山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2009年山行一覧>上信・万座山
先週、四阿山から草津峠までの県境縦走を計画し、2/3ほど歩いた御飯岳北コルで力つきて万座温泉に下った。敗因は浦倉山・土鍋山の笹ヤブと黒湯山西の笹ヤブが濃く、体力を消耗したためであり、密ヤブの中では1泊分の荷物を背負って入るのは困難と判断したからである。浦倉山〜土鍋山の道を見つけられなかった悔しさもあり、リベンジのために残りの区間の一部を歩くことにした。残りの区間は御飯岳北コル〜黒湯山〜万座山〜山田峠〜渋峠〜横手山〜草津峠である。
しかし、前回以上の密ヤブに阻まれ、万座山を登っただけで終わってしまった。
一応、今回は前回の反省を生かし、確実に県境をたどるために以下の点に注意を払った。
1.の晴天であることはヤブ漕ぎには必要な条件である。雨が降っていると濡れた笹に体力を奪われるだけでなく、見通しがきかなくなるためルートファインディングも極端に難しくなる。
2.の荷物を極力減らすことは特に密なヤブを越える際に体力を温存するために必要な条件である。このためアプローチが遠いものの、あえて日帰り装備でアタックすることにした。このため残りの区間の御飯岳北コル〜黒湯山〜万座山〜山田峠〜渋峠〜横手山〜草津峠ののうち御飯岳北コル〜黒湯山〜万座山〜山田峠のみを歩くことにした。エアリアマップによれば山田峠〜渋峠〜横手山〜草津峠は登山道が続いているため、後に回してもいつでもたどれると判断した。
3.の下り中心のコース取りにすることは、一般にヤブは下るのは容易であるが、登るに体力を要することによる。このため前回と逆の山田峠→黒湯山のコース取りとした。
結果としては山田峠から万座山のすべての稜線に渡ってヤブが濃く、4時間で2kmしか進むことができなかった。特に万座山の登りでは水平距離1km、標高差80mに1時間40分という記録的な時間がかかってしまった。近くを通っている山田峠から万座温泉の道はエアリアマップでは30分となっているし、山田峠から万座山は道がついていれば1時間もかからないと思うのだが、かなり密な笹ヤブであった。
単に万座山に登るだけならば、笹が刈られている万座温泉スキー場のゲレンデから登ればよい。万座山ロマンスリフト山頂停留所から50mほどヤブを漕いだところにある。スキー場が営業していれば容易に山頂を踏むことができる。県境縦走原理主義者であっても積雪期であればそう難しくあるまい。なんか無雪期に密ヤブ漕いで縦走したのがバカみたいな気がしてきた。
0日目 |
2009年10月23日(金) くもり |
上野=高崎(泊)
今回はバスの乗り換えが多く(1日目表参照)、朝発では現地着がかなり遅くなるため前夜発とした。前日のうちに高崎まで詰めておく。金曜日とあって終電の高崎線はけっこう混んでいた。まちがえて籠原で切り離される車両に乗ってしまったため籠原で高崎行きの車両に乗り換え。よく眠れた。意外と高崎で泊まったことはないため、駅前をうろうろするが、びゅうプラザ前に寝ている人たちを発見、温かいこともあり、ここで新聞紙をひいて寝る。
1日目 |
2009年10月24日(土) くもり |
高崎=長野原草津口=草津温泉=白根火山=山田峠…万座山……万座温泉=万座・鹿沢口駅
高崎 | 5:30起床 |
6:14 | |
長野原草津口 | 7:38 |
7:50 | |
草津温泉 | 8:18 |
9:00 | |
白根火山バス停 | 9:30 |
9:40 | |
渋峠 | 9:53 |
10:01 | |
山田峠 | 10:26 |
10:29 | |
1984m峰 | 11:20 |
万座山東コル | 12:43 |
1920m付近 | 13:08 |
13:15 | |
万座山三角点峰 | 14:21 |
万座温泉 | 14:40 |
16:05 |
5:30頃、起きて改札内へ。吾妻線直通の列車を待つ間、改札近くのベンチでうつらうつらしていたらあやうく乗り遅れるところであった。列車から見た吾妻渓谷は紅葉が始まっていた。長野原草津口駅で下車、JRバスに乗り換えて草津温泉へ。草津温泉では50分の乗り換え待ち。朝ご飯のパンを食べる。草津温泉から白根火山経由軽井沢行きの西武バスに乗り換え。前日草津に泊まったらしい乗客が乗ってきた。草津の街を過ぎると紅葉したカラマツ林の中をバスは行く。殺生河原あたりから林を抜けて笹原になり、カモシカが笹の中から顔を出していた。国道292号線には自家用車が多く、みんな白根火山の観光に出かけているようだ。
