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2009年夏 - 尾瀬・尾瀬沼〜物見山


2009年8月15日(土)、16日(日)
場所
群馬県利根郡片品村
ルート
8月15日
沼田=大清水…尾瀬沼…袴腰山…赤安山…黒岩山…黒岩清水…小松湿原分岐東コル(泊)
8月16日
小松湿原分岐東コル…鬼怒沼山…鬼怒沼…物見山…大清水
参加者
中山(単独)
参考文献

はじめに

 今年も毎週のように山に出かけている。下界にいると暑いので避暑の意味もある。

 この週末は手が空いたので、ここのところご無沙汰していた県境縦走を行なうことにした。といっても暑いので、ヤブ漕ぎを避け登山道のある山を選んだ。谷川岳馬蹄型縦走や谷川連峰縦走も考えたが、谷川岳は今年3回も登って食傷気味だったので尾瀬の尾瀬沼から物見山まで歩くことにした。一昨年金精峠から縦走したところの続きである。

 奥日光の温泉ヶ岳から根名草山に似た山深い静かな稜線で、小淵沢田代と鬼怒沼の湿原を結ぶルートである。少々距離が長いので人はほとんど見られなかった。

1日目

2009年8月15日(土) 晴れ

沼田=大清水…尾瀬沼…袴腰山…赤安山…黒岩山…黒岩清水…小松湿原分岐東コル(泊)

コースタイム
大清水11:17
11:29
一之瀬休憩所12:08
三平峠12:48
尾瀬沼山荘13:00
長蔵小屋13:15
13:30
小淵沢田代14:09
14:17
只見幹線竣工記念碑14:34
袴腰山ヤブ入る14:48
袴腰山15:28
15:34
袴腰山ヤブ出る16:08
袴腰山-赤安山コル16:20
赤安清水16:25
16:37
黒岩山ヤブ入る17:32
三県境17:58
18:01
黒岩山18:12
18:26
登山道に出る18:41
小松湿原分岐東コル19:27
21:40

 金曜日に飲み会があったので土曜日の朝に出発する。始電で上野に出て上越線を乗り継ぎ、沼田へ。沼田から関越交通バスで大清水へ入る。途中吹割の滝のバス停で起きる。片品川にかかる幅の広い滝が観光名所になっているらしい。戸倉の鳩待峠連絡所では10人ほどが鳩待峠行きのバスに乗り換えていた。1時間40分で大清水着。運賃は2,200円。すでに昼近いためか大清水で下りたのは私以外に2人しかいなかった。

 今回は出発が昼近いが、今日のうちにできるだけ進んでおきたいのでトイレで水を汲んでさっさと歩き始める。大清水から尾瀬沼までは3年前に歩いて以来だ。一之瀬休憩所まで車道を歩く。すでに正午近く日が高く暑い。尾瀬沼に向かう人はほとんどおらず、もっぱら尾瀬沼から下る人が多い。一之瀬休憩所に到着。3年前の10月に来たときは店は営業していなかったが、この日はかき氷などを売っており、客でにぎわっていた。先を急ぐので三平橋を渡り、冬路沢沿いの道を歩く。次々と下って来る人を見てみるとどうやら東武尾瀬夜行で日帰りで沼山峠から来ている人が多いようだ。なるほど、沼山峠入山で大清水下山なら日帰りでも時間はあるし、尾瀬沼や大江湿原など尾瀬の景勝地を楽しむことができる。登山の経験のない観光客でも難しくない。

 平らな三平峠を越えて尾瀬沼に下る。下り着くと尾瀬沼山荘。ここから湖畔を反時計回りし、長蔵小屋に出る。長蔵小屋で一休み。大清水から1時間45分。悪くないタイムだ。大江湿原の見えるベンチで一休み。燧ヶ岳もよく見える。

三平峠
8/15 三平峠付近の木道。平らで歩きやすい。
尾瀬沼
8/15 尾瀬沼と燧ヶ岳。

 尾瀬沼ヒュッテの横を通り、小淵沢田代へ向かう。尾瀬沼ヒュッテのテント場を通るのだが、木道で樹形状に整備されており、快適そうだ。せっかく尾瀬沼なのに尾瀬沼が見えない点が残念だが。あと看板によるとテント場にはめずらしく予約制だそうだ。もっともお盆の土曜日に2張ほどしかテントがいなかったが。尾瀬沼から小淵沢田代までの道は尾瀬の大通りを外れるためか、道は若干荒れ気味。雨が降ったら水が流れるようなところもある。そんな道を小淵沢田代から4人の家族連れが下ってきた。人の多い大江湿原を避けたのだろうか。

