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2006年夏 - 上越・魚野川万太郎谷[1/2]


2006年8月5日(土)・6日(日)
場所
新潟県南魚沼郡湯沢町・群馬県利根郡みなかみ町(旧水上町)/上越国境の山
コース
4日
京王電鉄代田橋駅…環七・大原交差点=(栗山車・関越道経由)=JR上越線土樽駅(泊)
5日
土樽駅=茂倉新道登山口…吾策新道登山口…関越トンネル通気口…オキドウキョのトロ…一ノ滝…三ノ滝…三ノ滝上・オタキの沢出合下1270m付近(泊)
6日
1270m付近…奥の二俣…谷川岳トマの耳…一ノ倉岳…茂倉岳…矢場の頭…茂倉新道登山口=岩の湯(栗山車・関越道経由)=東急目黒線大岡山駅
参加者
L. 東工大ワンゲル栗山(2)、菊地(2)、青木(1)、道場(1)
天気
24日晴れ、25日晴れ
参考文献
06魚野川・万太郎谷の地図

はじめに

 上越には興味深い谷が多いものの、遡行できる期間は短い。そこで私は夏になると、上越の谷を優先的に登ろうと考える。ちょうど去年湯檜曽川本谷に連れて行き、上越の谷の虜になった後輩の栗山も同じことを考えており、一緒に上越に行くことにした。上越の谷でまだ行ったことがなく、訪れてみたい谷はヒツゴー沢西ゼン、万太郎谷などいくつかある。その中でも私の行ったことのない新潟側に位置し、遡行距離が他より長い万太郎谷に行くことになった。

 万太郎谷は群馬側から見て谷川岳の裏側にあたる。群馬側の谷は一ノ倉沢を代表とする険しい谷が連なっておりクライマーの登攀対象となっているが、裏側の新潟側は草が広がる比較的穏やかな谷が多い。谷川岳周辺の新潟側の谷はすべて魚野川となり、下って信濃川と合流するが、万太郎谷は魚野川の本流にあたる谷である。沢を詰めると谷川岳に達するので登りがいのある沢でもある。

0日目

2006年8月4日(金)

京王電鉄代田橋駅…環七・大原交差点=(栗山車・関越道経由)=JR上越線土樽駅(泊)

 前夜発で登山口の土樽に向かう。今回は栗山が運転する車で向かった。私はキャンパスのある大岡山まで行かず、大岡山から関越道の途中、環七の大原交差点で拾ってもらった。途中で高速道路を少し運転させてもらったがけっこう怖かった。もし一人で運転するなら練習がもっと必要だと感じた。越後湯沢で高速道路をおり、土樽へ向かう。24時ごろ土樽駅につくと、ホームにすでにひとパーティー寝ていた。他に車がなかったので電車で来たのだろう。私たちは駅前に銀マットを広げて就寝した。

1日目

2006年8月6日(土) 晴れ

土樽駅=茂倉新道登山口…吾策新道登山口…関越トンネル通気口…オキドウキョのトロ…一ノ滝…三ノ滝…三ノ滝上・オタキの沢出合下1270m付近(泊)

コースタイム
JR上越線
土樽駅
4:00起床
4:55
茂倉新道登山口5:10
5:15
万太郎谷入渓点6:08
6:26
関越トンネル通気口8:02
オキドウキョの
トロ上880m
8:37
8:52
一ノ滝上11:05
12:10
二ノ滝上
1110m付近
12:45
13:00
三ノ滝13:22
15:17
三ノ滝上・オタキの沢出合下
1270m付近
15:30
20:30就寝

 朝4時に起きる。睡眠時間はやや足りない。起きると車が新しく2台停まっていた。1台はすでに起きてすぐ準備して行ってしまった。もう1台は私たちより後になった。

 今回の計画は土樽に車を置いて周回コースで戻ってくる予定。土樽から万太郎谷を登り、谷川岳から一ノ倉岳、茂倉岳を経て土樽に戻ってくる。そのため茂倉岳から下ってくる茂倉新道の下山口に車を置き、徒歩で万太郎谷入渓点に向かった。周辺は土樽パーキングエリアがあるため道がややこしく、地図を見てもよく分からなかった。ただ茂倉新道の下山口と万太郎谷の入渓点へ向かう道の分岐の地点は地形図の示す位置よりも魚野川の下流にあるようだった。