白根火山で下車。すでに湯釜、涸釜へ観光客が登り下りし、駐車場へ入る車が料金所渋滞を起こしていた。天気はくもりで外は寒く、フリースを着る。長電バスに乗り換えるが、山田峠にバス停はないようなので渋峠に向かう。バスから見える山田峠〜万座山は笹が中心なので笹をかき分ければ縦走できそうだ。早めに片を付けて帰りたいものだ。
渋峠に着いたのは9:53。登山開始にはだいぶ遅くなってしまった。交通手段も多く使ったため、交通費もかかってしまった(下図参照)。それでも長野新幹線使って湯田中経由で来るよりは安いだろう。
JR上越線・吾妻線 | 山手線内〜長野原草津口 | 2,940円 |
JRバス | 長野原草津口〜草津温泉 | 670円 |
西武高原バス | 草津温泉〜白根火山 | 1,100円 |
長電バス | 白根火山〜渋峠 | 400円 |
計 | 5,110円 |
どうせ渋峠まで来たなら渋峠と山田峠の間にある池ノ塔山を経由していくことにする。エアリアマップには登山コースの線が引かれているものの、コースタイムは書かれていない。駐車場脇の踏み跡らしきところに入る。入口には「この地域は遭難が多発しており、大変危険なところですので入林しないでください」とある。それでも入口は割にしっかりした土の溝になっているので薄くとも道が続いているのかもしれない。
10/24 渋峠から池ノ塔山への登山口にあった注意看板。 |
10/24 池ノ塔山の道。すぐに笹ヤブに行く手を阻まれる。 |
しかし足を踏み入れて10mほどで道はなくなり、背丈を越える笹ヤブにぶつかってしまった。ヤブを分けていくことはできるが、今回の目的は山田峠から万座山を経て黒湯山までである。こんなところで時間をくうつもりはないので早々に退却。
国道292号線を南へたどる。途中、日本国道最高地点(標高2172m)の碑を通り過ぎる。芳ヶ平方面の眺めがよく、記念撮影できるようになっている。もっと高いところがありそうな気もするけど、ここが最高点らしい。JRの最高地点は小海線にあるから道路と鉄道で最高地点は一致しないのか。JR延長より国道延長の方が長いから国道最高地点の方が高いのは自然といえば自然か。池ノ塔山を回ったつづら折れのところでは長野県側で治山工事が行なわれていた。
10/24 日本国道最高地点の碑。 |
10/24 日本国道最高地点の碑から眺める芳ヶ平。奥は草津の街。 |
山田峠着。避難小屋が建っている。中のようすを見ようと思ってドアを開けようとするが、ドアが開かない。たぶん国道が通じている夏季の間はいたずら等されないようにカギを閉めているのだろう。草津国際スキー場のblogを見るとスキー場の人が管理しているようだ。
10/24 山田峠避難小屋。ドアが開かなかった。 |
10/24 2120m峰の登り口には観音様がいた。登路にはスキー用か文字がかすれて読めない看板がいくつも立っていた。 |
ここから山の中に入る。入口には観音様のような仏像が置かれていた。冬季に遭難した人を弔うためだろうか。ここから見える山田峠西の2120mピークはコケと枯れ草しかないので簡単に登れそうだ。ところどころ古い看板が立っているので昔は道があったのか、スキー用のコース標なのだろうか。
何となく道っぽいところを登る。ヤブがないので大変歩きやすい。これは幸先よいスタートだ。容易にピークに達する。平坦なピークもヤブは薄く、踏み跡がいくつか交錯している。長野よりの踏み跡をたどり、ピークの西側に来ると眺めのよいところに出た。これから歩く万座山をはじめ、黒湯山、御飯岳、四阿山が見える。足下には万座温泉がある。
10/24 山田峠西の2120m峰。平坦で踏み跡がある。 |
10/24 2120m峰から少し下り、シャクナゲのヤブから万座山を眺める。 |
2120mピークから下りにかかると笹と松とシャクナゲの混合したヤブになる。松やシャクナゲのヤブの中は木の枝に乗りながら下る。笹は丈が肩くらいしかないので笹を選んで下った。笹を分けながら下っていくと標高2000mを越えたくらいからだんだん松の割合が増え、笹の丈が高くなってくる。見通しも悪くなり、ときどき視界がとれるときに笹の部分を探して下った。しかし笹の丈が私の丈を越え笹が寝てくると、笹はむしろ歩きにくい。そんなときは松の林の中で歩けそうなところを歩いた。