小淵沢田代
8/15 尾瀬沼から小淵沢田代へ向かう道。尾瀬にあっては少々荒れ気味。
小淵沢田代
8/15 小淵沢田代。尾瀬沼と違って静かな湿原。

 登山道に沿って1911m標高点の北を回り、木道を下り着くと小淵沢田代と大江湿原の分岐に到着。そこからすぐに小淵沢田代に出た。尾瀬沼の喧噪と変わって人はひとりだけ。腕章を見るに環境省か何か役所の方らしい。あちこちの花の写真を撮っていた。せっかくなので私の写真を撮ってもらうようお願いし、快諾してもらう。

 静かな小淵沢田代はよかったのだが、東側へ向かうに従い、木道が湿原に沈んでおり、靴が濡れてしまった。それも湿原特有の鉄分と油分の強い水であった。沈んだ気持ちで袴腰山へ向かう。樹林帯の緩やかな登り道を行くと三叉路に出た。看板に「中ノ岐沢圣由 大清水」とあり、どうやら大清水に出られるようだ。地形図には道は見当たらないが小淵沢沿いの林道に通じるのだろう。その三叉路からすぐで笹原に出る。笹原の上には送電線が横断しており、ブブブブブと低い音がしていた。石碑があり、それによると只見幹線という送電線らしい。

小淵沢田代
8/15 小淵沢田代の一部の木道は湿原に沈んでいた。
エビス大黒沢
8/15 東京電力只見幹線竣工の碑と奥に送電線の鉄塔。

 そこからまた緩やかに登っていき、登山道は袴腰山の北を巻く。県境は袴腰山を経由しているので登山道を行くか、袴腰山を経由するか迷うが、登山道を通ると県境から500mほど離れてしまうので袴腰山へ向かうことにした。尾瀬沼からここまでも登山道と県境が一致しないところがあったが、それは湿原を通らないと行けないからということにしよう。人間は信じたい真実を信じるのだ。

 笹ヤブの中につっこむ。袴腰山までは比較的平坦な登り道だが、その分山頂を見つけにくい。それも袴腰山の山頂は南端である。笹ヤブをひと登り、袴腰山の北の方に出る。ところどころヤブの薄いところがあるが、だいたい笹ヤブである。緩やかな斜面を登っていき、そろそろ山頂かな、と思うが、なかなか山頂に着かない。ヤブに入って40分、うんざりしてそろそろ引き返そうかと思うころに南端のガケの近くに来た。そこが袴腰山の山頂であった。鉄板にテプラが貼付けられたごく簡単な看板が迎えてくれた。ここで一休みといきたいところだったが、湿地もない割に虫が多く、きわめて不快なのでさっさと退散する。

袴腰山
8/15 登山道を離れて袴腰山へ向かう。笹ヤブの中にときどき赤テープがある。
袴腰山
8/15 袴腰山山頂。ヤブの中で虫も多く、不快。

 登山道に戻るときもできれば県境沿いに行きたかったが、下りの尾根を見つけられず、笹の斜面を下って登山道に出た。そこからしばらくで袴腰山-赤安山のコル。コルには特に目立つものはない。コルから5分ほどで赤安清水。赤安清水には2張ほどの幕営スペースが2つに分かれてあり、北側に赤安沢源頭の水場があった。大清水でくんだ水も残り1リットルほどに減ってきたのでここで補給する。工事用ロープのある道を下るとすぐ水場だった。片道5分ほど。幕営地としてはかなりよいほうだろう。しばらく休んで出発。

赤岩清水
8/15 赤岩清水。テントが2張りほど張れる。
赤岩清水
8/15 赤岩清水の水場。赤岩清水の看板の裏を3分ほど下ったところ。そこそこ水量あり。

 ここから赤安山を越えて黒岩山へ向かう。30分ほどの登りで赤安山西の肩。遠くに黒岩山らしき山が見える。けっこう遠い。すでに16時を回っている。明るいうちに黒岩山まで登っておきたい。赤安山は東西に長い山で少しずつ高度を稼いでいくと急に下るところがある。たぶんその辺りが赤安山の三角点なのだろうが、下り始めてから気がついたこともあって面倒なので無視することにした。袴腰山と違ってかなり近いところを歩いているはずだし。赤安山からぐーっと下っていくとまたなだらかな山稜。樹林帯で展望もなくどこを歩いているのかよく分からない。黒岩山は県境沿いに登ろうと思っているので道が山を巻くのを見定めながら歩く。

