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2009年夏 - 南アルプス・北岳バットレス第四尾根


2009年7月18日(土)〜20日(日)
場所
山梨県南アルプス市(旧・中巨摩郡芦安村)
ルート
7月18日
広河原…白根御池小屋(泊)
7月19日
白根御池小屋…大樺沢二俣…下部岩壁bガリー取付点…八本歯のコル…標高3090m地点…八本歯のコル…大樺沢二俣…白根御池小屋(泊)
7月20日
白根御池小屋…下部岩壁bガリー取付点…第四尾根主稜…北岳山頂…肩の小屋…白根御池小屋…広河原
参加者
K、中山
参考文献

3日目

2009年7月20日(月・祝) くもり

白根御池小屋…下部岩壁bガリー取付点…第四尾根主稜…北岳山頂…肩の小屋…白根御池小屋…広河原

コースタイム
白根御池小屋2:12起床
3:30
大樺沢二俣3:58
下部岩壁bガリー取付点5:15
5:36
第四尾根取付点7:00
「白い岩」のクラック下9:50
10:00
マッチ箱10:43
枯れ木テラス11:42
登攀終了点12:00
12:20
北岳山頂12:40
12:50
肩の小屋13:08
13:11
小太郎山分岐13:26
13:28
白根御池小屋14:08
14:35
広河原山荘15:38
15:42
広河原バス停15:48
16:00

 南アルプス・北岳(敗退)の続き。

 夜は寒かった。衣類が乾いていなかったせいもあるだろう。ときどきシュラフカバーの中で足をこすりあわせて暖をとった。

 2:12起床。ラーメンを食べて出発。外は星空、晴れそうだ。バットレス第四尾根を登って帰ることにする。まだ暗く、昨日ヘッドランプを落とした私はKさんのヘッドランプを借りて歩いた。大樺沢二俣までの道はだいたい水平だが、木の根や石など障害物が多く、苦労した。

 大樺沢二俣に着くと樹林帯を抜け薄明るい。ここで水を汲む。ここからバットレス沢を目指して登る。昨日下った道でだいたい覚えているので左岸沿いの登山道をできるだけ使って歩く。その方が雪渓を歩くより楽である。

 バットレス沢の出合についてそのままバットレスbガリーへ向かう。途中便意を催したりして下部岩壁bガリー大滝の下に出た。けっこう早く出たつもりだったが、すでに2パーティーほどがbガリーに、さらに北側と南側にトラバースしているパーティーが一つずつあった。今日は待ちに待った晴天なので込みそうだ。

下部岩壁

 下部岩壁bガリーの大滝1ピッチ目。中山リード。雪渓を登り、岩の取り付き点まで。人が多いため、雪には階段状の足跡があり、容易に登れた。

 2ピッチ目。Kさんリード。おばちゃん2人パーティーが取り付いていて渋滞で少し待つ。雪渓から取り付いたクラックを登る。スタンスに困ることはないが、落石が多い。細かいのがときどき落ちてくる。

bガリー取付点
7/20 下部岩壁bガリー取付点。雪の斜面を登って取り付く。
下部岩壁bガリー
7/20 下部岩壁bガリー3ピッチ目。緩い斜面を登る。

 3ピッチ目。Kさんリード。わりと傾斜の緩やかな赤い岩のフェースを登る。登攀終了。

 ザイルを畳み、しばらく細かいガレの多いbガリーに沿って登り、トラバース道へ。cガリーを渡るが、残雪が多く、だいぶ下から巻いた。cガリーからは下側から回るパーティーと上側から回るパーティーと各パーティーで判断が分かれた。私たちは下からまわった。少しトラバースすると第四尾根取り付き点に着いた。

