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2006年秋 - 尾瀬・燧ヶ岳[2/2]


2006年10月14日(土)〜15日(日)
場所
群馬県利根郡片品村、福島県南会津郡桧枝岐村
コース
10月13日
新宿(前夜発)
10月14日
大清水…三平峠…長蔵小屋…燧ヶ岳…温泉小屋(泊)
10月15日
温泉小屋…三条ノ滝…温泉小屋…下田代十字路…山の鼻…鳩待峠=新宿(解散)
参加者
馬渡さん、高橋さん、山田さん
天気
14日くもり、15日晴れ
参考文献
06尾瀬・燧ヶ岳の地図

2日目

2006年10月15日(日) 晴れ

温泉小屋…三条ノ滝…温泉小屋…下田代十字路…山の鼻…鳩待峠=新宿(解散)

コースタイム
温泉小屋4:30起床
6:26
平滑ノ滝6:42
6:46
三条ノ滝7:25
7:43
温泉小屋8:50
9:12
下田代十字路9:52
9:59
竜宮小屋10:25
尾瀬ケ原三又11:01
11:11
山の鼻11:38
11:50
鳩待峠12:40
14:20

 4:30起床。昨日たっぷり疲れた後だともっと寝ていたい。しかし夜明けはすぐやってくるので外へ出て朝飯の準備をする。朝飯はラーメン。朝飯を食べ終わって一通り支度を終えるとすでに6:20。ヘッドランプはいらない。

 今日は温泉小屋から三条の滝を空身で往復した後、尾瀬ケ原を突っ切って鳩待峠まで。14時の鳩待峠バス集合には昨日に比べて余裕のあるスケジュールである。また山には登らないので遅くなる要因もない。精神的には楽であった。

温泉小屋
10/15 前日泊まった温泉小屋。
赤田代の霞
10/15 朝、温泉小屋前の赤田代は霞がかっていた。

 三条の滝を空身で往復する。はじめは紅葉の中の木道歩き。尾瀬御池への道を分けて5分ほどで急な下りになる。ハシゴをいくつか下ると平滑ノ滝展望台。名前の通り平べったい河床を水が幅いっぱいに流れている。馬渡さんは「へいかつの滝」と読んでいたが、正しくは「ひらなめの滝」である。沢登りに慣れていると「滑=ナメ」という読み方が頭に染み付いて「へいかつ」という、一般的な読み方が思い浮かばなかった。この往復の主目的は三条の滝であるがこの滝もなかなかの眺めであった。只見川対岸の山は真っ赤に色づいていた。山の上の方は日がさしており、なお明るく見える。今日は天気が良さそうだ。

 平滑ノ滝展望台から少し下って小沢を渡り、下り中心の道を行く。斜面をトラバースする道だがところどころぬかるみができていて歩きにくい。しかし周りは黄色く色づいた葉と白い白樺の幹がよいコントラストをなしていてきれいな景色である。

 大橇沢を小さく巻いて橋を渡る。すぐウサギ田代への道を分け、急な道を下って行く。只見川には三条の滝の上端と見える水の飛沫が見えた。ハシゴを下ると三条の滝展望台。平坦な小尾根が少し続いて木々の間から豪快な滝が見える。小尾根の末端にはもう一つハシゴがあり、その下にはベンチもある展望台になっていた。朝早いこともあってまだ人は少ない。

平滑ノ滝
10/15 平滑ノ滝。後方の山の木々が色づいている。
三条ノ滝
10/15 三条ノ滝。ただっぴろい尾瀬ケ原の下には似つかわしくない豪快な滝。

 少しとどまって滝を眺める。滝の高さは100mほど。こんなに水量が多くて立派な滝とは知らなかったので驚いた。ただっぴろい尾瀬ケ原の下にこんな豪快な滝が控えているとは思いもよらなかった。しかし考えてみると尾瀬ケ原と尾瀬沼の水がすべてここに注いでいることを考えればこのくらいのスケールでもおかしくない。川とは上流から下流へと連続しているものの、その渓相は実に不連続である。写真を撮る際は逆行になるため写すのが難しかった。

 温泉小屋へと戻る。帰りは30人くらいのパーティーとすれ違った。これから展望台は混むのだろう。いいタイミングで三条の滝を訪れることができた。後に下田代十字路に案内があったが三条の滝展望台は私たちが訪れた次の日から工事のため閉鎖されるらしい。その点でもいいタイミングであった。途中、馬渡さんと高橋さんは平滑ノ滝を見るため展望台に少し寄って行った。

