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2004年秋 - 上州武尊山[2/2]


2004年11月6日(土)、7日(日)
場所
群馬県利根郡川場村、片品村、水上町/上州
ルート
11月6日
JR上野駅=JR上越線沼田駅=川場温泉バス停…木賊集落…旭小屋(泊)
11月7日
旭小屋…不動岩…前武尊…沖武尊…剣ガ峰…武尊神社=JR上越線水上駅
参加者
中山(M1, 単独行)

上州武尊山の地図

2日目

2004年11月7日

旭小屋…不動岩…前武尊…沖武尊…剣ガ峰…武尊神社=JR上越線水上駅

2日目コースタイム
旭小屋4:00起床
5:50
荒山沢林道
からの道と合流
6:53
7:04
不動岩8:00ごろ
前武尊8:30
8:50
沖武尊10:05
10:46
剣ガ峰分岐11:20
剣ガ峰11:25
11:38
剣ガ峰分岐11:44
手小屋沢小屋分岐13:00ごろ
武尊神社13:25
JR上越線水上駅14:00
14:33発車

 4時起床。外は暗い。ラーメンを食べるが、まだ外は暗い。つい小屋備え付けのふとんもかぶり、2度寝してしまう。5:30には薄明るくなっており慌てて出発する。小屋からすぐ裏の川場尾根末端に取り付く。尾根までかなり登るのかと思ったらすぐ着いた。ここから前武尊までずっと登りが続く。尾根に取り付いてからしばらくで日の出を拝むことができた。栃木県との県境の稜線からの日の出であり皇海山のあたりだろうか。途中で用を足したが物音がして鹿でもいるようだった。川場尾根は緩急取り混ぜた登りでしんどい。山の木々はすでに葉を落とし、積もった枯葉を踏みながら歩く。しばらくの間、木には朝日があたって芽が出ているように明るかったが、やがて白色光に落ち着いた。完全に平たいところもあり、笹原に黄色くなったカラマツがポツポツと生えていて実に秋っぽい。

 賽の河原というところにはいくつか石碑があった。荒山沢林道終点からの道を合わせて一本とる。針葉樹が邪魔して見えないが、正面に前武尊が大きいようだ。次の一本を前武尊に設定する。

朝焼けの川場尾根
11/7 朝焼けに染まる川場尾根。しばらく緩急取り混ぜた尾根が続く。林の中で気持ちいい。
不動岩
11/7 左のとんがっているのは川場剣ガ峰、右の碑が打ち込まれているのは不動岩。難所。

 歩き始めると比較的木が少ない。大きな平べったい岩が稜線にあり、そこに登ると前武尊が見えた。かなりの急登になってきて時々鎖がある。古そうな鎖を使って登ると隣から簡単に登れるようになっていた。不動岩を下ると正面に大きな岩がそそり立っている。上の方に看板が打ちつけられているが何と書いてあるか読めなかった。この岩は右から回る。カニの横ばいと名のつけられたところで鎖が連なっているが、鎖はトラバースしてから岩に沿って上向きに伸びている。この岩は一枚岩でホールドは細かい。足がかりも水平でなく鎖をつかんで腕に頼って登ることになる。少し踏み出すが不安定で長時間立っていると疲れて動けなくなりそうだ。ちょっと躊躇する。でも戻るとすると2時間以上のタイムロスとなる。やっぱり行かなければならない。上向きに方向を変えるところもスタンスが見つからず戸惑うが少し戻って取り付いた。登っていくところはもう鎖に頼ってゴボウで登った。登りついて下から見えた看板のところに行けたが、すぐの下りも緊張するところだったのでそのまま下りにとりかかった。背スリ岩と名前のついた岩で鎖のついたところを見ると岩の間を下るようになっている。しかしザックが大きいためそのチムニーにクライムダウンできず手こずった。登ってみて鎖がないと行けないところだったと感じた。結局下りに2回、トラバース+登りに1回鎖があった。

トラバース
11/7 不動岩巻き。東面から巻く。鎖にしたがってトラバースぎみに登る。
直上
11/7 トラバース後、鎖につかまって腕の力で直上。傾きは推定60度。ザックが大きかったので、ちゅうちょした。

 背スリ岩のあと、鞍部に行者の相撲場、登る途中に胎内くぐりがある。振り返ると誰か単独行が私のあとを追っているようだった。思った以上に長い登りの後、右手に笹の斜面が見えて5分ほどで前武尊山頂。1時間半歩いてしまった。

