山ノ中ニ有リ山行記録一覧2007年山行一覧>北アルプス・裏銀座〜槍穂縦走[3/3]

2007年夏 - 北アルプス・裏銀座〜槍穂縦走[3/3]


2007年8月15日(水)-18日(日)
場所
長野県大町市、松本市(旧・南安曇郡安曇村)、富山県富山市(旧・上新川郡大山町)、岐阜県高山市(旧・吉城郡上宝村)/北アルプス南部
コース
8月14日
立川=(快速ムーンライト信州車中泊)
8月15日
信濃大町=高瀬ダム…ブナ立尾根…烏帽子小屋(泊)
8月16日
烏帽子小屋…野口五郎岳…鷲羽岳…三俣山荘(泊)
8月17日
三俣山荘…三俣蓮華岳…双六岳…西鎌尾根…槍ヶ岳…南岳小屋(泊)
8月18日
南岳小屋…大キレット…北穂高岳…奥穂高岳…岳沢(泊)
8月19日
岳沢…上高地=松本=高尾(解散)
参加者
中山、K、S
参考文献
07北アルプス・裏銀座〜槍穂縦走の地図

4日目

2007年8月18日(土) くもり

南岳小屋…大キレット…北穂高岳…奥穂高岳…岳沢(泊)

4日目コースタイム
南岳小屋3:15起床
4:50
大キレット最低鞍部5:54
北穂手前鞍部6:43
7:01
北穂高岳8:30
8:50
北穂・涸沢岳最低鞍部10:03
10:33
涸沢岳11:30
11:48
穂高岳山荘12:03
12:08
奥穂高岳12:50
13:18
奥穂・前穂最低鞍部手前14:17
14:27
紀美子平14:56
重太郎新道15:30
15:50
岳沢17:10
21:10就寝

 3:15起床。テントをたたんで出発準備。トイレのあたりで集合する。小屋の別棟のトイレはバイオトイレだか何だかで用を済ませたら中のおがくずを攪拌するボタンを押す。ついでに照明まで点いて近代的なトイレだった。

 いよいよ大キレット越え+穂高連峰縦走の一番きつい日。来るときは槍ヶ岳辺りで満足して槍沢か飛騨沢に下ってしまうかと思っていたが、なんだかんだ行って予定通り穂高岳まで縦走できそうだ。南岳小屋の南の丘の上に登ると穂高連峰まで遮るものがない。全体的に暗くて登るルートがよく分からない。飛騨側から大キレットへと下る。長いハシゴを2つほど下り、信濃側を下る。足下がザレで滑り落ちそうな斜面だ。30分ほどで急だった箇所は終わり、大キレット底部の縦走になる。しばらくは難しいところはない。ほぼ稜線沿い、ときどき飛騨側を巻いたりしながら進む。

大キレット
8/18 南岳から大キレットへの下り。
大キレット最低鞍部
8/18 大キレット最低鞍部へ近づく。

 南岳小屋から1時間で大キレット最低鞍部。しかし今日は天気もよさそうで大キレットが込みそうなので休みは取らず長谷川ピークまで進む。横尾谷の源頭部や北穂池が見えて景色がいい。長谷川ピークは飛騨側から巻きながら登る。その登りで北穂側から単独行が来た。あとで追いついて来た人に聞いた話だが、涸沢を3:30に出てきたそうで驚異的なペースだ。でもなんでピッケル持っていたんだろう。

横尾谷
8/18 大キレット最低鞍部付近から見る横尾谷。
長谷川ピーク
8/18 長谷川ピークを越える。

 長谷川ピークの頂あたりからが大キレットの怖いところ。南岳からだと下りになるので下の谷が見え、けっこう怖い。Sさんの動きがゆっくりになるので時々立ち止まって様子を見る。途中、南岳から来たおっちゃん1人が高度感をものともしないスピードで私たちを追い抜いて行った。たぶん大キレット越えに慣れているのだろう。私は前に来たときガスだったので高度感はなく、純粋に岩登りの怖さだけで済んだ。

 長谷川ピークを越えたところで一本とる。最初の難所を越えたところで一息つく。ここでおっちゃん4人パーティーに追いつかれ、涸沢岳まで前後することになる。目の前に北穂高岳が見えるがルートが全く見えない。さっき抜かれたおっちゃんの金属物が時々光るのでそれで点々とルートが分かる程度だ。

