山ノ中ニ有リ山行記録一覧2005年山行一覧>上武国境・三国山〜赤岩峠[1/2]

2005年春 - 上武国境・三国山〜赤岩峠[1/2]



2005年5月3日(火)、4日(水)
場所
長野県南佐久郡川上村・群馬県多野郡上野村・埼玉県秩父郡大滝村/西上州
ルート
2日
大岡山=二子玉川=溝の口=(南武線)=立川=(中央本線)=高尾=(中央本線)=小淵沢(泊)
3日
小淵沢=JR小海線信濃川上駅=(川上村営バス)=梓山バス停…新三国峠…三国山…ガク沢頭…滝谷山…ブドー沢の頭(泊)
4日
ブドー沢の頭…帳付山…天丸山…倉門山…六助のコル…赤岩峠…小倉沢=秩父鉄道影森駅
参加者
単独行

上武国境・三国山〜赤岩峠の地図

はじめに

 5月の連休。3日+3日+2日と休みが多い連休になった。そこで滞っていた上武国境をやろうと考えた。上武国境であれば連休でも人が少ないと思ったのだ。上武国境のうち、赤岩峠〜西上州二子山は済ませている(参考:上武国境・赤岩尾根)ので、予定としてはここに実行した三国山〜赤岩峠および西上州二子山〜塚山。だが、荒井の策略により私も新歓(参考:奥多摩・雲取山〜飛竜山)についていくことが決まってしまい、後者を断念した。後者は2連休でも十分縦走できるが、前者は3連休でないと難しいからだ。

 三国山は埼玉・群馬・長野の県境となっている山。この三国山〜赤岩峠間はほとんど道がない。少なくとも三国山〜帳付山、倉門山〜赤岩峠間の説明は書籍には見つからなかった。エアリアマップも破線だったり薄い灰色の破線が引いてあったり何もなかったり。途中の帳付山・天丸山は登山の対象となっており、アルペンガイド、エアリアマップにも実線が引いてある。

 インターネットで調べると三国山〜帳付山で1件、倉門山〜赤岩峠で2件ほど見つけることができた。途中で切るべきかとも思うが、バス停の都合を考えると三国山から赤岩峠まで行くのがよいと判断した。

0日目

2005年5月2日

大岡山=二子玉川=溝の口=(南武線)=立川=(中央本線)=高尾=(中央本線)=小淵沢(泊)

 研究室を20時に出て小淵沢に向かう。松屋で晩飯を食べ、列車に乗る。平日だがゴールデンウイークの中日とあって人は少ない。終点立川で中央線に乗り換え。高尾で小淵沢行き最終列車に乗る。高尾の駅は同じ目的で列車を待っている人々でごった返していた。特にすでに酒を飲んで出来上がっている10人ほどの若者たちの集団がうるさい。やはり新歓シーズン、この時期はどこの大学でも山に行くのだろう。

 さて、列車に乗って睡眠時間を稼ぐために寝る。塩山で起きると先ほどのうるさい集団が降りていた。甲府でサラリーマンが乗ってくるがすぐいなくなった。終点小淵沢には数人しか乗っていなかった。どうやら山に登る人たちは塩山や甲府で降りてしまったようだ。小淵沢の駅では登山者は私以外に一人だけでほか寝過ごしてしまった人たちだけのようだった。夏になれば八ヶ岳に行く人たちがゴロゴロと寝ているのだが。小淵沢の駅で寝るのは南ア・鋸岳八ヶ岳阿弥陀南稜以来3回目だ。2泊3日の山行に備えて8リットルの水を汲んだ。すでに締まっている売店の横に陣取って小海線の始電まで睡眠。

1日目

2005年5月3日

小淵沢駅=(JR小海線)=信濃川上駅=(川上村営バス)=梓山バス停…新三国峠…三国山…ガク沢頭…滝谷山…ブドー沢の頭(泊)

1日目コースタイム
JR中央本線小淵沢駅5:40起床
6:11
JR小海線信濃川上駅6:56
7:06
梓山バス停7:30
7:38
二本木沢渡った後の
ショートカット後一本
8:19
8:22
1500m枝沢
(最後の水場)
9:03
9:19
新三国峠10:00
10:08
三国山10:30
10:42
1730m峰11:15
ガク沢頭
1618.4m三角点峰
12:43
13:01
1546m峰手前のコル
「→学沢」の看板
13:40
13:42
1546m峰13:50
13:53
滝谷山1659m峰14:30
14:51
ブドー沢の頭
1658m三角点峰
15:30
18:25就寝