第四尾根

 第四尾根1ピッチ目。中山リード。去年も登ったフレークの岩登り。私がリードでぎこちない。Kさんからスタンスの指示を受けて登る。10mほどでピッチを切る。

 2ピッチ目。Kさんリード。カンテを登るか、右手の樹林帯のルンゼを登るか迷うが、尾根の右側の樹林帯のルンゼを登る。苔が生えているがヌルヌル滑ることもなく、ところどころ木をつかみながら登れる。再度尾根に出たところまで。

cガリー
7/20 cガリーの巻き。下を巻く。
第四尾根
7/20 第四尾根3ピッチ目。私がリードしてひどく時間がかかる。

 3ピッチ目。中山リード。カンテに沿って登る。出だしから大きな浮き石を踏みビビる。次の段では赤い岩のフェースを登る。左から回れば簡単そうだが、すぐ下でKさんが見ているのでまっすぐ登る。少し苦戦する。次は赤いカンテ。左から登るか右から登るか悩むが、左から登ることにする。ホールドが細かい。途中で進退窮まりKさんに助けを求める。「下れるか」の声に下ろうとするがスタンスが見えず下れない。下るくらいなら登る方がましと判断しひじをついてはい上がる。

 そして一番苦戦したハング。正面はハングしているので右から回るのだが、右側も張り出していてスタンスがない。10分くらい苦戦して「登れません」。Kさんから「下れるのか」と聞かれ、「下れません」と答えると「じゃあ登るしかないな」との声。その後10分くらい登ろうとするが左足のスタンスが信じられない上、ザックがハングにぶつかるので登れない。再度「登れません」と伝えると「中山なら絶対登れる」という応援の声。登ることもできず下ることもできず途方に暮れる。しばらく登ろうとするが呼吸が荒くなるばかりで頭もぼーっとする。

 さらに10分くらいして後続パーティーが登ってきたので道を開けた。後続パーティーのトップはスイスイと登っていった。右側に張り出している岩に両手をかけて右に出れば岩に立てるとのこと。「登れますよ、がんばって下さい」とはげまされる。激励はありがたかったが、そのときの私には何の励ましも効果があるようには思えなかった。ただこの状況から逃げたいだけであった。後続パーティーのセカンドが2人登っていくのでその様子を見ていたが、立っている位置が狭いのでよく見えなかった。

 後続パーティーが去って次は私の番。励まされてやる気が出たかというとむしろ逆で、早くこの場から逃げたいがため後ろ向きな気持ちで登ることにした。2回ほど左足のスタンスに乗ろうとして失敗し、3回目で右から回り込んで登ることができた。

 そのあとはカンテを登るだけでそんなに難しくなかった。ハングから少し登ったところでピッチを切る。私がずっともたもたしている間に2パーティーほど右手のルンゼから登っていった。

 4ピッチ目。Kさんリード。左手のハイマツのある尾根筋を登る。20mほど。易しい。

 5ピッチ目、35mフェース。中山リード。紫色の岩のクラックに足をつっこみ引っ掛けて登る。その上は傾斜が緩やかなので容易。先行パーティーの外国人さんが重登山靴でこのクラックを登っていくのはすごいと思った。2パーティーが待っているテラスのすぐ下でピッチを切る。

 6ピッチ目、35mフェースの続き。Kさんリード。混雑している左側を避け、右側からぐるりと回り込む。ハイマツも生えており、難しくない。次の「白い岩」のクラックのフェースが混雑しているのでまた待つ。3ピッチ目で私を追い抜いていったパーティーが渋滞で進めないのをみてバスの時間を気にしていた。結局懸垂下降で下ったようだったが無事バスには間に合っただろうか。南東を見ると富士山が笠をかぶっていた。

第四尾根
7/20 6ピッチ目。混雑している。
第四尾根
7/20 7ピッチ目。「白い岩」のクラックのフェース。団体さんを追い抜く。

 7ピッチ目「白い岩」のクラック。Kさんリード。日本の岩場(上)だとクラックと書いてあるが、実際見るとフェースである。cガリー側に伸びる白いフェースを登る。遅い先行パーティーに業を煮やしたKさんがほぼ平行して右側にルートをとる。意外と登りやすかった。白いフェースを抜けるとV級の岩の下、第二のコルに出る。左下に渋滞していた5人パーティーがいるので途中で抜いたことになる。

 8ピッチ目。中山リード。V級の岩を登る。でも途中で右に逃げてしまった。あとはマッチ箱までリッジ沿いに登る。マッチ箱手前に行き違いに便利な小さな鞍部があるのでここでKさんを待つ。

