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2010年秋 - 北アルプス・大天井岳[1/2]


2010年11月20日(土)〜11月22日(月)
場所
長野県安曇野市(旧南安曇郡穂高町)・大町市・松本市(旧南安曇郡安曇村)
ルート
11月19日
新宿=(特急あずさ35号)=松本(泊)
11月20日
松本=穂高駅=中房温泉…燕山荘…燕岳…燕山荘(泊)
11月21日
燕山荘…大天井岳…大天井ヒュッテ…牛首展望台南2710m…大天井ヒュッテ…大天荘(泊)
11月22日
大天荘…大天井岳…燕山荘…中房温泉=穂高駅=松本=新宿(泊)
参加者
中山、I、A
参考文献

はじめに

 大天井岳は北アルプスにある標高2922mの山である。燕岳、西岳、常念岳から稜線を集める交差点みたいな山である。表銀座の縦走路にもあたっており、大天井岳を目的としなくてもついでに登ってしまうことが多い山である。私も2回登ったことがある。しかし、その標高は上にあげた3つの山、燕岳2762.9m、西岳2758m、常念岳2857mよりも高く、同じ北アルプスの薬師岳2926mと変わりない。山頂からは天上沢をはさんで槍ヶ岳と北鎌尾根の好展望が得られる。

 計画では年末合宿の偵察として燕岳、大天井岳、西岳、東鎌尾根、槍ヶ岳を縦走し、新穂高温泉に下る予定であったが、思ったより雪が多く、大天井岳の先で引き返してきた。

 2011年1月2日追記:年末の本番でも悪天に阻まれ、大天井岳で引き返した。詳細は下記リンクのとおり。

0日目

2010年11月19日(金)

新宿=(特急あずさ35号)=松本(泊)

 新宿21:00発の特急あずさ35号に乗って松本へ。Iさんは立川で合流。高尾を過ぎてしばらくで寝ていた。松本に着いてから、改札を出て正面の観光案内所のシャッターの前に銀マットを敷く。Aさんがコメを忘れたと言ってコンビニで2kgのコメを買っていた。Aさんが帰ってくる頃には私は寝ていた。

1日目

2010年11月20日(土) 晴れ

松本=穂高駅=中房温泉…燕山荘…燕岳…燕山荘(泊)

コースタイム
中房温泉7:28
7:45
第一ベンチ8:18
8:25
第二ベンチ8:51
9:06
第三ベンチ9:34
2100m付近9:55
10:17
富士見ベンチ10:36
合戦小屋11:10
11:33
合戦沢の頭11:56
2565m付近12:12
12:21
燕山荘12:48
13:54
燕岳14:28
14:48
燕山荘15:10
19:45就寝

 朝は思ったより寒かった。さすが松本。松本6:01発の列車に乗り、穂高駅6:28着。中房温泉行きのバスに乗り換える。バスには私たちのほかに5人ほど、途中、しゃくなげ荘というところでも5人ほど乗せて中房温泉へ向かった。終点中房温泉について、外に出ると寒い。気温2℃だった。フリースなどを着込んでいるが、なかなか脱ぐ気になれない。足元を履き替えて上は2枚着て出発。

 少し歩くと日が上がって来たからか暑い。1時間歩きたいと思っていたが、30分歩いた第一ベンチで体温調整のためひと休みする。下にカッパとスパッツを履いていたが、暑いので脱ぐ。その際、誤ってスパッツのゴムベルトを外してしまい、そのへんにうもれてしまった。しかし気づかずに休み、出発。

 バスできた人のほかに車で来ている人もいて、登山者は多い。前後見える範囲に誰かしらいるくらいだ。燕山荘の営業は11月23日までらしいので、それに合わせて登るひとが多いのだろう。

 第二ベンチでひと休み。ベンチの上には雪が積もっており、座れないので倒したザックの上に座って休む。第三ベンチあたりから地面にも雪が出てきてアイゼンを履き始める人が多い。第二ベンチで休んでから1時間歩いていないので先を歩くが、だんだんIさんとAさんが遅れてくる。Iさんは荷物が重くてのようだが、Aさんはただそれに合わせて歩いているだけで、疲れているというわけではなさそうだ。富士見ベンチの下、標高2100m付近でアイゼン履きがてら休む。

第二ベンチ
11/20 第二ベンチでひと休み。
第三ベンチ
11/20 第三ベンチを過ぎると雪が多い。

 富士見ベンチからは路面が雪で覆われていてアイゼンでないと歩けない。やがて合戦小屋に到着。休んでいる人が多く、私たちも休む。合戦小屋はだいぶ中を片付けているものの営業しており、カップ麺お湯つき350円で売っていた。小屋に付けてあった温度計は3℃を指していたが、日射がありシャツ1枚で足りるくらいの暑さだった。サングラスがないと雪目になるくらいの天気だった。

