山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2006年山行一覧>北アルプス・槍ヶ岳北鎌尾根[6/7]
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7日目 |
2007年1月1日(月) 晴れ |
P11付近…槍ヶ岳…槍平冬期避難小屋(泊)
P11付近 | 3:30 |
7:40 | |
P15 | 11:10 |
槍ヶ岳 | 13:40 |
13:55 | |
槍岳山荘 | 14:20 |
14:45 | |
飛騨沢 | 15:30 |
15:40 | |
槍平冬期避難小屋 | 16:20 |
22:00就寝 |
朝、テントの中でボヤボヤしてると初日の出を見逃した。KさんとHさんは初日の出を見たようだ。私は初日の出5分後のお日様を見ることができた。槍ヶ岳も見え、今日も昨日に続き天気がよさそうだ。
1/1 常念岳と八ヶ岳の間から初日の出。右手に富士山、南アルプスも見える。 |
1/1 目指す槍ヶ岳を背景に中山。 |
テントをたたむ頃に独標から来た単独行氏が追い抜いて行く。我々も追いかけるべく出発する。
1/1 東鎌尾根が朝焼けに染まる。 |
1/1 今日たどる稜線。 |
しばらくはザイルも出さずすいすい進む。途中2873m標高点付近で千丈沢側(硫黄尾根側)にザレた下りになり少し手こずる。そこからトラバースしてコルに直登する。その先に小ピークがあり、ザイルを出すかどうか迷う。ちょうどそこは前に夏に訪れたとき直登しようか左から巻こうか考えたところであった。前回は左から巻いたが今回はザイルを出して直登した(左からトラバースしたHさん除く)。そこで3人パーティー+3人パーティーの「ぶなの会」のメンバーに追いつかれる。彼らに直登かトラバースか聞かれて「1人はトラバースをしていて、ほか4人は直登しています」と答えたら不思議な顔をされた。彼らはHさんの切り開いたトラバースルートをとって行った。
1/1 Hさん以外のメンバーが直登したルート。 |
1/1 Hさんが開拓した天上沢側のトラバースルートを行くブナの会。 |
最後に私が直登するとそのぶなの会メンバーたちが私たちを追い抜くところだった。ぶなの会メンバーについて行く。右側千丈沢側からトラバースしまたピークが現れる。ぶなの会が登って行くのを行動食を食べて待つ。はじめの3人パーティーはノーザイルで、後の3人パーティーはザイルを出していた。私たちの4+1人パーティーもよく分からないが、彼らもよく分からない。待っている間に新たに2人パーティーも追いついた。
1/1 ぶなの会と前後する。真ん中がHさん、左右がぶなの会。 |
1/1 ザイル出して登る。 |
私たちはザイルを出して登った。手に不自由のある私がザイル末端をつけて一番最後。そこを登りきると稜線が水平に弧を描くように右に曲がっていてその向こうにまた岩峰が見えた。ぶなの会の後続3人パーティーがザイルを伸ばしており、私たちもKさんがザイルを伸ばしていた。水平から急な登りに移るところでピッチを切り、岩峰まで2ピッチ。岩峰の登りは軽い雪が着いていたがトレースがあったのでそんなに沈まずに登れた。
1/1 狭いリッジを行く。 |
1/1 狭いリッジ先の登り。 |
ぶなの会が登った後、私たちも続けて登り、すぐ後を2人パーティーも登ってきた。ここからしばらくはザイルも出さずに稜線伝いに歩ける。風はあるものの割と簡単にP15を越え、大槍の登りになる。
1/1 狭いリッジを振り返る。後続が来ている。 |
1/1 P15-大槍コル付近でぶなの会先行3人パーティーに追いついたので少し待つ。左からKさん、Sさん、中山 |
途中で着るものを整えるぶなの会後続3人パーティーを追い越し、P15-大槍コル付近でぶなの会先行3人パーティーに追いつく。先行パーティーが目の前の雪面を越える間少し待つ。
そこを登ると稜線は少し右に曲がって大槍が目の前にどっしりと構える。稜線は緩やかに傾斜しており、おそらくここが北鎌平ではないかと思う。Kさんと「加藤文太郎はこのあたりから下りて行ったんですかね」と話す。
1/1 北鎌平と大槍。 |
1/1 北鎌平付近を歩くHさん。 |
やがて大槍の基部。ここまでくると穂先は見えない。ただの壁である。Kさんリードで登る。待っている間にぶなの会後続3人パーティーも追いついた。2者でザイルを伸ばして行くが途中でクロスしていて怖かった。Hさんは下での待ち時間に天上沢側(東鎌尾根側)に移動していた。私は風を避けるためかと思ったが実際には別ルートから登っていた。
1/1 いよいよ大槍が間近。 |
1/1 大槍1ピッチ目を登るぶなの会。 |