長谷川ピーク
8/18 長谷川ピークを振り返る。
北穂高岳
8/18 これから登る北穂高岳。

 北穂高岳の登りは急だ。手元しか見ていないと道を間違えてしまう。顔を上げて○印を探しながら歩く。ひとしきり登ると背後に南岳が高い。最初のピークを飛騨側から巻いて飛騨泣きの壁。鉄の足掛けが岩に打ち込まれてそれにつかまって登る。小ピークを越えてもザレの登り、鎖場のトラバースなど難所は続く。途中でおっちゃん4人パーティーを抜き、信濃側を延々と巻きながら登る。そして北穂小屋まで200mというペンキののち、急登。小屋を通り抜け、北穂高岳山頂。

飛騨泣き
8/18 飛騨泣きのあたり。
北穂高岳山頂
8/18 北穂高岳山頂。

 北穂高岳北峰から見る奥穂高岳は残念ながらガスっていた。しかし、前穂や涸沢は見えた。今日は南岳小屋から岳沢まで行く予定なので北穂高岳で難所は半分といったところか。

 北穂高岳から穂高岳山荘へ向かう。下って信濃側をトラバース、涸沢への道を分けて北穂高岳南峰へ。南峰は小屋がないからか人がいなかった。南峰からまた厳しい下り。鎖場などが連続する。Sさんが遅れ気味なのでのんびり写真を撮りながら歩いていたら、Kさんから「Sの足下指示してやれ」と指示があった。もっともなので言葉や手振りで下る場所を指示する。

奥穂高岳
8/18 北穂高岳から見た涸沢岳と奥穂高岳。
北穂高岳
8/18 北穂高岳の下り。

 北穂・涸沢岳最低コルで一本。ちょうど錆びた看板のあるところだ。くもりだが暖かいので昨日出せなかったもう一つのグレープフルーツを出す。すでに10時を過ぎ、行動している人が多そうな時間なのだが人が少ない。お盆ということもあって混雑を予想していたが、この閑散は予想外だった。ここから見る涸沢岳の登りも北穂の登り同様ルートが分からない。

 涸沢岳の登りは北穂の登りと似ていてよく思い出せない。鞍部付近のトラバースでは滝谷側の尾根に白いヘルメットと赤いヘルメットが見えた。ひとパーティー登っているらしい。涸沢岳へハシゴと鎖場をいくつか登ると涸沢岳の西の肩。東へ稜線を歩くと涸沢岳に到着。残念ながら周囲はガスでよく分からない。ときどき足下に穂高岳山荘が見える。一本とる。

涸沢岳山頂
8/18 涸沢岳山頂。
穂高岳山荘
8/18 穂高岳山荘を過ぎ、奥穂高岳へ。

 穂高岳山荘に下ってトイレ休み。時刻は12時で涸沢から登って来たと思われる人たちが宿泊の登録を済ませたのか奥穂よりの木製の舞台で昼寝していた。私たちはこれから岳沢まで下るのでその横を通り過ぎる。奥穂高岳の登りも人が少なく、登りやすかった。初めはハシゴもあって急だが、それを登りきると急な登りはなく少しずつ登る。やがてガスの中に山頂のほこらのシルエットが見えてくる。山頂のすぐ下でヘルメットかぶった中高年パーティーのひとりがこけていて端で見ていてあせった。なんでも西穂から縦走して来たとか。

 奥穂高岳の山頂で一本。残念ながら槍ヶ岳同様ガスで展望はない。ときどき前穂が見える程度である。今年は携帯電話が通じるかと思ってザックから携帯電話を取り出す。するとアンテナの表示が2本立った。去年はダメだったが今年は通じるらしい。在京連絡のSさんに経過報告としてメールを送った。「了解。気をつけて」という素っ気ない返信がすぐ返って来た。なんか天気どうとか、ねぎらいの言葉とかあったらいいのにと言ったら、Kさんが「ふぐ食ってて忙しいんだよ」と冗談を飛ばしていた。この山頂で東工大の後輩の知床縦走が成功したことも知ることができ、ほっとした。水のことで少し心配していたのだ。ほこらの隣では家族連れがおり、おばあちゃんに電話しているようだった。小学生くらいでよく登るもんだ。ガスだったので、小学生は大きな声で「何にも見えなーい」と正直に話して、お母さんらしき人から「嘘でもいいから何か見えるっていいなさい」と諭していた。その様子が面白かった。

