山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2010年山行一覧>上越・魚野川荒沢本谷
北アルプス・薬師岳〜黒部五郎岳[3/3]←|→魚野川仙ノ倉谷西ゼン
荒沢本谷は上越・魚野川右岸の荒沢山の稜線から魚野川へ流れる沢である。水平距離は1400m、標高差は600mと小さいが、下ノ大滝、中ノ大滝、奥ノ大滝の3つの大滝を擁しており、登りがいのある沢である。
今回はIさんがリーダーで3人とも行ったことのない荒沢本谷を選んだ。滝あり、藪ありと時間がかかり、雨も降り、思いのほか充実した山行となった。
0日目 |
2010年8月13日(金) |
上野=高崎(泊)
朝7:10高崎発水上行きの列車には間に合わないので前日のうちに高崎まで詰めておく。上野23:07発高崎行きに乗り、高崎0:55着。ホームの待合室に新聞紙をひいて寝る。Iさんが最終の高崎1:37着に乗ってきて同じ待合室で寝たが、そのときには私はすでにいびきをかいていたという。
1日目 |
2010年8月14日(土) くもり時々雨 |
高崎=水上=土樽…荒沢本谷…荒沢山…カドナミ尾根…土樽
JR上越線土樽駅 | 8:42 |
8:52 | |
荒沢出合 | 9:23 |
9:40 | |
下ノ大滝下 | 10:18 |
下ノ大滝上 | 10:55 |
二俣 | 11:09 |
11:29 | |
中ノ大滝下 | 11:33 |
中ノ大滝上 | 12:00 |
奥ノ大滝下 | 12:07 |
奥ノ大滝上 | 12:51 |
奥の二俣 | 13:09 |
13:28 | |
前手沢コル | 14:47 |
荒沢山 | 15:58 |
16:25 | |
JR上越線土樽駅 | 18:05 |
18:30 |
高崎7:10発水上行き普通列車に乗り、列車の中で朝ごはんを食べる。水上で長岡行きに乗り換え、土樽で下車。天気はくもりで山は雲をかぶっていて見えない。トイレをすませて出発する。土樽駅から魚野川を渡り、右岸を下る。30分ほどで荒沢を渡る橋に出た。沢は薮がかかっていてあまりすっきりしない。橋のたもとから沢に降りて入渓準備。薮が沢にせまっていて狭い。
8/14 入渓点の橋から眺めた荒沢。薮が繁茂していて感じが悪い。 |
8/14 コンクリートの堰を越える。 |
沢装備に替えたあと、出発。最初は沢が藪や倒木で荒れていて雰囲気は悪いが、だんだんと小さな滝が出てきて面白い。途中1箇所高さ50cmほどの小さなコンクリートの堰があったが、どこかへ取水していたのだろうか。5mくの字滝は右から巻き、3mほどのCS滝は右側に挟まった木から登る。
8/14 5mくの字滝。右から巻く。 |
8/14 5mCS滝。チョックストーンの下に入り、細かいホールドをつかんでチョックストーンの右から上がる。 |
右に小さな枝沢を分け、5mCS滝。チョックストーンの下に入り、細かいホールドをつかんでチョックストーンの右から上がる。Iさんは水を避け、滝に近づかず右側のスラブをトラバースしていた。2mCS滝は足がかりがなく、なかなか登れない。Iさんが私の肩をスタンスにして水流沿いをはいあがった。その後、私がIさんにシュリンゲでひっぱりあげてもらう。最後にHさんだが、引っぱってもなかなか上がれない。ザックを先に上げて右側から引っぱり上げた。
8/14 2mCS滝。Iさんが私の肩をスタンスにして水流沿いをはいあがった。 |
8/14 下ノ大滝全景。上部は左に曲がって見えない。 |
その上で下ノ大滝。3段に分かれており、下段をIさんリード。水流右のカンテを登るが、あまりスタンスが見えない。ルートから手を伸ばしてなんとかかかるところに残置ハーケンがある。Iさんは慎重にしかし確実に下段を登っていった。続いてHさん、私。下段を登ったあと、変わって私がトップ。中段、上段をまとめて登る。中段は左手の岩が段々になり、水流が岩をなめているところ。階段状なので簡単に登れる。途中で傾斜のゆるいカンテを乗り越し、次は上段。上段はトイ状になっており左手の苔の生えた岩のクラックに足を突っ込み、樋沿いに登る。上段を登り切ったところで40mザイルいっぱいになったので支点作って確保した。
