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2009年夏 - 上越・一ノ倉岳中芝新道


2009年7月4日(土)
場所
群馬県利根郡みなかみ町(旧・水上町)
ルート
マチガ沢出合…巌剛新道…谷川岳…一ノ倉岳…中芝新道…芝倉沢出合…マチガ沢出合
参加者
K、中山
参考文献

はじめに

 6月にKさんに谷川岳一ノ倉沢衝立岩中央稜に連れて行ってもらったのに次いで、幽ノ沢に連れて行ってもらえることになった。場所は幽ノ沢V字岩壁右ルートで幽ノ沢では容易なルートだそうだ。

 しかし、金曜夜から降り始めた雨は土曜明け方まで続き、雲は晴れなかったので岩が濡れたままで登れないと判断し、一般登山道を歩くことにした。西黒尾根から谷川岳に登り、一ノ倉岳から中芝新道を下って芝倉沢出合に出る計画とした。中芝新道は予定通り幽ノ沢V字岩壁右ルートを登った場合下山路としてとる道である。

 中芝新道は国境稜線の一ノ倉岳と芝倉沢を結ぶ登山道でほぼ堅炭尾根に沿っている。下部で堅炭尾根を離れて芝倉沢沿いを下り国道に出る。エアリアマップでは難路を示す破線で示され、アルペンガイドでは難コースで、きわめて悪いルート状態のものを示す白星2つが付いている。

 実際、一般登山道としては状況が悪く、笹で滑りやすかったり、下り道が分かりにくかったり、雪渓が残っていたりと少々苦労した。

0日目

2009年7月3日(金) 雨

東所沢駅集合=谷川岳ロープウェイ土合口駅(泊)

 21:30東所沢駅に集合。東京では雨が降っている。関越経由で0:00谷川岳ロープウェイ土合口駅着。外は本降りの雨。明日の登攀は諦め、酒を飲んで就寝。

1日目

2009年7月4日(土) くもり

マチガ沢出合…巌剛新道…谷川岳…一ノ倉岳…中芝新道…芝倉沢出合…マチガ沢出合

コースタイム
ロープウェイ土合口駅6:00起床
6:15
マチガ沢出合6:20
6:37
巌剛新道枝沢渡る7:25
7:40
ラクダのコル8:00
谷川岳トマノ耳9:00
9:23
谷川岳オキノ耳9:31
一ノ倉岳10:08
10:16
芝倉沢渡渉点11:25
芝倉沢出合11:55
12:09
マチガ沢出合13:11
13:20

 朝6時、ロープウェイの従業員さんが従業員室に入る音で起きる。起きると私たちのほかにもう1パーティーが泊まっていた。この時間まで寝ているということは彼らも雨で諦めたのだろう。外はまだ小雨が降っていたが、空は明るく天気は回復傾向にあるようだった。2人で話して巌剛新道から谷川岳に登ることにする。

 マチガ沢出合に移動、ザイルやヘルメットなど不要になったものを車内に置いて出発。巌剛新道マチガ沢合宿のときに何度か歩いているが、西黒尾根まで歩くのは大学1年のとき以来、9年ぶりである。食料と水、カッパくらいしか持ち物がないので快調に登るが、Kさんが速くて途中でだんだん遅れてくる。軽くぜんそくも出てくるし頭もぼんやりしてくるしでつらい。第一見晴台を過ぎ、途中の小さなガレ沢を渡るところで一本。天候は回復してきており、湯檜曽川対岸の白毛門山、笠ガ岳、朝日岳が見える。しかしマチガ沢上部の谷川岳はガスがかかっていた。

巌剛新道
7/4 巌剛新道の岩場。
白毛門山
7/4 湯檜曽川対岸の白毛門山。

 小さなガレ沢を過ぎて岩場を登る。雨上がりでけっこう滑るので手がかりを探しながら歩いた。鎖はハシゴがかかっているところもあり、慎重に登ると西黒尾根のラクダのコルに到着。西黒尾根は緑と岩のミックスで、緑の中に小さな花も見える。西黒沢をはさんで向こうには天神平の建物群が見えた。天気は明るい薄曇り、人はおらず、気持ちのよい尾根である。

西黒尾根
7/4 ラクダのコルから見る西黒尾根。
雪渓
7/4 西黒尾根上部の雪渓。

 西黒尾根を谷川岳へ登る。マイマイカブリみたいな虫がいたり、名前の分からぬ白、黄色、紫の小さな花があったりと楽しい道だ。ただ残念ながら名前の分かる花はナデシコくらいだった。