合戦小屋
11/20 合戦小屋では休んでいる人がたくさん。
燕山荘
11/20 燕山荘が見えてきた。

 合戦小屋から燕山荘へ向かう。途中で今回の目標である槍ヶ岳が樹間から見えた。穂先の形がよくわかる。樹林帯を抜ける合戦沢の頭でも休んでいる人が多い。ここから雪の稜線の先に燕山荘が見えた。あともう少しなので2565m付近までえっちらおっちら歩いて行くが、なかなかIさん、Aさんが追いついてこない。ここで後続を待つことにする。待っていたら10分も差がついていた。

 歩いては待ち、待っては歩くのは好きでないので、先に燕山荘に行くことにした。自分のペースで燕山荘にたどり着き、ザックを置いてIさんのザックを背負いに戻る。Iさんはペースを落としたものの確実に歩いており、燕山荘まであと少しのところであった。一応当初の目的通り、Iさんのザックを背負い、燕山荘まで上がり、幕営の手続きを済ませた。

燕山荘
11/20 雪の積もった燕山荘前。
燕岳
11/20 燕岳まで往復する。

 燕山荘の幕営指定地には6, 7張りのテントが張られていた。昨日誰かが張ったと思われる空き地を軽く整地して幕営。

 時間があるので燕岳の往復に向かう。弱い南風が吹いているのでカッパを着て出発。稜線は木がないからか雪も少ない。約30分で燕岳山頂。北は餓鬼岳や爺ヶ岳、南は槍ヶ岳から八ヶ岳、南アルプス、富士山まで見えた。非常によい天気で5月の連休のようだ。でも気温は低いのでテルモスのお茶を飲んであたたまる。

燕岳
11/20 燕岳から北の眺め。
燕岳
11/20 燕岳から明日歩く大天井岳方面を眺める。

 燕山荘に戻り、テントに入る。今回、準備段階で共同装備のスノーピークのガソリンストーブが壊れてしまったため、火器はAさん個人装備のMSRと共同装備のEPIのガスストーブを持ってきた。このMSRが強力でテントの中がすぐ暑くなる。しかも音が大きくてラジオが聞こえない。Iさんと私が何度か足がつり、狭いテントで足を伸ばした。Aさんは足がつったことがないそうだ。

 やがて夕暮れとなると東の空に満月に近い月が出て、遠くの空がうっすらと紅色に色づいた。19:45に寝たが、夜23時頃にトイレで一度起きた。夜は暑くもなく寒くもなかった。

2日目

2010年11月21日(日) 快晴

燕山荘…大天井岳…大天井ヒュッテ…牛首展望台南2710m…大天井ヒュッテ…大天荘(泊)

コースタイム
燕山荘4:00起床
7:06
大下りの頭8:03
8:15
2660m付近9:13
9:31
大天井岳11:00
11:24
大天井ヒュッテ11:58
12:06
2720m12:30
12:45
牛首展望台13:00
13:02
2720m13:07
牛首展望台13:21
2710m13:51
14:10
大天井ヒュッテ14:50
15:09
大天荘16:35
19:25就寝

 4時起床。テントをたたむ頃からIさんがカッパの下が見当たらないという。昨日の燕岳の往復で私のナップザックに背負ったのが最後だったのだが、テントの中にないという。いったんテントをたたんで、私のザックをひっくり返し、Aさんのザックをひっくり返すものの見当たらない。燕岳まで探しに行くかという段で、Iさんが燕山荘のカウンターに聞きに行ったら落とし物として見つかった。

燕山荘
11/21 燕山荘前のテント場。
槍ヶ岳
11/21 槍ヶ岳を見ながら大天井岳へ向かう。

 仕切りなおして7:06出発。今日も天気はよく、目的の槍ヶ岳ほか高瀬川をはさんで烏帽子岳、鷲羽岳、三俣蓮華岳などの裏銀座縦走路もよく見える。大下りの頭までは高低差の少ない稜線歩き。天気が良いのであちこちで槍ヶ岳の写真を撮っている人がいる。大天井岳までは往復する人が多いようで、踏み跡もしっかりしている。蛙岩は私は冬季ルートの岩の中、2人は安曇平側を巻いてトラバース。

蛙岩
11/21 蛙岩を通過。
大下りの頭
11/21 大下りの頭を振り返る。

 大下りの頭までで1時間歩いたので、ここでひと休み。北鎌尾根がよく見える。槍ヶ岳周辺は真っ白でだいぶ雪が積もっていそうだ。大下りの頭からは夏道を下り、登り返す。ところどころ夏道がよく分からないところは稜線伝いを歩く。2699mピーク手前でひと休み。Iさんがだんだん遅れてきたので、Iさんの持っているテントを預かる。