 万太郎谷入渓点の途中で車を停めている人たちがおり、彼らもこれから入山するようだった。そこからしばらくで万太郎山に登る吾策新道を分け、やがて工事現場になっている車道終点に着いた。ちょうど沢が右に曲がる780m付近で地形図よりも車道が延びていた。ここで入渓準備。天気は晴れで沢登りが十分楽しめそうだった。ついでに今回の差し入れである浮き輪をふくらまし、栗山のザックにつけた。これから泳ぎもありそうだし、浮き輪の活躍する場面もあるかもしれない。なおこの浮き輪は私が大学1年のときの夏合宿・大雪山のときの差し入れでもある。使い道がなく捨てるのももったいないので持て余していたのだ。

入渓点の工事現場
8/6 入渓点の工事現場。
最初の淵
8/6 最初の淵。中山落下5秒前。

 入渓してしばらく何でもない河原を歩く。川幅はそこそこ広く、他の沢登りの対象になる沢に比べて水量も多そうだ。とはいえ河原の様子を見ても普段より水量が多いということもなさそうだ。

 沢は地形図通り右に曲がり左に曲がる。左に曲がるところで小さな沢が右から入る。遡行図のカラホリ沢のようだ。1年生がすたすたとその沢を無視して上流へ向かうのでそれを制止し、現在地確認させる。

 平凡な河原がしばらく続くのかと思いきや1枚岩の1mほどの滝が現れる。いきなり淵は深く、へつりを強いられる。私は右から取り付いたが、途中すべって落ちた。今回の山行で滑落第1号であった。ふざけて漫画「ドラゴンボール」のキャラクター、フリーザの真似をして「ゆるさん、ゆるさんぞぉー」とか叫んでいたが、この滑落が後に大きくあとを引くことになるとはつゆほども思っていなかった。というのは、どうやらこのときにザックの天蓋まで沈んだらしく、天蓋の中身も濡れており、天蓋に入れていた携帯電話が浸水のため死んでしまったためである(享年4年5ヶ月)。万太郎谷でここのほかにザックの天蓋まで沈んだ機会がなかったので、ここで浸水させたのだろう。何にしろ、今まで経験的に信じていた「天蓋は浸水しない」伝説が音を立てて崩れた事件であった。

 さてその滝の上は見事な滑床が広がっており、水流に沿って滑り台になっていた。とりあえず水流沿いに登ってみるものの流速はかなり大きく、足下をすくわれて流されてしまった。とりあえず滑り台なので各自思う存分滑っておく。私はここでウエストポーチのファスナーを開けたままにしていたため、メモ帳と地形図を流してしまうところだった。また歩き始めてウエストポーチに何もないことに気がつき、戻ってみたら滑り台の下にプカプカ浮いていた。

見事な滑床
8/6 見事な滑床。
4m滝
8/6 4m滝。右から巻き。

 しばらくナメを歩いて行き、もとの河原に戻ると川幅が狭まって4m滝。直登は難しそうなので右から巻く。右側には残置ロープが垂れていた。登っていると道場が落ちてきて驚いた。

 さらに登ってから道場に驚かされる。「飛び込んでもいいですか?」。この4m滝に飛び込むらしい。そんなに深くはないが、その発想に驚いた。戻ってくるのも面倒なのに。先を急ぎたいリーダー栗山はあんまり賛成したくないようだったが、はっきり態度を示さなかったためか、結局道場は飛び込んだ。準備なく飛び込んだため私の撮った写真もブレていた。構図はよかったのだが残念。

4m滝にダイブする道場
8/6 4m滝にダイブする道場。
明るい淵
8/6 明るい淵。泳いで左側の一枚岩に登る。

 そのあとも水量の多い河原を歩いて行く。すると関越トンネルの通気孔が現れた。奥秩父滝川水晶谷の雁坂トンネル通気口が直方体なのに対して関越トンネルの通気口は円柱であった。地形図に載っていないので、どの辺りにあるかと思っていたが意外と低いところにあった。

