山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2009年山行一覧>上越・日白山
谷川岳西の平標山から北に魚野川と清津川を分ける長い尾根が伸びている。その途中にある山が今回登った日白山、タカマタギである。標高はそれぞれ1631m、1529mあり、山体も大きいが、頂上は平らであり、谷川岳や足拍子岳など険しい山に比べると少々見劣りがする。またアルペンガイドにもエアリアマップにも夏道はなく、残雪期に登られる山のようだ。なだらかなところと残雪期の登られる点で朝日岳から巻機山の国境稜線に似た雰囲気である。
今回コースは土樽駅からの周回コースである。大滑沢の左岸から尾根に取り付き、棒立山を経てタカマタギとの鞍部に幕営、翌日タカマタギを越えて日白山から長釣尾根を下り、毛渡沢ぞいの林道を下って土樽駅に戻った。
今回の目的は雪洞を作ることにあり、前回私が神楽ヶ峰で雪洞を作った経験を生かしたかったが、作った雪洞が自然崩壊してしまい、失敗に終わった。
0日目 |
2009年4月10日(金) 晴れ |
東所沢駅集合=土樽駅(泊)
JR武蔵野線東所沢駅で集合し、所沢ICから関越道を通って湯沢ICで下りる。土樽駅に着くとそこには既に3人パーティーが寝ていた。私たちは銀マットを敷き、少々酒を飲んで2:40就寝。
1日目 |
2009年4月11日(土) 快晴 |
土樽駅…棒立山…タカマタギ…棒立山・タカマタギコル(泊)
JR土樽駅 | 6:40起床 |
7:50 | |
大滑沢出合 | 8:36 |
8:45 | |
棒立山東尾根 890m | 9:53 |
10:03 | |
棒立山東尾根 1040m | 10:53 |
11:11 | |
棒立山 | 12:14 |
12:36 | |
棒立山・タカマタギコル | 12:42 |
21:40就寝 |
6:40に起き、荷物をまとめて出発。私は雪山だと思ってワカンをもってきたが、新雪はないというのでワカンを置いていった。関越道の下を階段で下り、毛渡橋へ下る。毛渡沢には釣り人が数人糸を垂らしていた。雪解け水のせいか水量は多いように感じる。道ばたにはフキノトウが咲いており、春らしい。
590m標高点のところで尾根に取り付くか、大滑沢出合まで毛渡沢沿いに歩き、そこから尾根に取り付くか相談するが、後者の方が尾根が短いので速いだろうと判断する。その横でおじさんが1人、590m標高点のところから尾根に取り付いていた。
4/11 大滑沢出合。沢の右側を行く。 |
4/11 尾根取り付き。雪が少ない。 |
大滑沢の出合で一休み。谷はさほど深くなく、雪も着いているので登っていけそうだ。ただ少し登った先がよく見えない。沢のわきを登っていくと尾根の末端を見つけ、そこを登っていく。尾根には雪が着いておらず、北側斜面に残っている程度である。尾根上を登るが、ヤブがひどく苦戦する。途中から笹も現れた。雪が3mくらい積もっていればそんなに大変ではないと思うのだが、尾根が細いからか雪はほとんどない。
890m付近の雪面で一休み。樹林帯とはいえ、木々に葉は残っておらず太陽が照りつける。ヤブ漕ぎなので登っているとかなり暑い。雪を口に入れたり雪で手を洗ったりして涼をとる。大滑沢をはさんで向かいにタカマタギの東尾根があるが、急な斜面でときおり雪崩が起きていた。
4/11 ヤブを登るKさん。 |
4/11 北の尾根と合流したところから棒立山を見る。 |
890m付近で休んだ後、細い稜線を行き、10:35ごろ590m標高点の尾根と合流する。そちらにはトレースがあり、多くの人がこちらを登っているようだ。この尾根に合流すると尾根は雪に覆われており、もうヤブはほとんどない。しばらく歩き、急登の直前の1040m付近で休む。
4/11 雪の積もった樹林帯を歩く。 |
4/11 棒立山の手前。だいぶ登ってきた。 |
ヤブがなくなりだいぶ楽になるが、急登なのでゆっくり歩く。1200m付近で樹林帯を抜け、直射日光にさらされる。途中、雪が消えていて露岩を登るところがあり、取り付きの灌木が滑って苦戦した。やがて北から来る尾根と合流する。目の前には棒立山。北の尾根にもトレースがあり、棒立山からも日帰りの2人パーティーが下ってきていた。
4/11 棒立山へ登る。 |
4/11 棒立山からタカマタギへの稜線。 |
北側からぐるりと回るようにして棒立山1420mに到着。棒立山には単独行が2人休んでいた。タカマタギからも3人パーティーがこちらに向かってきている。私は棒立山もタカマタギも知らなかったが、残雪期にはけっこう登られているようだ。暑いので行動食のチョコレートはどんどん融けるし、テルモスのお茶は熱いので雪を入れて冷やして飲んだ。
4/11 棒立山とタカマタギとのコルの近くで雪洞を掘る。 |
4/11 雪洞の天井を仕上げるKさん。 |
今回は雪洞を掘ることが目的なので棒立山とタカマタギとのコルで行動をやめることにした。いったんコルにテントを張り、荷物を置いて雪洞の予定地を探す。振り返ると稜線上、棒立山の斜面に雪が溜まっているのでそこに横穴を掘ることにする。気温が高いせいか雪は弛んでおりスコップ1本しかないものの、掘削はすいすい進んだ。若干天井を削りすぎたが、棚を作り、床を均し、完成。パーティーは3人だが、5人くらい泊まれそうなサイズの雪洞になってしまった。
