山ノ中ニ有リ山行記録一覧2009年山行一覧>上越・仙ノ倉山

2009年夏 - 上越・仙ノ倉山


2009年8月8日(土)、9日(日)
場所
群馬県利根郡みなかみ町(旧・新治村)
ルート
8月8日
東所沢=(関越道)=水上IC=(関越交通バス)=川古温泉…越路避難小屋(泊)
8月9日
越路避難小屋…仙ノ倉山…平標山…大源太山…川古温泉
参加者
H、K、私
参考文献

はじめに

 今年はよく谷川連峰に出かけている。上越・日白山谷川岳マチガ沢谷川岳一ノ倉沢衝立岩中央稜一ノ倉岳中芝新道谷川岳に続いて6回目である。毎週谷川岳に通うクライマーには到底及ばないが、私の登山人生ではこんなに谷川連峰に登る年は初めてである。

 仙ノ倉山は谷川岳から平標山まで続く谷川連峰の西の方に位置する。谷川連峰で唯一標高を2000mを越えている峰であり、谷川岳よりも標高が高い。それもあって日本百名山では深田久弥が「谷川連峰は仙ノ倉山や万太郎山、朝日岳など準一級の山がたくさんあり選定に迷った」(うろおぼえ)と述べている山の一つでもある。深田久弥も「日本百名山」で選定に迷った第二級の山としてあげている。

 一番迷ったのは上信越であった。ここには高さの第一級はないが、第二級がゴロゴロしている。しかもいずれも私の好きな山である。女峰山、仙ノ倉山、黒姫山、飯縄山、守門山、荒沢岳、白砂山、鳥甲山、岩菅山、その他、百名山の中に入っても少しも遜色のない山がたくさんある。

深田久弥「日本百名山」後記(新潮文庫,1986)P.425

 川古温泉から赤谷川本谷を遡行する予定だったが、入渓時刻が遅いのと天候がいまひとつだったのとでマワット下のセンで引き返し、登山道を伝って毛渡乗越に出た。越路避難小屋に泊まり、翌日仙ノ倉山、平標山、大源太山を縦走し、川古温泉に戻った。

1日目

2009年8月8日(土) くもりのちガス

東所沢=(関越道)=水上IC=(関越交通バス)=川古温泉…越路避難小屋(泊)

コースタイム
川古温泉9:46
10:02
林道終点11:20
11:35
赤谷川渡渉点12:20
12:47
マワット下のセン13:08
13:15
赤谷川渡渉点13:44
14:08
2本目の枝沢14:51
15:00
3本目の枝沢
水汲み
15:12
15:19
毛渡乗越16:18
越路避難小屋16:46
21:20就寝

 7時東所沢集合。関越道を伝って水上インターチェンジで下り、川古温泉へ。温泉の手前に車を停めて出発。川古温泉の横を通ると林道にゲートがあり、アスファルト舗装から砂利道に変わった。砂利道は途中でいくつかの枝沢を巻きながら登っていく。前日降った雨で砂利道に水が流れているところがあり、靴が濡れていく。帰りにとった渋沢への道を分けるといよいよ道は荒れてきて川のように水が流れていたり、ヤブで覆われていたりしている。ときどき日帰りハイキングらしき人たちを見かけた。

毛渡乗越への道
8/8 赤谷川林道終点から毛渡乗越への道、渡渉点まで巻き道を行く。道はよくない。
雄滝雌滝
8/8 渡渉点までの道から雄滝(左)と雌滝(右)を見る。

 金山沢が左から合流するところが林道終点。そこで沢タビに履き替える。ここからも入渓できるが、時間が遅いので毛渡乗越への道を行き、徒渉点から入渓する。歩き始めてすぐ広い幕営適地があり、天気の悪さもあって泊まりたくなるが先を行く。毛渡乗越への道はエアリアマップにもアルペンガイドにも載っているコースだが、前日の雨のためか単に人が歩かないためか、道幅が狭く歩きにくい。ブナの木穴沢を渡り、赤谷川沿いの高巻きになる。向かいに雄滝、雌滝が並んで赤谷川に水を落としている。かなり高いところから落ちており美しい。ロープを伝って下り気味になり、やがて赤谷川の河床に降り立つ。ここが登山道の渡渉点である。右岸にエビス大黒沢が3段の滝をかけて落ちていた。