 温泉小屋に戻ってザックを回収する。ザックは小屋の中に置かせてもらった。温泉小屋のある赤田代の空は只見川右岸にあたる福島県側に絹雲が広がっていて、只見川左岸の新潟県側は雲一つない青空である。赤田代はすすきに似た植物が一面に生えており黄金色に輝いていた。馬渡さんは宮崎駿の「風の谷のナウシカ」みたい、と表現した。振り返れば昨日登った燧ヶ岳が高い。

赤田代
10/15 赤田代にて。なぜか只見川右岸にあたる福島県側にだけ絹雲が広がっていた。
下田代十字路
10/15 下田代十字路。確かに十字路。

 途中で東電小屋への道を分ける。今回は東電尾瀬橋が渡れないので向こうから来る人はいない。やがて下田代十字路の小屋群が見えてくる。湿地帯の池塘には油の浮いているものがある。なぜ湿地帯で油が浮いているのだろうか。その生成原因が気になった。高橋さんは小屋から流れてきたものではないかと言っていたが、小屋のないところでも油が浮いているところがある。例えば上越ナルミズ沢源頭。なぜなのだろう。

 温泉小屋から40分で下田代十字路。一本とる。ここは小屋が6軒も建っており燧ヶ岳の登山口にもなっている。尾瀬ケ原の中心地といってもよいところだ。のんびりしたいところだが、そこの看板で下田代十字路から鳩待峠まで徒歩で3時間半かかることが分かる。時は10時なので鳩待峠には13:30着ということになる。あんまり休んでいると14時のバス集合時刻に間に合わない。ここへきてあせる。

 いよいよ尾瀬ケ原でも広い下田代から中田代への木道を歩く。正面には至仏山、振り返れば燧ヶ岳というぜいたくな風景だ。赤田代と違ってヒザくらいの高さの黄色い草が生えていて遠くまで眺められる。広い湿原と美しい山が写真の構図にとりやすいからかカメラマンが多い。周りの草はところどころ穂が黒くなっているところがあり、ヒョウ柄のようである。そよそよと風が吹くと穂が揺れて見ていて気持ちよい。

 どこを見ても美しい。私も、にわかカメラマンと化し、あちこちにカメラのレンズを向ける。しかし、使うカメラは昨日の温泉小屋道でこけたときに破損し、ディスプレイが何も見えない。写真の残り枚数が何枚か確認できず、不安になりながらパシャパシャ撮る。

 ただ今日の行程は時間的に厳しいことは先に述べた通りである。歩きやすい平坦な木道をすたすたと快調に歩いて行く。下田代十字路と竜宮小屋との中間の六兵衛堀は両岸に木が生えていて木のない尾瀬ケ原では変わっている。竜宮小屋の手前には沼尻川が流れており、やはりここにも木が生えている。沼尻川を渡ったところには案内板があり、貧栄養の湿地帯である尾瀬ケ原でも川の流れているところでは栄養塩の含まれた土が流れてくるので木が育つそうだ。

竜宮十字路
10/15 竜宮十字路。
池塘
10/15 カーブを描いた池塘の一つ。

 急いでいるので竜宮小屋を通過。竜宮十字路を過ぎて中田代に入る。中田代にある竜宮という変わった地名だが、その由来はあちこちにある深い池塘による。看板によればその深くてそこが見えない様子が竜宮に続いているという考えから竜宮という地名が生まれたらしい。尾瀬ケ原南側のアヤメ平などの山から流れてきた水が尾瀬ケ原に入って地下に入り、尾瀬ケ原の真ん中で吹き上がってきてこのような深い池塘を形成するらしい。確かに深い池塘がぽっかりあってそこから浅い川となって只見川に向かって流れている。でもなんで地下水がここで浮き上がってくるのだろうか。別に只見川まで地下を流れてもよさそうなものだが。池塘には大江湿原にもいた体長10cmほどの黒い魚がたくさん泳いでいた。