8/14 下ノ大滝下段を登るIさん。カンテを登る。 |
8/14 下ノ大滝中段を登るHさん。奥にビレイするIさん。 |
8/14 下ノ大滝上段トイ状を登るHさんとIさん。 |
8/14 5m滝は左手から登ろうとするが、ツルツルで滑り落ちてしまった。右から登る。 |
3m滝は左から巻き、手前に倒木のある2段2条5m滝は倒木の根をつかみながら登る。5m滝は左手から登ろうとするが、ツルツルで滑り落ちてしまった。改めて右から登る。その先で1mほどの小滝を2つほど登ると標高560mの二俣。左俣を行くが、右俣はガレで埋まっていた。ここでひと休み。水を浴びる滝が多いけれど、気温が高いので苦にならないなどと話す。
8/14 二俣で休む。右俣はガレている。 |
8/14 中ノ大滝がみえてきた。 |
5m滝を越えると沢が開けてきて中ノ大滝が見えてくる。中ノ大滝手前で10mナメ状滝。水流左のホールドをつかんで登る。中ノ大滝の前に出る。中ノ大滝は一番下の滝が黒いハングした滝で登れない。上が見えないので高さもよく分からない。「関東周辺の沢」によれば上越線の松川トンネル出口から見える滝だそうだ。
8/14 中ノ大滝は左手のルンゼから巻く。 |
8/14 中ノ大滝の巻き。ヤブ漕ぎ。 |
中ノ大滝は左手のルンゼから巻く。しばらくルンゼを登った後、トラバース。しばらくで別のルンゼに下りるのでそのルンゼ沿いに下るが、まだ滝の途中だったようでまたそのルンゼを登り返す。しかし滝の途中なのを確認したIさんが、ルンゼを離れて小さく巻き始め早々上がってしまった。私とHさんはルンゼをしばらく登り返していたので遅れてしまった。約30分の巻きであった。
沢に戻ると森の中だが、歩き始めるとまたすぐ開ける。そして次の奥ノ大滝が見えてくる。何段もの滝を連ねており、上部はスラブで登れそうにない。ここも左手のルンゼから高巻く。しばらくルンゼを登る。途中トップのIさんがルートミスで私がトップになる。「関東周辺の沢」にはすぐ立派な踏跡が出てくるのでそのまま登り、適当な場所から沢に降りる
とあるが、踏み跡は見つからず、適当なところでトラバースを開始する。
8/14 奥ノ大滝全景。上まで見えない。 |
8/14 奥ノ大滝も左手のルンゼから巻く。 |
藪の斜面をトラバースし、小尾根を3つほど乗り越す。水の流れるルンゼに出るのでそのルンゼ沿いに下ると沢に出られた。ルンゼの最後は小滝になっており、私はモミジの木にぶら下がって下りたが、Hさんは足をすべらせ落ちてしまった。でも滑りそう、という心の準備をしていたそうでケガはなかった。巻きには約45分かかった。
8/14 奥ノ大滝の巻き。45分のヤブ漕ぎ。 |
8/14 5mスダレ状滝。右側から木をつかんで登れる。 |
巻き終わりからすぐ5mスダレ状滝。右側から木をつかんで登れる。その後5m2段の滝。右から巻く。
奥ノ二俣に出て一休み。奥ノ二俣は左俣右俣いずれにも滝がかかっている。右俣は荒沢山に突きあげているそうだが、今回は前手沢のコルに上がる左俣を詰める。中ノ大滝、奥ノ大滝2つの大滝の巻きでだいぶ疲れてしまった。特にIさんが寝不足でへろへろになっていた。雨も降ってきて帰りの電車も間に合うかどうか怪しくなってきて不穏な空気になる。
8/14 奥ノ二俣。左俣を行く。 |
8/14 奥ノ二俣左俣の滝で顔を洗うIさん。 |
奥ノ二俣から左俣を行く。最初の3m滝は登れないので右から巻く。巻いていると見えてくる5mの滝も登れないので続けて右から巻く。左手に枝沢を分けて3mナメ状(ツルツルの滝)を登る。樋状でしかもヌメっており登れない。左手の草付きから登る。
8/14 奥ノ二俣すぐ上の5m滝。右から巻く。 |
8/14 3mナメ状(ツルツルの滝)。左の草付きから登る。 |
そのすぐ上の4m滝は段々になっているので簡単に登れる。6m3段滝はスラブで登れず右から巻くが、ドロドロの土が滑り登りにくい。木につかまって腕力で登る。さらに3mほどの滝が3つほど続く。2段樋状に流れている滝は一番上が難しく、左の草付きから巻く。
8/14 2段樋状に流れている滝は一番上が難しく、左の草付きから巻く。 |
8/14 最後の3m滝を越えると緑の草で覆われた谷になる。 |
