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2008年夏 - 南アルプス・仙塩尾根[2/2]


2008年8月7日(木)〜10日(日)
場所
山梨県南アルプス市(旧・中巨摩郡芦安村)・長野県伊那市(旧・上伊那郡長谷村)・下伊那郡大鹿村・静岡県静岡市葵区
ルート
8月6日
立川=甲府駅(泊)
8月7日
甲府駅=広河原=北沢峠…仙丈ヶ岳(泊)
8月8日
仙丈ヶ岳…伊那荒倉岳…三峰岳…熊ノ平小屋(泊)
8月9日
熊ノ平小屋…安倍荒倉岳…塩見岳…三伏峠小屋(泊)
8月10日
三伏峠小屋…鳥倉登山口=松川町営清流苑=松川IC=新宿(解散)
参加者
中山、K、Y、S、I
参考文献
「アルペンガイド10 北岳・甲斐駒・仙丈」( 山と渓谷社、1996)

3日目

2008年8月9日(土) 晴れのち雷雨

熊ノ平小屋…安倍荒倉岳…塩見岳…三伏峠小屋(泊)

コースタイム
熊ノ平小屋3:00起床
5:07
新蛇抜山南6:37
6:45
北荒川岳7:45
8:00
2800m9:07
9:20
北俣岳分岐9:39
塩見岳10:15
10:55
塩見小屋11:49
権右衛門沢12:10
12:28
本谷山13:33
13:40
三伏山14:29
三伏峠小屋14:40
20:10就寝

 この日も晴れ。小屋の前から農鳥岳が大きい。YさんもKさんも農鳥岳には行ったことがないらしく、みんなで行ってみたいねと話した。一方で私は朝から調子が悪く、朝を食べた後、戻してしまった。でも私にはよくあることなので出発時には動けるようになった。

 熊ノ平小屋の前から樹林帯の斜面を歩く。じわじわと稜線に登りだし、やがて稜線に出ると安倍荒倉岳手前のピークに登る。安倍荒倉岳手前のピークからはこれまた絶好の展望で安倍荒倉岳への平坦な尾根と奥に今日登る塩見岳が見える。今日も右手に中央アルプスが見え、気持ちがよい。平坦な尾根を歩き、樹林帯に入ると安倍荒倉岳のピーク。安倍荒倉岳は道から1分尾根へ登ったところにあった。広さは半畳ほどしかなく三角点があるだけである。伊那側の展望が開けていて三峰川が南下しぐるりと回って北上する様子がよくわかった。

塩見岳
8/9 稜線歩き。遠くに塩見岳。
仙塩尾根
8/9 平坦な仙塩尾根。

 安倍荒倉岳からしばらく下り。樹林帯の中に入り展望はない。左手に農鳥岳を見ながら平坦で歩きやすい尾根を行く。新蛇抜山手前のピークは岩山で展望がよい。でも涼しいうちにもっと進んでおきたいので新蛇抜山まで進む。二万五千分の一地形図だと山頂を通過することになっているが、新蛇抜山は大井川側から巻いた。おかげで新蛇抜山を巻ききったところで一本とった。

 新蛇抜山からも平坦な尾根が続く。途中かわった石を見かける。石に石英の筋が格子状に入っており、石英以外の砂岩の部分が削れて石英が浮き出ているのである。まるでワッフルのようであった。新蛇抜山から2542mのコルに下る。コルにはコバイケソウの群落があったがひとつも咲いていなかった。Iさん曰く、コバイケソウは咲く年と咲かない年があり、咲くときは一度に群落すべてのコバイケソウが咲くそうだ。

石英
8/9 石英の部分が残った岩。
コバイケソウ
8/9 コバイケソウの群落。

 みかけより急な登りをこなして北荒川岳。二万五千分の一地形図では登山道は大井川側を巻いているが道は稜線伝いであった。北荒川岳はザレた平坦なピークで塩見岳の好展望が得られる。伊那谷側が削れて崖になっており向こうに緑色の塩見岳が見えた。山頂にはストックが2本置いてあり、誰かが忘れていったようなのでKさんとYさんが有効活用させてもらう。