大天井岳
11/21 大天井岳が見えてきた。
切通岩
11/21 切通岩の鎖場は雪が積もっていなかった。

 2699mピークからは水俣川側に伸びる夏道を歩く。切通岩の鎖場は雪がなく簡単に通過できた。少し登り返して大天井ヒュッテへの巻き道と大天荘への道との分岐点。大天荘側へ進む。少し登ると朝5時半に燕山荘を出発したという単独行の人とすれ違う。冬季は雪崩を避けるため夏道の大天荘へのトラバース道を使わず、大天井岳へ直登するのだが、誤って夏道に入ってしまったそうだ。その情報を聞いて直当ルートを選んで歩く。だいぶ急な斜面で道ははっきりしないが、手を使うようなところはない。適当にジグザグを切って登る。最後は水俣川側から上がってくる尾根を乗っ越し、山頂に出た。

大天井岳
11/21 冬季の大天井岳の登りは直登。
大天井岳
11/21 大天井岳から南の眺め。

 大天井岳の山頂には単独行の人が2人いた。2人とも荷物を見ると燕山荘から往復のようだ。天気はいが、山頂にいると弱い南風を受ける。北側斜面で小さくまとまって休む。

 大天井岳から大天井岳ヒュッテへ下る。ここからはトレースがない。岩が出ていて少々下りにくいが、その先の岩だけのところのほうがが下りにくかった。南側斜面だけあって下の方は雪がまばらだが、細かいレキの斜面なので歩きにくい。雪のついたところを選んで下った。最後は大天井岳を西側から巻く道に合流して下った。

大天井岳
11/21 大天井岳から大天井ヒュッテに下る。トレースはない。
大天井岳
11/21 大天井ヒュッテへの下り。南側斜面なので雪が少ない。

 大天井ヒュッテは閉まっていて周りは雪で覆われていた。軒下でアイゼンを直して西岳方面へ向かう。今度は北側斜面になり、ヒザほどまで雪がある。しかもハイマツがあってズボズボ落ちて歩きにくい。Iさんがわかんを持ってきているので、Aさんがそれを履いて道を作る。その途中でこの山行を続行するかどうか迷う。これだけの雪があると今日中に西岳にたどりつくことは難しい。明日以降天気が崩れることを考えると、予備日もないしあさってまでに下山できるか分からない。いったん、ここにザックを置いて空身で登り切ることにした。

牛首展望台
11/21 牛首展望台への登り。ハイマツのヤブと雪のミックス。
牛首展望台
11/21 牛首展望台。行くか引き返すか悩む。

 登り切ったところが牛首展望台2766m。槍ヶ岳の眺めがよい。ここからみると貧乏沢のコルが見えず、西岳までなんとかたどり着けそうに見えた。改めてザックを取り戻して西岳へ向かい、行けるところで幕営することにする。

牛首展望台
11/21 牛首展望台から少し下る。
牛首展望台
11/21 貧乏沢のコル手前2710m付近で引き返すことにする。

 牛首展望台からはまた南側斜面になるので、雪が少なく、ハイマツのヤブこぎになる。これはこれで時間がかかる。適宜ザックを下ろしてトレースを作りながら下って行くが、なかなか進まない。途中、2710m付近のはげたところで休む。そこから見る貧乏沢のコルは思ったより深いギャップとなっており、下って登り返すと相当時間がかかりそうだ。途中で幕営できそうなところも見えない。ここで計画の続行を諦める。

 あとから振り返ってみれば、引き返したことそれ自体は問題ないと思う。予備日がない、明日あさっては天気が悪いという条件では引き返したほうが無難である。しかし、引き返し、続行、引き返しと判断を二転三転させたのはよくなかった。ベストの選択は牛首展望台で引き返しを決定し、ザックを置いて空身で貧乏沢のコルまで偵察するのがよかったと思う。

大天井岳
11/21 大天井ヒュッテへ引き返す。
大天井岳
11/21 大天井ヒュッテから大天荘へ登る。

 しばらく休んで来た道を戻る。大天井ヒュッテの冬季小屋にホワイトガソリン1リットルと日本酒1.8リットルをデポし、今日中に大天荘まで戻ることにする。大天荘への夏道はさほど雪がなかったので、夏道をたどる。しかし、この夏道が見た目より長く急であった。すでにバテぎみのIさんも、Iさんの分のテントを背負って重い私も遅れ気味になる。そういえば前に偵察で歩いた時もここではバテそうになった。

大天井岳
11/21 槍ヶ岳に日が暮れる。
大天荘
11/21 なんとか日暮れ前に大天荘の冬季小屋にたどりついた。

 大天荘に着くころには日もかげり、冷たい風が吹いていた。大天荘の冬季小屋には2人組と単独行の計3人が泊まっており、私たち3人も泊めてもらうことにした。豚汁とご飯を作ったが疲れてしまってあまり食べられず、ご飯は半分ほど明日に持ち越した。


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