 5:40起床。待合室のイスで仮眠していたおじさんに起こされる。「もし八ヶ岳行くならいっしょにタクシー乗らないか」と。残念ながらおじさんのようにピッケルも持っていないし、技術もないしということでお断りした。曰く、編笠山の往復、行けるなら権現岳までとか。ピッケル持ってきたけどアイゼンは持ってきていないとか言ってた。変なの。6:11小淵沢発の小海線始電に乗る。ほとんど人は乗っていない。まだ眠いのでうつらうつらする。

 信濃川上で下車。入れ替わりに中学生の集団が入っていった。バスは駅前で待っており、バスの運転手はやはり山に行くカッコをした親子と話していた。バスの乗客はこの2人と私の3人だけのようだ。非常にすいていてよろしい。いまだ眠いのでバスに乗ってまた寝る。同席した親子と梓山バス停で下車。ここまでサンダルできているので登山靴に履き替えたりする。履き替えていたらバス停でバスを待っていたおばあちゃんに話し掛けられた。東京の人間かとかどこいくかとか。

 梓山バス停を出て三国山に向かう。始めに梓川を渡り、東へ東へ。梓川は千曲川の支流であって上高地を流れる梓川ではない。しばらくで道2つに分かれる。左は三国峠への道、右は十文字峠への道だ。地図を見ると十文字峠の方が三国峠よりも遠い。十文字峠道は千曲川左岸の台地に登り、三国峠道は千曲川の左岸に沿って登っていく。やがて日本基橋に出て千曲川を渡る。とても日本最長の川とは思えない小さな川だ。折り返すようにしてすぐ支流のニ本木沢を渡る。ニ本木沢は三国峠に通じる沢だ。旧道と思われる道が二本木沢右岸に沿ってあった。渡ってすぐ、斜面の上方に白いガードレールが見える。地図を見ると道はいったん千曲川下流に向かって伸び折り返している。面倒なので直登を試みる。ところどころイバラがあって痛いが、ゆっくり登ってたどり着いた。おかげで1.5kmほど歩かなくて済んだ。

 それでもさすがに息が上がり、しばらく休む。道に出てからまた右に歩く。また緩やかな道だ。畑の中を越えていく。埼玉側から三国峠を越えてくるバイク、車がときどき過ぎていく。もっぱら埼玉から長野に向かってで逆はいない。蟻ヶ峰1979m三角点峰に伸びていく沢のところで一本。ちょうど水が汲めるようになっているので小淵沢で汲んだ水を一部汲みなおす。ここが最後の水場なので飲めるだけ飲んでおく。休んでいると車が1台だけ長野側から登ってきた。長野側から登っていく車・バイクは実にこの一台だけだった。

三国山らしき山
5/3 梓山バス停から歩いていくと三国山らしき山が見えた。
最後の水場
5/3 最後の水場。二本木沢の支流。2泊3日に備え、8リットル用意する。

 この沢を過ぎると傾斜は増す。通り過ぎていく車に乗せてもらいたくなる。それもやがて終わり、梓山バス停から2時間半で新三国峠に到着。三国峠は2つあり、一つは車道の通じているこの新三国峠、もう一つはその南にある旧道の通じていた旧三国峠。この新三国峠は眺めがよく、長野側はなだらかな高原、埼玉側は緑の山の中に中津川をはじめとする険しい渓谷がうねっている。ちょうど神奈川・山梨・静岡の三国峠と似ているものがある。長野側は舗装されているが、埼玉側は砂利道であった。峠は北側の崩壊が激しく、切通しのようになっている。十文字峠への道は長野側から顕著なものがあった。三国山への道を探すと、埼玉側のトイレの横の笹の中に赤いペンキが見えた。地図を確認してから三国山へ出発。

三国峠のトイレ
5/3 三国峠のトイレ。この右のヤブの中に三国山に至る道がある。
三国山からの眺め
5/3 三国山からの眺め。南西方向の眺めがいい。歩き始めの梓山から金峰山、小川山らしき山も見える。