4/11 たき火。 |
4/11 夕方音もなく雪洞が壊れていた。 |
Kさんと私で雪洞を掘り、その間にKさんが水作りとたき火の用意をしてくれたのでたき火を囲んで酒を飲む。外なのでプラスティックブーツを履いたままであんまりたき火には近づけなかったが放射熱が暖かかった。5時半頃に日は稜線に沈み、風が出てきた。ふと振り返ると雪洞がつぶれていた。うっすら暗くなってきて雪屁が崩れたようにも見えるが、場所が雪洞の場所だ。現地におもむいてみると確かに雪洞がつぶれていた。天井を掘りすぎたのが悪かったのか、気温が高く掘っている端から水が滴っていたのが悪かったのか原因は不明だが、音もなく崩れていた。幸い中には何も置いていなかったので損害はなかった。テントを持ってきていたので泊まる場所は問題ないが、残念である。
その後風も出てきたのでたき火を放棄し、テント内で飲んだ。21:40就寝。
2日目 |
2009年4月12日(日) 晴れ |
棒立山・タカマタギコル…タカマタギ…日白山…長釣尾根…小松沢出合…土樽駅
棒立山・タカマタギコル | 5:20起床 |
7:30 | |
タカマタギ | 7:51 |
日白山 | 8:43 |
9:02 | |
小松沢出合 | 10:15 |
10:40 | |
土樽駅 | 11:39 |
5:20起床。インスタントラーメンを食べ、テントをたたんで出発。私のパッキングが遅かったので先に行ってもらう。
4/12 棒立山・タカマタギコルに張ったテント。 |
4/12 これから登るタカマタギ。 |
正面のタカマタギは地図上で見るとさほど遠くないが正面に見える山はけっこう大きい。遅れて出発したのでKさんとKさんが小さく見えた。雪稜をとぼとぼと歩いていき、山頂の直下で雪が切れてヤブが出たところをわたり、タカマタギ山頂に到達する。雪で覆われていて何もない山頂である。
4/12 タカマタギの登りにあったヤブ。 |
4/12 タカマタギ山頂から見た日白山。 |
続けて日白山へ向かう。日白山へはなだらかな尾根を行く。さほど大きな登り下りもなく、ザクザクと雪を踏んで進む。最後に北側から斜面を登り、日白山山頂に着いた。平坦な山頂でテントを10張ほどたてられそうだ。
眺めはよく、北は巻機山から柄沢山、朝日岳、足拍子岳、東に茂倉岳、谷川岳、南に万太郎山、仙ノ倉山、平標山、西に苗場山、先月行った神楽ヶ峰。また1月に行った苗場スキー場、田代スキー場も見えた。苗場スキー場と田代スキー場がドラゴンドラでつながっていて、15分くらいかかることを説明したが、あまりに遠くゴンドラが見えるわけでもなく信じてもらえなかった。
4/12 平坦な日白山山頂。 |
4/12 日白山から見た仙ノ倉山と平標山。 |
ここから長釣尾根を下り、毛渡沢に下りる。日白山から平標山側へ少し下り、小ピークから東へ。小ピークにはザックが置いてあり、人は見当たらない。平標山へ向かっている人が1人おり、平標山を往復するのかもしれない。
長釣尾根は長いが、だいぶ下まで雪が残っており、さほど苦労せず下る。途中にテントをひと張り張ったスペースが残っていた。1250m付近で尾根を誤って南側へ下り、少し登り返す。900mくらいからヤブが出てくるが、雪の残っているところをつないで下った。途中斜面に股下まで落ち込んだりしながら小松沢に架かる橋に出た。
4/12 長釣尾根を下る。奥は茂倉岳、谷川岳。 |
4/12 双眼鏡で熊を探す猟師さんたち。小松沢出合にて。 |
あとは車道に沿って歩いて帰るだけ。橋のたもとで休んでいると100mほど下の堰のところに7人ほどがたむろしていた。装備は軽く登山者には見えないし、あまり動かない。釣り師だろうか、釣り師にしてはグループの人数が多くないか、バードウォッチングだろうか、と話していたらこちらにやってきた。やってきた持ち物を見て分かった。猟師さんたちであった。
1mほどの長さの銃を肩にかけ、どこを通ってきたか尋ねられた。朝、棒立山の下を出て、タカマタギ、日白山まで行き、長釣尾根を下ってきたと答えると「速いねえ、熊は見なかった?」と言われた。何でももう熊が起き出すころであり、熊を捕らえにきているそうだ。長釣尾根から下ってきて熊を見ていないと答えると「長釣尾根にはいないみたいだ」と言ってみんなで長釣尾根の対岸のタカマタギ東尾根を双眼鏡で見ていた。本物の銃を間近で見たのは初めてだった。
会話の中で棒立山は「ぼうだつ」と呼ぶということを知った。日白山はエアリアマップから「にっぱく」と知っていたが、棒立山は知らなかった。あと日白山西側の集落、二居は「ふたえ」と呼んでいるように聞こえた。
毛渡沢沿いの車道を下る。ゲートからは除雪され、アスファルト道。あちこちにフキノトウが咲き、Kさんが袋に集めていた。取り付き点の大滑沢は水量が大幅に増しており、靴を濡らして渡った。昨日気温が高かったので雪がたくさん解けたのかもしれない。
JR土樽駅に置いた車に戻り、岩の湯に入って帰京した。
今回の山行の目的は雪洞作りだったが、雪洞はつぶれてしまった。
ただ4月の残雪の山は初めてだったので、ヤブ山を雪踏んで歩くのは面白かった。また展望がよく、最近行った苗場山、神楽ヶ峰、苗場スキー場が見られてよかった。1日目は4時間半、2日目は4時間と大して長い時間歩いたわけではなかったが、久しぶりだったからかけっこう疲れた。
(2009年4月13日記す)