奥穂高岳
8/18 奥穂高岳山頂のほこらと中山。
吊尾根
8/18 奥穂高岳から前穂高岳へ吊尾根を歩く。

 あと山頂で一つ発見した。奥穂には三角点がない。今まで奥穂で三角点を見た覚えがないと思っていたが、地形図を見るとただ「・3190」とだけ書かれており、これはただの標高点の記述である。Kさんも私も奥穂に三角点があると思い込んでいたが、実はないことが分かった。ちなみに地形図で探してみると前穂、西穂、涸沢岳には三角点があるが、奥穂、北穂には三角点がないようだ。奥穂は上高地からも見える高峰なので測量のために三角点置きそうなものなのだが。

 前穂肩の紀美子平を経由して岳沢に下る。下り始めて岳沢側に小尾根を分けたのち、急な下りになる。鎖場で高度感がある。Sさんには涸沢岳までで難所は終わりだと告げていたので少し罪悪感が残る。下るに従い、ガスってきてとうとうガスの中になってしまった。途中、向こうから来る人とすれ違うとき、私たちが通り過ぎてもそのまま待っているということがあった。何だろうと思ったら雷鳥の親子連れだった。ヒナ4羽ほどがひょこひょこと歩いており、親がそれを見守っている。かわいらしい。その後も親からはぐれたのか雷鳥のヒナ1羽を見た。道におり横へ逃げてほしかったのだが、道に沿って逃げてしまうため、追いかける形になってしまった。1分ほどの追いかけっこの後、ハイマツの中に逃げ込んでくれたがそのあとは無事だろうか。

雷鳥の親子
8/18 雷鳥の親子。
前穂高岳
8/18 奥穂・前穂最低鞍部から見た前穂高岳。

 奥穂・前穂最低鞍部付近で一本とる。ときどき前穂が見える。私は前穂に登ったことがない。Kさんも前穂には登ったことがないそうだ。今回も時間の都合上、前穂往復は諦める。いっぺん登ってみたい前穂北尾根を雲の合間からじっくり眺める。

 はっきりしない前穂直登ルートを分けてトラバースに入る。ガスの中、紀美子平に到着。先ほどの一本から30分しか経っていないのでそのまま岳沢に下る重太郎新道に入る。重太郎新道は急な下りで始まる。鎖場を慎重に下り、鉄ハシゴを登って小ピークをやり過ごす。急な下りは岳沢までずっと続く。鎖がなくなるとザレた下りになり、これも歩きにくい。途中で一本とるが、Kさんは靴擦れしてしまったようだ。Kさんは前にこのあたりに来たときは雪のある頃で雪渓沿いに下ってしまったので、この重太郎新道は初めてだそうだ。

重太郎新道
8/18 紀美子平から岳沢への下り。
岳沢
8/18 岳沢のテント場。

 歩いていてときどき振り返るとSさんも苦いものを食べたような顔をして歩いている。みんな満身創痍だ。そういえば私が初めて下ったときもなんかやたら疲れて、ほかの2人に置いて行ってもらった。ときどき岳沢ヒュッテ事務所とテント場が見えるので途中で休みを入れずに岳沢まで下った。最後の一本は1時間20分であった。みんなお疲れさま。

 岳沢のテント場は小屋の上なのでKさんとSさんにテント設営をお願いし、私は幕営の手続きと水汲みに小屋まで下った。岳沢にはすでに雪はなく、ガレ場を渡って小屋にたどり着いた。岳沢は水が流れていそうなものだが水は1リットル100円、トイレは1回100円だった。

 私のザックは残りのビール2缶のうち1缶が割れてしまい、中身が漏れていた。以前ここの下りで全く同じことを体験しており、どうもこの岳沢の下りは相性が悪いらしい。残りのビール1本とKさんの日本酒、Sさんの梅酒で合宿のほぼ成功を祝う。明日は上高地まで2時間下るだけだ。