 いきなり笹のヤブ漕ぎ。足元はしっかりしているが、出だしからこんなヤブでは先が思いやられる。第一、三国峠〜三国山は一般ルートとして紹介されているところなのだ。笹ヤブの中に三国山・御巣鷹山と書かれた看板があるが、三国山はともかく、御巣鷹山まで道が続いているのだろうか。すぐ崩壊地の上の稜線に出ると、道ははっきりする。ここから稜線に沿って三国山へ。赤いペンキがあり迷うことはない。ところどころ岩場があってこれを越えていく。やがてさしたる急登もなく三国山山頂。今年4つ目の三国山である。駿河・甲斐・相模の三国山箱根外輪山の三国山武蔵・相模・甲斐の三国山に次ぐ、埼玉・群馬・長野の三国山だ。どれも「三国山」という名前が付いている。南北に伸びた山頂で南側から長野側が見える。北側は暗い樹林帯となっている。これから向かう埼玉・群馬県境も、御巣鷹山方面である長野・群馬県境も赤ペンキやピンク色のテープが見られた。しばらくは道が続いているのかもしれない。

 しばらく休んで北東へと向かう。これからガク沢頭、滝谷山、ブドー沢の頭、帳付山、天丸山、赤岩峠と約20kmに渡る上武国境稜線が始まる。始めは急な下り。すぐ中津川に下る松尾尾根が分かれるが、地形図にある道は判然としない。ここは国境稜線が主稜線なので誤ることはない。暗い樹林帯は続くが、意外なことに踏み跡がある。ところどころのこぎりで木を切った跡もあり、登山者ではなく役所の人か林業を営む人が入っているらしい。赤ペンキの矢印まであったりして拍子抜けしたものの、単独行にはありがたい。ヤブもなく、おかげで思いのほか速く進む。

三国山山頂から眺める上武国境稜線
5/3 三国山山頂から眺める上武国境稜線の方向。赤テープなどがある。木にはなんて書いてあるのか分からない。筍(タケノコ)?
赤ペンキの矢印
5/3 思いのほか、踏み跡がある。赤ペンキの矢印まであった。

 1730m峰手前の1700m峰に出ると暗い森を抜け、1730m峰を正面に迎える。ところどころ岩が出ており、登りにくそうな感じもある。しかし、取り掛かってみると道は埼玉側から巻き、難なく登れた。木が少なく、首筋にあたる日差しが暑い。振り返ると三国山がただある。1730m峰山頂には「山」「主図根」と読める三角点のような標が埋めてあった。1730mからはシャクナゲのあるなだらかな道が続く。迷いそうな尾根もない代わりに特徴のない道なのでどこを歩いているのかよくわからない。下りで笹が生い茂っているところがあり、三国山から初めて道に迷った。幸い下っていくとすぐ踏み跡を見つけることができた。

1730m峰岩場
5/3 これから行く1730m峰の岩場が見える。右手埼玉側から巻く。
ガク沢頭の末端の1510m峰
5/3 ガク沢頭の末端の1510m峰が岩峰になっており、下降に手こずった。結局巻いた。

 ときどき「ここは、野生動植物の生息地の拡大と相互交流を促す『秩父山地緑の回廊』です。林野庁 埼玉県森林管理事務所」という真新しい看板があり、整備された公園なのかと首を傾げてしまう。こんな登山者もろくに入らないところに看板立てて誰が読むのか、『緑の回廊』だから登山者にどうしてほしいのか、そして誰が立てたのか。そもそもこの踏み跡自体不気味ですらある。いったい誰がこの山の中に入っている、もしくは入っていたのだろうか。忍者の間道じゃあるまいし。少なくとも登山者はこんなところを登山の対象としない。まず参考にすべき記録がないし、展望はないし、顕著なピークはないし、水は手に入らないし、エスケープルートはないし、交通の便は悪いし。ときどき木の切った跡は見られるものの、道に沿って切ってあるので間伐でもない。古い道が残っているだけなら、林野庁の新しい看板の説明がつかない。そんなことを考えていると一人で歩いていることに怖さを感じた。

 1730m峰を下りきったあたりから地形図上で現在地を追うことが難しくなる。ときどき岩があり、岩の上を歩いたり、巻いたりする。分かりにくいものの道は続いている。シャクナゲにつぼみを見つけたが、まだ咲いていなかった。残念。一ヶ所大岩があり、ピンクテープに導かれて右から巻いた。さらにガク沢頭の末端の1510m峰が岩峰になっており、ここの下降にてこずった。稜線が左に急カーブするところだ。ザイルを出そうかとも考えたが、やはり面倒なので群馬側を大きく下って巻いた。ここはピンク色のテープも踏み跡もなく、自分で道を探さねばならなかった。迷った時間も含めれば10分か15分くらい要した。

