下り。尾根がはっきりしない。 |
10/8 忠次郎山北コル。ガスが濃く、東風が強く、寒い。 |
上ノ間山への登り。また急な登り。潅木を避けながら笹ヤブを選んで登る。上の方に来ると潅木の中にときどき踏み跡っぽいところがあるが、別にここだけ人が歩いているというわけではなく、偶然だろう。登りきったあたりは地形図で見る通り稜線がはっきりしない上、小さな谷地形が新潟側、群馬側ともにありルートが分かりにくい。まっすぐ歩いていると下り気味になってきたので引き返すようにトラバースして戻る。鞍部っぽいあたりから登り返す。来た道を間違えて戻っていないか、慎重に方向を確かめながら歩く。冗談ではない。去年鬼怒沼山で間違えているからだ。途中で赤い金属板が打ち付けられているのを見て安心する。
10/8 忠次郎山北コルから登りつめたあたり。一番高いところに立つと新潟側の谷が食い込んでいて少し戻るようにして稜線をたどる。 |
10/8 上ノ倉山は平坦だが潅木が多く、意外と進まない。 |
上ノ倉山に近づくにつれ潅木の割合が増えてきて歩きにくくなる。山頂らしきところに出るが、これまたなだらかな山頂の上、潅木が生い茂っていて看板がどこにあるのか分からない。下り始めるあたりで上ノ倉山の看板が見つかった。
時刻は17:00。明日の天気が悪いことを考えると今日のうちにできるだけ進んでおきたいが、あたりは薄暗い。下手に道を間違えるのも嫌だし、真っ暗な中で幕営するのも怖いのでここでツェルトを張ることにする。
場所を探すのも面倒なので看板の目の前にツェルトを張る。だいぶ傾いているが、笹を倒して人ひとり寝るスペースを確保する。場所を選ばないところはツェルトの利点の一つだ。狭くて居住性は悪いが。レトルトカレーを温め、晩ごはんとする。ラジオをつけると明日にかけて気圧の谷が通過するとかで群馬は一日雨だそうだ。なんと悪いタイミングで入山したものかと嘆くが、ここまで来たら行くも戻るも距離は変わらないので明るくなると同時に出発することにする。19:00就寝。
2日目 |
2010年10月9日(土) 雨 |
上ノ倉山…大黒の頭…ムジナ平…セバトの頭…三坂峠…稲包山分岐…送電線塔…コベックラ沢…浅貝=越後湯沢=上野
上ノ倉山 | 4:14起床 |
5:49 | |
大黒の頭 | 6:03 |
ムジナ平 | 6:53 |
6:59 | |
セバトの頭 | 7:15 |
1766m峰 | 8:03 |
1563m峰 | 10:00 |
10:12 | |
1502m峰 | 10:52 |
三坂峠 | 11:44 |
稲包山分岐 | 12:26 |
12:40 | |
国境稜線を外れる | 13:05ごろ |
国道353号に出る | 14:15 |
雪ささの湯 浅貝下バス停 | 15:00 |
15:46 |
寝たのは19:00と早かったのに3:30の目覚ましに起きられず4:14に起きる。朝起きると雨は降っていないが、ガスは晴れず降りそうな天気だ。インスタントラーメンとアルファ米のきのこご飯を食べる。今日は雨であまり休めないからたくさん食べたが、途中で気持ち悪くなってしまった。
露で濡れたツェルトをたたみ、パッキングしたら出発。上ノ倉山から群馬側は笹ヤブなので群馬側を歩いていたらさっそく群馬側の尾根に引き込まれる。すぐに気がついて軌道修正。笹ヤブを少し下って登り返すと大黒の頭。ここからムジナ平へ一気に220m下る。
10/8 上ノ倉山の看板の前に幕営。 |
10/9 大黒の頭から東へ下る。尾根が分からずジグザグしながら下る。 |
大黒の頭からは稜線がはっきりしない。少し下っては右手の尾根が高いので右へトラバース、少し下っては左手の尾根が高いので左へトラバースするという風に下る。やがて稜線がやせてきて正解と分かる。しかしまた稜線が平らになると道が分からない。新潟側に下りそうになりながらも稜線の高そうなところを探し歩く。潅木と笹のミックスでできるだけ潅木を避けて歩く。その辺りで「がんばってください あるこう会」「野反湖→三国峠縦走 63.8.14〜16 あるこう会」という2つの看板を見かける。