三県境
8/15 三県境へヤブを分け入る。
三県境
8/15 三県境は平坦なのでコンパスを使う。

 道が明らかに黒岩山を巻くところでヤブに突っ込む。袴腰山と違って笹は薄い。代わりにコメツガが生えているがそんなに密ではないのでちょっとでも歩きやすそうなところを歩いていく。100mほどひと登りすると明るい尾根状のところに出る。やがて一番高いところに出た。たぶんここが群馬・栃木・福島の三県境。平坦な山頂にコメツガとかシダとかいろんな植物が生えている。いずれ黒岩山から田代山への県境縦走をやってみたいと思うが、なかなか難しそうだ。

 三県境から黒岩山へ向かう。三県境から黒岩山まで南へ200mほど。ところどころ赤布があるので、赤布を探しながら歩く。赤布の道は栃木側へ向かい、尾根がはっきりしてくる。シャクナゲのヤブの中、踏み跡をたどると黒岩山へたどりついた。

 黒岩山は岩の出た山頂でほぼ360度眺望を望める。黒岩山から振り返る三県境は平坦な丘のようで逆コースは迷いそうだ。西の空には燧ヶ岳の肩に夕暮れが見えた。何とか日暮れ前に黒岩山までたどり着くことができたので暗くても何とか歩けそうだ。空はくもりながらも山はよく見え、燧ヶ岳のほか、たどってきた袴腰山、赤安山、明日歩く鬼怒沼山が見えた。遠くに根名草山、日光白根山も見える。ひとしきり休んで黒岩清水へ向かう。手元の古い日地出版の地図によれば黒岩清水にはテント場と水場があるそうだ。

黒岩山
8/15 黒岩山山頂にて私。
黒岩山
8/15 黒岩山から下る道。少々ヤブがありテープを探しながら下る。

 黒岩山から黒岩分岐まではあまりはっきりしない道を行く。刈り払いはなく、簡易に拓かれた道のようだ。ときどきテープがぶら下がっているのでテープを見て下る。巻き道と合流する黒岩分岐まで来るともうかなり暗くなってしまった。黒岩分岐にはひと張り張れるくらいのスペースがあり、幕営したい気持ちになるが、水がわずかしか流れていないので小松湿原分岐まで行くことにする。

 黒岩清水は、ヤマケイYAMAPシリーズ尾瀬燧ガ岳至仏山によれば黒岩分岐から下りきったところにあるらしいが、私の持っている日地出版の地図ではさらに2043m峰を越えた先にある。この場所は一般には小松湿原分岐と呼ばれているようだ。このときは日地出版の地図しか持っておらず、2043m峰を越えた先に黒岩清水(=小松湿原分岐)の水場があると思っていたのでそこまで行くつもりだ。日地出版の地図によれば1時間の行程だ。まわりは夜の帳がおりうっすらしか見えない。天気はくもりで星もなく、あいにく月もまだ出ていない。黒岩分岐から下りきったところで倒木に阻まれ、道を見失うが少し戻って道を見つける。2043m峰は道がはっきりしていたので容易に越えられた。

 今日の幕営予定地の小松湿原分岐東コルに下り着く。しかしコル付近が広くなっており、道が見つからない。シダで覆われた平らなところに出てしまったので少し引き返し、正規の道を見つける。道がぬかるんでいるところがあり、小松湿原分岐は近そうなのだが、テント場はないし、水場もない。そのうち道が登り道になってきたのであきらめて引き返すことにした。

 迷い地点に戻り小松湿原分岐東コルに幕営する。幸い迷うほどに広いところなので平坦地はいくらでもある。道に近いところにツェルトを張った。先ほどの道のぬかるみと北に小松湿原があることからぬかるみの下流側に水を汲みにいく。真っ暗な中、ちゃんと戻ってこられるようラジオの音量を大きくしてツェルトにかけておいた。

 シダの森を下り、先ほどの沼状の道の下流に出るとチョロチョロと水が流れていた。ここが小松湿原分岐の水場だろうかと思いながらコップで水をすくいポリタンに汲んだ。少々汚れていたが仕方あるまい。またラジオの鳴るツェルトに戻り、食事の支度をした。インスタントのカレーを食べ、お茶を飲んで就寝。だいぶ遅くまで歩いたので到着は19:27、就寝は21:40といつもより相当遅くなった。