 そのあとは一本調子の登りで明らかにガク沢頭に登っていると分かる。道ははっきりしており、岩峰もないので、ゆっくりゆっくり登っていく。登っていくとキツツキの練習台にされたのか穴だらけの木を見つけた。そしてあえぐような登りの末、やっとガク沢頭1618.4m三角点峰に達した。登った割に展望もなく、報われない山である。看板などはなく、代わりにまた林野庁&埼玉県の看板が立っていた。地形からも山頂と分かるが、三角点があるとこういう山は心強い。しかし、看板を運んできた人間は実に達人というほかない。日差しが強く、水をガブガブ飲む。

ガク沢頭山頂
5/3 ガク沢頭1618.4m三角点峰山頂。特に看板はなく、「緑の回廊」看板と三角点がそれを示している。
テント張れそう
5/3 1507m峰を越えて次のコルは比較的なだらかになっており、ここならテントひと張りかふた張りできそうだ。

 ガク沢頭の次の1560mピークは埼玉県の尾根に引き込まれないように左から巻く。分かりにくいがピンク色のテープがあった。1507m峰を越えて次のコルは比較的なだらかになっており、ここならテントひと張りかふた張りできそうだ。1546m峰手前のコルにはピンク色のテープがべた打ちされ、木には「→学沢」と書いてある。ピンク色のテープには「大滝村」「学沢へ下る」「村道17号」「キケン」といった文字が見えた。埼玉県側に目を移すと確かに下のほうにピンク色のテープが見えた。続いているのかどうかは分からないが、ある程度は下れるのだろう。しかし、「村道17号」って埼玉県大滝村と群馬県上野村を結ぶ道を造るつもりなのだろうか。疑問に思って今地形図を見ると、群馬側は確かにミミヅク沢に沿って道が伸びている。埼玉側は特に道はないが。どっちも山奥過ぎてここに道路を通しても誰も通らないと思った。

1546m峰手前のコル
5/3 1546m峰手前のコル。埼玉県大滝村のピンクテープがベタ打ちされている。沢に下れるのか、埼玉県側にピンクテープが続いていた。
滝谷山前衛峰
5/3 滝谷山前衛峰は二重山稜になっていた。

 そこからひと登りで1546m峰。なかなか急な登りでヤブ漕ぎを強いられた。道はどうやら東寄りを通っているようで、直登すると道の真中に出た。息が上がったので一休み。下って次は滝谷山1659m峰。過ぎた1546m峰も滝谷山も埼玉側に尾根を持っており、正面の滝谷山が1546m峰ではないかという疑念に駆られながらも、登りが多いのでやはり滝谷山だろうと考えて進む。滝谷山手前の1610mに近づくと左手に岩峰が見え、そこは二重山稜になっていた。谷になっているところは笹などがなく、苔むした小さな岩がゴロゴロしていた。もう少し登ると立派な鹿のツノを発見。つい嬉しくなって手に持って登るが、ニセピークの連続でけっこうしんどい。そして滝谷山1659mに到着。狭い山頂だ。

滝谷山1659m
5/4 滝谷山1659m。ここまで来ると枝道もなく、エスケープもしづらい。
鹿のツノ
5/4 滝谷山山頂と鹿のツノ。鹿のツノが落ちていたので拾ってここに置いときました。ほしい人がいたら先着1名様に差し上げます。ただし、滝谷山山頂まで取りに行って下さい。

 この滝谷山から東に南天山に続く尾根があるが、尾根ははっきりせず、もちろん道もわからなかった。とりあえず息を整えてから鹿のツノの写真を撮る。時刻は14:30。あと一本でブドー沢の頭に着いて幕営するのにちょうどいいくらいの時間だ。

 下って登り返したあたりから道がなくなる。岩峰は右から巻く。このあたりは道がなく、今までで一番ひどいヤブであった。このあたりはよく覚えていないので記録のまま。

 ブドー沢の頭1658.1m三角点峰に着くとそれを示す看板はなく、その代わりに三角点と林野庁&埼玉県の看板があった。三角点付近の笹のわずかな切り開きを利用してツェルトを張る。銀マットを敷くと、ツェルトの隙間から刈ってあった笹が銀マットを突き破って顔を出している。ぼろい銀マットを持ってきてよかった。天気図をとるとどうやら日本全体晴れているようだった。明日も晴れだろう、持ってきたチューハイを飲みながら地図を開く。今日ここまで来られれば明日のうちに帰れるだろう。まだ明るい18:25、就寝。


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