 ザンゲ岩を過ぎると左手に雪渓が出てくる。周囲はガスがかかりいかにも雪渓らしい。右手の登山道を登ると平らになりやがて谷川岳トマの耳に出た。

 夏の暑い日なら登山者で込む山頂だが、この日は私たちのほかに登山者はひとりしかおらず静かな山頂であった。ただガスのため新潟側も群馬側も展望はなかった。しばらく休み、エアリアマップを広げてこのあとを考える。話し合いの結果、一ノ倉岳まで縦走し、一ノ倉岳から中芝新道を下り、芝倉沢出合からマチガ沢出合に戻ることにする。中芝新道は当初の予定通り幽ノ沢V字岩壁右ルートを登った場合下山路としてとる道である。

谷川岳
7/4 谷川岳トマの耳。ガスで視界はない。人も一人しかいない。
中芝新道
7/4 一ノ倉岳から中芝新道を下る。

 谷川岳から一ノ倉岳までところどころ滑りやすい岩場のある道を歩く。オキノ耳の少し先には鳥居と小さな社があり、富士浅間神社の奥宮らしい。谷川岳は登山者には有名な山だが、意外と信仰の山としてはマイナーらしく富士浅間神社のオマケみたいな扱いされているのは初めて知った。

 一ノ倉岳で一休み。中芝新道の入り口には半ば字の読めない看板があり、「注意」「中芝新道」「健脚者向け」の3つが読めた。一ノ倉岳の山頂は笹に覆われているものの、見える道は笹が刈られていて迷うことはなさそうだった。

 中芝新道を下る。はじめは笹の中の滑りやすい道。笹は刈られているが、水が流れてえぐれているところもあり、下りにくい。やがて下る堅炭尾根がはっきりしてくるとシャクナゲなどの灌木の中の下りになる。ところどころ岩が出てきて下りにくい。また刈り払いもなくなり見通しがきかない。ときどきペンキが出てきてここが登山道であることを示していた。岩の上は木をつかんで滑らぬように下る。下っていくとだんだん左手に芝倉沢が見えてくる。芝倉沢にはまだ雪渓が残っていた。

中芝新道
7/4 中芝新道上部の岩場。
堅炭岩
7/4 堅炭岩の横を下る。

 堅炭尾根をだいぶ下ってくると右手幽ノ沢側に岩壁を認めるようになる。どうやらこれが堅炭岩らしい。ときどき立ち止まってその荒々しい姿に見とれる。

 やがて尾根の末端付近に来ると道が不明瞭になってくる。沢の源頭みたいなルンゼに迷い込み、この先崖が控えてそうなので芝倉沢上流側に笹をつかんでトラバース。道を見つけた。しかし見つけた道も下りやすいものではなく、滑りやすい岩の道であった。まわりの草をつかみながら下る。上越の草付きは滑りやすくてかなわない。道かどうか疑わしい岩場を下ると、下にはペンキがあったので正しいのだろう、もう芝倉沢の近くであった。

芝倉沢
7/4 芝倉沢へ下降。
芝倉沢
7/4 芝倉沢の雪渓を下る。

 すぐ芝倉沢を左岸に渡り、継続して芝倉沢を下降する。私はまた右岸に渡り、Kさんはそのまま左岸を行った。すぐ沢全面を覆う雪渓が現れ、雪渓の上を歩く。ほどほどにスプーンカットがあり、雪も軟らかいので思ったより歩きやすかった。そのへんの棒切れでグリセードを試みるが、傾斜が足りないのとスプーンカットが段々になっているので全然滑れなかった。

 雪渓が切れて沢をしばらく下ると国道に出た。国道は芝倉沢を渡るところはコンクリート舗装になっており、上から見ると大きな堰か滝のように見えたためひやっとしたが、そこが終了点でほっとした。

国道
7/4 国道に出たところ。
芝倉沢
7/4 下ってきた芝倉沢を振り返る。

 芝倉沢出合で一休みする。車道舗装の痕跡を示すものは芝倉沢出合を渡るコンクリート舗装と一ノ倉沢よりの石積みくらい。道は残っていない。それでもよくここに一度は道を通したものだ。歩き始めてすぐルンゼを横切るが、岩が不安定で大きな落石を起こしてしまった。いまでも谷川岳の地盤は安定しないようだ。そのルンゼを渡ると未舗装であるものの車の幅を確保した道となり、散歩のように気持ちよく歩いていった。道を覆う木々も緑が映えて美しかった。

 観光客でにぎわう一ノ倉沢出合を過ぎ、マチガ沢出合に到着。荷を整えて車に乗り、上牧温泉風和の湯に入って帰京した。

おわりに

 目的の幽ノ沢には行けなかったが、切り替えた縦走も雨は降らず人もほとんどおらず、花は咲いているしけっこう楽しめる縦走であった。中芝新道は初めてであったが、滑りやすい岩が多く、沢に下りる道は分かりにくく、雪渓は残っており、看板通り健脚者向けに違いのないものであった。

(2009年7月5日記す)


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