10/9 ムジナ平手前。平らなので高いところを探して歩く。 |
10/9 ムジナ平で見かけたあるこう会の看板。 |
ムジナ平到着。水を汲みに行くことを想定して群馬側を歩いていたが、ここで少し考える。残りの水は2リットル。一方このペースで行けば今日中に三国峠まで抜けることはできるだろうし、雨だから水もほとんど飲まない。三国峠まで行けばトラバース道の途中ででも水は手に入るだろう。そう考えてここでは水を汲まないことにした。一人だと水を汲みに行ってもザックを置いたところに戻れないおそれもある。
10/9 セバトの頭の登り。割とヤブは薄い。 |
10/9 セバトの頭の下り。1860m付近から下りは広い斜面なので、ガスが出ていると迷いそうになる。 |
止まっていると雨で寒いので先を急ぐ。ムジナ平からセバトの頭へはなんとなくヤブが薄く、潅木を避けながら歩ける。なだらかなセバトの頭にはペンキのハゲた青い看板が木に打ち付けられていた。セバトの頭から東へ下る。しばらくして広い笹の斜面に出る。南の斜面に引き込まれないよう、東側の尾根を狙って歩く。ガスも濃く、うっかりすると尾根を見逃しそうだ。すぐ右隣に一段低い尾根のようなものもあり、地形図では見えないので不安になる。さらに筍山方面の尾根にも行かないよう稜線の南側に沿って歩く。尾根が細くなり、シャクナゲのヤブが目立ってくると1766m標高点。潅木のヤブで歩きにくい。途中、黒いジャケットのようなものが枝にかけられており、ちょっと怖くなる。
10/9 1766m峰付近で黒いジャケットを見かけた。 |
10/9 1766m峰の東、1700m付近が今回最も密なヤブであった。 |
1766m標高点の東、尾根がガクンと落ちるところがある。ここは鬱蒼としたコメツガの林になっており、今回の山行で最も苦労したところである。尾根もはっきりせず、あっちが尾根かなと思う方向にコンパスの方角と異なっているのを承知で下ったら案の定間違っていた。コメツガの林を抜けたら100mくらい笹のトラバースで復帰する。その先も稜線がはっきりせず、1563m峰西コルまでの間に2回新潟側に下りそうになる。
1563m峰の登りは緩急のある登り。1563m峰を抜けたあたりで腹がへったので飯にする。5時に食べた朝食からまる5時間何も口にしていない。パンを幾つか食べる。
10/9 1563m峰の登り。 |
10/9 三坂峠手前で登山道に出た。矢印はヤブから登山道に出た方向。 |
その先は稜線の折れ点を意識しながら迷わぬよう歩く。それでも1502m峰からの下りでも稜線がなだらかなため3回ほど新潟側に下りそうになる。ところどころ白い5cm角の板が打ち付けられていたり、赤布がぶら下がっているのを確認しながら歩く。
1449m三坂峠西のピークまで来てまた新潟側に下りそうになり、稜線に戻って下るとすぐ登山道に出た。道は三国スキー場から稲包山へ登る道であり、エアリアマップにも載っている登山道である。登山道はこの1449m標高点西のピークに登りつめるようにして、しかしピークを巻いていた。少々ヤブっぽいが道があるのとないのとでは大違いだ。
これであとは登山道を三国峠へ急ぐだけだ。時刻は11:44。急げば法師温泉の最終16:30のバスで今日中に帰れるかもしれない。気持ちがあせる。そうでなくてもボロいカッパで中はビショビショ、風呂であったまらないと風邪をひいてしまう。三坂峠で休むことなく、稲包山の登りにとりかかる。
