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2006年秋 - 上越・登川米子沢


2006年9月16日(土)〜17日(日)
場所
新潟県南魚沼市(旧南魚沼郡塩沢町)/上越の山
コース
9月15日
JR武蔵野線東所沢駅集合=(関越道)=桜坂駐車場(泊)
9月16日
桜坂駐車場…米子沢遡行…左俣…巻機山避難小屋(泊)
9月17日
巻機山避難小屋…ニセ巻機山…桜坂駐車場
参加者
H、K、中山
天気
16日、17日ともくもり
参考文献
06上越・米子沢の地図

はじめに

 巻機山は上越国境に位置し、谷川岳と越後三山を結んだ直線上の真ん中あたりにある。米子沢はその巻機山南面を流れる沢でナメで有名な沢である。4kmほどと流程も短く、難しいところもない(「関東周辺の沢」によれば2級)ため沢登り初心者には人気の沢となっている。人気に応じて取り上げる本も多く、私の知る限り

と5冊もの本に取り上げられている。

 実は私も一度この沢を訪れたことがある。しかし、そのときはあまりの寒さにゴルジュに入るのを嫌がり、巻きの果てに上越国境稜線まで出てしまい、有名なナメを見ずに終わってしまった。そのため今回、個人的には米子沢のナメを見るための再チャレンジとなった。KさんとHさんは初めてだそうだ。

 なお当初の計画は米子沢だけではなかった。3連休だったので、巻機山の北側の五十沢下の滝沢を登り、桜坂駐車場へ登山道を下る。続けて米子沢を登り、五十沢側へ登山道を下るという8の字形のルートの予定だった。しかし、この3連休の天気予報はくもりか雨を伝えており、3日目には台風13号が近付いてくる可能性があった。そのためKさんの助言により、米子沢だけに予定を変更した。

0日目

2007年9月15日(金)

JR武蔵野線東所沢駅集合=(関越道)=桜坂駐車場(泊)

 関越道経由で巻機山へ向かうためと、越谷から来るHさんの都合のためJR武蔵野線東所沢駅22:30集合。所沢インターチェンジから関越道に乗る。乗りながら今回の計画を再検討する。天候が悪いという予報なのに大スラブの五十沢下の滝沢を登れるのか。計画したリーダーのHさんは行く気満々だったが、Kさんが乗り気にならなかったため、予定は変更され米子沢だけになった。米子沢そのものは日帰りの行程であるが、2泊3日の食糧を持っているのであえて巻機山避難小屋で1泊することにした。

 巻機山登山口であり、米子沢入渓点でもある桜坂駐車場には午前1:30に到着。車のとなりにテントを張り、Hさんの持って来た酒を飲んで寝た。就寝は2:00であった。

1日目

2007年9月16日(土) くもり

桜坂駐車場…米子沢遡行…左俣…巻機山避難小屋(泊)

コースタイム
桜坂駐車場5:15起床
5:55
二俣下1140m7:44
8:00
1700m付近9:32
10:02
二俣10:34
巻機山避難小屋11:10
17:20就寝

 朝5:15にとなりのテントの物音で起きる。外は既に明るく、空には薄い雲がかかっている。今日一日くらいは天気は持ちそうだ。出発時に時計がないのに気づく。どうやらシュラフカバーの中で外れてしまったらしい。この日の時間はKさんの時計を参考にしている。「危険 米子沢遭難事故多発」の看板の横から入渓。米子沢には入渓点から2基の堰が見え、あんまり面白そうな沢に見えない。始めに堰があったかどうかも私は覚えていなかった。6基程の堰を左から越えて行く。最後の堰だけ中央に縦の切れ目が入っており、切れ目から越えることができた。

