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2008年夏 - 奥多摩・丹波川本流〜一之瀬川本流(敗退)


2008年8月3日(日)
場所
山梨県北都留郡丹波山村・甲州市(旧・塩山市)/奥多摩・奥秩父
コース
三条新橋…丹波川本流…おいらん淵…一之瀬川本流…第二ゴルジュ(引き返し)…おいらん淵…三条新橋
参加者
L. 栗山、辛島、中山
天気
晴れ
参考文献

はじめに

 大学の後輩から誘われた。というか、私が行きたいから行く機会があったら連れて行ってほしいと何度も伝えていた。今回、大学の後輩が黒部川上ノ廊下の遡行を計画し、そのトレーニングに丹波川本流・一之瀬川本流の継続遡行に行くというのでついていった。

 一度は私も丹波川を目指したことがあるが、青梅街道が直前の余慶橋から先が通行止めで行けず、しかたなく水根沢谷に行って帰ったことがある。

 丹波川本流は多摩川の奥多摩湖より上流、丹波川の本流にあたる。ここでは沢登りの対象となっている三条新橋からおいらん淵までの間をさす。

 丹波川はおいらん淵のすぐ下から一之瀬川と柳沢川に分かれる。そして一之瀬川本流は丹波川の支流、一之瀬川の本流にあたる。ここでは沢登りの対象となっているおいらん淵から竜喰谷出合までの間をさす。ただし今回は大常木谷出合下の第二ゴルジュまでしか到達していない。

 どちらも水量が多く、泳ぎが中心の沢である。今回、丹波川本流と一之瀬川本流の継続遡行をもくろんだが、一之瀬川本流第二ゴルジュで辛島がさらし場に飲まれ、あやうく帰らなくなるところだったので、そこで引き返した。

前夜発日帰り

2008年8月3日(日) 晴れ

三条新橋…丹波川本流…おいらん淵…一之瀬川本流…第二ゴルジュ(引き返し)…おいらん淵…三条新橋

コースタイム
三条新橋8:00
8:35
手取淵8:50
9:32
手取淵上の河原9:35
9:55
5m胴木滝10:00
丸山入道淵10:39
10:48
監視塔10:57
一之瀬川出合11:07
銚子滝11:16
11:30
おいらん淵
青梅街道上
11:48
一之瀬川入渓11:55
第一ゴルジュ12:21
12:35
第一ゴルジュ先の河原12:40
12:56
第二ゴルジュ12:56
13:16
一之瀬川入渓点14:07
14:30
三条新橋15:08
15:30

 前日、大岡山に集合し、青梅街道の留浦まで。駐車場で辛島の誕生日を祝い、2:00就寝。

 翌朝、7:00に起床、三条新橋に移動する。三条新橋を渡った先の数台停められるスペースには車が3台ほど停められていたが人の姿はなかった。入渓準備を調える。今回は泳ぎ中心であることを見越し、以下のようないつもの沢と異なる準備を行った。

  1. 3人全員がライフジャケットを装備
  2. カメラは完全防水のPENTAX Optio W60
  3. 下山は車道歩きなのでサンダル

 入渓は橋のすぐ近くの道から。丹波川はほぼ全体が深い渓谷だがここは容易に河床にたどり着くことができた。川の水はなんとなく臭い。一之瀬高原や落合など上流に人が住んでいるからだろうか。何となく磯臭い気がする。そう考えると磯臭いというのは人の排水のにおいを希釈した臭いなのかもしれない。

 谷は深いものの、しばらく河原歩き。左から黒川谷が流れ込んでくる。ここで水を詰めて再出発。しばらくで最初の淵。水は朝だからか冷たく感じる。しかし、左手から泳いで取り付いた。浸かってみるとさほど冷たさは感じられない。が、後から来た辛島は真ん中を歩いてきた。真ん中が一番浅かったようだ。その後、3つほど淵があるが、1つ目は左の岩に乗っかり、2つ目は右からへつり、3つ目は泳いで左の岩に這い上がった。「東京周辺の沢」でいう犬戻り、坊主淵がどれかは分からなかった。

 そして今回の核心部、手取淵。2mほどの幅のゴルジュが30mほど続き、水がかなりの速さで流れている。秒速1.5mから2.0mといったところか。はじめは右手から巻いて川におり、ここからへつる。流れが速いので水の中は進めない。辛島リードで進む。だいぶ苦戦していたが何とか向こうまでたどりついた。

手取淵に入る辛島
8/3 手取淵に入る辛島。
手取淵をへつる栗山
8/3 手取淵をへつる栗山。

 次、栗山。途中、ぶら下がっているつるにザイルが絡まり、何を思ったか栗山が確保されているザイルを外してしまう。ザイルはつるから離れたが、白く泡立った中をザイルがたなびいており取れない。でもつるを何度かザイルを投げてもらううちにザイルをつかめた。で、栗山がへつるが、バランスをくずし、流れてしまう。

