山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2008年山行一覧>奥秩父・甲武信ヶ岳[1/2]
この翌週、富士山に行くことが決まり、朝日岳〜巻機山以来、1ヶ月山に登っていない私は足慣らしに山に登っておくことにした。場所は登っていない県境から選ぶことにした。
いくつか候補はある。谷川岳〜三国峠、四阿山〜草津白根山、甲武信ヶ岳〜三国峠。だいたい上記の順に思い浮かべたのだが、はじめの2カ所は雪が多くて進めなかったり、寒すぎて夜を過ごせない可能性があったので、3つ目の甲武信ヶ岳〜三国峠に登ることにした。甲武信ヶ岳は3カ所の中で最も標高が高いものの日本海から遠く雪の量は少なく、そう寒くないからだ。全線登山道がついているにもかかわらず手つかずだったのはいつでも登れると思っていたから。今回は季節がら登山道のついている山しか登りたくないのでちょうどいい機会だった。
甲武信ヶ岳に行くと決めると、ルートはほぼ決まった。少なくとも県境の甲武信ヶ岳〜三国峠はルートに含む。あとは入山と下山のルートだ。入山にはある程度目星をつけていた。長野県川上村の千曲川源流をたどる道である。甲武信ヶ岳は千曲川、荒川、笛吹川の分水嶺をなしているが、これらのうち千曲川の源流は訪れたことがなかったからだ。しかも千曲川は沢沿いに登山道が整備されており、沢装備が必要な荒川、笛吹川と違って縦走の装備で源流を訪ねることができる。しかもアルペンガイドによれば、数ある甲武信ガ岳登山コースのうちでも最短路である。
下山は三国峠から最も近いバス停の梓山に戻ることにした。結局、川上村梓山から入山し、下山することになった。川上村だと東京から若干アプローチが遠いものの、今までに歩いたことのあるルートよりはいい。
0日目 |
2008年11月20日(木) |
東京=高尾=小淵沢(泊)
今回も職場にはザックをしょって出勤し、終業後小淵沢へ向かう。この日は八王子の変電所から煙が出たそうで電車が遅れており、小淵沢まで行けるかどうか不安だったが、30分遅れの最終小淵沢行きに乗れた。終点小淵沢駅で下車し、待合室で睡眠。トイレに外へ出るととても寒かった。
1日目 |
2008年11月21日(金) 晴れ |
小淵沢=信濃川上=梓山…毛木平…千曲川・信濃川水源地標…甲武信ヶ岳…甲武信小屋(泊)
梓山バス停 | 7:30 |
7:50 | |
毛木平駐車場 | 8:48 |
9:06 | |
1690m | 10:15 |
10:33 | |
ナメ滝 | 11:00 |
千曲川・信濃川水源地標 | 12:09 |
12:30 | |
奥秩父主脈縦走路 | 12:50 |
甲武信ヶ岳 | 13:15 |
13:33 | |
甲武信小屋 | 13:45 |
14:20 | |
荒川源流点 | 14:31 |
14:39 | |
甲武信小屋 | 14:56 |
17:40 |
明け方5:30に寒くて起きる。駅の休憩室は夜間暖房はなく、風は吹いてこないものの寒かった。下界でこの寒さでは山の上で夜を越せるかどうか不安だ。6:10の始電に乗り、信濃川上へ。大量の高校生と入れ違いに下車し、村営バスに乗り換え。7:30に梓山バス停に到着。出発準備をしているとバス停に座っていたおばあちゃんに声をかけられる。都会っ子の私はどう対応していいのか分からず、聞かれたことにだけ答えて早々出発した。
歩き始めてしばらくで三国峠と毛木平の分岐。これまで梓山には三国山〜赤岩峠、三国山〜大上峠の2度来ているが、どちらも三国峠へ向かった。今回は初めて毛木平へ向かう。毛木平への道は立派な農道だが、畑ばかりの静かな道でなんとなく日本っぽくない。季節柄畑には何も植えられておらず、風が吹くと裸の畑に砂塵が巻き起こった。
やがて畑をすぎてカラマツ林に入ると立派な毛木平駐車場。60台くらい停められるだろうか。しかし車は1台も停まっていない。今日は平日金曜日だし、もう山は夏山とは言えない寒さだから人も少ないのだろう。トイレ、休憩所のあずまや、自動販売機がある。トイレは閉鎖されていたが、自動販売機は稼働しているようだった。休憩所でザックを下ろし、朝食のパンを食べる。休憩所には甲武信ヶ岳から三国山までの地形図、標高図がかかれており、参考になる。トイレにある登山届けに計画書を入れて一休みし、出発。
11/21 毛木平駐車場。かなり広い。 |
11/21 河原の石に氷が乗っかりミズクラゲのようだ。 |
駐車場の角から登山道が伸びている。しばらく広い砂利道の車道を行く。千曲川の河原の石は氷の笠をかぶり、まるでミズクラゲがあちこちに漂っているようであった。途中で十文字峠への道を分け、駐車場から25分ほどで車道終点。河原沿いのよく整備された道を歩く。