最後の3m滝を越えると緑の草で覆われた谷になる。ガラン谷源流に似た雰囲気だ。もう滝はなく、この草付きを詰めていく。いくつか沢を分けるが、本流と思われる最も左の沢を登る。途中でこんもりとした樹林帯の中に入り、水を汲む。水はどこで汲んでも小さなゴミが浮いていたが、しかたないのでそれを1リットルだけ持って歩く。あとはひたすらルンゼを詰める。水を汲んでから20分で稜線。前手沢のコルではなく、少し北寄りに出てしまった。
8/14 水汲んでから藪の中の涸れ沢を詰める。 |
8/14 前手沢のコルに出たところ。藪で覆われている。 |
ここから荒沢山に登り、カドナミ尾根を下って土樽に下山する。荒沢山はガスがかかって見えないが前手沢のコルが標高1090m、荒沢山が1302mなので約200mの登りだ。水平距離は700mほど。しかし、稜線にはまったく道がない。赤テープすらない。確かに荒沢山から足拍子岳へ至る稜線は積雪期には歩かれているものの無雪期にはほとんど記録を聞かない。Googleで「荒沢山」を検索しても上位10位には積雪期の記録しか並ばない。エアリアマップにも中里〜足拍子岳〜シシゴヤノ頭縦走路は、廃道化し通行困難
と書かれている。こんなところを夏に行ったと私が聞くのは、私が大学1年のとき、ワンゲルの縦走パーティーが日高のヤブ漕ぎの練習と称して歩いたくらいだ。
「関東周辺の沢」では30分でコルから荒沢山まで抜けているが、どうみても無理である。歩き始めてら謎の白いヘルメットが落ちていたりして、いやな雰囲気になる。いっそのこと北へ越後中里へ下ったほうがいいのではないかと思うが、北も南も道がないのなら短いほうがいいだろうということで荒沢山に登る。ときどきザレて両側がすっぱり切れた稜線を歩く。左手足拍子川を挟んで足拍子岳の兜のような特徴的な形が見えた。私はだいぶバテていたが、沢を詰めるころからIさんが復活してきてグイグイとトップを務めて行った。
8/14 荒沢山山頂。トンボがたくさん飛んでいた。 |
8/14 カドナミ尾根の下り。藪だが足元は刈られている。 |
前手沢のコルから1時間10分で荒沢山。「関東周辺の沢」の30分の2倍以上かかる。現在時刻は16:00。カドナミ尾根も道がないと今日中に帰京できるかどうかもあやしい。携帯電話が通じるので、明日予定のあるHさんは家に電話していた。電話もできるし、下から関越自動車道の車の音も聞こえるのに、今日帰れるかどうか心配するのがばからしいような、でも下らないと帰れないという変なジレンマ。
8/14 カドナミ尾根で展望の開けたところ。下に関越自動車道が走っているのが見える。 |
8/14 カドナミ尾根登山口の炭焼き小屋。 |
荒沢山からカドナミ尾根を下る。足拍子岳へ行かないようにコンパスで方向を切りながら下る。山頂から刈払いがあり、期待が持てるが、主稜線である足拍子岳の方向へ下っていないか不安にもなる。しかし道が下り一方なので安心して下る。途中気が抜けたのか1220m付近で道を外して思わずヤブ漕ぎ。稜線に戻ると確かに道があった。このあとは滑りやすい道を下り、南カドナミ沢出合の炭焼き小屋の横に出た。あとは車道に出て土樽駅に帰るだけ。
土樽駅には18:05に着いた。水上行きの列車は18:21だと思っていたので待ち時間で着替えを済ます。そう思っていたら列車が18:12に来て出発してしまった。3人とも18:12の列車を18:21と勘違いしていたからだった。その前に15:21発の列車があったから勘違いしていたのもあるのだが、発車してしまってからではどうしようもない。しかたないのでタクシーを呼んで越後湯沢に出た。料金は3,550円。越後湯沢の中野屋でへぎそばを食べ、新幹線に乗って帰京した。それでも20:08の新幹線に乗って家についたのは23時頃であった。
「関東周辺の沢」には2級前夜発日帰りでこの谷は下ノ大滝、中ノ大滝、奥ノ大滝と三つの大滝があり、その前後には小滝を連ねていて、十分に沢登りを堪能できる沢である
とあるが、思いのほか厳しく、十分に沢登りを堪能できる沢
であった。2級だからといって初めての上越の沢に選ぶにはあまりオススメしない。具体的な特徴として羅列すると以下のとおり。
総合的に言うと、小滝の処理に時間をかけない技術力と、ヤブ漕ぎの体力を要求される沢といえよう。疲れた。