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2004年春 - 沖縄里ワン[1/8]


2004年3月1日(月)〜7日(日)
場所
沖縄県那覇市〜国頭郡国頭村/沖縄本島
ルート
3月1日
羽田空港=那覇空港=沖縄県庁近くのホテル(泊)
3月2日
沖縄県庁近くのホテル…浦添市…北谷町…嘉手納町兼久海浜公園(泊)
3月3日
嘉手納町兼久海浜公園…読谷…仲泊…恩納村の浜辺(泊)
3月4日
恩納村の浜辺…伊武部ビーチ…許田…名護市内(泊)
3月5日
名護市内…真喜屋…塩屋湾…大宜味村役場…国頭村辺戸名(泊)
3月6日
国頭村辺戸名…辺野喜…宜名真…茅打バンタ…辺戸岬=辺戸名(泊)
3月7日
辺戸名=名護=那覇(自由行動、安宿に泊)
参加者
中山(B4)、荒井(B1)、鈴木(B1)

はじめに

 里ワンとは何か。里ワンの意義については歴代の里ワン参加者が疑問としているところであり、いまだに明確な答えは出されていない。記録を書き出す前に、実存主義の考え方を用いて、この里ワンの意義について私なりの答えを示したいと思う。

 はじめに結論をあげると、私は里ワンの意義は「里ワンの意義を探す」ことにあると思う。端的にいうと、「目的はない、だから目的を探すためにやるのだ」ということである。

 まず、現状として里ワンの目的はわからない。わからないが、歩く。一般に、何らかの「もの」、また行為についてはそれに目的が伴う。というより、目的があるために、その「もの」が作られ、その行為を行うのである。ハサミは紙を切るために作られたものであり、文字を書くことはできない。里ワンはこれと反する。里ワンは私が入部する以前からあったもので、すでにあったものである。そしてその意義は与えられていない。

 したがって、逆に里ワンとは自由なものになりうる。実際、誰も里ワンの目的を見つけたわけでなく、100人いれば100通りの解釈がある。意義が与えられないため、里ワンを行う者は常にその目的を探す必要に追われる。この意識こそが里ワンを里ワンたるものにしているわけである。もし、誰もその意義を考えないならば、里ワンは行為者の意識から消失し、「その存在を疑われることもなく」、里ワンはなくなるだろう。一方で、その考える人間はどのようにして考えるか、これは里ワンを行うしかない。わからないのだから。「なぜ里ワンをやるのか」を考えるために里ワンを行うわけである。

 これはサルトルのいう対自存在と同じような考え方である。「まことに、サルトルもいうように、人間にとって実存するとは、この世界にあって完全な自由のうちに自己を選ぶことであり、自己をつくり上げることである。...(中略)...実存的に生きるとは、そのような条件のうちにあってもそれに囚われず、まったく自由に行為することなのである。」(中村雄二郎『岩波新書 哲学の現在』, 岩波書店, 1990, p.86)

 つまり、思索されることによって、里ワンは存在し、思索するために里ワンを行うのである。

 これは里ワンだけにとどまらないと思う。山に登る理由についても同様に、明確な目的を持って登る人は少ないように思う。もちろん、「達成感を得る」「景色が美しい」などいろいろな理由があると思う。しかし、「達成感を得る」なら、他の達成感を得る方法もあるわけで、山である必要はない。功利主義的に考えれば、大変効率が悪いのだ。「金を払って疲れにいく」のだから。

 また、それらの目的は具体的な言葉にしたとき、何か違和感を感じる。頭の中では山のよさをわかっているつもりが、言葉にすることができないのだ。だから、私は他人に「なぜ山に登るのか」と聞かれると、しばらく考えたあげく、「自分でもよくわかっていないのだけれど、」としどろもどろに説明しだす。いまだになぜ山に登るのか、答えは出せていないが、それでも登っている。

 里ワンと同じなのである。山に登る理由はわからない。それを考えることに意義があるのである。そして、考えることによって、自由に各自の山登りのスタイルを決める。それは山に登っている最中でなくともよい。むしろ、山に行く前段階、計画を練る前に、ふと空いた時間に、考えるほうがいい。山の中では「山に行く、行かない」の選択肢がないからだ。

 山に登るサークル、ワンダーフォーゲル部の活動に里ワンが含まれるのも、その目的と考え方がよく似ているからだろう。ただ、山の場合は何らかの短絡的な答えが出しやすいから里ワンほど気にならない。山よりも日常的な車道を歩く里ワンの方がかえって純粋にその問題をつきつめることができるから、里ワンではその目的が問題になってくるのである。

 閑話休題。

 眠たい話はこれまでにして、今回の里ワンにいたった次第を述べよう。

 今年の1年生2人は雪山を希望しなかった。我々4年生以上としても強引に連れて行くほど、モチベーションがあがらなかったので、2人は里ワンということになった。今年は2,3年がいないので、里ワンパーティー4年の私中山が連れて行くことになった。私自身は、去年里ワンが一人だったので、一人でニュージーランドにトレッキングに行ってしまったし、私が完遂したことのある里ワンは2002年のしまなみ海道だけだったので、歩くことには抵抗はなかった。それに1年生にはまだ4日間以上の山を経験させていなかったので、里ワンではあっても体験させる必要があった。場所は沖縄にした。里ワンで3年に1度ほど訪れているところであり、M1からも情報が得られるためである。沖縄のどこを歩くかは大まかに決めて、計画書は1年生に作らせた。メンバーは4年中山、1年荒井、1年鈴木の3人である。


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