渡渉点
8/8 赤谷川本谷渡渉点。左に渡る。
赤谷川本谷遡行
8/8 赤谷川本谷遡行。

 渡渉点でハーネスをつけ、遡行開始。川の水は多く、ところどころ腰ほどまで浸かる。遠くには3本滝が見え、もっとも奥の滝で落差が100mほどありそうだ。遡行で少し難しいところがあり、Kさんにシュリンゲで引っ張ってもらう。深いところはあるが、うまくへつっていける。渡渉点から30分でマワット下のセンに着く。手前に青く深い淵があり、奥に幅5m、落差10mほどの滝が見える。ここで先へ進むか戻るか相談する。時間が遅く、雨が降りそうだが、ビバーク覚悟で入渓するか、諦めて渡渉点に戻り、登山道を登って毛渡乗越に上がるか。私はKさんもいう通り、安全志向なので遡行中止を主張したが、Hさんは行きたさそうだし、Kさんは悩んでいるしで30分くらい考える。結局遡行をやめ、登山道を毛渡乗越に上がることにした。

マワット下のセン
8/8 マワット下のセン。ここで引き返す。
エビス大黒沢
8/8 エビス大黒沢にかかる滝。

 来た道を戻る。途中、岩の上でひなたぼっこしているヘビを踏みそうになり驚く。でもヘビの方が驚いているようだった。行きに苦戦したところは私は行きと違うところを岩から飛び石で下りた。Kさん、Hさんはザックを先に下ろし、空身で行きと同じところを下った。

 渡渉点に戻ってからハーネスを解除し、登山道を登る。エビス大黒沢の左手を高巻く。エビス大黒沢にかかる滝はけっこう高く、50mくらい登る。土もゆるんでいて滑りそうになる。エビス大黒沢を渡ってからだいぶ登り、トラバース。また越ノ滝沢の谷にぶつかってから高く登る。25,000分の1地形図に比べてだいぶ高いところを歩いているようだ。この辺で通り雨に降られる。遠くに赤谷川本谷の巨岩地帯が見えた。越ノ滝沢の3本の枝沢のうち、1本目は涸れ沢、2本目は水が流れていた。ここで一本とる。

エビス大黒沢
8/8 毛渡乗越への登山道でエビス大黒沢を高巻く。
赤谷川本谷
8/8 毛渡乗越への登山道から見る赤谷川本谷。

 道は笹などが生え始めてはっきりしない。あまり歩かれていないようだ。越ノ滝沢の3本目の沢を渡るところで水を汲んでおく。岩に⇔のペンキがついていた。ここから急登。刈り払いの後ははっきりしているが、足下には笹が生えていて野に帰り始めた道である。登るに従い、ガスが濃くなってくる。ときどき足下をピョンピョンとカエルが跳ねる。やがて樹林帯を抜け笹原の斜面になる。通り雨があり、カッパを着るが、気温が高く暑い。やがて草原になってきて傾斜が緩くなってくる。でも足下が滑りやすい。滑るので笹をつかむが、ときどき笹にまぎれたアザミをつかんでしまい手を何カ所か切ってしまった。草原を登りきると毛渡乗越。看板が引っこ抜けて草の中に倒してあった。

越ノ滝沢
8/8 越ノ滝沢2本目の沢で一本とる。
天神平
8/8 毛渡乗越への登り道。笹ヤブが生い茂っている。

 ここから万太郎山方面にある越路避難小屋へ向かう。地形図上では緩やかな登りだが、足下が泥でよく滑るので登りにくい。道においかぶさるように草が生い茂っていて足下も見えない。思ったほど進まずエアリアマップの示す10分をとうに越え、そろそろ避難小屋があってもいいころなのになかなか見えない。うんざりして避難小屋なんてないんじゃないかと思ったころ、越路避難小屋が見つかった。ほっとして中に入る。