 関越トンネル通気孔を過ぎると明るい淵が現れる。先陣を切って突入して行くと足がつかない。少し泳いで右岸に乗っかるのだが、栗山がスタンスを見つけられず苦戦する。しかも苦戦中に滑って顔をぶつけ、口の中を切ってしまったらしい。ここがオキドウキョのトロかと思ったが、それにしてはしょぼい。そのあと2mほどと小さいけれど広い淵を持つ滝を右から越えたりしながらのんびり歩いて行く。

一枚岩に取り付く栗山
8/6 明るい淵を泳ぎ、一枚岩に取り付く栗山。苦戦する。
関越トンネル排気孔
8/6 関越トンネル排気孔。近づくと大きい。

 そこから5分ほどでオキドウキョ沢の出合。両岸狭まってきて右からオキドウキョ沢が6m二条の滝をかけて合流する。左上から斜めに日が射し、非常に美しい。その滝の先が深いトロとなっており、今回差し入れの浮き輪を使いながら突破する。

オキドウキョ沢出合の滝
8/6 オキドウキョ沢出合の滝。日差しが斜めにかかって美しい。
オキドウキョのトロ手前の淵
8/6 オキドウキョのトロ手前の淵。5mほど泳ぐ。

 意外と短く5mほどの泳ぎで足がついたと思っていたら、その先がオキドウキョのトロであった。20mほどに渡って細い淵が伸びている。流れはほとんどなく、泳いで行くのは容易だろう。しかし泳ぎ着いた先がよく見えず、なんだか滝っぽいのと、両岸どちらからも巻けそうなのとで巻くことにした。とりあえず容易そうな右から菊地が取り付く。なんかぬめっていて登りにくいらしい。その間に栗山が左から階段状の壁を越えていく。しばらく右でウロウロしていた私は右から登った菊地が「ヌメっていた」というコメントを吐くと、登る気がしなくなったので左から巻いた。左はピラミッドの一部のように1m角ほどの段々になっており、なんだか面白い。しかし取り付いてみると意外とどこから登ればよいのか分からず、何度も先行する青木にスタンスを聞いた。

オキドウキョのトロ
8/6 オキドウキョのトロ。左の階段状岩から巻く。菊地だけ右から。
雪渓のかけらが転がっていた
8/6 なかやまは ゆきの かたまりを なげた!
ミス! どうじょうに ダメージを あたえられない!

 左から登りきると道がついていて簡単に巻けた。オキドウキョのトロの奥はやっぱり滝になっており、そこの上をトラバースして左岸へ。菊地と合流した。ちょうどそのあたりは日差しが射す明るいところだったので、ここで一本。甲羅干しする。菊地のシャツに青虫が付いていて、菊地があわててシャツを脱いではたくという面白い一本でもあった。のんびりしていると下流から私たちの通った右岸ピラミッド上の壁を登って3人パーティーが過ぎて行った。この3人パーティーとは一ノ滝まで前後した。追いついてきたので速いのかなと思ったら意外と遅いパーティーだった。

 そのあともやや狭まった沢を登る。滝を登り右に曲がったところに3mほどの雪渓のかけらがあり、驚く。こんな下流に雪渓があるなら上流は雪がたくさん詰まっているかもしれない。特に今年の冬は雪が多かったのだ。そのへんで3人パーティーを抜く。

丸太のかかった滝
8/6 丸太のかかった滝。連なって歩くとゲームのレミングスのようだ。
井戸小屋沢出合
8/6 井戸小屋沢出合。現在地確認。

 丸太を歩いて滝を越えたりしながら井戸小屋沢出合。顕著な二俣になっている沢である。明るいところを歩いているとゴルジュが現れる。奥に2段5mほどの滝が見える。ここは右からへつって行き、1段登って残置テープ使ってトラバースする。残置テープがいい位置にあり、頼りになった。しかし頼りになる残置テープを菊地が使い終える際、下流側に伸ばしておくのを忘れたせいで、ラストの栗山が苦戦していた。