2日目

2009年8月16日(日) 晴れ

小松湿原分岐東コル…鬼怒沼山…鬼怒沼…物見山…大清水

コースタイム
小松湿原分岐東コル4:00起床
5:30
小松湿原分岐5:32
5:38
鬼怒沼山6:43
6:50
鬼怒沼湿原7:37
8:01
物見山8:20
湯沢徒渉9:12
9:28
大清水10:10
10:13

 3時40分頃、寒くて起きる。ツェルトにシュラフカバーだけでは足りなかったようだ。もっともこの日は下界も涼しかったようだ。

 4時までゴロゴロしてそれから飯を炊き始める。外は暗く、静かだ。炊けたご飯にふりかけをかけ、それとインスタントみそ汁で朝ご飯とする。ご飯を食べてお茶を飲むくらいになると木々の隙間が白んでくる。5時頃外に出てツェルトを畳み始める。出発するころにはヘッドランプが要らないくらいの明るさになった。明るくなってまわりを見渡すが特に看板はない。ここが小松湿原分岐なのかそれともただのコルなのかわからない。ただ平坦で下草も薄く、明るくても道が分かりにくいところであるのは分かった。明け方寒かったが、露はおりていなかった。

 5時半に出発。昨日少しだけ進んだ道を行く。ぬかるみを越えて登り道になる。少し登ると右手が明るく水が出ている。そこが小松湿原分岐であった。足下に青地に黄色字で「小松湿原」と書かれた小さい看板があった。昨日泊まるつもりのところだったので少し立ち寄ってみる。

小松湿原分岐
8/16 ツェルトを張った小松湿原分岐東コル。平坦で迷いやすい。
小松湿原分岐
8/16 小松湿原分岐の水場。

 水はチョロチョロ流れているだけですくわないと汲めないが、登山道の脇から流れているので水汲みは楽である。また水場の西側には3張ほどのスペースがあり、焚火の跡があった。看板にあった小松湿原へ下る道を探したが、湿原に下る道は見当たらなかった。すでに野に帰ってしまったのかもしれない。

 小松湿原分岐を出て鬼怒沼山に向かう。群馬側から2055m峰に登り、そこからは平坦な尾根道を行く。コメツガの森の中にシダが一面に生えていて山奥深い。道ははっきりしているので暗くなければ歩ける。鬼怒沼山への下りにかかるところで木々の合間から鬼怒沼山が見えてきた。地形図を見ると鬼怒沼山は鬼怒沼湿原の北東に位置する3つのピークのようで、真ん中のピークに三角点がある。80mほどの思いのほか急な下りののち、鬼怒沼山北のコルに着く。コルから栃木側にはピンクのテープがついた下り道があった。少し歩いてみたがすぐ急な下り道になり引き返した。鬼怒沼林道に出るのだろうか。

鬼怒沼林道
8/16 鬼怒沼山への平坦な道を歩く。
鬼怒沼山
8/16 鬼怒沼山へ登る。はじめはヤブが薄いが上部は笹が生えている。

 コルから登り始めると道は鬼怒沼山の2つのピークをうまく水平にかわしていく。県境はピークを通っており、登山道から少々離れるのでヤブを漕いでピークに登ることにした。まずは鬼怒沼山三角点峰から。ヤブは薄く、登りやすいところを選んで登る。鹿の踏み跡があったのでそれを活用する。上の方は傾斜が急になり木につかまりながら登る。山頂近くになると笹ヤブが出てきてうっとおしい。笹ヤブを避けようとしたところ、向こうに何となく小広いところが見えたので笹を分けて出るとそこが鬼怒沼山三角点峰であった。

 幕営地からまだ休んでいないのでここで一休み。山頂には看板が3つついていた。南側に展望があり、となりの鬼怒沼山南峰と奥に日光白根山が見える。休んだのち、鬼怒沼山南峰に向かう。踏み跡っぽいところに踏み出すが、すぐ踏み跡はなくなる。どうやら単に展望を楽しむだけの踏み跡だったらしい。すぐ鬼怒沼山に登る道に出てそれを下る。下りつきコルに出ると巻き道といっしょになる。そこから南峰の登り。登り始めると道が栃木側を巻き始めるのでそこから南峰に登る。南峰は三角点峰と違って笹で覆われており、道のとり方に迷う。適当に歩きやすいところを選んで登り、鬼怒沼山南峰山頂に着いた。南峰は三角点峰とは違って展望はなく、看板もビニール袋で覆われた看板が一つあるだけであった。