しかし、稲包山の登りが意外にクセモノだった。西稲包山、小稲包山と伏兵が2つもあり、意外に高度を稼いでは落とす。小稲包山の登りでだいぶ息が切れ、シャリばてに気づく。1563m峰で食べたが足りないようだ。もうろうとしながら稲包山の分岐へ到着。稲包山はカットしてそこで休む。6個詰めのピザパンを飲み込むようにして食べ、飢えを癒した。
稲包山から振り返る国境稜線。(Mouseoverで国境稜線、地名表示、2010年10月24日撮影) |
小稲包山から間違えた道を望む。(Mouseoverで地名表示、2010年10月24日撮影) |
ここで残り時間の計算。現在時刻が12:40、法師温泉の最終バスが16:30なので残り時間は3時間50分。一方、必要な時間はエアリアマップによると4時間30分。40分の短縮をしなければならないが、不可能ではない。一切休まないで歩くことにする。
稲包山から下る。登山道をたどるだけなので地図を見る時間を惜しみ、ひたすら登山道を歩く。途中で送電線塔が現れ、現在地確認を行う。25,000分の1地形図には2本の送電線が国境稜線を越えている。そのうちの1本だろうと次へ進む。続いて2本の送電線塔を通過する。1つ多い気がするが、1本の系統に2本塔があるのだろうと解釈する。3本めの送電線塔の左に下る道があったのでそこを下っていく。
10/9 稲包山からキワノ平ノ頭の途中にあった送電線塔。この先で送電線塔の巡視路に迷い込む。 |
10/9 巡視路に迷い込み、コベックラ沢支流を渡る。 |
するとさっきまで巡視路の分岐にもあった看板が見当たらない。しかし刈払いの道はしっかりしている。なんかおかしいなと思いながらも進む先は北で合っているので進む。しかし高度をぐんぐん下げ、とうとう標高1200m、右手の尾根が高く見える。直感的には群馬側に下っている気がするのだが、進行方向にコンパスをきると北を差しており、新潟側に下っているようだ。いまさら1500mまで登り返す気は起きないのでこのまま下ることにする。
10/9 きれいに刈払いされた送電線塔の巡視路を下る。 |
10/9 コベックラ沢を飛び石で渡る。 |
どうやら私が迷い込んだ道は送電線塔の巡視路のようだ。ていねいに刈払いがなされており、登山道と遜色ない。こんなに立派な道ならば下界までつながっているに違いない。が、しかし途中でコベックラ沢の枝沢を渡り若干の登り道になる。念のために枝沢で水を汲んでおく。その後はコベックラ沢右岸の少し上を道が続いており、途中別の巡視路も分けながら下っていった。やがてカラマツ林になり植林にほっとし、コベックラ沢を飛び石で渡る。さらに湯之沢には傾いた危なっかしいつり橋があり手すりにつかまりながら慎重に渡った。その先で国道353号に出てあとは湯之沢沿いに下った。
10/9 湯之沢をつり橋で渡る。傾いている上、濡れていて滑る。 |
10/9 国道353号に出て苗場スキー場へ下る。 |
下り着くとそこは苗場スキー場で、雨の中テニスコートでテニスをする人や何しに来たのか車で民宿に着いた人がいた。苗場スキー場は登山口になることはないので、奇異の目で見られつつ、温泉を探す。めんどくさいからプリンスホテルにしようかと思ったら、秋は休業。少し探して雪ささの湯という風呂を見つけ、そこで一風呂浴びた。浅貝下バス停15:46の越後湯沢行きのバスに乗って越後湯沢から新幹線で帰京した。
天気が悪かったにも関わらず、野反湖〜稲包山のヤブ漕ぎを終えられてよかった。小さな道迷いはいくつかあったものの、谷に迷い込むこともなく1泊2日で抜けることができた。
最後の稲包山から三国峠の間で送電線塔の巡視路に迷い込んだのは少々軽率だったが、この区間はまた訪れることにしよう。天気については悪いながらもギリギリ風邪をひかない程度の寒さでよかった。今回のルートで白砂山〜三坂峠の間はエスケープルートがなく、あまりに天気が悪ければ危なかった。
あとはこのルートを無雪期に歩こうという奇特な方へのメモ。