山ノ中ニ有リ>山行記録一覧>2003年山行一覧>南ア・鋸岳[2/3]
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2003年10月12日 |
横岳=鋸岳三角点峰=鋸岳第一高点…鋸岳第二高点…中ノ川乗越…三ツ頭…六合石室(泊)
横岳峠 | 3:30起床 |
5:48 | |
2500mあたり | 6:52 |
7:03 | |
鋸岳三角点ピーク | 7:17 |
7:23 | |
角兵衛ノ頭北西コル | 7:35 |
7:41 | |
鋸岳第一高点 | 8:16 |
8:34 | |
大ギャップ北 | 9:20 |
9:34 | |
鋸岳第二高点 | 11:33 |
11:50 | |
三ツ頭西のコル | 13:01 |
13:14 | |
六合目 | 13:52 |
14:06 | |
六合石室西のザレ | 14:20 |
18:00就寝 |
夜寝ていると雨が強く降った。雨がテントをたたく音に起きる。朝起きてメシを炊く。端っこだったので一人でメシを炊く。車の気持ちがすこしわかった。メシを食べるころには雨はやみ、一度外に出ると月明かりが見えた。雨が焚き火の残り火も消してくれたに違いない。
二度寝ののち、出発。空は鉛色の雲が支配しているが、幸いなのはガスにならず、下の戸台川の方角が見えたこと。写真を一枚撮って出発する。鋸岳三角点ピークまではずっと急登。大崩ノ頭を過ぎると少しなだらかになるが、また急登。道ははっきりしていて迷わない。赤テープもある。角兵衛沢がもう少しでのぞきこめるところで一本とる。
休んでいると上の鋸岳三角点ピークから2人下りてきた。聞くともともと5人パーティーで昨晩角兵衛沢の岩小屋に泊まり、角兵衛沢のコルで第一高点・第二高点へ向かう3人パーティーと別れたとか。サポート隊なのだろうか。
鋸岳第一高点のシルエット。 |
鋸岳三角点ピークの三角点は主稜線からちょっとだけ離れている。 |
一本とったところからしばらくで樹林帯を抜け、正面に第一高点を迎える。第一高点はひょっこりと高く、米粒を立てたような形をしている。一本で行けるくらいの距離に見えた。やがて鋸岳三角点ピーク。三角点は道から少し離れたところにある。戸部さんと二人で三角点を踏んだ。まわりの木はそんなに高くないので天気さえよければ眺めはいいだろう。
この鋸岳はいくつかのピークとコルで成り立っており、私たちが歩いた順番、すなわち北西側から順に挙げると、三角点ピーク、角兵衛沢のコル、第一高点、小ギャップ、鹿窓、大ギャップ、第二高点、中ノ川乗越、(*3)でこのあたり全体で「鋸岳」と呼んでいるようだ。アプローチとしては釜無川源流から、角兵衛沢から、熊穴沢から、甲斐駒からと4つある。私たちは釜無川源流から甲斐駒までの縦走ルートをとっている。特に角兵衛沢のコルから中ノ川乗越までの区間が難コースらしい。
角兵衛沢。戸台川まで一直線に下っている。 |
紅葉が始まっている第一高点 |
三角点ピークから急な下りで角兵衛のコルへ下る。空は暗く、降り始めた雨で足元は滑りやすい。敗退ムードがただよう。鞍部について下るかどうか相談する。下るとしたら角兵衛沢を下るのが一番速い。このとき私たちはここが角兵衛沢のコルだと思っていたが、実際はこの次のコルが角兵衛沢のコルだった。とにかく、その名もついていないコルで、戸台に下るかどうか相談した。永谷君が「下ろうぜ」で、斎藤さんと戸部さんは「どっちでもいい」。私が行きたいと言って「じゃあ、荷物背負って第一高点まで行くか」「そのまま行っちゃうだろうけどな」ということになって行くことになった。ひとつこぶを越えて、本当の角兵衛沢のコル。だらだら登り、第一高点。
第一高点はガスで真っ白だった。いっとき第二高点の方角が見えた。こぶがいくつかあってどれが第二高点だかよく分からなかった。エアリアマップによると第二高点の先のコルまで2時間40分。しかし、地図上で見る限り、500mほど(*4)。知床のヤブでもそんなにかからん。と思ったら4時間近くかかったわけだが。まあ、とにかくこのときは次の一本で第二高点まで、と誰もが思っていた。
鋸岳第一高点。 |
小ギャップの懸垂下降。 |
山の形からもわかるように第一高点から急に下り、下り切るところが小ギャップ。小ギャップはすでに先客が懸垂下降をして下りていた。しばらく待ち。長野側から風が吹く。先方の6人パーティーが通過してから我々も懸垂下降。フィックスされたロープがあるが、使わなかった。斎藤さんと戸部さんの2人は懸垂下降が3年ぶりとあって緊張していた。槍ヶ岳北鎌尾根もザイルは使わなかったそうだし。
小ギャップを振り返る。 |
鹿窓と中山。正しくはこれをくぐって巻いて行くらしい。 |
全員難なく懸垂下降を済ませ、登り返す。大ギャップもそうだが、小ギャップは稜線の方向に対して垂直に尾根があり、あいだがすっぱり切れている。例えるなら、電気回路のコンデンサ記号。登りきって、尾根を乗り越す。尾根をまたいだところ、足のかけるところがなくて腕の力で体を支え、足を下にのばしていく。ここはみんなビビった。そこから30歩くらいで鹿窓。高さ3mほどの縦長の穴があいていて、長野側から山梨側に常に風が吹いている。のぞくと急峻なルンゼになっていた。
鹿窓と戸部さん。左に見える手は永谷。 |
第二高点を正面に見る。足下には大ギャップ。 |
