山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2007年山行一覧>西上州・大上峠〜碓氷峠[1/3]
今年の5月の連休も去年同様、人を避けるために人の少ない山を選んだ。場所は去年の続きで上信国境の大上峠から碓氷峠である。
それはどこかというと群馬県と長野県の県境であり、車道の通っている峠・大上峠から中山道の要所である碓氷峠までの約30kmである。登る山名としては広小屋山1484m、霊仙峰1269m、荒船山1423m、物見山1375m、八風山1315m、矢ケ崎山1184m等が挙げられる。とはいえ、一般のガイドブックに載っているのは荒船山くらいである(参考文献:「アルペンガイド7 奥日光・足尾・西上州」山と渓谷社, 2000)。そのため、今回の一般ルートも田口峠〜荒船山〜八風山の12kmほどである。実際、荒船山周辺でしか登山者には会わず、「人を避ける」という目的はだいたい達することができた。
一方、一般ルートでない、難(?)ルート部分では笹ヤブにそこそこ苦しめられ、それなりにルートファインディングに神経を費やした。笹ヤブはともかく、ルートファインディングは私の好きなものでもあるので楽しむことができた。
これで群馬県の県境のうち、いわゆる西上州と呼ばれる山域(塚山〜三国山〜碓氷峠)はすべて歩いたと言える。
0日目 |
2007年4月27日(金) |
高尾=(JR中央線)=小淵沢(泊)
家が京王線沿線にあるので高尾からJR中央線に乗車。中央線は遅れているようで、20, 30分遅れて甲府行き普通列車がやってきた。列車内で甲武信ヶ岳に登る大学の後輩に差し入れを渡し、一人小淵沢へ。
小淵沢は思いのほか寒い。明日以降の寝床が不安になる。小淵沢駅で寝る人は私一人のようだ。ザックからフリースを取り出し、シュラフをかぶって就寝。
1日目 |
2007年4月28日(土) くもりのち雷雨 |
小淵沢=(JR小海線)=羽黒下=(羽黒下タクシー)=大上峠…広小屋山…余地峠…1337.4m三角点峰(泊)
小淵沢 | 6:10 |
羽黒下 | 7:39 |
7:55 | |
大上峠 | 8:25 |
8:33 | |
広小屋山 | 9:55 |
10:06 | |
矢沢峠 | 10:34 |
1410m峰 | 11:03 |
余地峠 | 11:50 |
12:06 | |
1337.4m 三角点峰 | 13:05 |
18:00就寝 |
5:30ごろ起床する。中央線の始電はすでに動いているようで改札を抜けて行く人がいる。私はシュラフをたたんで小海線に乗車する。シートに座って夢の続き。
途中から高校生らしき集団がどんどん増えてくる。休みだし、ジャージ着ているとこ見ると部活らしい。そして羽黒下で一人下車。
羽黒下駅からは臼石荘まで佐久穂町営バスが出ている。臼石荘は今回の登山口の大上峠近くなので重宝する。去年は大上峠で途中下山して臼石荘に下ったのだが、このバスに助けられた。で、7:45にそのバスが出る予定なので駅前をきょろきょろする。しかし、バスが来るどころかバス停すら見つからない。これはどうしたことか。
駅にいたおっちゃんに話しかける。「すみません、臼石荘行きのバスってどこですか?」「ああ、バスは4月に廃止されたよ。3月まではやっていたんだけどねえ」
アクシデント発生。バス廃止。しかもひと月たらず前。なんてことだ。しばらく考える。思い浮かんだ選択肢は3つ。
2.は難ルートを最後に残すので不安、軽井沢までの移動時間がもったいない、問題の後回しで解決になっていないという理由で棄却。1.はサイフが傷むが、社会人のプライドという根拠のない理由に後押しされ、1.を採用した。3.は論外ですよ。