明るいゴルジュ。奥に2段5m滝
8/6 明るいゴルジュ。奥に2段5m滝。
2段5m滝を登る菊地
8/6 2段5m滝を登る菊地。残置シュリンゲを使う。

 そこを登ると4mほどの斜めの滝。下の淵に流木が溜まってダム状になっている。流木の上を渡って滝の上へ出る。と、そこには立派なスノーブリッジが現れる。中は暗く、奥は見えない。上を行くか下を行くかは悩むところだ。

 一方で今さっき登った4mほどの斜めの滝を見てまた道場が「飛び込みたい」という。今度は全面的に解禁ということでスノーブリッジほったらかしで全員飛び込む。飛び込んでいたら後続の3人パーティーが追いついてきてスノーブリッジを上から越えて行った。菊地なんかは高いところが怖いらしく、しばらくためらっていたがなぜか上半身裸で飛び込んで行った。栗山は水中眼鏡を持参し、エロそうな笑顔を見せながら飛び込んで行った。何度か飛び込むうちに道場と栗山は頭から飛び込む、という技を開発し、飛び込み技に磨きをかけていた。その様子からいって全員バカみたいに遊んでいた。

4mほどの斜めの滝でみんなダイブ
8/6 ワンゲルきってのダイバー、道場。4mほどの斜めの滝でみんなダイブ。淵にダイブする文化は道場から始まった。
淵の上の雪渓
8/6 淵の上の雪渓。下を行く。先行パーティーは上を行った。

 遊び疲れてスノーブリッジの処理に取りかかる。しばらく下から歩いて行けそうなので下を歩いて行く。深い淵が一カ所あり、右から巻く。ちょっと手がかりが足りないのでテープの端を後続に持ってもらいながら渡った。

雪渓の中のようす
8/6 雪渓の中のようす。奥行きは100mほど。
大グリ沢が滝をかけて下ってくるところ
8/6 大グリ沢が滝をかけて下ってくるところ。道場が神から啓示を受けたかのようだ。

 雪渓は続く。入ってから50mほどで万太郎谷は左に曲がる。そこで右から大グリ沢が滝をかけて入ってくる。そこは雪渓が開いており光と水が差し込んでいる。初めて雪渓の下に潜って大興奮する道場は大グリ沢の下に立ち、ポーズをとっていたので写真を撮った。そしたら道場が光の中から降臨するような写真が撮れてしまった。つーか、雪渓の下で騒ぎ過ぎだ、雪渓が崩れるだろ、道場。

雪渓の出口
8/6 雪渓の出口。滝を左から登る。
滑る
8/6 滑る。

 沢が左に曲がるところで滝をかけて雪渓は終わり。雪渓は全長100mといったところか。そこを越えるとまたいい滑り台が続く。いくつか間引きながら滑り台を滑って登って行く。天気もよく水の中が気持ちいい。3人パーティーに追いつきそうになったが遊んでいたのですぐ離された。

滑る
8/6 滑る。
滑る
8/6 滑る。

 やがて一ノ滝。先行する3人パーティーが右から取り付いており、実力もない我々は右から巻き道を探す。「上越の谷105ルート」によれば「左岸のルンゼ状の所から登る」らしいので少し戻ってルンゼを探す。栗山がルンゼを登って行くが道は見つからず下ってくる。一ノ滝とそのルンゼの間のテラスから登れそうだと感じた私はそこから登り、ヤブに突っ込む。ヤブに突っ込むと何となく踏み跡があり、踏み跡をたどる。大きな一ノ滝だが踏み跡は小さく巻いて行く。一ノ滝の上あたりで小さなルンゼがあり、ここからトラバースかルンゼを登るか迷うが、トラバースはヤブヤブしているのでルンゼを登ってみる。しかし道はなく後続の栗山にトラバースさせてみると、見事に白い一枚岩の下を巻いて行く道を見つけていた。後は道沿いにトラバースしてザイルも出さずに沢に戻る。ちょうど一ノ滝の上だ。