「どっち?」「(鹿窓の甲斐駒ヶ岳寄りを指差して)こっちに踏みあとがあるよ」「じゃ、こっちか」我々は鹿窓から稜線への道をとった。山を下ってからアルペンガイドやインターネットで調べたところによると正しくは鹿窓を抜けて戸台川側に下るらしい。おそろしい。私たちはあんまり調べなかったこともあって踏みあとのあった稜線沿いに登った。稜線にも道はあり、気がつかなかったが、第三高点を過ぎる。見ると第二高点の手前、戸台川側に3人パーティーが登っている。何であんなところを登るのだろうとみんなで首をかしげた。第二高点が正面に見えるところが大ギャップの手前。足元さえ見なければひと登りで第二高点までたどりつける。
大ギャップはまさに小ギャップの「大」なるもので、稜線方向と垂直に深さ50m近い谷が走っている。踏みあとに従って歩いていくと小ギャップにいた6人パーティーがザイルを張っているようだった。先方仕事中なので、一本とる。休んでいると3人パーティーが第二高点に登り着いたのが見えた。私たちの先を行く6人パーティーは手間取っているようで、1時間近く待った。かん木が生えており、下は見えない。時間がかかればかかるほど恐怖がつのる。「どんなところを下ってるんだろう」「下りついたところはどうなってるんだ?」そんなことを思った。待っている間、5mほど隣を2人パーティーが横岳方面へ通過して行った。木で隠れてよく見えなかったが、険しいところを登っていたように見えた。待っているうちに先行6人パーティーからそこの懸垂下降は50m×2本でギリギリと教えられる。我々の40m一本では足りない。しかたなく、ザイルをお借りすることにした。先行6人パーティーが順々に下っていく。1人あたりにかかる時間が長い。長野側を見ると、今度は横岳側から2人パーティーが大ギャップに降りていく。向こうにも道があるのだろうか。先行6人パーティーが下り終わると、我々の番。私がしんがりになる。一人あたり5分くらいかかっているのと、1人で待っているのでもうどきどき。大ギャップの底部に着く。厳密には最低鞍部から山梨側に少し下ったところ。ごぼう登りで登り返す。
さて、借りたザイルを回収する。が、木に引っかかって下からどう引っ張っても下りてこない。狭い最低鞍部でどうするか思案して、先行 6人パーティーのリーダーっぽい人が、最低鞍部からすぐ登っていく別ルートから登って行った。上からザイルを回収するらしい。「先に行ってていいよー」と言われ、失礼することにした。この、別ルートが正しくて、どうやら先行 6人パーティーと我々の下りたルートが間違っていたらしい。別ルートにはフィックスされたザイルがはってあり、第二高点から第一高点に向かう人ならこのフィックスザイルに従って登るに違いない。
大ギャップから下る。岩が安定しない。 |
大ギャップを振り返る。第二高点へ登り返す。 |
大ギャップの最低鞍部から第二高点に直接は登れないので、長野側のガレを下り、長野側から登り返す。重力ポテンシャルがもったいない。このガレはもろくて1人ずつ順々に歩かないと落石が恐い。待っていたリーダーをのぞく先行 6人パーティーを抜いて、先に第二高点に登る。道がついているが、かなり急な登り。
鋸岳第二高点に着いて。悪場を突破して笑みのこぼれる齋藤さん。 |
中ノ川乗越へ下る。道ははっきりしない。 |
第二高点について一本。ガスで何も見えない。少し戻るようにして中ノ川乗越へ下る。甲斐駒側から来ていたら大ギャップに直進して道に迷いそうだ。中ノ川乗越へ下るのだが、「中ノ川越→」のように示された看板があり、「中ノ川乗越」のあだ名は「川越」に決定した。この下りがまたくせもので、尾根のすぐ下を歩いていくと、道がなくなる。右手に急なルンゼがある。なんかもうよくわからんので、下の方に下る。明らかに人の入っていないゴーロがあり、少し下ると急で下れないところに出たので、さっきのルンゼに下りる。これもあやしかったが、適当に下っていると最低鞍部のあたりに近づいてやっと道が見えた。先ほど下れなかったところは大岩になっており、その基部を沿うようにして中ノ川乗越の最低鞍部にたどり着いた。
中ノ川乗越に着いて。 |
六合石室近くのザレにテントを張った。 |
中ノ川乗越で泊まれるような記述もどこかで見たが、岩だらけで泊まるには条件がよくない。ここからまた登り返し、穏やかな縦走となる。岩は現れない。三ツ頭の西の鞍部で一本とる。三ツ頭は甲州側から登る。登りつくと二人休んでいた。トップの永谷君が北の烏帽子岳の方に間違えていくところだったが、その2人に呼びとめられて甲斐駒への正しい道を行くことができた。六合石室近くの「六合目」という看板のあるところでまた休む。ここから戸台川の赤河原に下れるらしいが、私には道に見えなかった。そこからすぐで甲斐駒らしい白いザレのところに出て六合石室。水の残りが少なくなったので、永谷君が探しに行ったが見つからなかった。永谷君が戻ってくると突然雨が降ってきた。みんな意気を喪失し、水はまだあったのでさきほどの白いザレのところにテントを張って寝ることにした。
テントの中。 |
この日気象通報をとるとき斎藤さんに「ルドナヤプリスタニの天気はテチューヘに書きこめばいい」と教えてもらった。少し賢くなった。午後5時ごろ、テントに入っていると、大ギャップで私たちがザイルを借りた6人くらいのパーティーらしき人が、テントをたたいてきた。水場がどこか尋ねられたがわからないと答えた。ずいぶん遅くだったが六合石室に泊まったのだろうか。