Kさんのところに追いつくと、どこからかHさんがすでに登り着いていた。あちこちに残置ピンがあるのでセルフビレイ、ランニングビレイには事欠かない。次はKさんがリード。右手のリッジ状の雪面を登り、やがて見えなくなった。あとでザイルがいっぱいになってしまったのでビレイしていたKさんが少し移動した。50mいっぱいらしい。私たちがそこを登り始める頃にぶなの会後続3人パーティーが追いついてきた。どんなところだったかはよく覚えていないがピッケルのピックとアイゼンの前2本爪を使って登った。
1/1 ビレイ中のHさん。左側奥に後続パーティーが並んでいる。 |
1/1 大槍3ピッチ目。岩の出たルートで途中で天上沢側に移動する。 |
最後3ピッチ目。岩の右側のルンゼを直登し、別の岩にぶつかると左へ登る。その岩をぐるりと巻くようにして登り、最後に柔らかい雪面を登りきるとそこが山頂のほこらの隣だった。ほこらに向かって右側(天上沢側)でちょうど夏に登ったときと同じルートのようだった。
1/1 大槍3ピッチ目最後を登るKさん。 |
1/1 Sさん登頂の瞬間。 |
トップのKさんは肩の小屋側の鉄ハシゴにセルフビレイを取って確保していた。振り返ると次々と皆登ってくる。Sさん、Hさん、Kさん。全員登ったところで記念撮影。そしてお互いに握手。私は右手の凍傷があるので左手で握手させてもらった。
1/1 ハシゴでビレイするKさん(左)と登頂したばかりのSさん(右) |
1/1 槍ヶ岳の看板を持つKさん。オーバー手袋のようすから分かるように風が強い。 |
山頂は風が強く、不用心に歩くと落っこちてしまいそうだったが、景色は非常によかった。南側に穂高岳、南西に笠ヶ岳、西に双六岳、三俣蓮華岳、北には立山と後立山連峰、東には常念岳と雪の見えない蝶ヶ岳が見えた。
1/1 登頂の記念撮影。左からHさん、Kさん、Sさん、中山。 |
1/1 山頂の祠から北鎌独標を振り返る。 |
1/1 山頂東側の様子。常念岳には雪があるのに、蝶が岳にはほとんど雪がない。 |
1/1 山頂南側の様子。穂高連峰が厳しくも美しい。 |
1/1 槍岳山荘。奥に飛騨沢、中崎尾根、笠ガ岳が続く。今回は冬季小屋に泊まらず、飛騨沢を下った。 |
1/1 山頂西側の様子。双六岳がなだらか。 |
肩の小屋へ下る。すぐ入れ替わりに肩の小屋から人が登ってきた。しばらくはザイルをつけたまま歩き、途中で外して下って行く。道は夏に足場の少ないところでも適当に雪が着いていてむしろ歩きやすかった。なので夏と同じくらいの時間で肩の小屋まで下りられた。
1/1 槍ヶ岳山荘への下り。 |
1/1 槍ヶ岳山荘で槍ヶ岳を背にSさんと記念撮影。 |
小屋についてからデポ缶を回収。11月に来たときにKさんがしょい上げたものだ。中身は日本酒2パック、ホワイトガソリン。まだ時間は早いので槍平まで下る。私はもう14時過ぎだしここで泊まるのかと思っていたが、早く帰れるならそれに越したことはないと思い、それはそれでほっとした。
1/1 槍ヶ岳山荘冬季小屋でデポ缶を回収するKさん。 |
1/1 飛騨沢を下る。 |
飛騨沢を下る。予定は中崎尾根を下るはずだが、飛騨沢にもトレースが多い。そこである程度西鎌尾根を下ってから飛騨沢を直接下る。飛騨沢は雪の状態が良ければ下れるが、悪ければ少し遠回りの中崎尾根を下ることになる。途中でまた私のアイゼンがはずれ、Kさんに直してもらう。靴とアイゼンが合わないのかもしれないとのKさんの評。靴とアイゼンは一緒に買って合わせてもらったはずなのだが。
はじめは稜線のすぐそばで風も強かったが、飛騨沢に下り始めると風もなく下りなのでどんどん歩ける。しかし、先行くKさん、Sさん、Kさんがもっと速く下るのでずいぶんと離されてしまった。振り返るとHさんが同じくらい遠くでゆっくり下っている。あとで聞くと腰が痛くなったそうだ。
1/1 だいぶ下ってきてから飛騨沢を振り返る。 |
1/1 槍平は間近。 |
スキーのトレースのついた斜面を下る。肩の小屋から600mほど下りたあたりであまりに暑くて着ているものをいくつか脱ぐ。目出帽を脱ぐのは何日ぶりだろう。P2取付からだろうから5日ぶりである。テント内でも首にかけていたので全く脱いでいない。
そのあとはだんだんと緩やかになる斜面を下って行き、16:20槍平についた。槍平は初めて来るが、冬にもかかわらずテントが20張りほどあって夏の涸沢のようだ。
槍平の冬期避難小屋にまだスペースがあるようなのでそこに入れてもらう。小屋はこの日先に入っていた3人パーティーと後から来た硫黄尾根からの3人パーティーと一緒になった。ここまで毎日が核心部に感じられていた私はここへ来て確実に帰れそうなので心底ほっとした。Sさんは明日下界に降り立つので奥さんにどう謝るか悩んでいた。