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2009年春 - 北アルプス・前穂高岳北尾根


2009年5月2日(土)〜5月6日(水・祝)
場所
長野県松本市(旧・南安曇郡安曇村)
コース
5月1日
新宿(夜行バス車内泊)
5月2日
上高地…明神…宮川のコル…ひょうたん池(泊)
5月3日
ひょうたん池…明神岳東稜…明神岳…前穂高岳…奥穂高岳…白出のコル…涸沢(泊)
5月4日
涸沢…前穂高岳北尾根5・6のコル…前穂高岳…奥明神沢…岳沢(泊)
5月5日
岳沢…天狗沢…間天のコル…間ノ岳…西穂高岳…西穂高沢…岳沢…小梨平(泊)
5月6日
小梨平…上高地バスターミナル=沢渡=松本
参加者
K、H、K、中山
天気
2日快晴、3日快晴、4日くもり、5日くもりのち雨、6日くもりときどき雨
参考文献

3日目

2009年5月4日(月・祝) くもり

涸沢…前穂高岳北尾根5・6のコル…前穂高岳…奥明神沢…岳沢(泊)

コースタイム
涸沢3:15起床
5:38
5・6のコル6:44
6:56
3・4のコル8:36
10:10
前穂高岳14:05
14:25
岳沢15:35
20:00就寝

 2009年春 - 北アルプス・明神岳東稜の続き。

 3:15起床。この日は前穂北尾根を越えて岳沢に下る。まわりは3時頃からゴソゴソと動き始めていた。一般ルートで奥穂へ登る人だけでなく、前穂北尾根、北穂東尾根などを登る人もいるのだろう。

 もたもた私が遅れて出発。前穂北尾根5・6のコルへ向かう。涸沢の標高2,309m、前穂高岳の山頂3,090mに対して5・6のコルは標高2,720mと高い。涸沢から前穂高岳のほぼ中間の高さにある。もっと下から登る人もいるが、登攀に時間がかかることから5・6のコルから登る人が多い。

 涸沢から歩き始めると長野県警の人たちが前穂北尾根へ向かう人を見張っているようで先頭のKさんからそれぞれ声をかけられていた。私は「先ほどの4人パーティーの方ですか」と聞かれ、「私で最後です」と返事して先を急いだ。

涸沢
5/3 涸沢のテント村。奥は奥穂から北穂南峰へ至る稜線。
北穂前尾根
5/3 前穂北尾根のスカイライン。(マウスを重ねるとルートが表示されます)

 北尾根に向かう斜面の途中で雪面の歩き方を練習しているパーティーを横目に登る。10本ほど固まって木の生えたところを左に回り込むと5・6のコルが見えた。先頭を歩くKさんやその先にもパーティーが登っている。5・6のコルへ近づいてくると5峰へ登っているパーティーも見える。今日も人は多そうだ。振り返ると6峰の尾根に隠れて涸沢が見えない。

 5・6のコルで登攀具を身につける。3峰の登りが核心部なので日本登山体系P.145には五峰、四峰は問題なくとあるのだが、これが意外と高度感があって怖い。ナイフリッジにピッケルをさしながら登る。5峰の山頂は雪が積もっていてなだらかな稜線であった。5峰の先に4峰が大きい。まだ正面の4峰を越えないと核心部の3峰にも達せないのかと思うととても長く感じる。

5・6のコル
5/4 5・6のコルへ登る。
5・6のコル
5/4 5・6のコルから5峰を見る。

 4峰と5峰のコルでKさんとザイルを結びコンテで登る。4峰の登りはしばらく雪面を登るので容易だ。途中で岩にぶつかるので奥又白側にトラバースして登る。セルフビレイをとって先を行く4人パーティーが登るのを待つ。Kさんがリードし、私がビレイ。Kさんに続いてKさん、Hさんがスライドで登り、私が最後。登る間単独行氏が追いついてきたのでしばらく待ってもらう。岩場を奥又白側のトラバースした後、雪の斜面を直上。計2ピッチ。エイト環のかけ方が甘かったのか2ピッチ目を登る途中でエイト環を落としてしまった。昨日はヘッドランプ、今日はエイト環と毎日何かを落としている。残念だし、必要なものだから山行の今後が不安だ。

 4峰を越えて奥又白側からトレースをたどり3・4のコルに下り立つ。3・4のコルにはテントが1張と登攀中のパーティーが2パーティー、下で次の登攀を待つパーティーが1パーティー。しばらくここで先行パーティーが登るのを待たせてもらう。

4峰
5/4 5峰から4峰を見る。こんなに大きな4峰を越えないと核心部の3峰にはたどりつけない。
3峰
5/4 3峰の登り。たくさんパーティーが取り付いている。(マウスを重ねるとルートが表示されます)

 待つこと1時間半後、先行パーティーがはけて私たちの出番。意外にも私たちが取り付くまで他のパーティーは追いついてこず、私たちが取り付く頃に1パーティーやってきた。一方で3峰の上から懸垂下降をくり返して下ってくる単独行の人がいて、その人は3・4のコルに下ると幕営していた2人組と一緒にテントをたたんで奥又白谷へ下っていった。奥又白池へ行って継続登攀するのだろうか。