北荒川岳
8/9 北荒川岳にて筆者。後方は塩見岳。
北荒川岳
8/9 北荒川岳のザレた斜面。

 歩き始めて5分ほど。伊那側が削れた不安定な斜面の上を歩く。と、不安定な斜面の上を向こうから空身でやってくる人がいる。ストックを忘れたそうだ。2人のストックを返し、続けて歩く。伊那側が削れて急な斜面のトラバースもあり、そのようなところは枯れたハイマツをつかみながらトラバースした。砂礫の中にいくつかナデシコが咲いていた。

 やがて北荒川岳先のマルバタケブキのお花畑のテント場に着く。管理小屋がすぐ下に見えたが、水場は見えなかった。おそらく斜面をある程度下ったところにあるのだろう。テント場から2719m峰までは大井川側の斜面を登る。草原の斜面で気持ちがよい。タカネコウリンカが所々咲いていた。2719m峰から樹林帯を抜けて平らなハイマツの稜線を行く。日射が暑い。

お花畑のテント場
8/9 マルバタケブキのお花畑。テント場の近く。
塩見岳
8/9 塩見岳の登り。

 2701m峰を過ぎて池ノ沢小屋への道を分ける。雪投沢のテント場は池ノ沢小屋への道の途上だ。雪投沢には水があるようだったが、だいぶ下るのでパスした。そして蝙蝠岳分岐のピークへ登る。これが今日一番の急坂でつらい。坂の途中で一本とる。一本とったところも狭く、物を落っことしそうだった。さらに急坂を登り、蝙蝠岳分岐のピークに出た。稜線の様子は塩見岳から蝙蝠岳の方が主稜線のように見え、間ノ岳から続く歩いた尾根の方が枝尾根に見えた。このピークにはライチョウに見える岩があり、みんな見えると言ってくれた。

塩見岳
8/9 塩見岳の登り。
雷鳥岩
8/9 遠目に雷鳥に見えた岩。

 北荒川岳から塩見岳まで日地出版の地図だと2時間10分ということになっているのでこの一本で塩見岳まで登りたい。塩見岳への登りはいったん両側削れたコルを経て登りになる。さほど急な登りではないものの、これまでの急な登りで疲れているので歩みはのろい。でも途中お花畑があり、目を楽しませた。お花畑にはなぜかカントウタンポポが混ざっており、なぜ3000mの高峰にタンポポが咲いているのかみんな首を傾げた。

 そして塩見岳山頂。塩見岳の山頂は2つに分かれており、まず東峰につく。三角点はないが、東峰の方が高い。ここであえて遅れたIさんに写真を撮ってもらう。遅れたIさんを待っている間にあられがいくつか降ってきた。はじめは雨かと思ったが粒が跳ねるのを見てあられと分かった。上空は冷えているようだ。

塩見岳
8/9 塩見岳山頂にてバンザイ。
塩見岳
8/9 塩見岳東峰へ。

 西峰にいた団体がいなくなったので西峰に移動。そこで休みながらみかんを食べる。みかんはみずみずしくおいしい。今日泊まる三伏峠はだいぶ遠い。南側は荒川三山や赤石岳は山頂が雲に隠れ見えなかったが、その先の中盛丸山や大沢岳が見えた。

 塩見岳を辞して三伏峠へ向かう。塩見岳の下りは急な岩場で慎重に下る。ザレているところもあり緊張する。下っている途中から雨が降る。日は照っているので天気雨だ。粒が大きいので不安になり、下りきったところでカッパを着るがすぐやんでしまい、またカッパをしまった。

塩見岳
8/9 塩見岳の下り。急で不安定。
赤と青の岩場
8/9 赤と青の岩場。

 塩見岳西の天狗岩を越えると赤と青の岩場を通過する。小石が宝石のようで美しかった。赤はラジオラリヤ、青は竜紋岩かなにかのようだ。塩見小屋はちょっと顔を出して通過。権右衛門沢に下ったところで一本。ちょうどバスが来たからなのかずいぶんたくさんの人たちとすれちがった。

 権右衛門沢には水はなく、渡る道がしっかりしているところを見ると降雨時しか流れないようだ。休んでいる間に空は雲に覆われ、気のせいかぽつりぽつりと雨が降っている気がする。カッパを着るかどうか悩むがまだ樹林帯なのでカッパは着ない。