一の滝
8/6 一の滝。右のヤブから巻く。
一の滝上部の巻き
8/6 一の滝上部の巻き。

 一ノ滝の上でしばらく休む。滝の上から眺めると後続の3人パーティーも直登は諦めて巻きに入っていた。休んでいる間に追いつかれるかと思ったが、意外と追いつかれなかった。その後も下山まで3人パーティーとは会わなかった。今回は天気がいいのだが、この3人パーティーにしか会わなかった。

一ノ滝を巻いて一本
8/6 一ノ滝を巻いて一本。
二ノ滝を登る青木
8/6 二ノ滝を登る青木。右側からも登れる。

 一ノ滝からゴーロ状の沢を歩いて行く。滑り台はない。やがて二ノ滝。直瀑でない分、一ノ滝ほどの迫力はない。「上越の谷105ルート」には「左壁から」とあるが、右からの方が簡単そうなので右から巻く。が、青木が水流沿いに右から取り付く。そこは凹部になっていてはた目からはスタンスは見えない。が、青木は取り付くとするすると登って行きあっという間に中段のテラスに出る。ひょっとしたら途中で固まってしまうかもしれないと思い、栗山に早く登りきってザイル出す準備をさせようとする。しかし、上段は傾斜も大したことないようで簡単に直登してしまった。そして後続の道場をしぐさで誘っていた。道場も直登した。私はビビって右から巻いた。栗山と「あいつら若いな」と話した。

 二ノ滝を登ってしばらくナメ。そのあとゴーロ。このあたりにテント場があるそうなので両岸の平らなところを調べながら歩く。キャンプ適地を発見するがまだ13時。行動を終えるには早い。しかし「上越の谷105ルート」は「ビバーク適地は全体的に少なく、(中略)一ノ滝と三ノ滝の間で探す他はないだろう」と三ノ滝の先へ進むことに釘を刺しており、セオリー通りなら早くともここで泊まるべきである。せっかちなリーダー、栗山は三ノ滝を登ってしまいたく、このキャンプ適地をあえて見過ごし、三ノ滝を越えた地形図上で判断できる緩い傾斜地に期待をかけることにした。結果的には三ノ滝にだいぶ時間がかかったことと、三ノ滝上にテント場を見つけることができたことから進むのは正解であった。

二ノ滝と三ノ滝の間の河原
8/6 二ノ滝と三ノ滝の間の河原。適当なテン場を探しながら歩く。幕営適地はある。
壊れた雪渓がゴロゴロしている
8/6 壊れた雪渓がゴロゴロしている。少し先に三ノ滝。

 ゴーロはだんだんと狭まってきて途中淵に腹まで浸かったりしながら登って行く。と、正面に雪渓の壊れたブロックがごろごろと転がっているところに出た。最近壊れたらしく、小さいブロックを足場確認のために蹴ると崩れるものがいくつかあった。ブロックとブロックの間に落っこちないよう丁寧に歩く。

三ノ滝全景
8/6 三ノ滝全景。2段に分かれている。
三ノ滝下部を登る青木
8/6 三ノ滝下部を登る青木。

 その雪渓ブロックの途中で三ノ滝。正面が三ノ滝沢、左から三ノ滝をかけて合わさってくるのが万太郎谷本谷。三ノ滝沢の方が河床が低く、本流は三ノ滝沢に見えるが、本流は三ノ滝をかけている万太郎谷本谷。三ノ滝下部は一見すると垂直に近く、登るのが難しそうであった。ザイルを出すことは暗黙の了解だった。栗山とじゃんけんしてリードを決める。「勝った方がリード」という栗山の言葉は作戦だったのか私がリードすることになった。

 滝より5mほど右の乾いた岩壁の方が登りやすそうだが、「上越の谷105ルート」によれば「水線の右横を直登する」らしいので、水線の右横を登ることにする。はじめが特に垂直に近く、取り付きにくい。雪渓のブロックがもっと高いところまで残っていれば簡単に登れたのに、と思いながら取り付くと残置ハーケンが見えた。ぐっと左手を伸ばせば届くところで、そこを越えれば傾斜は緩くなり登るに従って楽になった。計3つの残置ハーケンを支点にして登った。