第四尾根
7/20 8ピッチ目終了点。懸垂下降するためザイル一本を回収。後方は大樺沢雪渓。
第四尾根
7/20 9ピッチ目懸垂下降。

 9ピッチ目。10mの懸垂下降。斜めに下らないとかなり下まで下ってしまう。ザイルに引っ張られながらも鞍部に下り立つ。

 10ピッチ目。中山リード。ぱっと見ると順層のスラブが段々に連なっており登りにくそうに見える。始めは左側から、真ん中は中央に走るクラックにつかまって、上部は小さなスタンスにつかまって右上に抜ける。

第四尾根
7/20 10ピッチ目。奥はバットレス中央稜。
第四尾根
7/20 11ピッチ目。枯れ木コルを通過するKさん。

 11ピッチ目。Kさんリード。枯れ木コルを過ぎ、終了点の1ピッチ下まで。カンテを登り、緩やかになってくるとギャップがあり、右端から渡る。

 12ピッチ目。中山リード。もう難しいところはないので終了点までコンテで移動。正午に終了点に着くことができた。

 登り着いたところには2人組が休んでいた。奥では中央稜に登っているパーティーがいくつか見える。その中でザイルも付けずにバンドを一人で登っている人がいた。正気の沙汰とは思えない。しかし足が止まることもなく着実に登っていた。

 終了点からはこれまでの岩場から一転花畑の中を登っていく。イワカガミ、ハクサンイチゲ、シナノキンバイ、ツガザクラなど赤白黄色のきれいな花が迎えてくれる。だいぶ疲れてしまったので立ち止まって写真を撮りながら登る。

第四尾根
7/20 第四尾根登攀終了点。花畑を登る。
北岳山頂
7/20 北岳山頂にて私。後方は仙丈ヶ岳。

 10分ほど登ると稜線の登山道に出た。少し登るともう山頂が見える。少々歩いて北岳山頂に着いた。東側は雲が流れていてあまり展望がないが、西側の仙丈ヶ岳、中央アルプス、南側は間ノ岳、農鳥岳が見える。間ノ岳があまりに大きすぎてそれより南の塩見岳などは隠れてよく分からない。

北岳山頂
7/20 南アルプス南部を撮るKさん。
小太郎尾根
7/20 花の小太郎尾根を下る。奥は甲斐駒ケ岳。

下山

 写真を撮って山頂を辞す。あとは白根御池小屋へ戻り、テントをたたんで広河原のバス停まで下るだけだ。岩屑の登山道を下り、肩の小屋へ。3連休最終日にも関わらず登ってくる人が多い。空身の人が多いので肩の小屋に登ってきた人が晩飯前の空いた時間に山頂を往復するのだろう。テント場にもテントが多かった。

 肩の小屋からは正面に甲斐駒ケ岳を見ながら下る。東側の雲もとれてきて鳳凰三山が見えた。鳳凰三山の中腹にはがれに砂防工事の堰堤が見えた。小太郎山の分岐を過ぎて草すべりを下る。上部にはシナノキンバイが一面に広がる美しい斜面があった。下部はミヤマハナシノブ、ハクサンチドリなど山頂部と違った花が咲いていた。

シナノキンバイ
7/20 小太郎山分岐付近のシナノキンバイの花畑。
白根御池小屋
7/20 白根御池小屋のテント場へ戻ってきた。後ろは鳳凰三山。

 白根御池小屋に着いてテントをたたみ、広河原へ下る。午後3時頃にも関わらずまだ登ってくる登山者がいた。この3連休から学校は夏休みだからかもしれない。ゴゼンタチバナの花を撮影したりしながら下る。

 広河原からはバスに乗って芦安に戻った。バスの中は岩登りとおぼしき人が多かった。芦安で風呂につかり、帰京した。中央道は3連休最終日とあって小仏トンネルから大月まで30kmの渋滞であった。家に着いたのは23:30ごろであった。

おわりに

 三連休の1日目、2日目とも雨で登れなかったが、3日目にくもりがちな晴れとなり第四尾根を登ることができた。

 今回、はじめてリードを含めたクライミングを行なったが、全体としては何とか務まったと思う。ただ書いたように3ピッチ目はハング気味の岩の回避で1時間以上かかってしまい、結果的に渋滞に巻き込まれてしまった。その点は反省するとともに、恐怖で登れず面白くないと感じたことから、私はあまり岩登りに向いていないのかもしれない。

(2009年7月24日記す)


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