 天気はどんどん悪くなってくる。雨が降ってくるが、森の中なので体にあたる粒は少ない。蒸し暑いこともあってまだカッパは着ない。やがて稜線に出る。稜線に出るのは二万五千図と違って2512m鞍部あたりだと思う。そこから登り。2540m峰を越えるあたりから空はますます黒く、雷が鳴りだした。雷鳴は大きく轟き、ときどき空も光る。落雷はもっとも近いところで1km足らずのようだ。あまりの激しさに恐れおののきながら歩く。気も焦ってしまい、たどり着くピークごろに本谷山を期待するがなかなか本谷山に着かなかった。

 結局権右衛門沢からきっちり1時間ほどで本谷山に着いた。シャツも濡れ体も冷えてきたのでカッパを着た。本谷山の下りではまたマルバタケブキのお花畑。その下で三伏小屋への道を分ける。予定では三伏小屋泊まりだったが、三伏小屋は閉鎖し、テント泊は三伏峠小屋だけになってしまったので三伏峠に移動する。三伏峠へは緩やかな登り。雨は上がり、日も射してきて明るい。ときどき雨の置き土産の水たまりをジャンプで越えたりしながら三伏山に着いた。ここでカッパを脱ぎ、下って三伏峠小屋にたどり着いた。

本谷山
8/9 本谷山の下り。マルバタケブキの花畑。
三伏峠小屋
8/9 三伏峠小屋。

 三伏峠小屋でテント泊の手続きを済ませる。1人あたり700円。トイレ代込み。土曜日とあってテント場は込んでいたが場所は指定されず、テントに札を付けるだけだった。幕営場所を物色していると雨の第二波がやってくる。あわてて一番広いと思われるところにテントを張り、逃げ込んだ。あとはココアを入れ、米を炊き、雨がやんでから三伏小屋近くの水場に水を汲みにいった。この日は最終日とあってしばらく遅くまで飲んでいた。

4日目

2008年8月10日(日) 晴れのちくもり

三伏峠小屋…鳥倉登山口=松川町営清流苑=松川IC=新宿(解散)

コースタイム
三伏峠小屋4:10起床
6:05
2240mコル7:03
7:15
鳥倉登山口8:07
9:25

 夜中腹が痛くて起きるが、トイレに行っても便が出なかった。代わりに美しい星空を眺めててんとに戻った。

 9:25鳥倉登山口のバスに合わせるため遅く4時に起床。でも3時頃から塩見岳往復とおぼしき人たちがざわざわ起き始め、腹が痛いこともあって眠れなかった。アルファ米を食べて出発。

 鳥倉登山口までは2時間。歩き始めてすぐKさんがずっと持ってきていた棒切れを忘れたことに気づくトラブルもありながら三伏峠から下る。下り始めてすぐ塩見岳から仙丈ヶ岳までシルエットが見えるところがあり、青くかすんだあんなに遠くからやってきたと思うと感慨深い。

 道はほとんどトラバース。「9/10」など鳥倉登山口から三伏峠までの10分割のステップを示す看板があり、どこまで進んだか参考になる。ところどころ岩を削って作ったような不安定なところも通り過ぎ、2248mピーク手前のコルに出る。ここで一本。

鳥倉登山口
8/10 三伏峠から鳥倉登山口への下り。不安定な岩場もある。
鳥倉登山口
8/10 鳥倉登山口に到着。

 そのあとはまた巻いて豊口山のコルに至り、豊口山の南をぐるりと巻いて下る。最後の谷沿いの道ではスズランテープがらせん状に木に巻かれており、どうやらシカの食害を防ぐためのようだ。最後に車道に出た。鳥倉登山口バス停である。これで終わり。

 バスまでは1時間ほど時間がある。昨日濡れたテントを乾かしたり、重いから持ちたくないグレープフルーツを切って出したりした。バスは大混雑で重いザックをひざの上に乗せてバスに乗った。しかし、小渋川に出たところで団体さんが別の用意されたバスに乗り換え。すいたバスは鹿塩、小渋ダム、伊那大島駅を経由し松川ICへ。松川ICで私たち以外の客を降ろし、私たちは松川町営清流苑へ。

 1人400円で風呂に浸かり、飯を食べてまた松川ICに移動し、高速バスで帰京した。高速道路は込んでおり、新宿まで5時間かかった。

おわりに

 今まで行ったことのない塩見岳に行けてよかった。一方で毎日歩行時間が長く、また午後にいつも雷雨があり、結構怖かった。このときに富士山でも落雷による感電死があったそうだ。

 あと南アルプスで残っている大きなピークは農鳥岳、光岳くらいだ。

(2008年8月14日記す)


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