10/24 1984m峰を越えたあたりの笹ヤブ。背丈を越え、寝ているヤブ。なかなか進まない。 |
10/24 1984m先から2120m峰を振り返る。2120m峰からここまで1時間。 |
1984m峰を越えると視界がとれることは少なくなり、ヤブの中にどっぷり浸かる。歩く速度もかなり落ちる。山田峠から万座山手前のコルまで1時間くらいかと踏んでいたが、もっとかかりそうだ。途中、「山」と書かれた三角点に似た標が立っていた。てっぺんに厚い苔が乗っかっているところを見ると相当昔に設置されたようだ。万座山手前のコルは平坦でヤブがなければ歩きやすいのだろうが、密な笹が覆っていて歩いても歩いてもたどり着かない。結局山田峠から2時間かかってしまった。万座山手前のコルには細い涸れ沢が流れていた。少し群馬よりに下りてしまったので長野側に登り返す。
10/24 「山」の標。てっぺんに厚い苔が乗っかっているところを見ると相当昔に設置されたようだ。 |
10/24 万座山手前のコル。涸れ沢がある。 |
万座山手前のコルから万座山の登り。笹の密ヤブ。途中高さ10mほどの岩峰を右から巻く。登りの途中でまた笹ヤブに目を刺されてもだえる。「また」というのは昨年朝日岳〜巻機山の縦走をやったときに角膜上皮剥離になってしまったためだ。ザックを下ろし、ポリタンの水を手で受けて目を洗う。どうやら今回は笹ヤブが下瞼にあたったため眼そのものに損傷はないようだ。何でこんなヤブ漕ぎをしているのだろうと自分が嫌になる。
10/24 万座山の登り。枯れ笹に眼を刺される。 |
10/24 万座山の登り。傾斜が緩やかになってもヤブは濃い。 |
もくもくと万座山を登る。ひとしきり登ると平坦な笹ヤブ地帯に出る。山頂までは250mほどだ。しかしそこから山頂までは1時間もかかってしまった。山がゆるく下りになり、下のスキー場から何かを木槌でたたくような音がしてくると山頂の看板が打たれた枯れ松の下に出た。そこから少し下るとスキー場の万座山ロマンスリフト山頂停留所に出た。刈り払いがあり、広々している。4時間ぶりにヤブのないところに出た。
10/24 万座山の看板。ロマンスリフト終点の近く。 |
10/24 万座山ロマンスリフト山頂停留所。 |
地形図を見るとリフト山頂停留所の西側50mに三角点があるようなのでヤブをかき分けて万座山三角点まで達する。三角点のあたりはわずかに刈り払いがあるので三角点は見つけられた。
10/24 万座山三角点峰。やはりロマンスリフト終点の近く。 |
10/24 万座山の三角点。周辺に刈り払いがある。 |
あとはスキー場のゲレンデとリフトの刈り払いに沿って下山した。
下山すると万座温泉ホテル日進舘に出たので風呂に入った。日帰り入浴1,000円。宿の玄関には黒いウサギが何匹かいたが、人を恐れないところを見るとホテルで飼っているのかもしれない。
10/24 万座山ロマンスリフトに沿って下る。 |
10/24 万座温泉ホテルにいたウサギ。右のウサギはせっせと草をはんでいた。 |
入浴後、万座プリンスホテル前のバス停に移動し、西武バスに乗り、万座・鹿沢口駅でJR吾妻線に乗り帰京した。
山田峠から万座山の間は密な笹ヤブであった。県境をたどることが目的であったが、目的の山田峠〜万座山〜黒湯山〜御飯岳北コルのうち、山田峠〜万座山しかたどれなかった。しかし2週連続で歩いてみて分かったのだが、この付近の笹ヤブは非常に濃い。あまりこの県境を厳密にたどろうとすると何度も通うことになってしまう。そうなってしまっては本末転倒なので、前回の鳥居峠〜御飯岳北コル〜万座温泉と今回の渋峠〜山田峠〜万座山〜万座温泉を合わせて、鳥居峠から渋峠まで歩いたことにする。御飯岳北コル〜万座温泉は上信スカイラインを歩き黒湯山を回避しており、渋峠〜山田峠は志賀草津道路を歩き池ノ塔山を回避しているが、歩いたルートはつながっているので、このぶぶんについてはかかりわずらわないことにする。
山田峠〜万座山を無雪期に歩く人はあまりいないと思うが、笹、松、シャクナゲの密ヤブがあり、参考までに私は4時間かかった。ヤブ漕ぎそのものを好む人、そんな人がいるかどうか知らないが、そんな人には向いているかもしれない。ときどき視界がとれるためルートファインディング自体はさほど難しくないが、長野側に下ってしまうと復帰するのは難しいだろう。なお山田峠〜万座山には水はない。
万座山だけを登るにしても、山田峠から縦走するにしても積雪期に歩くのがよいと思う。
(2009年10月25日記す)