 次、私。ザイルの中間に8の字をつくり確保してもらう。へつっていくが、かぶっている少し前でやっぱり落ちてしまう。辛島がザイルにテンションをかけるので白い泡の中で流れにさらされ、溺れる。テンションを緩めてもらい、何とか助かる。途中で手だけかけられたが、流れが強く、足が鯉のぼりみたいに流されて立ち上がれず、さらにつるのところまで流されて立ち上がった。

 そのあと栗山の2回目アプローチ失敗、私が2回目アプローチ。流されたかぶっているところまでアプローチし、残置シュリンゲに手を伸ばしてぶら下がって突破。壁に立とうとしたが立てず、苦しかった。その後、栗山も3回目のアプローチでやってきた。すぐ上のひなたの河原で一休み。

 歩き始めてすぐ胴木滝。手取淵で体力を消耗した私たちには登れそうに見えず、右の岩をおとなしく巻く。岩にはロープが垂れ下がっているが、使わずとも登れる。取り付きのところで辛島が落っこち、時計を落としていた。

胴木滝
8/3 5m胴木滝。右から巻き。
胴木滝
8/3 胴木滝の巻き道にはロープが下がっている。

 胴木滝を過ぎると難しいところはしばらくない。淵はあるが、容易にへつったり巻いたりすることができる。途中、白く泡立ったところがあり、近寄らない程度に入って撮影したりした。そこで地形図と遡行図を流されてしまう。あとは河原歩き。途中で大木が橋のように谷を横断して挟まっているところがあり、洪水の恐ろしさを感じる。

丸山入道淵
8/3 丸山入道淵に突入する栗山。
丸山入道淵
8/3 丸山入道淵で引っ張られる栗山。

 胴木滝から40分で丸山入道淵。手取淵同様狭まっているが、流れはずっとゆるやかで白く泡立ってもいない。栗山が取り付くが、流れに阻まれ戻ってくる。私が取り付くと手でへつり、足はバタ足で進めた。向こうの浅瀬に出てザイルで2人を引っ張る。2人ともザイルで引っ張られて泳ぐということをしたことがないのでだいぶおもしろがっていた。

 丸山入道淵から水位の監視塔。さらに進むと新しいトンネルの建設現場の下を通り、一之瀬川出合。見ると一之瀬川、柳沢川ともおだやかでもう稜線までわずかの川に見えたが、どちらも源流の笠取山、柳沢峠まで10kmくらいある。

監視塔
8/3 監視塔の横を過ぎる。
柳沢川・一之瀬川二俣
8/3 柳沢川(左)・一之瀬川(右)二俣。

 一之瀬川出合を過ぎ、柳沢川に入るとすぐ銚子滝。今回の山行で唯一滝らしい滝だ。高さ8m、幅10mほどに広がって水が流れている。右からかと思ったら遡行図を見ると左からだ。栗山トップで登る。残置シュリンゲをつかみ、岩を乗っ越してから水際を登る。栗山はトップなので苦戦していたが、続く辛島、私はザイルがあったのでさほど苦しくなかった。

銚子滝
8/3 8m銚子滝。左に残置シュリンゲがぶら下がっている。
おいらん淵
8/3 おいらん淵。奥に滝が控えており、ここで遡行を打ち切り青梅街道にあがる。

 銚子滝を越えるとおいらん淵。淵の先に立派な滝がかかっている。とても越えられない。それにこれから一之瀬川本流も継続して遡行する予定である。心霊写真でも撮れるかととりあえず記念撮影して左岸の青梅街道に登った。

 青梅街道に出て休まず一之瀬川本流に入る。橋のたもとからよく踏まれた道を下ると一之瀬川に下りられた。すぐ歩き始めるが、ずっと河原歩きである。「関東周辺の沢」も「奥多摩の谷123ルート」も「入渓点から早くも泳げそうなくらいの水量」とあるが、ただの河原にしか見えない。もっともどちらも敷島悦朗氏の1995年8月の遡行記録なのでほとんど同じ表現なのだが。

 途中、また木が橋のように谷を横断して挟まっているところをとおり、左から谷を一つ合わせる。そしてゴルジュになってくると第一の淵。第一の淵には木が挟まっており、泳がずに木の上を簡単に移動できた。このあたりから足のつかないところが出てくるが、流れはさほど強くなく簡単である。