越路避難小屋
8/8 ドーム型の越路避難小屋。
水汲み
8/9 翌朝、毛渡乗越から群馬側に水を汲みにいく。

 避難小屋はドーム状の金属製で、玄関脇に土間があり、その奥にすのこで敷いた居住空間があった。幅、奥行きとも4mほどで横に膨らんでいるので3人で使うには広く感じる。ほかに人はおらず、テントを張ろうと思ったが、テントにポールを通すスペースはなく、断念。Kさんがシュラフもシュラフカバーも持ってきていないとのことなのでテントをシュラフカバー代わりに使ってもらう。金属の中なのでラジオは通じなかったが、ドアにアイゼンの前爪であいたと思われる穴に針金を通し、ラジオとつなげるとFM放送をきくことができた。その晩は酒を飲み夜が更けていった。雨はやみ、ガスになっていた。稜線を越える風が吹いていた。

2日目

2009年8月9日(日) くもりときどき雨

越路避難小屋…仙ノ倉山…平標山…大源太山…川古温泉

コースタイム
越路避難小屋4:00起床
5:20
毛渡乗越
水汲み
5:38
6:10
エビス大黒ノ頭7:08
7:24
仙ノ倉山8:15
8:26
平標山9:04
9:12
平標山の家9:34
大源太山手前鞍部10:08
10:14
大源太山10:24
黒金山10:44
渋沢林道終点11:23
12:02
川古温泉13:12
14:30

 4時起床。今日は仙ノ倉山を越え、平標山、大源太山まで縦走して川古温泉に戻る。8時間半の行程だ。明け方はガスっていたが、出発するころにはガスが晴れ、ただのくもりになった。

 まず昨日登ってきた毛渡乗越に下る。毛渡乗越には群馬側から雲がかかっており、その奥にエビス大黒の頭、仙ノ倉山が見える。見える仙ノ倉山は遠く高い。群馬側は雲海で覆われているが、新潟側はくもりだが、景色は望め岩原スキー場まで見えた。越後湯沢は尾根の向こうに隠れて見えないようだった。

 毛渡乗越で水を汲みにいく。昨日Kさんがチョロチョロと水の流れる音を聞いたとのことだ。群馬側赤谷川側へ下る。草原から笹の斜面に変わり、1本目の枝沢を過ぎてしばらくで2本目の枝沢の上に出る。そこで枝沢に下っていくと水が流れていた。ここで1人2リットルの水を汲んでおく。道からは見えず、笹の斜面を分け入るのでポリタンだけでなくポリタンを入れる袋も持っていった方がいい。毛渡乗越から往復30分であった。

 毛渡乗越からエビス大黒の頭を経て仙ノ倉山へ登る。450mの登りだ。エビス大黒の頭までは急な登りが続く。1670m標高点に登り着いた後も鞍部に下る。群馬側は一ノ倉沢のような岩のガケになっており、ガスで底が見えなかった。鞍部手前から見るエビス大黒の頭は濃い緑色の笹で覆われていて、緑色の布をかぶされたようであった。水汲みの往復でジャージが濡れてしまい、股擦れの症状を呈してきて痛い。

 エビス大黒の頭で一休み。依然として群馬側がガスで覆われていて、新潟側はガスがなく展望がある。足拍子岳や大源太山、尾瀬や上州武尊山あたりの山まで見えた。山頂の看板の下には青い色鮮やかなカミキリムシみたいな虫がいてうろうろとはっていた。風もなく稜線を歩いている人はおらず静かであった。

エビス大黒の頭
8/9 エビス大黒の頭の登り。
仙ノ倉山
8/9 エビス大黒の頭から見る仙ノ倉山。

 エビス大黒の頭から仙ノ倉山へ向かう。ところどころ小さな岩場を下り、エビス大黒避難小屋に着く。エビス大黒避難小屋も越路避難小屋と同じドーム状の金属製で中も同じ構造だった。

 仙ノ倉山の登りは特にピークがなく、エビス大黒の頭よりは楽に登れた。登るにつれニッコウキスゲや名前の分からない釣り鐘状の花があちこちに咲いていて文字通り華やかである。斜面がだんだん緩くなってきて仙ノ倉山に着いた。

仙ノ倉山
8/9 仙ノ倉山の登り。花が多い。
仙ノ倉山
8/9 広い仙ノ倉山山頂。

 仙ノ倉山は平らな山頂でテントが20張りくらい張れそうな広さだった。もっとも谷川岳〜平標山は幕営禁止である。せっかくの山頂だが、ガスで覆われていて展望はない。端っこで休んでいたら平標山から人が来た。どうやら平標山から往復してきているらしい。そう思っていたら次から次へと人がやってきた。休みを適当に切り上げ平標山へ向かう。ここまでまったく登山者を見ていないからあまりのギャップに驚いた。