最初の堰
9/16 最初の堰。はじめは堰が多くて面白くない。
滑ノ沢出合
9/16 滑ノ沢出合。左から滑ノ沢が下っている。

 その後もしばらく平凡な河原が続く。このへんは平凡だったために前回の記憶はほとんどない。今回もほとんど記憶がない。歩いて行くと河原はだんだん細くなってくる。すると石の上に沢タビの足跡を発見。先行者がいるらしい。登って行くと滑ノ沢出合に先行者パーティーを発見。見通しのよいところだったので先行者パーティーはずっと奥におり、発見してすぐ見えなくなってしまった。その滑ノ沢出合でいい滑り台を見つけ、滑る。下の淵が思いのほか深く、泳ぎになってしまった。全身ずぶぬれになるが意外と寒くない。これなら前回入れなかったゴルジュも行けそうだ。Kさんが写真撮ってあげるよ、と言ってくれたので2回滑らせてもらった。なお、滑ノ沢出合下の30m滝は直瀑でもないので簡単に越えられる。

 滑ノ沢は名前の通り長い滑滝が稜線から落ちて来ている。本流の米子沢もナメており美しい。このナメは傾斜があるためフリクションで登るのは難しいので左手の樹林帯との間から登る。滑ノ沢出合からすぐ3段40mの滝。右岸から高巻く。人の多い沢だけあって道は明瞭。下降点には赤布もぶら下げられていた。その高巻きの最中に先行する5人パーティーに追い付く。3段40mの滝を巻き終えた所で先を行かせてもらう。聞けば一橋大ワンゲルだそうで、今日はふもとの部の小屋に泊まるそうだ。メンバーの一人のヘルメットには文登研の班と名前が書かれたガムテープが張られており、文登研には私も参加したので懐かしく思った。

10mの滝
9/16 10mの滝。左から越える。
すき焼き丼を食べているKさん
9/16 Hさんとすき焼き丼を食べているKさん。

 一橋大パーティーを抜いて続けて沢を登って行く。いくつも滝を越えて行くが難しいものはなく、楽しく越えられる。10mの滝も左から簡単に越えられる。10mの滝を越えて沢は緩やかに右に曲がる。そこには見事なナメがあり、美しい。ナメの上はまた左に緩やかにカーブしており、谷が狭くなっている。そこで一本。Kさんはパンやビスケットのような一般的な行動食ではなく、コンビニで買ったと思われるすき焼き丼を食していた。おそらくKさんは人類ではじめて米子沢ですき焼き丼を食べていると思われるので、その貴重な瞬間を写真に撮っておいた。

 のんびり休んでいる間に一橋大パーティーに追い抜かれる。トップの若者は半袖で大変元気そうだ。Hさんが「寒くないの?」と心配していた。一橋大パーティーを見送ってからしばらくして登りはじめる。ガラガラの岩を登って行くとゴルジュが現れた。「ここが前回巻いたゴルジュ?」とKさんに聞かれるが否定する。巻き始めたところでないのは確かだが、このゴルジュもあまり覚えていない。その入口で一橋大パーティーがとまどっていた。しばらく様子を見ていたが水流沿いを避けて左手のスラブから巻こうとしていたので水流近くを取り付かせてもらう。水流のすぐ左に小さな凹部があり、ここから登る。ちょっと滑りやすそうだったが登ることができた。一応、HさんとKさんにはテープを出した。Kさんは私の登った小さい凹部からではなく、なぜか水流沿いに登って来ていた。いったいどこに足をかけたのだろう。とまどっていた一橋大パーティーも私の登った小さい凹部から続いて来ていた。

一橋大パーティーが手こずっていた滝
9/16 一橋大パーティーが左から巻こうと手こずっていた滝。水流左の凹部から登る。
前回巻き始めたゴルジュ
9/16 前回巻き始めたゴルジュ。

 ゴルジュに入るが、そんなに狭くもなく5分ほどで白い岩の滝。左側から枝沢が滝をかけて落ちている。白い岩が美しいが、水の流れているところはヌメっていてちょっといやらしかった。