 登りきってビレイ用の残置ハーケンを見つけ、セカンドで菊地が登ってくる。その次に青木。ビレイに疲れたので、道場のビレイは青木、栗山のビレイは道場にさせた。本当は下段を登っている間、上段も取り付けばよいのだが、ザイルは一本で、上段はザイルが欲しい斜面だったので、ラストの栗山が登るまでのんびり待つ。

 栗山が登りきった後、続けて栗山がリードで上段を登る。これは「上越の谷105ルート」どおり「左壁に取りつき、バンドから右壁にトラバースして細い水流沿いに登り、途中からブッシュ帯に入って滝の落ち口へと出る」に従った。ただトラバースがヤブっぽくて、リードの栗山はザイルが引っかかって移動しにくそうだった。

三ノ滝上部を登る栗山
8/6 三ノ滝上部を登る栗山。右の枝沢を登り、草付きをトラバース。
三ノ滝上の万太郎谷
8/6 三ノ滝上の万太郎谷。おだやかな渓相。

 上段のセカンドはまた菊地。ザイル付きだと細い水流沿いに行かずに、水流横のスラブを登れるので割と簡単に登れた。続けて青木、道場、私中山。道場は待っている時間があまりに長かったので上段下のテラスで寝ていた。前日あんまり眠れなかったらしいが、その様子はまるで火曜サスペンス劇場で滑落して首の骨を折って死んでいる人物のようであった。

 最後に私が登る。できるだけ水流に近く登ろうと上部で水流に近づくがヌメっていたのですぐ離れた。栗山はずっとビレイしていたので相当疲れていた。先行した菊地、青木、道場の3人は先へ行き、テント場を探していた。私と栗山はザイルをたたみ、追いかけて行った。しばらくで空身の道場が下ってきたので聞くとテント場を見つけたらしい。そのとき私は左岸の笹薮の中を平坦地を探してウロウロしていた。「笹を倒せば何とか平坦になりそうなところがあった」と栗山に報告しようとしたら道場が現れたので、栗山は道場の方を先に確認しに行った。どうやら道場の方がいいところのようなのでそっちで寝ることになった。

 場所は三ノ滝上から10分ほど。左岸を一段登ったところ。三ノ滝上・オタキの沢出合下、1270m付近に幕営した。笹がなぎ倒されていて平坦になっていた。対岸に小さい雪の固まりが斜面にへばりついていた。テントを張って1年生は飯の用意、栗山と菊地は薪拾い、私は自分の寝るツェルトを張って天気図を描いていた。薪を拾った後、栗山は相当疲れたらしくテントから足だけ出してぐうぐう寝ていた。ドライブに三ノ滝のビレイ、慣れない2年生リーダーといろいろ働いたからなあ。

三ノ滝上・オタキの沢出合下に幕営
8/6 三ノ滝上・オタキの沢出合下、1270m付近に幕営。
河原でたき火
8/6 河原でたき火。

 飯を食い終わって河原でたき火。栗山がしつこく火をつけようとするが、なかなか火が点かない。「何か紙持ってくる」と言って栗山がテントに戻る際に「ライター貸せ」と言って私が挑戦すると、栗山が戻ってくるまでの間に火が点いた。雪崩でやられた倒木がたくさんあり、同様に雪崩でやられた笹のひげ根の火のつきがよかったのですぐ火が点いた。栗山のたき火修行が足りないだけだったようだ。

 その夜は薪をくべればいくらでも燃えたので火遊びに興じた。ズボンもよく乾いた。みんな酒を持ってきていなかったので私の持ってきたビール1リットルを5人で分けてすぐ酒は涸れてしまった。その代わりつまみがたくさん余っていたが、1年生は晩飯を食い終わった後にも関わらず大量に食べていたため、つまみもすぐなくなってしまった。最後はたき火のそばで栗山と2人で半分寝てしまい、20:30にそれぞれテントとツェルトに帰った。


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