千曲川水源地標までろくに地図を見ないで歩いていたので、どうもどこに何があったかよく分からない。谷は広く明るく、目立った滝もない。ずっと左岸の道を行く。急な登りはないが、左側の高巻きがあり、少し高いところを歩いた。毛木平から1時間10分ほどの平らなところで一休み。
11/21 千曲川源流の道。よく整備されている。 |
11/21 ナメ滝。手前側が凍ってハチミツのようになっている。 |
休むと寒い。冷えた体を動かし、道を進む。30分ほどでエアリアマップにも載っているナメ滝。ナメ滝の2筋のうち手前は凍っていた。少しずつ凍ったのだろうか、段々になっていてホットケーキにかけたハチミツのようであった。すぐ上の道も凍っており、氷の川のようになっていた。もっとも水の流れていないところは凍っていないのでアイゼンは必要ない。
11/21 道が氷の川になっていた。 |
11/21 木の枝からラッパのようにぶら下がったつらら。 |
やがて木の橋で右岸に渡り、川沿いに進む。川には氷の造形があちこちにあった。水しぶきをとらえた写真のような氷、木の枝からラッパのようにぶら下がったつらら、表面だけが凍り、下の川の波打ちが幻灯のように表面に映る氷。山に冬が訪れようとしていた。
しかし、寒いとどうも気管支が細くなり呼吸がつらい。ときどき立ち止まって川を眺めながら、ゆっくり登って行く。道がしっかりしているので歩きやすい。
11/21 千曲川・信濃川水源地標。 |
11/21 千曲川・信濃川水源地標で水汲み。ところどころ凍っていたが流水はあった。 |
ナメ滝から1時間10分で千曲川・信濃川水源地標。大きな木の柱が立ち「千曲川・信濃川水源地標」と刻まれている。水量は少ないが凍らずに流れている。針葉樹の林が苔で覆われていて他の荒川源流、笛吹川源流と雰囲気が似ている。もっとも同じ甲武信ヶ岳を源流とする川だから似ていて当然だが。甲武信小屋に水も雪もない場合を考えポリタンに水を汲んでおく。水汲みに使ったコップをしまうとき、コップの底に氷が張り付いていた。もう氷点下のようだ。
11/21 千曲川・信濃川水源地標から奥秩父主脈縦走路へひと登り。 |
11/21 奥秩父主脈縦走路から見た甲武信ヶ岳。 |
水源地標から少々急な道を20分登ると奥秩父主脈縦走路。南側が明るい。甲武信ヶ岳を経由して甲武信小屋に向かう。道は樹林帯の中だが、途中、南側に出るところがあり、甲武信ヶ岳の山頂が見えた。こちらから甲武信ヶ岳に登るのは初めてなのでどんなルートか分からなかったのだが、山頂の南側はガレがところどころあった。
ガレ場に出ると南からの風が強い。少しふらつきながらガレ場を登り、甲武信ヶ岳山頂に到着。風に吹かれて寒いが、雪は降っておらず積雪もない。足下のプラスティックブーツが何だか寂しい。明日行く三宝山は甲武信ヶ岳よりも高い山だが、なんだか丸くて丘のような形である。じっとしていると寒いので甲武信小屋に下る。すぐ樹林帯に入り、ジグザグに下って甲武信小屋。
11/21 甲武信ヶ岳山頂にて記念撮影。 |
11/21 甲武信小屋に到着。 |
甲武信小屋で宿泊の手続き。テント泊1人1泊500円。前日小淵沢であまりに寒かったので素泊まりも聞いてみるが1人1泊5,000円だそうだ。3,000円くらいなら悩んだが、5,000円だとテント泊の10倍なのでテント泊に即決。素泊まりといっても燃料代もかかるからそのくらいが妥当なのだろう。
何度も訪れている甲武信ヶ岳だが、甲武信小屋に泊まるのは初めてだ。テント場は小屋の下。トイレは小屋と併設。水は天水が50円/リットル。でもまだ時間があったので荒川源流まで水を汲みに行った。荒川源流の水も凍っておらず、さらさらと流れていた。千曲川源流と比べて道がないからか倒木が多い。荒川源流点の碑の隣にも倒木があった。こんな倒木あったっけと下山してから荒川真の沢の写真を見返してみたら4年前にもこの倒木があった。どうも私の記憶はあてにならない。
11/21 荒川源流真の沢。 |
11/21 小屋の下のテント場に幕営。 |
ポリタンを抱えてテント場に戻る。水汲む時間をのぞくと往復30分。たぶん笛吹川釜の沢の方が近いのだが、甲武信小屋のポンプがあって立ち入り禁止になっているのでそっちには行かなかった。
水汲みから戻ってきても時間があったので明るいうちにメシを作り、先に食べてしまった。16時にラジオをつけて気象通報をとる。寒冷前線が間もなく通過するようでツェルト泊の私はドキドキであった。隣の大学生らしき3人組のテントもラジオをつけており、気象通報がステレオ放送みたいになっていた。
日が暮れると急速に寒くなる。トイレによったとき外の気温を見ると氷点下6℃だった。着込めるだけ着込んでまだ暖かいうち17:40に就寝。