 そこから15分で前回巻き始めた問題のゴルジュ。右手に顕著な枝沢が合流しているので間違えることはない。ここは水流沿いに行くか、本流と枝沢との間を登りバンドをトラバースして本流に戻る。あるいはゴルジュを巻き続け、途中で懸垂下降して沢に戻る。前回は巻き続け、沢に戻れず稜線へ突き上げたのであった。そのときはこのゴルジュ入口のヒザほどの深さの淵を避けたためそんな事態になった。今回、個人的にはその失敗を精算するのが目的でもある。KさんとHさんは本流と枝沢との間を登りバンドをトラバースしたが、私は水流沿いに行った。よく観察すると水流沿いはヒザまで浸かる必要はなく、左側から小さく巻ける。足を踏み出してみると全然難しくはなかった。足も足首くらいまでしか濡らさずに済んだ。前回の失敗がこんなにも簡単に越えられてしまって少しガッカリであった。右から巻いたKさんとHさんは私よりもう少し時間がかかった。Hさんは「淵を泳いで行ったの?」と私に尋ねたが、大して難しくないと答えた。初見だと前回の私同様、深くて通れなさそうに見えるのだろう。

2段7mの滝
9/16 2段7mの滝。右を登る。
狭いゴルジュと5m滝
9/16 狭いゴルジュと5m滝。右の草付きから。

 このゴルジュは下部のゴルジュに比べてゴルジュらしいゴルジュである。最初に2m滝を越え、次に2段7mの滝。淵がちょっと深いので右からへつり、滝の右を登る。特に難しくない。次々と滝をかけているが難しいものはない。一見険悪そうな両岸5mくらいに迫ったゴルジュもその奥の5mほどの滝も右から巻ける。8mほどの滝は右から。その上はよく見えないのでその先に噂のナメがあるのではないかと期待が出る。しかし、ナメはもう少しおあずけ。黒い8m2段滝は下段を右から登り、中段で水しぶきを受けながら左へ移動。左壁を登る。そこを登ると長い長いナメが続いていた。ただ、でこぼこしているし感動はいまいちである。

黒い8m2段滝
9/16 黒い8m2段滝。左壁を登る。
ゴルジュを越えたあたり
9/16 ゴルジュを越えたあたり。ナメはすぐには始まらない。

 いまいちなナメを登って行くと赤茶色の7m滝。ここは左から登る。その上もナメになっているがやっぱりでこぼこしているしなんかイマイチである。急なナメを登って行くとやがて平らなナメに出る。幅も広く美しい。おもわず2度ほど滑る。しかし、傾斜が緩いため滑りは悪い。それでも滑床はすべすべしているので適切な傾斜があれば滑りやすいに違いない。Kさんがどんどん先に行くので滑りもほどほどに追いかける。そこからしばらくで左から小さい枝沢が入る。傾斜も急になる。枝沢の上でKさんがザックを下ろしたのでどうやらここで一本とるようだ。

米子沢のナメ
9/16 米子沢のナメ。座るHさん。でもこのあたりは傾斜が緩く滑らない。
ナメより上流
9/16 ナメより上流。穏やかな川になる。

 すべりたくてうずうずしていた私はそこでザックを下ろし、滑り台を行った。傾斜は急だがすぐ手前の少し持ち上がっているあたりで加速する前に停まると思ったのだが、私の体はそこで踏ん張れず体の向きを変えて頭を下に滑走してしまった。そのまま2度ほど空中を飛んで平坦なところに落ちて停まった。尻を2度ほど打ち、あまりの痛さに動けない。それでもいったん水流からはずれて岸までたどり着き、岩に腰を下ろす姿勢を取った。KさんとHさんが心配して上から下ってきた。「大丈夫か?」との質問に「今は痛くて動けないけどしばらくすれば動けると思う」と答える。そのときはすぐ治るくらいに思っていたが、痛みが完全に抜けるまで10日ほどかかった。

 5分ほどじっとしているとよたよた動けるようになったのでザックのところまで戻る。見ると10mほど落ちたらしい。落ちている気分から推測すると30mほど落ちている気がしたのだが。ザックのところまで戻ってからまた休む。のんびりしていても一橋大パーティーは追いつかない。この米子沢では一橋大パーティーしか見なかった。ゴルジュに入ったときにKさんがもうひとパーティー来たと言っていたが私は確認していない。振り返ればガスガスで前も後ろも白い。

 ザックのところで休んでいて寒くなったので出発する。KさんもHさんも心配してくれて私の荷物を持ってくれた。もう、申し訳ない。二度と無謀な滑り台を行わないことを心に誓う。