 山頂に着くと同時にオグナほたかスキー場から登ってきた夫婦がいた。山頂にはヤマトタケルの像があり、東側を向いていた。東征を意識しているのだろうか。東面が笹原で開けており日光白根山が異様な形を見せていた。日光白根山からの県界尾根が片品川の対岸に連なり、以前登った皇海山らしき山や袈裟丸山らしき山が見えた。スキー場から登ってきた夫婦がアルペンガイドを持っていたので見せてもらうと不動岩のあたりは難コースで旭小屋から前武尊まで4時間だそうだ。今のところ2時間半ほどなのでいいペースだ。夫婦と話していると川場尾根から単独行のおじさんが来た。不動岩のところで見た人のようだ。荒山沢林道終点まで車で来て往復らしい。ご夫婦、単独行のおじさんに続いて私も出発した。

背スリ岩
11/7 背スリ岩とかそんな名前の不動岩巻き最後の難所。下る。ザックが大きいと右のチムニーにクライムダウンできず、手こずる。
前武尊から皇海山
11/7 背スリ岩のあと、鞍部に行者の相撲場、登る途中に胎内くぐりがある。思った以上に長い登り(背スリ岩から30分くらい)の後、右手に笹の斜面が見えて5分ほどで前武尊山頂。東面に皇海山が異様な形を見せる。

 沖武尊への縦走にとりかかる。正面に川場剣ガ峰が白い岩肌を見せ異様な姿である。下りついて川場剣が峰を正面に構えると、白い岩肌、青い笹、黒い林がくっきり分かれてキメラみたいなつぎはぎの生き物のようである。旭小屋への車道から見ると二等辺三角形の鋭い山。鞍部から東側を巻いていく。過去に崩れたらしく登山禁止だそうだが、もはや直登ルートは見当たらなかった。

 笹原の中の滑りやすい道を歩いていくと単独行のおじさんに追いついた。しばらくおじさんの話を聞きながら歩く。何べんも武尊山に来ているそうで、冬になるとこの川場剣が峰の巻きのあたりからスキーをして荒砥沢に下ったり、昔子供をはじめて山に連れてくるとき、武尊山を選んで前武尊から往復したとか。スキーでよく来るようで荒砥沢からスキー場へ行く道を見つけられないと谷に下ってしまうとよくご存知だった。この日はまだスキーには早いのであら山沢林道終点から往復と言っていた。きっと10回以上来ているのだろう。

川場剣ガ峰
11/7 川場剣ガ峰。キメラみたいなつぎはぎの生き物のよう。旭小屋への車道から見ると槍ヶ岳みたいな山。巻きます。過去に崩れたらしく、登山禁止らしいです。
川場剣ガ峰
11/7 家ノ串の登り、川場剣ガ峰を振り返る。

 おじさんを抜いて川場剣が峰の肩に立つ。ここで道はいったん西側に移り笹原の中の鞍部にたどり着く。さらに家ノ串への登り返し。ここは急登だが鎖などはない。家ノ串まで登ると中ノ岳から沖武尊へいたる稜線が手にとるように見える。快適な縦走だ。やせた尾根を歩いていき中ノ岳の登りが始まるあたりで武尊牧場からの道が分かれる。道はそのまま中ノ岳の南面を巻き、笹清水のあたりで大学生くらいの2人パーティーを抜く。水はちょろちょろと岩をなめるようで道にぬかるみを作っていた。笹の斜面を巻いていき、やがて三ツ池。池というより湿地帯の南側を巻いていく。三ツ池の後は笹の斜面を急登し、稜線に出ると日本武尊の像。そこからすぐ沖武尊

沖武尊と中ノ岳
11/7 家ノ串を越えて沖武尊(左)と中ノ岳(右)を望む。
中ノ岳と家ノ串
11/7 沖武尊の登り、中ノ岳と家ノ串を振り返る。右の三ツ池ぞいに歩きます。

 沖武尊山頂は木がなく360度の展望が得られる。見える山を示した円形の標示板もあり、山座同定ができる。東を向けば歩いてきた三ツ池、中ノ岳、家ノ串、川場剣が峰、前武尊、片品川をはさんで鬼怒沼山から日光白根山、皇海山、袈裟丸山へと続く栃木・群馬県界尾根が延々と伸びている。その末端には赤城山。今年は行かなかったが、来年こそ行きたいと思う。そして南に目を向けると、「川場」の付かない別の剣が峰がすっくと立っており、その奥には榛名山、八ヶ岳。西には久保への道の先に谷川岳があるが、ここだけは雲をかぶっており天神平しか見えなかった。北にはまだ行ったことのない至仏山や燧ケ岳の尾瀬の山が見えた。最高の天気、最高の眺めであった。一通り眺め終わって日本百名山40山目の写真を撮ってもらう。