 そして核心部の3峰を登る。全部で4ピッチ。

1ピッチ目
岩の左側から登る。すぐテーブル状の岩にぶつかるがホールドがなく参る。Kさんがシュリンゲを伸ばしておいてくれたのでそれを掴んで登る。それでもヒザをついてしまった。テーブル状岩の上に立つと大きな岩が立ちはだかる。ここは左側を巻いていく人が多かったが、私たちの前のパーティーは右の岩の上をだましだましスタンスかけて登っていた。私たちの場合は左側を行った。ホールドとして縦に亀裂の入った岩があり、そこに右手をかけて左へ登る。が、左手がなく怖い。何度か登ろうとして引っ込んでいると上で見ていたKさんが手袋をとれと指示するので手袋を取ってみた。手袋がついていても岩はつかめていたのだが、素手になると安心感が増して何とか越えることができた。その上は核心部を越えてホッとしてしまいあまり覚えていない。ただそんなに難しくはなかった。
2ピッチ目
右側のリッジに出たところでKさんが先を行くのを待つ。Hさんと2人で立っていて不安定なところである。KさんとKさんが先を行き、Hさんの後、私が登る。ここは傾斜も緩やかで雪もついており登りやすかった。右側のチムニーも下から見ると厳しそうだったが、登ってみると傾斜はそれほどではなく簡単に登れた。登ったところで先行パーティーが凹角を登っていたのでしばし待つ。待っていると飛騨側から雲がやってきて槍ヶ岳が隠れてしまった。反対側奥又白側には常念岳と蝶が岳が見えたが安曇平からも雲が上がってきているようだった。
3ピッチ目
岩の出た凹角を登る。岩が出ている分、アイゼンをどこに置けばよいのかよく分からず不安になる。途中張り出し気味の岩を登らなければならず、少し迷う。Kさんからスタンスの指示を受けて乗り越えた。そこからは傾斜が緩くなり4ピッチ目の手前まで来た。
3峰
5/4 3峰3ピッチ目。凹角を登る。
2峰
5/4 3峰の頂上から2峰の登りを眺める。傾斜は比較的緩やか。
4ピッチ目
雪面を登り、岩にぶつかったら左の岩を越える。トップのKさんが岩の手前でどこを登ればいいのかよく分からず右往左往していた。私もそこまで行ってみると登るべき岩がハング気味で取り付けない。Kさんが残したシュリンゲに頼って乗り越えたが、スタンスが適当で落ちそうだった。そのあとは雪面を登り2峰の基部に達する。

 3峰の山頂は割に平坦でそのまま2峰の基部になっており、下りはない。露岩にピンがあるのでそこで確保して先行パーティーが登るのを待つ。先行パーティーにぴったりくっついてKさんが2峰へザイルを伸ばす。2峰は緩く左へ曲がっており、3峰ほど傾斜もないので難しくない。

 2峰の頂上で全員が揃うのを待ち、前穂高岳本峰に登る。岩のリッジを進み、コルへは奥又白側の雪面をバックステップで下降する。岩に捨て縄がたくさんついていたので夏はここで懸垂下降するのかもしれない。コルから涸沢側の雪面を登り、前穂高岳に達した。

前穂高岳
5/4 2峰から前穂高岳を眺める。あともうちょっと。
前穂高岳
5/4 前穂高岳山頂。上高地を背景に休む。

 昨日も明神岳東稜から登った前穂高岳だが、前穂高岳に登れたというよりはなんとか北尾根を登れたという思いだ。奥明神沢よりで一休み。天気はくもりで景色はいまいちだが、風にも吹かれず、日焼けもせず5月の山としては最もよい条件だったと思う。天気はくもりながら槍ヶ岳から大天井岳、常念岳から緑色の蝶が岳まで見えた。南側も上高地と焼岳まで見えたが、乗鞍岳は半分雲の中だった。

 奥明神沢を下る。けっこう急だが、正午を過ぎて雪が軟らかくなっておりぐしゃぐしゃ沈みながら下る。少々下りにくい。明神岳へのルートを分けるとザイルを出してバックステップで下る人たちがいた。その横を通り過ぎる。その先で奥明神沢は右に曲がり下っていく。Hさんがザックを転がし、空身で下っていたが途中でザックを開けて酒がこぼれていないか確認していた。歩きにくい斜面ではあったが、前穂高岳から岳沢まで1時間で下れたので夏のコースタイムの3時間に比べれば十分速い。

奥明神沢
5/4 奥明神沢を下る。Hさんはザックを転がしていた。
岳沢
5/4 岳沢に幕営。

 沢が開けて岳沢に到着。翌日は予定では奥穂南稜だが、天気は明日から崩れてくるとのこと。一応、南稜の取り付きを見てから下り、岳沢の小屋跡付近に幕営。管理人はおらず、水もなく、いつも通り雪を融かして水を作った。岳沢は雪に覆われており、沢に沿ってあちこちにテントが張ってあった。昨日の明神岳東稜から前穂、奥穂の縦走、今日の涸沢から前穂北尾根の登攀とみんな疲れてしまい、明日の天気もいまいちなので明日は西穂高岳を往復することにして就寝。

 2009年春 - 北アルプス・西穂高岳へ続く。


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