入渓
8/3 青梅街道を越えてまた一之瀬川本流に入渓。上に青梅街道の橋。
第一の淵
8/3 第一の淵。倒木に乗っかって越える。

 そして第一のゴルジュ。幅2mほどの細いゴルジュをとうとうと水が流れている。泡立ってはいないが流れは強い。私が挑戦し、右から少し進んだところで左へ渡り、あとは手がかりをたどって越えられた。けっこうつらかった。最後に50cmほどの滝を越えて終わり。残りの2人をザイルたぐって引き寄せる。右岸にはシュリンゲが残されており、誰かが必死の思いで巻いたと考えられる。

第一のゴルジュ
8/3 第一のゴルジュに突入する中山。
第一のゴルジュ
8/3 第一のゴルジュで引っ張られる栗山。

 第一のゴルジュを過ぎると猫の額ほどの河原。ここで休む。さすがに入渓して4時間、丹波川本流から継続してくると疲れてくる。気温・水温とも高いものの、水の中にいるだけで体力を消耗する。単純に考えて4時間海水浴をしているようなものだ。そういえば入渓してからまったく人を見ない。日中の最高気温は予想で34℃。もっと入渓者がいてもよさそうな日なのだが。それに釣り師すらみない。おかげで人を待つことなく丹波川本流・手取淵や一之瀬川本流・第一のゴルジュで何度も挑戦できる訳だが。

 そして敗退した第二のゴルジュ。第一のゴルジュと同様、幅2mほどのゴルジュで流速もほぼ同等。違うのはホールドが少ないのと出口がさらし場ということ。さらし場という表現が正しいのか分からないが、白く泡立ち、取り込まれると出られない淵である。栗山、辛島、私と次々に挑戦するが左の岩の裏側にたどり着けない。

第二のゴルジュ
8/3 第二のゴルジュに突入する辛島。
第二のゴルジュ
8/3 第二のゴルジュへ入る辛島。この5秒後に奥のさらし場に引き込まれ、出られなくなる。ザイルを引き、ことなきを得た。その後、引き返し。

 最後、辛島の2回目。ザックなしの空身で水の抵抗を減らし、ライフジャケットの浮力だけで挑戦。難関の左の岩の裏手を回り込む。これで登ったと喜ぶ。その後さらし場から辛島が一瞬浮かび上がって何か叫び、また沈んだ。なんか分からないが必死な様子に何かまずいことが起きているのを感じて栗山とザイルを引っ張る。案の定、辛島はさらし場に引き込まれていた。左手の岩を回った後、さらし場に引き込まれ、一回沈んだ後、浮かび上がり何か叫んだという。その憔悴しきった様子に栗山も私もゾッとなり即、敗退を決意する。それでも辛島はザックがあって、体力が残っていれば行けたかもしれないと言っていてあんな思いにあってもよく前向きでいられるものだと思った。

 確かに滝の下の淵にはグルグルと回る流れがあり、それに引き込まれると出てこられなくなると聞いたが、こんな狭いゴルジュでもあるとは思わなかった。もっと南アルプス尾白川のような大きな谷だけのはなしかと思っていた。もっとも左手の岩を回った後もこちらから常に見ていればさらし場に引き込まれたのを察知し、すぐ引き上げられたかもしれないので辛島には私たちの不注意を謝った。なお、この第二のゴルジュには右の岩壁にシュリンゲが伸びていたが、これを巻くのはかなりつらそうだ。

 敗退を決め、おいらん淵に戻る。ゆっくり歩くが辛島がなかなか歩くのがつらそうなので途中の日向の河原で一休み。休むと辛島も復活した。休んでいる間に川砂に光る粒を見つける。金のようだが、金だろうか。前に竜喰谷でも見たことがある。今回、おいらん淵にあった黒川金山の看板によれば黒川金山の他に「竜喰谷金山」「牛王院平金山」(どちらも一之瀬川本流の上流)などがあるそうなので本当に金なのかもしれない。

 沢の下りは簡単だった。足のつかないところはライフジャケットの浮力に身を任せて浮かべば勝手に下流に流れてくれる。流れるプールを楽しむ感覚で下った。橋のたもとに這い上がり、遡行終了。おいらん淵の看板の前で装備を解除し、三条新橋に下った。

 帰りは丹波山温泉のめこい湯に寄り、帰京した。温泉はすいていたが、なぜか道路は混んでいた。引き上げが遅かったこともあり、家に着いたのは22時であった。

おわりに

 ずっと行きたい沢だったので行くことができてよかった。一方でさらし場の恐怖にも遭い、あやうく水難事故を起こすところであった。

 沢自体は面白く、今回まだ先を残したままなので機会あれば訪れたいが、辛島が引っ張られたさらし場の攻略方法は思い浮かばない。

(2008年8月4日記す)


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