池塘
10/15 太陽に背を向けると池塘に自分の影と後光のようなものが見えた。池塘には魚もいた。
至仏山
10/15 向かう先に至仏山。

 あまり変化のない木道を行く。すたすたと快速ペースで歩き、牛首が見えてきたあたりで尾瀬ケ原三又。目指す山の鼻、もと来た下田代十字路、東電小屋への道との三叉路になっている。湿地が広がる尾瀬でも休めるよう木道が広くなっている。幸いベンチが一カ所空いていたのでそこで休む。そこから見える牛首は牛というより恐竜が寝そべったような形であった。

 次は山の鼻まで。これまで最後尾を歩いていた馬渡さんが先頭に立ち、ペースを作る。バスに乗り遅れることを危惧しての行動だが、かなり速い。人に追いつくと隣の木道に乗り移り、通過追い抜きして行く。牛首を回って上田代。只見川左岸の背中アブリ田代、カッパ山の方を見るが猫又川の木々で隠れてよく見えなかった。

燧ヶ岳
10/15 尾瀬ケ原三又から振り返ると燧ヶ岳が遠い。
尾瀬ケ原三又
10/15 尾瀬ケ原三又で一休み。

 急いだ結果、尾瀬ケ原三又から山の鼻まで27分で着いてしまった。しばらくトイレがなかったのと私がトイレに行きたかったのとで一本とる。山の鼻はけっこう人が多い。みんなここで休んでいるようだ。山の鼻から至仏山への道は登山道が荒れたために平成8年まで登山道整備のため閉鎖されていたが、現在は解放されている。

 ここから川上川沿いの道を遡り、鳩待峠へ登る。下田代十字路の表示によれば1時間半かかる今日の登りらしい登りだ。しかし登りで時間を食うことが予想されるので準備のできた山田さんと私が先行し、馬渡さんと高橋さんで遅れて行くことにする。心配していたが山田さんは問題なくついてくる。山の鼻を出て川上川を渡って川上川右岸の道を歩く。橋には「一級河川 川上川」という標があり、一級河川ということを妙に強調している。川上川は下流に下れば猫又川、ヨッピ川、只見川、阿賀野川だから一級河川なのだろう。

 川上川沿いの道は平坦だがなぜか木道が整備されており歩きやすい。しかもところどころ古い木道が外されていて横に置いてあるところを見ると、昔から木道があって今年架け替えたようである。ヨセ沢を過ぎて傾斜が出てくるが大した登りではない。このあたりで後続の高橋さん、馬渡さんに追いつかれる。

 ハトマチ沢を過ぎると傾斜が急になり階段状の木道を登る。これからいよいよ鳩待峠への登りかと思いながらゆっくり登って行くと鳩待峠に着いてしまった。もっとたくさん登るのかと思っていたが、あっさり着いてしまいなんだか拍子抜けした。これを書いている今、山の鼻と鳩待峠の標高差を調べると180mと大した標高差ではない。下田代十字路の看板では1時間半かかるはずの道は50分であっさりついてしまった。

 時刻は12:40。バスの時刻は14時なので1時間以上時間が余ってしまった。私は持ってきたリンゴの皮をむいてみんなに配ったり、着替えたり、各自みやげを買ったりしていた。至仏山と反対側の空には雲が浮かんでおり、雲の輪郭には波頭のような形が認められた。その道(境界層気象学)では「猫の目」と表現されるケルビン・ヘルムホルツ不安定である。高橋さんと山田さんはケルビン・ヘルムホルツ不安定という早口言葉のような名前を覚えようとしていた。

 14時にバスの係の人に呼ばれ関越バスに乗って尾瀬戸倉へ。そこで大清水から来た大型バスに乗り換えて新宿へと向かった。関越道では日曜夕方上り線で込んでいたにもかかわらず、新宿についたのは予定の20時の5分前であった。そして新宿解散とあいなった。

おわりに

 初めて訪れた尾瀬で尾瀬沼、燧ヶ岳、三条の滝、尾瀬ケ原と一通りの名所を回ることができた。尾瀬沼、尾瀬ケ原では観光客が多いという印象を受けたが、一方で燧ヶ岳の下りにとった温泉小屋道のように人のいない道もあった。尾瀬を訪れる以前は尾瀬のどこも人でいっぱいというイメージがあったが、人の少ないところがあることは少し意外であった。

 最後に温泉小屋道はほぼ廃道と考えてよいと思うので燧ヶ岳から温泉小屋に向かう人は下田代十字路を経由した方が無難である。そのためにも時間には余裕を持って行動した方がいい。

(2006年10月16日〜19日記す)


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