岳沢ヒュッテ
幕営料1人500円
1リットル100円
トイレ1回100円
備考
  • テント場は岳沢はさんで重太郎新道側。
  • 水・トイレは幕営地になく、小屋の下。
  • 水・トイレは幕営者でもその都度払う。

5日目

2007年8月19日(日) 晴れ

岳沢…上高地=松本=高尾(解散)

5日目コースタイム
岳沢5:15起床
6:48
風穴7:40
7:50
上高地アルペンホテル8:40
9:30
上高地バスターミナル9:50
10:00

 今日は上高地で風呂に入りたいので夜が明ける5時に起床する。日の出まで寝ていられるというのは何ともぜいたくであることをこの日知った。出発準備をして岳沢ヒュッテの前で待機。岳沢ヒュッテは昨年の雪崩で倒壊し、まだ事務所の建物しかない。宿泊はテント泊のみで小屋泊はできない。小屋泊の人は上高地から岳沢経由で穂高には登れないだろう。

 上高地へ下る。朝、松本からやってきた人たちが次々と登ってくる。軽装の人も多いので上高地から岳沢往復というのも旅行のガイドブックに載っているのかもしれない。途中、風穴というところで一本とる。岩の隙間から冷たい風が吹いてくる。標高を下げてきてまわりはけっこう暖かいのでこの涼しさは心地よい。でもこの空気はどこから入ってきているのだろう。そう考えると不思議な穴だ。

 風穴のあとはさらになだらかな下りとなる。地形上はどこかで岳沢を渡るはずなのだが、それに気づかず、樹林帯を歩く。樹林帯の小川のいくつかは涸れてしまっていた。そういえば今回の山行では1滴も雨が降っていない。水も涸れてしまうか。やがて上高地の治山林道に出る。ここから遊歩道を通って河童橋へ。

風穴
8/19 風穴で涼む。
河童橋
8/19 河童橋でSさん。

 以前、梓川右岸のどこかの建物で風呂に入った、というKさんの情報をもとに風呂を探すことにする。ちょうどトラックから荷を降ろしていた人に聞いてみる。その人はていねいに3件ほど候補を探してきてくれた。その中で上高地アルペンガイドホテルというところが9:30まで営業しているという情報を教えてくれた。そばにいた上高地の自然ガイドをしている方から山の天気を聞かれたが、上高地は13日くらいまで雨だったらしく、運がいいと言われた。大町のタクシーで8月15日まで10日ほど晴れが続いたと聞いた話をすると、大町と上高地で天気が違ったんだねえと言われた。何にしろ、運がよかったようだ。

 上高地アルペンホテルは河童橋から3軒目のホテルだった。500円と上高地にあって良心的な値段だ。後で知ったが松本市営(かつては安曇村村営)だからだろう。立派なホテルで薄汚い登山者が入るにはちょっと勇気のいるホテルだったが、普通に対応してくれた。風呂は2階と言われ、2階に上がって行くとき気がついた。このホテルは中学校の修学旅行で泊まったホテルである。もうホテルの名前も泊まった部屋も忘れてしまったが、この構造は間違いない。そんな偶然に驚いた。

 河童橋へ戻る。橋はいつも通り混んでいた。晴れていれば見える奥穂は少し雲がかかって見えなかった。残念である。上高地バスターミナルへ向かい、松本まで2400円の券を買ってバスに乗車。一路松本へ下る。

 松本で昼を食べ、各駅停車に乗って帰京した。みんな疲れていて車内ではよく寝ていた。私もよく寝た。

おわりに

 行く前は槍も穂高も行ったことあるし、水晶小屋から先は上の廊下のとき歩いたのであんまり乗り気でなかったが、晴れが続き、大キレットをはじめとして楽しむことができた。前のときはガスか雨だったので今回晴れで違った山に登ったような山行だった。満足である。

 Sさんも希望した穂高岳をかなり長いコースで登ることができ満足そうだった。ただ山行後半から日焼け止めをしていたにもかかわらず、日焼けがひどく顔がぼろぼろだった。比較的日焼けの少ないKさんと私に「どうしたら日焼けしないんですか」と聞いていたが、Kさんは「日焼け止めを塗る」、私は「日焼け止めを塗らない」ととんちんかんな答えで困惑していた。私はタオルで日焼けを乗り切ったので。


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