日光白根山と皇海山
11/7 上の写真と同じ視点から。ただし、日光白根山と皇海山が見える。
至仏山と燧ガ岳
11/7 沖武尊北面、至仏山と燧ガ岳。

 山頂は人でにぎわっており次々と人が来る。だいぶ休んだし出発することにする。ところで下る先をあまり考えていなかったのだが、この先、久保に下る道と剣が峰経由で武尊神社に下る道とに分かれる。ガイドブックでは久保に下るのが一般的なようだが、この沖武尊山頂で剣が峰を見ると実に登ってみたくなる。これだけ人がいるのならヒッチハイクも可能と踏んで剣が峰経由で武尊神社に下ることにする。交通の便が悪いことを考えると沖武尊山頂に来ている人たちはおそらく武尊神社までマイカーで来て日帰り登山をしていると考えられるので久保に下る人は少なくヒッチハイクは難しいと考えた。

剣ガ峰
11/7 沖武尊南西の剣ガ峰(川場剣ガ峰とは別物)。気持ちのよい縦走が楽しめます。
山頂の看板
11/7 百名山40発目。

 沖武尊から急な下り。人が少なく少し不安になるが早足で順調に下る。鞍部に下ってから剣が峰の登りだが、このいい形の山をどうやって登るのか。道は西側に回って少しずつ登っていく。やがて武尊神社との分岐。人も少ないのでザックを置いて空身で剣が峰へ往復する。急登をこなし、剣ヶ峰山頂に出るとまた好展望が得られる。背後に沖武尊が遠く、東には前武尊への稜線が連なっている。前武尊から下っていくと不動岩が鋸のようにギザギザとしている。この剣が峰の登りで抜いた単独行のおじさんに車に乗せてもらうよう頼んでみる。少し驚いたようすでOKしてくれた。

川場剣ガ峰、前武尊、不動岩
11/7 剣ガ峰への道、左から川場剣ガ峰、前武尊、不動岩。
武尊神社の谷
11/7 武尊神社のある谷。こっちに下る。

 剣が峰の分岐まで戻り武尊神社へと下る。武尊神社への下り道は地形図に載っておらず、どこを歩いているのかはっきり分からない。しかし、新しいようで急な下り道が林の中に切り開かれている。土が流れて木の根っこが多く、歩きにくい。このおじさん、自分で歩くのが遅いと言っていたがぜんぜん遅くなかった。武尊神社から登るなら手小屋沢避難小屋から沖武尊を回り、剣が峰から下る周回コースをとりそうなものだが、この人は往復をしていた。

剣ガ峰から振り返る沖武尊
11/7 剣ガ峰から振り返る沖武尊。
剣ガ峰下り
11/7 剣ガ峰の下り、武尊神社へ。25,000地形図に載っていないだけあって、荒れた道です。
前を歩いているのは水上まで車に乗っけてくださった方。「遅いよ」って言った割りに速かったです。

 武尊沢を渡渉し、武尊沢右岸をずっとトラバースしていく。私はときどき写真を撮り、おじさんに置いていかれるが小走りで追いつく。おじさんはやはり早い。何度か枝沢を渡ると右に手小屋沢避難小屋への道を分け、車道歩き。車はかなり奥まで入れるようだったが、おじさんと話しながらたらたら歩いていく。おじさんがあるところに勤めていて、政治家がらみの事件は裏で取引が行われることがあるとか、事務次官付きの運転手をしたとかそんな話をしてくれた。

 やがて武尊神社に着くと立派なアスファルトの道が伸びていた。裏見の滝によって見たかったが、すぐ車に乗って下る。さすがに運転手をしていただけあってブレーキを感じない完璧な運転であった。武尊橋で利根川沿いになり、水上駅で下ろしてもらった。おじさんに礼を言って分かれた。

 水上駅に着いたのは14時であり、駅は非常に込んでいた。晴れの日で紅葉があり水上温泉があるからだろうか。水上温泉に行ってみようかとも思ったがやや遠いので帰ることにした。晴れで眺めもよく、非常に充実した山だった。

(2005年3月5日記す)


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