さっきのおっちゃんに佐久穂町の市外局番を聞いてタクシーを呼ぶ。大上峠まで一人タクシー。道の途中、桜が満開で美しい。運ちゃんによると昨日も茂来山に登る人がタクシーに乗って行ったそうだ。その人たちは県境を越えて群馬に下ると行っていたそうだ。どのようなルートをとったのだろう。
途中、臼石荘に寄ってもらって水を汲む。玄関前のジャバジャバ出ている水を汲むと臼石荘の人から「それ飲めませんよ、沢の水だから」と言われ、水道水をいただく。いや、別に沢の水で十分なんですけど。まあいいや。
1泊2日分、5.5リットル汲んで再出発。すぐ大上峠につく。タクシー代は羽黒下駅から5500円。大上峠には「矢沢峠まで2k」という看板があるが、「関東ぐるり一周山歩き」では「1308m峰の先までは、とんでもないヤブが続く」とあり、この道はどうも定かでないらしい。とりあえず歩き出しの部分は樹木が間引きされており、歩きやすそうだ。
4/28 大上峠でタクシーの運転手さんに一枚撮ってもらう。 |
4/28 広小屋山1484.4m三角点峰が見えた。 |
出発する。3日間の縦走の始まり。まずは広小屋山1484.4m三角点峰へ。はじめは平らな樹林帯を行き、すぐ急な笹の斜面の登りになる。いったん尾根に登ると笹の中に踏み跡があり、ヤブがうっとおしいが比較的容易に進む。1308m峰手前のピークで広小屋山が見えた。広小屋山は屏風のように立ちはだかっており、登りが大変そうだ。実際広小屋山の登りは手前のコルから約200mの標高差、しかも等高線はかなり詰まっており、崖のような急な斜面を想像させる。去年、大上峠で下山した理由の一つはこの広小屋山の登りである。
4/28 大上峠〜広小屋山間、1308m峰付近の踏み跡。思ったより明瞭。 |
4/28 広小屋山の登り。岩の崩れたところを登る。 |
1308m峰を越えても踏み跡は続く。笹ヤブとの格闘は杞憂に終わったようだ。笹ヤブの中の踏み跡をたどり、途中岩の崩れたところを2回ほど登って行く。踏み跡があるからか傾斜も思ったほどきつくない。やがて広小屋山東の肩に出られた。ここには主図根があるが、広小屋山の三角点峰は西にあり、大した登りでもないのでそちらの三角点に移動する。
4/28 広小屋山東の肩から広小屋山三角点峰へ向かう。平らで歩きやすい。 |
4/28 広小屋山三角点峰で一本とる。 |
ヤブの薄い平らな道をとことこ歩いて行くと広小屋山三角点峰1484.4mの山頂。三角点と壊れている航空測量用の平板があるだけで看板はない。南の尾根にテープ付きの道があり、北北西にもテープはないが道らしきものがある。西の空、八ヶ岳方面は暗い雲が見える。
休み終わってから東の肩の主図根に戻る。そこから北へ矢沢峠に下る。少し下ると崖っぷちに出る。進路を少し変えて北西へ。笹はあったりなかったりである。途中尾根がはっきりしないので迷いながら下って行く。矢沢峠に近づくと平坦になり、くるぶしほどの丈の笹原に出る。踏み跡もあり、気持ちよい。しかし、この踏み跡はしだいに長野側にずれて行くので群馬側に移動する。県境は背丈を越える笹ヤブになっており、踏み跡もなく矢沢峠目の前で苦戦する。
ヤブを抜けると矢沢峠。佐久町の設置した看板がある。それだけで峠道も縦走路もはっきりしない。矢沢峠から余地峠、1337.4m三角点峰までは地形図上に登山道が示されているのだが。看板の横から笹ヤブを漕いで進もうとするが、笹ヤブはつらいので長野側の樹林帯からたどる。稜線からは30mほどずれるがよしとしよう。樹林帯は倒木があるが、笹ヤブよりはずっと歩きやすい。