 仙ノ倉山から木材で整備された階段を下り、平原に降り立った。南アルプスの百間平会津駒ヶ岳中門岳のような稜線上の草原である。木道を歩き、木の階段を登ると平標山に着いた。ここまでの人の多さに比べて人がいない。仙ノ倉山であった人たちはたぶん前日平標山の家に泊まって今朝から仙ノ倉山往復をしているのだろう。平標山からは清津川の対岸に去年登った苗場山が見え、北に今年春に登った日白山と長釣尾根が見えた。でも一番眺めがいいのは仙ノ倉山へ続くなだらかな緑の稜線であった。

仙ノ倉山
8/9 平標山から仙ノ倉山を振り返る。
平標山
8/9 平標山から平標山の家へ下り、大源太山へ向かう。

 平標山から大源太山へ向かう。道はよく整備されており、木でできた階段を下る。下り着くと平標山の家。平標山の家は立派な小屋で水もあった。おそらく笹穴沢の源頭から水をひいているのだろう。平標山の家からはここまでほど整備されておらず木道はなく刈り払いだけであった。ぬかるみもあって少々歩きにくい。大源太山と三国山の分岐を大源太山へ向かう。前方を人が歩いているので大源太山の手前の鞍部で一本とった。虫が多くて休みづらい。

大源太山
8/9 平標山の家から大源太山へ。刈り払いはあるが、ぬかるみ等あってあまり歩きやすくない。
大源太山
8/9 大源太山山頂近く。平らで幅の広い刈り払いがある。

 鞍部から大源太山に登る。大源太山は平坦で細長い山頂で、山頂の標は東端にあるため、なかなかたどり着かない。たどりついた大源太山には若い人たち5人くらいが休んでいた。国境稜線から離れた大源太山に来るとは通な人たちだ。道は幅3mくらいに渡って刈り払いがありヤブを漕がなくてよいのだが、あまり踏まれておらず刈った笹がそのままだったり、下草が生えていたりして足場が悪い。

 黒金山を過ぎ、渋沢の林道まで750mの標高差を一気に下る。傾斜は急で滑りやすい。下っているとつい足が速くなり、すっ転びそうになる。途中、水場への道を分け、さらに下る。途中から尾根を外れて斜面をジグザグに下る。ジグザグの道がまた狭くておとといの雨で崩れやすい。また転びそうになる。途中、タマゴタケを4株見つけた。赤くて色鮮やかで毒キノコのようだが、食べられるキノコらしい。渋沢の林道に下り着いて休む。

下り道
8/9 黒金山から渋沢の林道への下り道。土の滑りやすい斜面で、Hさんが滑落する。
渋沢林道
8/9 渋沢林道にたどり着いたところ。

 すぐKさんも追いついてきて2人で休むがいっこうにHさんが下りてこない。「遅いな」と2人で話すが20分経っても下りてこないのでKさんがようすを見に空身で向かった。10分ほどしてHさんのザックを背負ったKさんが下りてきてすぐHさんが追いついてきた。聞くと200mほど滑落したとのこと。Hさんの荷物を2つに分け一部を私が持ち、残りをザックに入れたままKさんが自分のザックの後ろに背負って歩いた。私が先行し、日曜日でもやっている病院を川古温泉に尋ねに行った。

 1時間強で川古温泉に着き、温泉の方に病院を尋ねると月夜野病院が営業しているとのことであった。しかしそのあとKさんとHさんが追いついてきて、Hさんはそんなにケガはひどくないということだったので月夜野病院には寄らなかった。帰りは川古温泉に入った。日帰り1人1000円と決して安くはないのだが、館内の看板によれば加水も加温も循環濾過もしていないそうだ。ところどころ渋滞のある関越道をたどり帰京した。

おわりに

 赤谷川本谷は一度行ってみたかったが、今回残念なことに遡行することができなかった。しかし谷川連峰の西の方はまったく登ったことがなかったので、仙ノ倉山、平標山を登れてよかった。いずれ谷川岳から三国峠までの県境縦走を果たしたい。

(2009年8月11日記す)


山ノ中ニ有リ山行記録一覧2009年山行一覧>上越・仙ノ倉山

inserted by FC2 system