鬼怒沼山三角点峰
8/16 鬼怒沼山三角点峰山頂。南側のコルから登る道がある。
鬼怒沼湿原
8/16 鬼怒沼湿原の林道。開けていて明るい。

 鬼怒沼山南峰から鬼怒沼へ向かう。始めは直接下ろうと思ったが、ヤブが濃いのと登山道に出られないかもしれないのとで来た道を戻る。しばらく下るともとの道に戻った。しかし登山道の南北を間違い、黒岩山方面へ向かってしまった。少し歩いて三角点峰とのコルまで戻ってから気づいた。こんな風に迷うこともあるんだなと思った。そう思ってみれば、このあたりは一昨年迷った念仏平と雰囲気が似ている。

 間違えた道を引き返し、下りになると道が2つに分かれた。特に看板がないのでよく分からない。どちらかと言えば群馬側の道がはっきりしているので群馬側の道を行く。後で分かったが、栃木側の道はたぶん鬼怒沼の避難小屋に通じる道だ。

 しばらく下っていくと急に新しい木道に出た。東京電力のマークとH21という焼き印が記されている。木道に出てすぐ三叉路。大清水へ下山するには直進だが、せっかくなので鬼怒沼に寄っていく。三叉路から少し歩くと鬼怒沼

 鬼怒沼は尾瀬ケ原ほどの広さはないが、小淵沢田代よりは広い湿原である。真ん中に複線の木道が走っており、新しい。湿原のはずだが、さほど地面は湿っているようではなく、草が生えていた。鬼怒沼の避難小屋と日光沢温泉へ下る道との三叉路のところにベンチがあり、そこで休んだ。池塘も一つあり、水面は波一つなく静かだった。人もいないので木道に寝っ転がって写真を撮ったり伸び伸びと過ごす。避難小屋にも寄ってみた。鬼怒沼避難小屋は湿原から外れた森の中にあり、きれいな一軒家であった。中をのぞいたが、周囲三方の壁にベンチがしつらえており、真ん中に焚火のスペースがある。ほかはタタキなので銀マット敷いて寝るには寒いかもしれない。

鬼怒沼避難小屋
8/16 鬼怒沼避難小屋。
物見山
8/16 物見山山頂。

 鬼怒沼湿原を辞して物見山に向かう。これまでくもりだったのだが、日差しが出てきて首の後ろが暑い。このあとは樹林帯を下るだけなのでさほど日焼けはしないだろう。物見山までは鬼怒沼湿原の北の端の森の中を歩く。2本ほど小さな沢を渡り、急坂を登っていく。登りつくと物見山。ここで一昨年の金精峠からの縦走とつながった。物見山から急な物見山新道の下りを経て湯沢に下る。途中で1人登山客と会う。人に会うのは小淵沢田代で出会った役所の方以来である。黒岩山周辺はそのくらい人がいない道だった。

鬼怒沼避難小屋
8/16 一昨年歩いた燕巣山から物見山への稜線
湯沢
8/16 湯沢の滝。

 湯沢の渡渉点で一本。11時のバスにまだ時間がありそうなので長く休む。靴を脱いで沢の水にはだしを浸したり、少し上流にある滝を見たりして過ごす。そのあとはなだらかな道を下る。車道にはところどころぬかるみがあったが、最近雨が降ったのだろうか。のんびり林間の道を歩いていると橋が見えてきて大清水に出た。前触れがなかったので拍子抜けした。バス停につくとバスの看板をつけたバンが停まっていたので尋ねると戸倉経由富士見下行きのバスであった。すぐ出るということですぐ乗り、戸倉で下車。

 戸倉で沼田行きのバスを待つ間、尾瀬ぶらり館の風呂に入る。500円。新しい風呂で大して広くないが快適であった。11:15鳩待峠連絡所発沼田行きのバスに乗り、沼田に出て上越線を乗りついで帰京した。

おわりに

 部分的にヤブを歩いたものの、概して登山道を歩くことができ比較的容易な県境縦走を歩むことができた。道はほぼ明瞭で黒岩清水のあたりで日が暮れて道に迷った以外は問題なかった。山深く静かで人も少なく私好みであった。もっと登られてよいと思うが、1泊以上のコースなのであまり登られていないのだろう。

 なお、途中の幕営適地としては赤安清水、黒岩清水があり、それぞれ2張りほどのスペースがある。どちらも水は近いので快適であろう。ただし、どちらも最低コルより鬼怒沼よりにあるので尾瀬沼から歩いていくと場所が分かりにくい。

(2009年8月18日記す)


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