4/28 矢沢峠。ヤブが濃いので長野側から巻き気味に歩く。 |
4/28 1410m峰の登り。背丈以上かつ登りにとると逆層の笹ヤブ。 |
そんな楽な樹林帯も300mほどで尽きる。そこからは稜線のヤブの中に突入する。1410m峰の登りに取りかかると背丈以上かつ逆層の笹ヤブになる。ヤブの濃さは今回の山行中でここが最大であった。登っているときは「ああ、もう帰りたい」という気持ちと「去年ならこのくらい黙々と登っていたはずなのに」と自分の心が弱くなったの嘆く気持ちでいっぱいになった。
1410m峰の北の鞍部は群馬側が崖っぷちで南牧村自然公園の建物群がよく見えた。あそこを歩いている人はまさかこんな稜線を人が歩いているとは思うまい。次のピークは登りにまた笹ヤブが現れたので長野側を巻く。ピークに登った後はヤブもうすく余地峠まですいすい進む。
4/28 1410m峰の北の鞍部から見る群馬県南牧村自然公園の建物群。 |
4/28 余地峠。広く、群馬側、長野側とも未舗装の車道(荒廃ぎみ)が通じていた。 |
余地峠は群馬側、長野側とも未舗装ながら車の轍があり、昔はトラクターでも往来していたのだろう。峠は広く、また馬頭観音があり、往時は人の行き来が多かったのだろうと思った。峠の南側には「日影山国有林」という看板があるが、エアリアマップをみても日影山という山は見つからない。
余地峠から先へ向かう。この先は道があり、歩きやすい。最初の山に登る途中、なにやら濡れた木の根を見つける。木の根は皮が剥がれておりどうやらシカか何かが皮を食べたようだ。そういえば山に入ってまだ動物に会わない。
1300mのピークから下ると未舗装の道路に出る。どうやら長野側余地ダムから道が延びているようだ。北側は木が生えておらず展望が得られる。明日登る小唐沢山が高い。空は薄暗く写真を撮ると自動フラッシュがたかれた。
4/28 1331m峰先の笹ヤブ。 |
4/28 1337.4三角点峰に幕営。 |
1331m峰に登る。急な登りだがヤブは薄い。1331m峰から下りつくと笹ヤブが出てくるが、向こうずねくらいの高さで大して問題にならない。気のせいかポツリポツリと雨が降り始める。ザックカバーを取り出し、ザックにかけた。北の方から雷鳴が聞こえる。そして1337.4m三角点峰の登り。これも急だがヤブはなくゆっくり登る。
1337.4三角点峰に着くと雨は本格的に降ってきた。空はすでに暗く、しばらくは晴れそうにない。今日は4時間半しか行動していないが、しかたないのでこれで行動停止とする。
ツェルトを張ってシュラフを出し、ふて寝を決め込む。ツェルト内はときどき稲光で明るくなり、落雷を恐れる。林の中とはいえ、山頂に金属のポール立てていたら雷を受けるかもしれない。しまったと思いつつも、どうしようもないのでふて寝を続ける。雨は本降りでツェルトから雨水がしみ込んでくる。足下には水たまり。ツェルトに防水スプレーでもかけておけばよかったと後悔する。ツェルトの入口から外をのぞくとまわりはすっかりガスであった。結局何もすることができず、ふて寝していた。
14時半に起きる。何やら外が明るい。どうやら暗雲は去り、日差しが出てきたようだ。外に出ると雨上がりの美しい山なみが広がっていた。行動しようと思えばできるが、すでにツェルト張ってしまったし、シュラフまで出してしまった。それに笹ヤブや枯れ葉が濡れているので、行動すればびしょぬれになってしまうので行動はやめにする。明日行くルートを少し観察してまたツェルトに戻った。
今日行動時間が短かった分、明日長く歩くべく18:00と早めに就寝。