 出発してしばらくでナメは終わり、上流部の小川になる。2つほど滝もある。尻を打った状態で登れるかどうか不安だったがゆっくりとした動作で登れた。やがて二俣。どちらも平和そうな小川が続いている。ここは早く小屋へ行って休みたいので、小屋の水場に出る左俣をお願いした。小さな滝をかけながらのんびりと平和な沢を歩く。健常な体なら沢が終わることをなごり惜しむところだが、私は尻を負傷しているので小屋はまだだろうかと気にしながら歩く。前に来たときに水汲み場までは来ているはずだがどんなところだったか思い出せない。そもそも水を汲んだのは夜だったので記憶に残っていないといった方が正しいかもしれない。

二俣
9/16 二俣。小屋に近い左俣を行く。
巻機山避難小屋
9/16 巻機山避難小屋とKさん。

 二俣から20分くらい、沢がS字になるところで避難小屋の水汲み場。吹けば飛ぶような段ボールの看板が置いてある。こんな水場だっただろうかと思いながら水を汲む。登山道から子供たちが登ってきているようで水場上流の雪渓に大興奮していた。そこから道をたどってすぐ木道と2階建ての巻機山避難小屋があった。

 巻機山避難小屋は大混雑であった。下の階では豚汁かなにかを作っているし、上の階ではところ狭しとザックが並べられている。ひょっとしたら泊まれないかもしれないかも、という思いが頭をよぎる。もっとも山頂往復でザックを置いているだけかもしれないのでしばらく様子を見る。KさんとHさんは山頂往復へ向かい、尻を負傷してろくに動けない私は小屋で荷物番をすることにした。

 2時間ほどでKさんとHさんが戻ってきた。小屋の一角が空いたので銀マットでそこを占めることにする。あとは飯食ったり酒を飲んだりして寝た。幸い、私の時計はシュラフカバーに入っていた。この小屋にザックを置いていた人たちの大部分は登山道を補修している若者国際登山隊で、韓国人とか白人とかいろいろいた。この情報はHさんが仕入れてきた。彼らは夜中、UNOや"werewolf"とかいうゲームをしていてうるさかった。

2日目

2007年9月17日(日) くもり

巻機山避難小屋…ニセ巻機山…桜坂駐車場=石打ユングパルナス(入浴)=(関越道)=JR武蔵野線新座(解散)

コースタイム
巻機山避難小屋6:00起床
7:37
桜坂駐車場9:31

 朝から昨日の残りの豚汁を食べ、インスタントラーメンを食べる。出発前に各自トイレ。巻機山避難小屋のトイレは変わっていて便器の隣に自転車の一部(ペダルとサドル)が置いてある。これは何のためかというと排泄物とおがくず等をかき混ぜて微生物の分解を促進するためらしい。私は尻が痛かったのでサドルにまたがるのを避け、自転車の横でペダルを手でぐるぐる回していたが、ちゃんとサドルにまたがってペダルを漕いだKさんは「これはやせるな」と言っていた。

 7:37に避難小屋を出発。天気は悪くない。天気予報では今日は雨、明日は台風がやってくるという予想なのだが。ニセ巻機を越えて桜坂駐車場へと下る。しばらくガスの中、急な階段を下る。ガスがなくなってくるとだんだん登りの人に会う。会う人会う人に「もう山頂行って来たんですか?」と尋ねられる。巻機山は日帰りで登るのが常識の山らしく、避難小屋に泊まるのは珍しいらしい。実際次から次へと人が登ってくるので、あの小さな小屋に全員はとても泊まれまい。ガスを抜けると曇りながらも景色はよく、朝日岳や大源太山が見えた。

 避難小屋から2時間で桜坂駐車場。私の尻も痛かったが下まで何とか歩けた。あとは石打ユングパルナスという風呂(大人900円)に入り、関越道経由で帰京した。

おわりに

 米子沢自体は難しくもなく楽しく登れる沢で満足であった。沢自体が非常に面白かったので上部のガスも気にならなかった。また行っても良い沢である。

 一方で自分の軽率な行動で自分が痛い思いをしただけでなく、同行のメンバーにも迷惑をかけてしまった。大いに反省した。

(2006年9月18日~9月29日記す)


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